春に豪華な花を咲かせ、花木の女王とも称されるシャクナゲ。人気の花木だけに品種の数も多く、選ぶ楽しみがあります。この記事では、シャクナゲの基本情報や特徴、名前の由来や花言葉、育て方のポイントや代表的な品種について、詳しくご紹介します。
目次
シャクナゲの基本情報
植物名:シャクナゲ
学名:Rhododendron
英名:Rhododendron
和名:シャクナゲ(石楠花、石南花)
その他の名前:ロードデンドロン、西洋シャクナゲ
科名:ツツジ科
属名:ツツジ属
原産地:アジア、北アメリカ東部、ヨーロッパ
分類:常緑性低木・高木
シャクナゲの学名は、Rhododendron (ロードデンドロン)。ツツジ科ツツジ属の花木です。シャクナゲの原産地は日本を含むアジア、北アメリカ東部、ヨーロッパなど。原種だけでも1,000種以上あるとされ、人の手によって交配されて作り出された園芸品種も含めれば膨大な数となり、選ぶ楽しみがあります。かつては暑さに弱いイメージが強かったのですが、品種改良の努力によって、近年は暑さに耐える品種も見られるようになりました。シャクナゲの樹高は0.5〜5mほど。常緑性のため、冬でもみずみずしい葉を保ってくれます。
シャクナゲの花や葉の特徴
園芸分類:花木
開花時期:4月下旬~5月中旬
樹高:0.5〜5m
耐寒性:強い
耐暑性:やや弱い
花色:赤、ピンク、オレンジ、黄色、紫、茶色、白など
シャクナゲの開花期は4月下旬〜5月中旬で、花色は赤、ピンク、オレンジ、黄色、紫、茶色、白。花径は4〜5cmほどのラッパ形で、花茎の先端にまとまって咲きます。
丸みのある細長い葉は厚みがあり、ツヤツヤとしているのが特徴です。枝に互生につきます。
シャクナゲの名前の由来や花言葉
和名のシャクナゲの名前の由来は諸説あります。漢字では「石楠花」と書きますが、中国で薬用になる植物とされるオオカナメモチの「石楠」を間違えて当てられたという説や、シャクナゲの枝が曲がりやすいため、「一尺も真っ直ぐになれない」として「尺なし」と呼ばれたのが変化してシャクナゲになったという説があります。
学名のRhododendronは、ギリシャ語で「Rhodon(赤いバラ)」と「dendron(木)」という意味の組み合わせで、「赤いバラのような花木」という意味です。
シャクナゲの花言葉は、「威厳」「荘厳」など。またシャクナゲには毒が含まれていることから、「警戒」「危険」という花言葉もあります。
シャクナゲの代表的な種類
シャクナゲは数多くの種類があります。ここでは、国内で見られる種類について取り上げてご紹介します。
アズマシャクナゲ
関東や東北地方に自生するシャクナゲです。開花期は5〜6月で、真紅のつぼみが開くとピンクの花が楽しめます。花のサイズは4〜5cmで、先端が5裂します。樹高は2〜5m。
ツクシシャクナゲ
紀伊半島、四国南部、九州に自生し、山地の林床地などで見られます。開花期は4〜6月で、花色は淡いピンク。花のサイズは4〜5cmで、先端が7裂してフリルのように見えて華やかです。樹高は4mほど。
ハクサンシャクナゲ
亜高山地帯に分布しています。開花期は6〜7月で、花色はピュアホワイトにほんのりとピンクがのる、可憐な姿が魅力です。花のサイズは3〜6cmで、5裂します。樹高はほかに比べて低めで1〜3m。
キバナシャクナゲ
北海道から中部地方の高山に自生しています。開花期は6〜8月で、花色は優しげなパステルイエロー。花のサイズは3〜4cmで5裂します。かなりコンパクトにまとまるのが特徴で、樹高は20〜60cm。
シャクナゲの栽培12カ月カレンダー
開花時期:4月下旬〜5月中旬
植え付け・植え替え:3〜5月上旬、9月中旬〜10月
