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「私の庭・私の暮らし」クリスマスローズのオープンガーデン 東京・菊池邸

「私の庭・私の暮らし」クリスマスローズのオープンガーデン 東京・菊池邸

クリスマスローズの株元には、シクラメン・コウムやチオノドクサも花盛り。春早くに咲く花たちを、かがんでその小さな姿を眺めます。

花や緑に親しみ、季節感に溢れる暮らしを訪ねる「私の庭・私の暮らし」。今回はクリスマスローズをいち早くコレクションし、開花のシーズンになるとオープンガーデンを行う個人邸をご紹介。庭は生きるエネルギーと癒しをもたらしてくれたと話す菊池さんの庭です。

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クリスマスローズが庭のあちこちで開花する3月中旬。春の到来を親しい人と喜び合える機会になればと、日数限定でオープンガーデンをはじめてから2018年で6年目になります。オープンガーデン当日を迎えるまで、仕事や家事の合間に時間を見つけてはコツコツと植物の手入れを進め、オープン当日には庭の一角でお茶をふるまったり、苗や雑貨の販売をしたりと大忙し。家族や友人を巻き込んで行う、年に数日限定の一大イベントです。

案内のハガキを手にした友だちやチラシを目にしたご近所さんが続々と訪れ、庭の奥へと進みます。敷地の一番奥は、原種系や華やかな八重花など多種のクリスマスローズが地植えされたコーナー。周囲に落葉樹が植わり、冬は日があたり、夏には木陰になる、クリスマスローズや山野草の栽培に適した環境です。

「木陰になるこの場所に花を咲かせるにはどうすればいいか、参考書を探していた時に出会ったのが、シェードガーデンをテーマに書かれた奥峰子さんの著書。そこに書かれていたオススメの植物のひとつがクリスマスローズだった」。クリスマスローズ熱は育てはじめた20年前から変わらず、今も新品種情報を得るアンテナを張ってコレクションを続けています。

菊池さんがイギリスに留学した学生時代、「広くはないけれど庭づくりに熱心だったイギリス人の日常に触れて、心のゆとりがあっていい暮らしだなと感じていました。いつか自分もガーデニングをするんだろうなと、漠然と思っていた」といいます。そのタイミングがいつ訪れるのか、分からないまま帰国後も仕事に子育てに忙しく日々を送っていました。

クリスマスローズが満開の頃、菊池さんの庭ではフリチラリア(バイモユリ)(写真左)や西洋アカバスモモも見頃に。

今、菊池さんが庭づくりをしているこの場所は、幼少時代を過ごした実家で、芝生の広場にブランコや小さなプールがある子ども達の遊び場だったそう。「芝生は父の担当で、大きなサクラとナシの木があって、池もある和洋折衷の庭だったわね。定期的に植木屋さんが来てはいたけれど、父が芝生の手入れをできなくなってからは、誰も芝生の手入れをしていなかった。そんな頃、実家を建て替えることになってね。私は仕事に子育てに、さらに父の看護と新居建築の計画と、全部同時にやってきて。やっと新居の着工が始まるとなった時、私自身が深刻な病気になってしまって」。

細い公道に面した花壇にもクリスマスローズが。昔使っていたポンプやアンティーク調の水鉢が庭のアクセントに。

病気を克服しようと手術と治療を続けていたものの、将来の不安や焦りがありなかなか気持ちが前向きにならないある日、新居のリビングで庭を眺めていたら「気晴らしに庭づくりでもやってみるか」と急に思い立ったのが、菊池さんがガーデニングを始める第一歩だったと振り返ります。

クリスマスローズの株元には、シクラメン・コウムやチオノドクサも花盛り。春早くに咲く花たちを、かがんでその小さな姿を眺めます。

今はクリスマスローズをはじめとするガーデンフラワーは、いろんな種類が全国のナーセリーで入手できるようになりましたが、菊池さんが庭づくりをはじめた20年前は、どこに何が売っているのか情報があまりありませんでした。クリスマスローズを1株見つけるのにも一苦労。そんななか、当時の菊池さんにとってバイブルになっていた奥峰子さんの本に書かれていることを頼りに、スノードロップ、オダマキ、ヒューケラ、ギボウシと、とことんシェードガーデンに向く植物を探しては庭に植えていきました。

各地のナーセリーを訪ね続けてみると、苗を分けてもらえる日もあれば、断られる日もあったり。思いがけず新情報を得たり。現在もおつきあいが続いているナーセリーとの縁もありました。「庭をもっとよくできる、よくしたい。ガーデニングをすることは前に進む、生きる希望があったのね。植物にもエネルギーをもらって。気がつけばくよくよすることもなく、病気も克服して、すっかりガーデニングにのめりこんでいたの」。

これまでに訪ね歩いたナーセリーには、貫井園芸、横山園芸、松村園芸、野田園芸など。日本のクリスマスローズの名花を生産するナーセリーの多くを訪ねた菊池さん。クリスマスローズは暑さに弱く、その年の気候によって随分咲き方が変わるといいます。10月以降の肥料のすき込みと12月から1月の葉の剪定、4月連休の花がら切りは株の維持に大切な仕事で、これだけたくさんの株を育てていると大仕事。でも、長年コレクションしてきた大好きなクリスマスローズと球根類が寄り添い咲く3月のために、作業はしっかりこなします。

3月は、よい花を咲かせるために毎年毎年繰り返ししてきた手入れの成果が花開く季節。また、菊池さんと庭の花との再会を楽しみに、足を運んでくれる花好きの人たちが集う、嬉しい季節がやってきます。

Credit

写真&文/3and garden
ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。

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