咲かせて、眺めて、飾って嬉しい、小さな庭がある花暮らしを楽しむ前田満見さん。神奈川の住宅街にある自宅の30坪の庭で育てている、大切な花のひとつ、秋明菊(シュウメイギク)の思い出と花の魅力を教えていただきます。
目次
秋の風情を感じる花
暦の上で立秋を迎えると、ちょこんと小さなつぼみをつける秋明菊。朝晩の涼気が心地よい9月半ばには、すーっと伸びた花茎の先にたくさんの花を咲かせ、たおやかな秋の風情を添えてくれます。
親友がくれた大切な秋明菊

庭に植えている秋明菊は2種類。ピンクの一重の秋明菊は、10年以上前に親友が誕生日にプレゼントしてくれたものです。当時、ひと株だった苗も今では地下茎で増えて、こんもりと茂みをつくるほどに成長しました。驚いたことに、コンクリートで固めていないレンガ敷きの目地の隙間にも。土づくりも追肥もしていないのに、何とたくましいことでしょう。

どうやら、半日陰の湿ったこの場所がよほど気に入ったようです。とはいえ、さすがに目地のあちこちから出てくるのも困るので、子株のうちに掘り上げて黒ポットに植え替えし、花好きの友人へ株分けしています。そう、この庭で育った秋明菊は、新たな場所で命を継いでいるのです。きっと今頃、友人の庭でも丸いつぼみをたくさんつけて満開の時を待っていることでしょう。

ピンク色の花が満開になる10月上旬は、わたしの誕生日。優しい秋風と可憐に群舞する姿は、「時には、こんなふうに風に身を任せてみるのもいいものよ」と、メッセージを届けてくれます。それは、時に心に湧いてくる人生の迷いや不安を和らげ、気持ちを前向きにリセットしてくれる、ありがたい贈り物。この花を贈ってくれた親友への感謝の気持ちと、また一つ歳を重ねることができる幸せをしみじみ感じます。
清楚な立ち姿が美しい秋明菊

そして、もう一種類は、美しい花心とアネモネのような花姿に一目惚れした白い八重咲きの秋明菊。一重咲きのものより少し遅れて開花します。地下茎でも増えますが、どちらかというと株が充実して年々花数が増えています。草丈1m以上の大株になるとなかなかの存在感で、鮮やかな黄色い花心と白い花びらのコントラストも美しく、色づき始めた草木に映えます。

特に美しく見えるのが、カネタタキやコウロギが鳴き始める夕暮れ時。どこからともなく吹いてくる心地よい白秋の風と戯れる白い花は、儚くも優しい表情で心を癒してくれます。
小さな庭で秋の花あそび

数えきれないほど花を咲かせる秋明菊は、惜しみなく切り花にして室内でも楽しみます。ただ、気をつけたいのが水揚げ。かたくて真っ直ぐな茎は活けやすい反面、水揚げがあまりよくありません。なので、わたしは水切りしたら金槌などで先を2㎝ほど叩きます。こうすると水が揚がり花もちもよくなります。

温かみのある大ぶりのピッチャーには、アメリカテマリシモツケ‘ディアボロ’の銅葉の枝ものとコスモスを合わせると、シックで秋らしい花あしらいに。また、陶器の小さな一輪挿しやゴブレットには、ホトトギスやガイラルディアの可憐な秋花とアロニアの実を合わせます。器の形が違っても、色と素材が同じだとまとまりよく、花の高低差をつけてリズム感を出すと、それぞれの花の個性も引き立ちます。「この器にはどっちの花が似合うかな」と、あれこれ迷う時間もまた楽しいものです。

酷暑からようやく解放されて、秋花が生き生きと咲き始めるこの季節。日増しに賑やかになる虫の音を聴きながら、思う存分庭時間を楽しみたい今日この頃です。
Credit
写真&文 / 前田満見

まえだ・まみ/高知県四万十市出身。マンション暮らしを経て30坪の庭がある神奈川県横浜市に在住し、ガーデニングをスタートして15年。庭では、故郷を思い出す和の植物も育てながら、生け花やリースづくりなどで季節の花を生活に取り入れ、花と緑がそばにある暮らしを楽しむ。小原流いけばな三級家元教授免許。著書に『小さな庭で季節の花あそび』(芸文社)。
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