肥料:2月、4月中旬~6月、9~10月
シャクナゲの栽培環境
日当たり・置き場所
【日当たり/屋外】西日が強く当たらない半日陰で管理し、冬は日向で栽培します。
【日当たり/屋内】屋外での栽培が基本です。
【置き場所】午前中のみ日が差す東側や、真夏はチラチラと木漏れ日が差すような場所がよいでしょう。酸性土壌を好み、適した土壌酸度はpH5.0〜6.0。庭植えではピートモスを施して酸度調整しておきましょう。水はけ、水もちのよい環境を好みます。
耐寒性・耐暑性
一年を通じて屋外で管理できますが、暑さを苦手とするので、日当たりのよい場所では遮光するとよいでしょう。寒さには強いほうですが、冬は寒風の当たらない場所で管理します。
シャクナゲの育て方のポイント
用土
【地植え】
植え付けの2〜3週間前に直径、深さともに50cm程度の穴を掘ります。シャクナゲは腐植質に富んだ、水はけのよい酸性土壌を好むため、掘り上げた土に酸度未調整のピートモス、腐葉土や堆肥、緩効性肥料などをよく混ぜ込んで、再び植え穴に戻しておきましょう。土に肥料などを混ぜ込んだ後にしばらく時間をおくことで、分解が進んで土が熟成し、植え付け後の根張りがよくなります。
【鉢植え】
シャクナゲ用にブレンドされた、市販の培養土を利用すると手軽です。
水やり
水やりの際は、株が蒸れるのを防ぐために枝葉全体にかけるのではなく、株元の地面を狙って与えてください。
真夏に水やりする場合は、気温が上がっている昼間に行うと、すぐに水の温度が上がってぬるま湯のようになり、株が弱ってしまうので、朝か夕方の涼しい時間帯に行うことが大切です。
また、真冬に水やりする場合は、気温が低くなる夕方に与えると凍結の原因になってしまうので、十分に気温が上がった真昼に与えるようにしましょう。
【地植え】
植え付け後にしっかり根づいて枝葉をぐんぐん伸ばすようになるまでは、乾いたら水やりをしましょう。根づいた後は、地植えの場合は下から水が上がってくるので、ほとんど不要です。ただし、晴天が続いて乾燥している場合は水やりをして補いましょう。
【鉢植え】
日頃から水やりを忘れずに管理します。土の表面が乾いたら、鉢底から水が流れ出すまで、たっぷりと与えましょう。シャクナゲ用の用土は水はけがよいため、水切れには注意が必要です。枝葉がややだらんと下がっていたら、水を欲しがっているサイン。植物が発するメッセージを逃さずに、きちんとキャッチしてあげることが、枯らさないポイント。特に真夏は高温によって乾燥しやすくなるため、朝夕2回の水やりを欠かさないように注意します。冬は休眠し、表土も乾きにくくなるので控えめに与えるとよいでしょう。
肥料
【地植え・鉢植えともに】
花後のお礼肥として4月中旬〜6月、暑さがおさまる9月下旬〜10月、生育期を迎える前に施す寒肥として2月頃の年3回、緩効性肥料を与えて樹勢を保ちます。地植えの場合は、幹のすぐ下ではなく少し離れた樹冠の下あたりに施すと、肥料成分が根からよく吸収されます。
注意する病害虫
【病気】
シャクナゲが発症しやすい病気は、うどんこ病、褐斑病などです。
うどんこ病は、カビによる伝染性の病気です。葉、新梢、つぼみに発生しやすく、表面が白く粉を吹いたような状態になり、放置するとどんどん広がるので注意。対処せずにそのままにしておくと光合成ができなくなり、やがて枯死してしまいます。窒素肥料を施しすぎたり、枝葉が繁茂しすぎて風通しが悪くなったりしていると、発病しやすくなります。うどんこ病が出たら病気の葉を摘み取って処分し、適用する殺菌剤を葉の表と裏に散布して、蔓延するのを防ぎましょう。
