ヤマブキは春先に美しい花を咲かせる花木! 特徴や育て方を詳しく解説
日本の伝統色「山吹色」の由来となっているヤマブキは、春を彩る美しい花木として古くから親しまれてきました。この記事では、ヤマブキの基本情報や特徴、ヤマブキに似た花、名前の由来や花言葉、育て方のポイントなどを詳しくご紹介します。
目次
ヤマブキの基本情報
植物名:ヤマブキ
学名:Kerria japonica
英名:Japanese kerria、Japanese rose
和名:ヤマブキ(山吹)
科名:バラ科
属名:ヤマブキ属
原産地:日本、中国
分類:落葉性低木
ヤマブキの学名は、Kerria japonica(ケリア・ジャポニカ)。バラ科ヤマブキ属の落葉樹です。バラ科ヤマブキ属は、ヤマブキ1種とその他園芸品種のみが分類されています。よく混同されがちなシロヤマブキは、バラ科シロヤマブキ属に分類される別種です。
ヤマブキの原産地は日本、中国。昔から日本の野山に自生してきたため暑さや寒さに耐え、育てやすい花木の一つです。万葉集にもその名が記されているほど、古くから親しまれてきました。樹高は約1〜2mの低木で、地際から弓なりに伸びる枝が多数出る株立ちの樹形が特徴です。放任すると株幅が大きくなって場所を取りがちになりますが、毎年の剪定によって程よい株幅にコントロールすることができます。
ヤマブキの花や葉の特徴
園芸分類:庭木
開花時期:4〜5月
樹高:1〜2m
耐寒性:強い
耐暑性:強い
花色:黄
ヤマブキの開花期は4〜5月です。花色は明るい黄色。枝先に花径4~5cmの5弁花が次々に開花します。一重咲きのほかに八重咲きもあります。一重咲きには実がつきますが、八重咲きには実がつきません。開花とともに展開する葉は、長さ4〜8cmの卵形で縁はギザギザと細かい切れ込みが入ります。葉は枝に互い違いにつき、葉裏を見ると葉脈が目立つのが特徴です。秋には黄葉します。
ヤマブキの名前の由来や花言葉
ヤマブキの名前の由来は諸説あります。地際から伸びるたおやかな枝が風に揺れる姿を「山振り」と呼んでいたのが転じたという説、春に黄色い花が咲く様子を「山春黄」と呼んでいたのが音便化したという説、黄色い花が秋に咲く蕗(フキ)の花に似ていることから「山の蕗」と呼ばれていたのが変化したという説などがあります。ちなみに、日本の伝統色である「山吹色」は、ヤマブキの花色が由来です。
ヤマブキの花言葉は、その美しい花姿を連想させる「気品」「崇高」などです。
ヤマブキとシロヤマブキの違いとは
ヤマブキに似ているシロヤマブキは、白い花を咲かせる同種とイメージされがちですが、実際はそれぞれ別の種に分類されています。ここで、見分け方について注目してみましょう。
シロヤマブキはバラ科シロヤマブキ属に分類されており、一属一種でほかに種がなく、園芸品種もありません。シロヤマブキの花色は白で4弁花。卵形の葉の縁にはギザギザの切れ込みが入り、葉姿もヤマブキに似ていますが、決定的な違いは、ヤマブキは枝に葉が互生につくのに対し、シロヤマブキは対生につくことです。また、シロヤマブキには秋に4個1組の黒い実がつきます。
ヤマブキの栽培12カ月カレンダー
開花時期:4〜5月
植え付け・植え替え:11月〜12月上旬、2月下旬〜3月
肥料:2〜3月、6月
ヤマブキの栽培環境
日当たり・置き場所
【日当たり/屋外】午前中は日が当たる半日陰から日向で、風通しがよい場所を選びます。ただし、乾燥を嫌うので、西日が強く当たる場所は避けたほうがよいでしょう。
【日当たり/屋内】屋外での栽培が基本です。
【置き場所】ヤマブキは低木ですが、株立ちタイプで横に広がりやすいので、植え付ける際は広めの場所を確保しておくとよいでしょう。また、水もちがよく腐植質に富んだ肥沃な土壌を好みます。乾燥する時期は、根元にバークチップなどでマルチングをしておくとよいでしょう。
耐寒性・耐暑性
日本の気候に馴染みやすく、暑さ寒さに耐えるので、一年を通して戸外で管理でき、夏越し・冬越し対策などは特に必要ありません。
ヤマブキの育て方のポイント
用土
【地植え】
まず一年を通して日当たり、風通しのよい場所を選びましょう。植え付けの2〜3週間前に、直径、深さともに50cm程度の穴を掘ります。掘り上げた土に腐葉土や堆肥、緩効性肥料などをよく混ぜ込んで、再び植え穴に戻しておきましょう。土づくりをした時間をおくことで、分解が進んで土が熟成し、植え付け後の根張りがよくなります。
【鉢植え】
