斜面を庭に変えて楽しむガーデニング 神奈川・小脇邸
花や緑に親しみ、季節感に溢れる暮らしを訪ねる「私の庭・私の暮らし」。今回は、北向きの斜面地にバラや草花を育て、一年中部屋の窓から季節の移り変わりを眺めることができる住宅街の庭をご紹介。傾斜する土地という悪条件を克服し、庭のある暮らしを満喫する神奈川・小脇さんの庭です。
目次
傾斜する土地をバラ咲く庭につくり替える
傾斜した土地は水はけがよく、まんべんなく日が当たるものの、風雨によって表土が動きやすいので、植物を植え込む場合は、事前に整地をする必要があります。平地に比べると斜面地は一見、マイナスのイメージがありますが、ここでご紹介する神奈川の小脇麻利子さんは、手づくりでオールドローズやイングリッシュローズが毎年咲く庭のある暮らしを実現させています。植え込みなどの作業の過程には苦労もありましたが、完成してみると、平坦な庭にはない迫力が生まれました。斜面地ならではの庭の魅力や工夫をご紹介します。
起伏が多い住宅街に越してきて、約20年となる小脇さんの庭は、公道に面した母屋の奥に位置しています。通りを行き来する人には、この奥にバラが咲く庭があるとは分からない、家族や友人たちだけが知る秘密の花園です。
庭づくりは枕木の階段の設置から
今、オールドローズやイングリッシュローズなど小脇さんのお気に入りのバラたちが咲き競うこの場所は、越してきた当時は松やツツジが生える自然林だったといいます。庭づくりは、まず生えていた木を伐採して、行き来しやすいように枕木を使った階段をつくることから始まりました。
斜面地は、基本的な排水工事(地下に排水路埋設する暗渠工事)がすでにされていたので、大工事の必要はありませんでした。しかし、新しく苗を植えると雨水で表土が流れてしまうため、枕木やレンガを縁取りに使って、ひな壇状の花壇を整えてから、好きな植物を少しずつ増やしていきました。
敷地に何カ所もある階段は、小脇さんの手づくり。枕木や擬木の手前を鉄の杭で固定して、ステップの隙間に透水性のある防水シートを敷き、その上に小石や砂を乗せてつくりました。10年以上活用している、この丈夫な階段は、毎日の庭散策に必要不可欠です。ところどころにこぼれダネで芽吹いた草花が自然と生えて、庭と階段を優しくつないでいます。
斜面は北側に向いているので、季節によっては日照時間が短く、日当たりを好む植物があまりよく育ちません。でも庭づくりを始めてから20年が過ぎ、この土地を気に入って増えているたくましい植物もたくさんあります。また、日差しが柔らかいことから、一般には生育旺盛とされているバラが穏やかに育ち、いい風情で咲いてくれるのも小脇さんの気に入っているところです。
斜面地の庭を一望するピクチャーウィンドウ
バラが最盛期を迎える5月の中旬には、朝、窓を開けると、咲きたてのバラの香りが室内に運ばれてきます。2階の窓からは庭全体が見渡せるので、隣り合う花の色合わせや、植物の混み具合などを確認することにも役立っています。左奥に見えるガーデンハウスまでが小脇さんの庭です。
キッチンとダイニングのある1階の窓は、植物を低い位置から見上げて観賞できる特等席。朝日に輝く庭や夕日に照らされる庭まで、四季折々に変わっていく美しい風景、そして野鳥の声を部屋に居ながらにして楽しむことができます。
1階のピクチャーウィンドウからは、早春はクリスマスローズがうつむき咲く姿を下から眺められるという斜面地の庭ならではの特典が。クリスマスローズが最盛期を過ぎると、ギボウシの芽吹きからバラの季節へと進み、秋にはシュウメイギクがたくさん蕾を立ち上げます。
時を経て、植物が土地に馴染み、毎年季節を伝えるように次々とバトンタッチして花が咲くこの庭は、小脇夫妻にとってなくてはならない場所になりました。最近は、この庭を眺められる1階の広いダイニングを活用して、書道サークルやニッティングサークル、料理教室などを開いたり、ジャズライブを行ったり。仲間たちと定期的に集まるのが恒例になりました。
サークル仲間たちが集まると、旬の庭を案内しながら、雑草取りや構造物のメンテナンスなども時々手伝ってもらっているという小脇さん。見るだけでなく、実際に庭のある暮らしを体験してもらいながら、その楽しさを伝えています。
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Credit
写真(*)&文/3and garden
ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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