花や緑に親しみ、季節感に溢れる暮らしを訪ねる「私の庭・私の暮らし」。今回は住宅街の一角にあるバラとハーブの庭をご紹介。庭で植物に触れながら、アロマテラピーの知識も得て、新たな人生が開き始めた庭主も魅力的です。

郊外の住宅街の一角に、つるバラがあふれ咲き、草花が伸びやかに育つ庭があります。庭の広さは約500㎡。元々田んぼだったところに、庭をつくり始めて17年。風景が平坦にならないように、フェンスやアーチ、カゼボ(東屋)などの構造物を設え、そこにはオールドローズやクレマチスが誘引され、立体的な花風景が展開します。

庭は通りに面してオープンなつくりになっており、散歩のコースにしている方も少なくありません。庭の一角には外からの視線が気にならないように、ガーデンデザイナーの有福創(アトリエ朴)さんにプライベートガーデンエリアをデザインしてもらいました。ここにはつるバラで覆われたガゼボがあり、中に入ると緑の小部屋のような素敵な空間になっています。友人や近所の人を気軽にもてなすスペースであると同時に、近年は毎年キジバト一家の子育ての場所にもなっています。

庭主の大河内和子さんは草花に触れない日がありません。春は新緑が庭を染めていくのと同時に、バラの芽欠きに草取り、花殻摘み、草花の植栽・移植に野菜のタネ播きなどをしているうちに、あっという間に季節が変わっていきます。「いつの間にか植物の成長リズムが私の暮らしのリズムになってしまいましたね(笑)。次々にやることがあり、庭仕事は尽きないけれど、植物に触れていると癒されるんですよね」。

何気なく植えたハーブがこの庭の始まり。「ハーブってとっても生育旺盛でしょ。庭中にはびこってしまって抜いていたんですが、捨てるのももったいないから試しに煮出したあと、頭からかぶってみたんです。そしたらびっくり! 気持ちも洗い流されるような爽快感と素晴らしい香りに、それまで以上に植物への関心が高まりました」。

「NARD(ナード)」というアロマテラピーのスクールを偶然買い物途中で見つけ、もう少し植物のことを勉強しようと受講を決心。「そしたら、その授業が本格的で。複雑な化学記号と格闘することになって、人生で一番勉強しました(笑)」。NARDはベルギーに本部を置くアロマの教育情報機関で、ヨーロッパの医療現場で実践されているメディカルアロマテラピーを世界中に紹介しています。精油にはいろいろなメーカーが出している製品がありますが、NARDでは詳細な成分分析表が明記されたケモタイプといわれる精油に使用を限っており、使いこなすにはその化学組織の理解が必要になります。大河内さんは猛勉強の末、十数年前にアドバイザーの資格を取得。小瓶の中の精油だけでなく、実際の植物を庭で育てながら草花の持つ美しさとパワーに圧倒され、興味と知識を深めていきました。


大河内さんは自身の庭とアロマやハーブの知識を生かし、現在、地域でボランティア活動や講座を行っています。毎年5月にはオープンガーデンも開催しており、バラの最盛期には大勢の人が見学に訪れます。庭から人へ、植物を通じて大河内さんの新しい世界が開いていきます。
Credit

写真&文/3and garden
ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
撮影/竹田正道
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