花木用にブレンドされた、市販の培養土を利用すると手軽です。
水やり
水やりの際は、株が蒸れるのを防ぐために枝葉全体にかけるのではなく、株元の地面を狙って与えてください。
真夏は、気温の高い昼間に与えると、すぐに水の温度が上がって株が弱ってしまうので、朝か夕方の涼しい時間帯に行うことが大切です。
また、真冬は、気温が低くなる夕方に与えると凍結の原因になってしまうので、十分に気温が上がった真昼に行うようにしましょう。
【地植え】
植え付け後にしっかり根づいて枝葉をぐんぐん伸ばすようになるまでは、乾いたら水やりをしましょう。根づいた後は、地植えの場合は下から水が上がってくるので、ほとんど不要です。ただしヤマブキは乾燥を嫌うので、真夏に晴天が続いて乾燥している場合は水やりをして補いましょう。
【鉢植え】
日頃から水やりを忘れずに管理します。土の表面が乾いたら、鉢底から水が流れ出すまで、たっぷりと与えましょう。枝葉がややだらんと下がっていたら、水を欲しがっているサインです。植物が発するメッセージを逃さずに、きちんとキャッチしてあげることが、枯らさないポイント。特に真夏は高温によって乾燥しやすくなるため、朝夕2回の水やりを欠かさないように注意します。冬は休眠し、表土も乾きにくくなるので控えめに与えるとよいでしょう。
肥料
【地植え・鉢植えともに】
2〜3月に緩効性肥料を与え、土によくなじませましょう。生育期を迎える前に肥料を与えることで新芽を出すエネルギーとなり、旺盛に枝葉を広げることにつながります。
また、開花後の6月頃に緩効性肥料を与えます。これは開花によって木が消耗したタイミングで施すので、お礼肥といいます。忘れずに与えて、体力回復を促してあげましょう。
注意する病害虫
【病気】
ヤマブキがかかりやすい病気は、うどんこ病です。
うどんこ病は、カビによる伝染性の病気です。葉、新梢、つぼみに発生しやすく、表面が白く粉を吹いたような状態になり、放置するとどんどん広がるので注意。対処せずにそのままにしておくと光合成ができなくなり、やがて枯死してしまいます。窒素肥料を施しすぎたり、枝葉が繁茂しすぎて風通しが悪くなったりしていると、発病しやすくなります。うどんこ病が出たら病気の葉を摘み取って処分し、適用のある殺菌剤を葉の表と裏に散布して、蔓延するのを防ぎましょう。
【害虫】
ヤマブキに発生しやすい害虫は、アブラムシ、カイガラムシなどです。
アブラムシは、3月頃から発生しやすくなります。2〜4mmの小さな虫で繁殖力が大変強く、茎葉にびっしりとついて吸汁し、株を弱らせるとともにウイルス病を媒介することにもなってしまいます。見た目もよくないなので、発生初期に見つけ次第こすり落としたり、水ではじいたりして防除しましょう。虫が苦手な方は、スプレータイプの薬剤を散布して退治するか、植え付け時に土に混ぜ込んで防除する粒状薬剤を利用するのがおすすめです。
カイガラムシは、ほとんどの庭木に発生しやすい害虫で、体長は2〜10mm。枝や幹などについて吸汁し、だんだんと木を弱らせていきます。また、カイガラムシの排泄物にすす病が発生して二次被害が起きることもあるので注意。硬い殻に覆われており、薬剤の効果があまり期待できないので、ハブラシなどでこすり落とすとよいでしょう。
ヤマブキの詳しい育て方
苗の選び方
枝ぶりがよく、枝葉に張りがあり、元気なものを選びましょう。
植え付け・植え替え
ヤマブキの植え付け適期は11月〜12月上旬か、2月下旬〜3月です。ただし、花苗店などではほかの時期にも苗木が出回っていることがあります。入手したら、植えたい場所へ早めに定植します。
【地植え】
土づくりをしておいた場所に、苗の根鉢よりも1回り大きな穴を掘って、根を傷めないように植え付けます。苗木がぐらつくようであれば、しっかり根付くまでは支柱を設置してビニタイや麻ひもなどで誘引し、倒伏を防ぎましょう。最後にたっぷりと水を与えます。
環境に合って順調に育っているようであれば、植え替えの必要はありません。
【鉢植え】
8〜10号鉢を準備します。用意した鉢の底穴に鉢底ネットを敷き、軽石を1〜2段分入れてから花木用の培養土を半分くらいまで入れましょう。苗木をポットから取り出して根鉢をあまりくずさずに鉢に仮置きし、高さを決めます。水やりの際にすぐあふれ出すことのないように、土の量は鉢縁から2〜3cmほど下の高さまでを目安にし、ウォータースペースを取るとよいでしょう。土が鉢内までしっかり行き渡るように、割りばしなどでつつきながら培養土を足していきます。最後に、鉢底から水が流れ出すまで、十分に水を与えましょう。
