植物を育てる人のごくごく個人的なガーデンストーリー。今回は、山林を自ら造成し、裏の森へとけこむような土地で花と緑に囲まれて暮らす北海道の山崎亮子さんの秋冬の庭仕事。雪が降り積もる前に球根を植え、草花の手入れをしておくことは、「来春の自分へのプレゼント」と教えてくれました。
私流の秋の庭作業スタイル

秋の森は静かです。にぎやかな虫の声も、鳴き交わす鳥の歌も、時の向こうに消え、耳にささやくのは風が草葉を抜ける音だけ。毎年、急にシンとした森に「ああ、秋が来た……」と思います。もうすぐ長い冬……花咲く庭が名残惜しくなりますが、寂しがってはいられません。本格的に冬を迎える前の「今」こそ、来年に向けた絶好の庭シーズンです。
この季節の朝晩は、関西の真冬並みに冷え込みます。太陽が照らす日中は温度も上がり心地よく感じますが、それはほんのいっとき。寒がりの私の体に冷えが伝わってこないよう守ってくれるのが、ナイロン製の農作業着「ヤッケ」です。さすがプロの農家さんの御用達だけあって、動きやすさも防寒も抜群!

一般的なピッタリサイズの上下の着こなしに、私はちょっと、ひと工夫。あえて特大サイズの上着に、黒いワンサイズ小さいズボンを履いて、チュニック風に見せています。農作業着のお店にはお手頃価格でサイズも色も豊富に揃っているんですよ。
軽作業の時は写真のようにゆったりしたワンピースを重ねます。庭用にザブザブ洗える薄手のデニムで作りました。何年も庭に出るたび羽織ってきたワンピースで庭にいると、庭に溶け込んでいける気がします。汗をかくほど動かない時は、なおさら冷えやすいのですが、一枚のワンピースがつくる空気層で心地よくポカポカです。
楽しみでする庭仕事。身も心も心地よくありたいと思っています。
秋恒例の庭作業はお買い物からスタート

庭仕事着を身にまとって庭に出る前に、まず向かうのはガーデンセンター! 狙いは球根とバーゲン苗です。荒地だった土地に森を育てようと手入れをしている木々が育ち、日陰が増えている私の庭。庭の主役をバラから日陰に強いアジサイに変えようと苗を買ってきました。お値段なんと250円! 小さな苗が主役に育つのは何年後でしょうね。

チューリップは‘ピンクダイヤモンド’を毎年買い足しています。帰ったら腕まくりもそこそこに、裏庭で植え込み準備を開始。まずは、一つひとつに巻かれた品種名のラベル剥がしです。長雨続きの庭は荒れてきていますが、そんなの目に入りません。お手入れは後回し。
ウキウキした私を見て、愛犬のユピーやノノもソワソワ。あらら、球根をオヤツと思い込んで「おすわり」しちゃった。
球根を狙う可愛い庭の訪問者

実は、球根を本当にごちそうと思い込んでいるエゾリスがいて困っています。ユリ根はともかく、チューリップなんて美味しいのかしら? と疑問に思うのですが、毎年食べているところを見ると……きっと美味しいのでしょうね。

「ああ〜食べられた」と歯ぎしりするくらいなら、エゾリスとも仲よく共存して大らかに見守りたいと、球根もお手頃価格を選んでいます。皮を剥いで見たらカビが! ということもありますが、そこもオーケー。できればリスにはカビの球根を一番に掘り当てて「今年は食べられないわ〜」と、ドングリを食べに行ってほしいなあ。
土を掘って球根を植えましょう

植えるテンポはゆっくり、ゆっくり。芝生のエッジを切ったり、雑草を抜いたりしながら、えっちらおっちら。ふと見上げた時に、もう枝先を止めたつもりだったバラが咲いていて、宝物を見つけたようにときめいたりしながら、春のために庭を整えていきます。
失敗から学んだ春咲き球根を植えるコツ

球根を植える時は、宿根草が目印です。ミヤマオダマキやゲラニウムの周りが遅咲きスイセンの‘サーウィンストンチャーチル(写真内白い花)’。その間がチューリップのスペースです。なんとなく範囲を決めておくだけで、前年までに植わっていた球根にスコップが刺さって真っ二つにしてしまう「事件」は激減しました。スイセンだけでも500球以上が眠っているので、以前は事件が多発。おかげで、今年はたった1個ですみました。
春を夢見て植え込みとタネ播き
枯れ草の目立ち始めた庭ですが、球根を植えている時の脳内は春らんまん。夢を見ながら手を動かす時間は、かけがえのない一時です。

また、秋はタネ播きの季節でもあります。私のタネ播きは、立ち枯れた花を切って庭のあちらこちらに挿していくだけ。
大自然の懐にある我が家は豊かな土地に見えますが、開発跡の荒地です。石混じりの赤土と粘土は耕運機の歯が立たないほど硬く、黒土を数十cm盛ったご近所さんも、元の土との間に水が溜まり、根腐れを起こすなど尽きぬ悩みを抱えていました。
大規模な土壌改良をする余裕もなく、植物を育てるのを諦めそうになった時に活躍してくれたのが、こぼれダネから育つ花。自らの力で根を下ろし、根張りに見合ったサイズの茎葉をつける花たちは、小さくても元気いっぱい。根が土を耕し、ミミズを呼んで豊かな土へと育ててくれました。
植物が大きく育つようになった今、改めて根っこの力に感動を覚えます。

はじめに紹介させていただいた春の写真のミヤマオダマキ(青い花)も、タネをつけて枯れた花茎を、そのまま葉陰に挿すことで、生え広がってくれました。カゴの写真に入っているのは淡いブルーのカンパニュラ。7月にいっぱい咲いてくれたら嬉しいなあ……とあちらこちらに挿して回りました。
こぼれ落ちるタネが、無理なく育つ場所でのみ育っていく。花にとっても、私にとっても無理のない空間で、お互い伸びやかに生きていきたいと思います。

今年のガーデンでもたくさんの幸せをもらいました。秋冬の庭仕事は来春の私へのプレゼント。北海道の長い冬を経て、また訪れる芽吹きの季節が楽しみです。
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