褐斑病は、かびによる伝染性の病気です。主に葉に褐色またはくすんだ茶色の斑点が現れ、下葉から枯れ上がっていきます。雨が多い時期に発生しやすいのが特徴です。発症した葉を見つけたら、早々に切り取って処分し、周囲に蔓延するのを防ぎましょう。適用する薬剤を葉の表と裏に散布して、防除します。
【害虫】
シャクナゲに発生しやすい害虫は、アブラムシ、カイガラムシなどです。
アブラムシは、3月頃から発生しやすくなります。2〜4mm程度の小さな虫で繁殖力が大変強く、発生すると茎葉にびっしりとついて吸汁し、株を弱らせるとともにウイルス病を媒介することにもなってしまいます。見た目もよくないので、発生初期に見つけ次第こすり落としたり、シャワーではじいたりして防除しましょう。虫が苦手な方は、スプレータイプの薬剤を散布して退治するか、植え付け時に土に混ぜ込んで防除するアブラムシ用の粒状薬剤を利用するのがおすすめです。
カイガラムシは、ほとんどの庭木に発生しやすい害虫で、体長は2〜10mmほど。枝や幹などについて吸汁し、だんだんと木を弱らせていきます。また、カイガラムシの排泄物にすす病が発生して二次被害が起きることもあるので注意。硬い殻に覆われており、薬剤の効果があまり期待できないので、ハブラシなどでこすり落として駆除するとよいでしょう。
シャクナゲの詳しい育て方
苗の選び方
苗を選ぶ際は、幹が太くしっかりして枝数が多いもの、葉色が濃い緑で、黄色く変色しておらず、病害虫の痕が無いものを選ぶとよいでしょう。
植え付け・植え替え
シャクナゲの植え付け適期は3〜5月上旬か、9月中旬〜10月です。ただし、花苗店などでは植え付け適期以外でも苗木が出回っていることがあります。入手したら、植えたい場所へ早めに定植しましょう。ただし、真夏や真冬の気候が厳しい時期は避けたほうが無難です。
【地植え】
土づくりをしておいた場所に、苗の根鉢よりも一回り大きな穴を掘って、根を傷めないように植え付けます。地表近くに細かい根をたくさん張るので、深植えせず浅めに植え付けるよう注意しましょう。苗木がぐらつくようであれば、しっかり根付くまでは支柱を設置してビニタイや麻ひもなどで誘引し、倒伏を防ぎましょう。最後にたっぷりと水を与えます。
地植えの場合は、環境に合って順調に育っているようであれば、植え替えの必要はありません。
【鉢植え】
鉢で栽培する場合は、8〜10号鉢を準備します。用意した鉢の底穴に鉢底ネットを敷き、軽石を1〜2段分入れてからシャクナゲ用の培養土を半分くらいまで入れましょう。苗木をポットから取り出して根鉢をあまり崩さずに鉢に仮置きし、高さを決めたら、深植えしないように植え付けます。水やりの際にすぐ水があふれ出すことのないように、土の量は鉢縁から2〜3cmほど下の高さまでを目安にし、ウォータースペースを取るとよいでしょう。土が鉢内までしっかり行き渡るように、割りばしなどでつつきながら培養土を足していきます。最後に、鉢底から流れ出すまで、十分に水を与えましょう。
鉢植えで楽しむ場合は、成長とともに根詰まりしてくるので、2年に1度程度は植え替えることが大切です。植え替え前に水やりを控えて土が乾いた状態で行うと、作業がしやすくなります。鉢から株を取り出し、根鉢を軽くくずして新しい培養土を使って植え直しましょう。植え替え後1週間〜10日くらいは、半日陰の場所に置いて養生します。
日常のお手入れ
【花がら摘み】
シャクナゲの終わった花は元から摘み取りましょう。まめに花がらを摘んで株まわりを清潔に保つことで、病害虫発生の抑制につながりますよ! 特にシャクナゲは花がらを摘み取ると花の下の芽から新梢が出て花芽分化する性質があり、花がらをつけたままにすると翌年の花芽ができないことがあるので注意しましょう。