鉢植えで楽しむ場合は、成長とともに根詰まりしてくるので、2〜3年に1度は植え替えることが大切です。植え替え前に水やりを控えて土が乾いた状態で行うと、作業がしやすくなります。鉢から株を取り出し、軽く根鉢をくずして新しい培養土を使って植え直しましょう。
剪定
ヤマブキは株立ち状で、地際から細めの枝を放射状に枝垂れさせる樹形が特徴です。
剪定は「すかし剪定」を基本とし、適期は休眠期の12月〜翌年2月。樹形は自然に整うのですが、放任していると次々に新しい枝が地際から伸びて込み合い、風通しが悪くなってしまいます。そこで、古い枝や細くて弱々しい枝、生育の邪魔になっている枝を選び、地際から切り取りましょう。
また樹形をコンパクトに保ちたい場合は、花後の6月頃に地際近くで切り取るとよいでしょう。
ヤマブキの増やし方
ヤマブキは、株分け、挿し木で増やすことが可能です。ここでは、それぞれの方法について、詳しく解説します。
【株分け】
ヤマブキの株分けの適期は11月〜12月上旬か2月下旬〜3月です。株を植え付けて数年が経ち、大きく育ったら「株分け」をします。株を掘り上げて地際から出ている枝を4〜5本ずつ付けて根を切り分け、再び植え直しましょう。それらの株が再び大きく成長し、同じ姿のクローンが増えていくというわけです。
【挿し木】
挿し木とは、枝葉を切り取って地面に挿しておくと発根して生育を始める性質を生かして増やす方法です。植物の中には挿し木ができないものもありますが、ヤマブキは挿し木で増やせます。
挿し木の適期は、6〜7月です。新しく伸びた枝を2節以上つけて切り口が斜めになるように切り取ります。採取した枝(挿し穂)は、水を張った容器に1時間ほどつけて水あげしておきましょう。黒ポットを用意して新しい培養土を入れ、水で十分に湿らせておきます。培養土に穴をあけ、穴に挿し穂を挿して土を押さえてください。発根するまでは明るい日陰に置いて乾燥させないように管理します。発根後は日当たりと風通しのよい場所に移動し、十分に育ったら植えたい場所へ定植しましょう。挿し木のメリットは、親株とまったく同じクローンになることです。
ヤマブキにちなむ山吹伝説とは
ヤマブキといえば、室町時代の武将・太田道灌にまつわるエピソードが有名です。
彼は旅の途中に急な雨に遭い、近くの農家に蓑(みの)を借りたいと伝えました。すると現れた女性は何も告げずにヤマブキのひと枝のみを差し出したので、腹を立ててその場を後にしました。彼女はなぜヤマブキの花を取り出したのか。それは後拾遺和歌集に収録されている「七重八重 花は咲けども 山吹の実の 一つだに なきぞ悲しき」という歌の「実の」を「蓑」にかけて、この家には貧しくて蓑がないと伝えようとしたのです。その後、太田道灌は自身の知識のなさを恥じて和歌を学ぶようになったといわれています。
ヤマブキの名所3選
ヤマブキの花見を楽しめる名所は各地にあります。ここでは、主な有名スポットをご紹介します。
松尾大社
京都府京都市西京区にある松尾大社は、4〜5月に山吹まつりを開催しています。敷地内を流れる一の井川に沿って、約3,000株のヤマブキが列植されており、満開時は壮観です。山吹まつりの期間は、さまざまなイベントが催されています。
山吹の里歴史公園
埼玉県入間郡にある山吹の里歴史公園は、先にご紹介した「山吹伝説」にちなむ場所とされ、この地域には太田道灌関連の史跡や文化財が多くあります。4〜5月に約3,000株のヤマブキを観賞でき、展望広場に登れば街の全景を楽しめます。
壺阪寺
奈良県高市郡にある壺阪寺では、約4,000株のヤマブキが揺れる素晴らしい景観を楽しめます。関西エリア最大級のヤマブキの景勝地といわれ、4〜5月に「やまぶきまつり」が開催されています。
ヤマブキで春の庭を明るく彩ろう
輝くような黄色い花を咲かせるヤマブキは、昔から日本人に親しまれてきた花木です。山野に自生してきたこともあり、放任してもよく育つのでビギナーにもおすすめ。ぜひ庭に植栽して、春の庭に彩りを添えてはいかがでしょうか。
Credit
文 / 3and garden
スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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