皆さんはエゴノキをご存じでしょうか? 白くて小さな可愛らしい花が咲く樹木で、全国に自生し、家庭で育てることもできます。この記事では、エゴノキの基本情報や特徴、名前の由来や花言葉、代表的な品種、育て方について詳しくご紹介します。
目次
エゴノキの基本情報
植物名:エゴノキ
学名:Styrax japonica
英名:Japanese snowbell
和名:エゴノキ(野茉莉、蘞の木)
その他の名前:ロクロギ、チシャノキ、チサノキ
科名:エゴノキ科
属名:エゴノキ属
原産地:北海道南部~沖縄、朝鮮半島、中国、フィリピン北部
分類:落葉性高木
エゴノキは、エゴノキ科エゴノキ属の落葉樹で、日本全土に分布しています。樹高は最大で7〜8mになり、耐寒性、耐暑性ともに強い性質です。日本では古くから親しまれており、万葉集にも詠まれている植物で、将棋の駒を作る木材としても利用されています。
エゴノキの花や葉の特徴
園芸分類:庭木
開花時期:5〜6月
樹高:7〜8m
耐寒性:強い
耐暑性:強い
花色:白、ピンク
エゴノキは5〜6月に開花します。葉の付け根あたりから茎を伸ばし、下向きに白やピンクの花を咲かせます。花は鈴形で、甘い香りがあります。明るい緑の葉は卵形で、ふちに浅いギザギザがあるのも特徴です。
実はエゴサポニンを含む
エゴノキは花が終わると実をつけ、10月頃に熟します。実の皮や花には有毒物質であるエゴサポニンが含まれているので、食用にはできません。実を水につけるとせっけんのように泡立つという特性から、古い時代にはせっけん代わりに利用されたこともありました。エゴサポニンが体内に入ると胃腸障害や溶血を引き起こす恐れがあるため、手についた泡は洗い流し、口に入らないように注意しましょう。
エゴノキの名前の由来や花言葉
エゴノキという名前は、果実を口に入れると刺激があり「えぐい(えごい)」ことから名付けられました。別名の「ロクロギ」は、ロクロ細工に使われることが由来とされています。エゴノキの花言葉は「壮大」「清楚」などです。
エゴノキの代表的な品種
エゴノキには花色や樹形の違いで、いくつかの品種があります。
‘ピンクチャイム’(アカバナエゴノキ)は、ピンク色の花が咲く品種です。樹形も花付きもエゴノキとほぼ変わりませんが、生育がやや遅いです。
シダレエゴノキは、枝が垂れ下がる品種です。樹形がコンパクトにまとまるため、鉢植えでも育てられるのが特徴です。
エゴノキの栽培12カ月カレンダー
開花時期:4〜6月
植え付け・植え替え:11〜3月
肥料:2〜3月、6月
種まき:10月頃
エゴノキの栽培環境
日当たり・置き場所
【日当たり/屋外】日向を好み、日当たりがよいほうが花付きもよくなりますが、半日陰でも栽培できます。ただし、西日が当たって乾燥する場所は避けましょう。
【日当たり/屋内】屋外での栽培が基本です。
【置き場所】腐植質が多く、常に適度な湿り気のある土壌で育てましょう。
耐寒性・耐暑性
暑さ寒さに強く、一年を通して屋外で栽培できます。
エゴノキの育て方のポイント
用土
エゴノキは沢に近い林に多く自生し、乾燥を嫌うため、植え場所にはあらかじめ腐葉土を入れ、腐植質の多い通気性と保湿性に優れた土づくりをしておきましょう。
水やり
地植えの場合は、基本的に降雨で水分が足ります。ただし乾燥を嫌うので、夏場は水切れに注意して、土が乾いている場合は水やりを。乾燥すると葉が反り返ってきます。
鉢植えの場合は、水やりをしっかり行いましょう。土の表面が乾いたらたっぷりと水やりをします。水切れを起こすと秋前に落葉したり、枝先から枯れ込んでくることがあります。冬はあまり水を必要としないので、土が乾ききらない程度に控えめに水やりをします。
肥料
エゴノキは肥料がなくてもよく育ちますが、2〜3月に寒肥として緩効性の肥料を与えるとよいでしょう。花後にはお礼肥をします。お礼肥は花後の株を太らせ、肥沃な土壌をつくります。
注意する病害虫
【病気】
エゴノキがかかりやすい病気として、うどんこ病と褐斑病、さび病が挙げられます。
うどんこ病は、カビが原因で葉に白い粉をまぶしたような斑ができる病気で、斑が広がってやがて枯れてしまいます。病気の部分は切り取って処分し、薬剤を散布しましょう。
褐斑病・さび病は、カビが原因で葉の表面に斑点ができ、徐々に広がります。見つけ次第病気の部分は切り取って処分し、薬剤を散布しましょう。
【害虫】
エゴノキにつきやすい害虫として、エゴノキアブラムシとカミキリムシの幼虫(テッポウムシ)が挙げられます。
