カメラマンが訪ねた感動の花の庭。芝とハーブとバラがコラボする庭 愛知・寺田邸

これまで長年、素敵な庭があると聞けばカメラを抱えて、北へ南へ出向いてきたカメラマンの今井秀治さん。カメラを向ける対象は、公共の庭から個人の庭、珍しい植物まで、全国各地でさまざまな感動の一瞬を捉えてきました。そんな今井カメラマンがお届けするガーデン訪問記。第11回は、石積みのアクセントと芝生やハーブがバラを引き立てる愛知の個人邸、寺田まり子さんの庭です。

僕が初めて寺田まりこさんにお会いしたのは、2017年の4月下旬。愛知県豊橋の内田さんが主催してくれた写真講座の時でした。その会は、バラが好きで、庭が好きで、写真も好きという皆さんが静岡や浜松、豊橋、名古屋周辺から集まり、午前中は僕の写真を見ながらのセミナーを行い、昼食を挟んで午後からは、4軒の庭を実際に巡りながらフラワーアレンジや寄せ植えを撮影したり、庭の撮影をするなど、とても盛りだくさんの楽しい一日となりました。

昼食の時間や移動中の話題は、もちろんきれいな庭の話になります。僕も例年秋に刊行される『New Roses』(産経メディックス発行)の秋号用に、バラの庭の撮影依頼を受けていたので、この時間を生かして、皆さんがご存じの美しい庭の情報は聞き逃すわけにはいきません。

以前から名古屋には、バラの苗を扱う専門会社である「花ごころ」さんがあり、この地域では「デルバール」や「河本バラ園」さんが作出したバラが人気になっていたのは知っていたので、きっと撮影にふさわしい庭があると確信を持ってお話を聞いていました。そんな楽しい会話の中で、何人かの方から寺田さんの庭をすすめていただきました。そして、ご本人からも「来ていただけたら嬉しいです」と了解をいただいたので、5月のバラの時期に伺いますと約束をしました。

5月21日。バラの撮影もピークを迎える頃、静岡から名古屋、そして岐阜の「花フェスタ記念公園」へと続く長い取材旅行が始まりました。21日の午後は浜松にあるオープンガーデンのすてきなバラの庭2軒を巡り、夜は豊橋に一泊。翌朝は早朝5時から黒田さんの庭の撮影です。この時に撮影した黒田さんの庭は、この連載の第1回「絵を描くように植栽する愛知・黒田邸」です。お天気にも恵まれ、黒田さんの庭の撮影を終え、一休みをした後に寺田さんの庭に向かいました。

豊橋から寺田さんのお宅までは約40分の一本道で、あっという間に到着です。駐車場に車を入れて寺田さんの案内で庭に向かうと、まず目に入ったのは、広い緑の芝生。その中ほどに、シンボリックな針葉樹と神谷造園さんがつくったドライストーンウォーリング。左に目を移すと、芝生を囲むコの字形のバラのエリアがあります。

薄いブルーに塗られたフェンスとトンネルには色鮮やかなバラが絡み咲き、足元にはネペタなどのさまざまな宿根草が咲く、まさに僕好みのガーデンがありました。広い庭を一周している間、いたるところで可愛い小花が咲き乱れ、アーチにはバラとクレマチスが生き生きと咲いています。あと僕に必要なのは、夕方のきれいな光だけでした。

夕方までまだ4時間くらいありそうなので、寺田さんには夕方にまた来ますと約束をして、以前訪問したことのあるお宅に行ってみることにしたのです。そちらのお宅も、デルバールのバラが壁面いっぱいに咲いていて『New Roses』に掲載してもらうには最適なガーデンでした。ドピーカンの天気を恨みながらも庭を見せていただき、近くの庭も紹介してもらったあと、再び寺田さんの庭に戻りました。

時刻は夕方の5時を少し過ぎて、斜めの光が当たりだした寺田さんの庭は、昼過ぎに見た庭とは全然違う表情を見せ始めています。先ほどは何気なく通り過ぎた小径が見違えるほど美しく輝き、今が盛りと咲き乱れるバラやクレマチスにレンズを向けては、ため息。

夢中でシャッターを切り続け、日が暮れるまでの貴重な時間を最大限生かして、広い庭のあちこちを歩き回って、7時過ぎに撮影を終了しました。

この日は、早朝には豊橋の黒田さん、そして夕方には寺田さんという、本当に美しい2つの庭の撮影を実現することができた、撮影人生においてなかなかない、とても幸せな一日でした。
併せて読みたい
・カメラマンが訪ねた感動の花の庭。イギリス以上にイギリスを感じる庭 山梨・神谷邸
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Credit

写真&文/今井秀治
バラ写真家。開花に合わせて全国各地を飛び回り、バラが最も美しい姿に咲くときを素直にとらえて表現。庭園撮影、クレマチス、クリスマスローズ撮影など園芸雑誌を中心に活躍。主婦の友社から毎年発売する『ガーデンローズカレンダー』も好評。
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