宿根草の中でも、バラとの相性がよく、人気の高いジギタリス。花穂が長く伸び、花壇や庭で主役級の華やかさを見せる初夏の花です。神奈川の自宅の庭で20年以上、ジギタリスをほぼ毎年育てているというガーデンプロデューサーの遠藤昭さんに、植えるタイミングから育て方のコツ、他の植物との組み合わせ例を教えていただきます。
目次
ナチュラルガーデンに欠かせないジギタリス

初夏のイングリッシュガーデンの名脇役といえば、デルフィニウムとジギタリスですが、デルフィニウムに比べるとジギタリスのほうが、花のボリュームもあり育てやすいのが魅力です。今回はジギタリスを深掘りしてご紹介したいと思います。
デルフィニウムについては『イングリッシュガーデンの名脇役! デルフィニウムが華やかに咲く庭づくり』をご覧ください。

ジギタリスは、本来は宿根草に分類されますが、高温多湿の日本では、二年草扱い(種子を播いてから1年以上経って開花し、その年に枯れる植物)とされています。
自宅の横浜の庭では、ジギタリスを、かれこれ20年以上、ほぼ毎年育てていますが、稀に夏越しに成功する年もありました。しかし、基本的に暑さに弱い性質なので、特に鉢植えでの夏越しは難しいと実感しています。

また、ジギタリスには毒性があるのも有名です。ジギタリスは強心薬として、心不全や頻脈性不整脈の治療に用いられてきましたが、過剰摂取すると、逆に心不全や不整脈を起こすようです。イギリスでは水腫の薬としても使用されていたとか。通常、園芸作業で手袋をして作業する分には問題ないようですが、小さな子どもが花を口にしたりしないように注意しましょうね。
学名:Digitalis
英名:Fox Globe
和名:キツネノテブクロ(狐の手袋)
その他の名前:フォックスグローブ
科名 / 属名:オオバコ科 / キツネノテブクロ属(ジギタリス属)
原産地:ヨーロッパ、北東アフリカ、中央アジア
ところでカタカナで示す名称は、ジギタリスなのか、ジキタリスなのか。ネット上では両方の名称で混在していますが、英語のDigitalisは、発音するとディジィタリス(dɪdʒ.ɪˈteɪ.lɪs)なので、近年はジギタリスで「ギ」が主流となっています。
原産はヨーロッパ方面ですが、じつはオーストラリアにもオーストラリア・フォックス・グローブと呼ばれる、Pityrodia terminalis(フェアリーピンク)という植物があります。

フェアリーピンクについて詳しくはこちらの記事も参考まで。
何色咲かせる? 何と組み合わせる? ジギタリスの魅力

ジギタリスの魅力は、なんといっても花穂が林立する姿ですね。上写真は、ポーランドの自生地の様子です。何本も花穂が立っていて見事ですね。

我が家の狭い庭では、なかなか林立とまではいきませんが、2~3株まとめて植えると華やかで見応えがあります。
花の色は、白、ピンク、紫がポピュラーですが、黄色もあります。


そして、花の色も濃淡2色程度混ぜるとメリハリがついて美しいですね。

同じ時期に咲くどんな種類のバラとも相性がよく、同じ高さで咲くデルフィニウムの花穂とも組み合わせやすいのもいいですね。

ジギタリスとバラがちょうどよいバランスで咲くと、思わず写真を撮りたくなり、植えてよかったと過去の自分を褒めたくなります。初夏のバラの季節が楽しみです。

同じ時期に咲くスカシユリ(左)や、エキウム(右写真左側)とも合います。
ジギタリスの育て方のコツとタイミング

我が家では、毎年2月にジギタリスのポット苗を購入して“初夏の花壇を夢見て”育てています。種子を秋に播いて育てるのも可能ですが、狭い我が家の庭には12ポット程度で十分満喫できるので、手間暇のかからないポット苗から育てています。

ジギタリスは草丈が1m以上と大きくなるので、開花株はあまり園芸店に出回ることがないですし、あったとしても、とても高価です。また背が高いので、花茎が折れないように運ぶのも大変です。苗から育てるとそんな心配もなく、10分の1程度のコストで済みます。
何よりも、ジギタリスのような大型の草花は、成長も早く、豪華に咲いてくれるので育てるのが楽しいですね。

まず、ポット苗を購入したら、花壇に植えますが、我が家はそのスペースがないので、大きめの鉢に植え替えます。花壇に植える際は、40~50cm間隔をあけておくとよいでしょう。さて、鉢植えに使用する用土ですが、毎年かなりの量が必要になるので、冬に前年の用土を再生し、腐葉土、鶏糞、マグアンプを加えた、オリジナル用土をブレンドして用意します。庭にブルーシートを広げて、それぞれ適量混ぜる作業をします。
土づくりについては、こちらの記事を参考に。

鉢植えのいい所は、移動できること。開花してから、他の植物とのバランスを考えながら、飾りたいところに動かして、組み合わせたり置き換えたりが自由にできます。この作業も楽しみの一つです。

苗の植え替えは、7号鉢に2株ずつ植え付けていきます。理想的には、もう少し大きな鉢のほうがいいかもしれませんが、我が家は場所が限られているので、鉢を小さくして、液肥をマメに与えるようにしています。

日当たりのよい場所で育てると、植え付けて2カ月ほどの4月末には開花します。
半日陰でも育つといわれていますが、やはり十分な日照があったほうがしっかりした苗になり、立派な花が開花します。
花穂が上がってきたら、支柱を挿して紐でしっかり固定したほうが安心です。花茎にたくさんのつぼみをつけるので、雨の重みや突然の強風で花穂が折れてしまうことがあります。

栽培20年の経験の中で、地植えで夏越しに成功したことはありますが、大抵の場合、6月頃に枯れてしまいます。ごく稀に、根元から子株が出て咲くこともあります。

もし毎年育てたいのならば、開花後にそのままにしておくと種子ができるので、採種します。そして、秋に播いて育てる方法もあります。耐寒性は十分あるので、温室なしでも育てることは可能ですが、正直なところ手間暇のかかる作業です。

豪華なジギタリスを咲かせるためには難しい栽培テクニックは必要ありません。苗を見つけて鉢に植え替え、液肥を施せば、2カ月の短い期間で開花が望めます。初夏の豪華な庭を夢見て、今からでも苗を見つけて育ててみませんか。
Credit
写真(表記以外) / 遠藤 昭 - 「あざみ野ガーデンプランニング」ガーデンプロデューサー -

えんどう・あきら/30代にメルボルンに駐在し、オーストラリア特有の植物に魅了される。帰国後は、神奈川県の自宅でオーストラリアの植物を中心としたガーデニングに熱中し、100種以上のオージープランツを育てた経験の持ち主。ガーデニングコンテストの受賞歴多数。川崎市緑化センター緑化相談員を8年務める。コンテナガーデン、多肉植物、バラ栽培などの講習会も実施し、園芸文化の普及啓蒙活動をライフワークとする。趣味はバイオリン・ビオラ・ピアノ。著書『庭づくり 困った解決アドバイス Q&A100』(主婦と生活社)、『はじめてのオージープランツ図鑑』(青春出版)。
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