エゴノキアブラムシは、卵を産み付けられた部分に「エゴノネコアシ」と呼ばれる虫こぶができ、卵がふ化すると、幼虫が葉や新芽を食害します。見つけた場合は薬剤を散布して駆除しましょう。虫こぶは切り落として処分します。
カミキリムシ(テッポウムシ)は、幹の中に卵を産み付け、ふ化した幼虫が内部を食害します。株元におがくずのようなものが落ちている場合は、カミキリムシがいる可能性があります。幹にあけられた穴の中に、殺虫剤を穴に向けて噴射して駆除しましょう。
エゴノキの詳しい育て方
苗の選び方
枝ぶりや根鉢と地上部とのバランスがよく、葉が変色していないものを選ぶとよいでしょう。
植え付け・植え替え
エゴノキは寒くなると葉を落とし、春になると葉を出す落葉樹。落葉樹は一般に、葉が落ちた11〜3月が植え付けの適期です。
地植えの場合、苗の根鉢よりも1〜2回り大きな穴を掘って植え付けます。苗を植え穴に置いたら、周りの土を埋め戻し、苗を揺すって根鉢と土がよくなじむようにします。たっぷりと水を与えたら再び苗を前後左右にゆっくりと傾け、根鉢の周りにしっかりと土が入るようにしましょう。
鉢植えにする場合は、元の鉢よりも1回り大きな鉢を選びます。エゴノキは大きく成長するため、鉢植えの場合は1〜2年に1度のペースで植え替えをします。植え替えは落葉期に行い、この時期であれば根鉢を多少くずしても構いません。大きく育てたい場合は、根鉢を少しだけくずして1〜2回り大きな鉢に植え替えます。これ以上大きくせずに育てたい場合は、根鉢の土を1/2ほど落とし、元の鉢に新しい土で植え直します。
植え付け・植え替え後はしっかりと水やりを。地植え、鉢植えともに、植え付け後、苗がぐらつくようであれば、必要に応じて支柱を立てましょう。
剪定
エゴノキは自然樹形で美しくまとまるので、剪定作業は徒長している枝や、ほかの枝と絡んだり重なり合ったりしている不要な枝、大きくなりすぎた枝を切り除く程度にとどめ、ナチュラルな姿を保つのが基本です。
大きくなりすぎた場合は、伸びた枝の先端を切るのではなく、伸びた枝の付け根で切ります。
いくつにも分岐した枝であれば、元の枝を付け根から切ると、自然な株姿になります。また、剪定の適期は落葉期の冬ですが、徒長した枝を落とす程度であれば、開花直後でも問題ありません。
木を大きくしたくない場合は、11〜2月に株の周囲を耕して根を切ることで、春〜秋の枝の伸びを抑えることができます。枝が伸びた先端の真下あたりの地面を、木の周りをぐるりと掘るように、深さ20cmくらいまで耕すとよいでしょう。その際、掘った土に同時に緩効性の肥料や腐葉土などをすき込んでおくと、春以降も健やかに育ちます。
増やし方
エゴノキは種まきや挿し木、接ぎ木などの方法で増やすことができます。
【種まき】
花が咲いたあとにできる種子を採取して播くことができます。
基本的に種子を取ったらすぐに播く「取りまき」をします。秋に熟した実から種子を取り出し、果皮や果肉をきれいに取り除いてから播きましょう。果皮には毒性があるので、作業の際は手袋を忘れずに。発芽して本葉が3〜4枚になったら鉢上げします。
※園芸品種の場合、親と同じ姿になるとは限りません。
【挿し木】
挿し木の適期は3月頃か開花後です。昨年伸びた枝の中から太くしっかりしたものを選んで、15cmほどにカットします。カットした枝を1時間ほど水につけてから用土に挿します。挿し木にはたっぷり水を与えて水切れしないように管理し、日陰の風の当たらない場所で育てます。発根したら鉢に植え替えましょう。
【接ぎ木】
エゴノキの接ぎ木の適期は3月頃です。台木は種まきから育てた苗を使います。前年に伸びた太い枝を15cmほど切って、台木と切り口が合うように整えます。接ぎ木テープで固定し、ビニールで巻いて乾燥を防ぎましょう。
白い花が美しいエゴノキは庭木にぴったり
エゴノキは白やピンクの可愛らしい花が魅力の樹木です。日本原産なので温度管理などの必要もなく、手がかからずに庭で楽しむことができます。ただし実には毒があるため口にしないように注意しましょう。
樹形も美しく、シンボルツリーとしても人気の高いエゴノキを、ぜひ植えてみてはいかがでしょうか。
Credit
文 / 3and garden
スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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