剪定
シャクナゲの剪定適期は3月頃です。成長が遅くて樹形も乱れにくいので、込み合っている部分の枝を切り取って風通しをよくする程度の剪定でOK。枝を切る際は、枝分かれしている部分まで遡って、付け根で切ると自然に形が整います。途中で切ると枯れ込むので注意しましょう。
シャクナゲの増やし方
シャクナゲは、接ぎ木、挿し木で増やすことが可能です。ここでは、それぞれの方法について、詳しく解説します。
【接ぎ木】
接ぎ木とは、土台となる木に切れ目を入れ、増やしたい木を人為的に挿し込んで固定し、やがて一つの個体として生育させる方法です。根を持つ土台となる木を台木といい、新たに差し込んで増やす木を挿し穂といいます。台木には比較的強健なアカボシシャクナゲを選ぶとよいでしょう。
シャクナゲの接ぎ木の適期は2〜4月です。前年に伸びた枝の中から勢いのあるものを選び、7〜8cmほど切り取ります。下葉を落として残す葉も半分ほどに切り、挿し穂にしましょう。鉢に植え付けた台木と挿し穂に斜めに切り込みを入れて互いに継ぎ合わせ、テープで巻いてしっかり固定します。鉢ごとビニール袋で覆って湿度を保ち、3週間ほどしたらビニールに穴を開けて外気に徐々に慣らしていきましょう。さらに1週間ほどしたらビニール袋を外し、育成します。
【挿し木】
挿し木とは、枝葉を切り取って地面に挿しておくと発根して生育を始める性質を生かして増やす方法です。植物のなかには挿し木で増やせるものと、そうでないものもありますが、シャクナゲは挿し木で増やせます。
シャクナゲの挿し木の適期は、6月頃か9月頃です。新しく伸びた枝を2節以上つけて切り口が斜めになるように切り取ります。採取した枝(さし穂といいます)は、水を張った容器に1時間ほどつけて水あげしておきましょう。黒ポットを用意して新しい培養土を入れ、水を入れて十分に湿らせておきます。培養土に穴を開け、穴にさし穂を挿して土を押さえてください。発根するまでは明るい日陰に置いて乾燥させないように管理します。発根後は日当たり、風通しのよい場所に移動し、十分に育ったら植えたい場所へ定植しましょう。挿し木のメリットは、親株とまったく同じクローンになることです。
夏越し対策
【地植え】
近年、日本は温暖化が進んで夏の暑さが大変厳しくなっています。強光線によって夏は庭植えでも大変乾燥しやすくなります。シャクナゲは根が浅く張る性質があり、乾燥しやすくなるので、対策として株元にバークチップなどを敷いてマルチングをするとよいでしょう。
【鉢植え】
真夏は乾燥しやすくなるので、西日の当たらない半日陰などに移動して、涼しい場所で管理するのがおすすめです。
シャクナゲに含まれる「グラヤノトキシン」とは
シャクナゲの葉には有毒成分のグラヤノトキシン(ロドトキシン)が含まれています。口に入れると嘔吐や痙攣、めまい、下痢などの急性中毒を引き起こすので、注意。特にペットや幼児がいる家庭では、誤って口に入れることのないようにする配慮が必要です。
シャクナゲで春の庭を美しく彩ろう!
華やかな花姿が魅力のシャクナゲは、春の庭を豊かに彩るシンボルツリーとしてもおすすめ。暑さに弱いイメージがありますが、近年は品種改良によって耐暑性に優れた品種も出回っています。ゴージャスに咲き誇るシャクナゲを、庭に植栽してはいかがでしょうか。
Credit
文 / 3and garden
スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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