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早春に咲くコブシは美しい花が魅力! 特徴や育て方を詳しく解説

早春に咲くコブシは美しい花が魅力! 特徴や育て方を詳しく解説

Drop of Light/Shutterstock.com

日本の山野に自生し、春を告げる白花をいっぱいに咲かせるコブシは、日本人にとって古くから馴染みのある花木の一つです。ここでは、コブシの基本情報や特徴、名前の由来や花言葉、育て方、似た花などについて、詳しくご紹介します。

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コブシの基本情報

コブシ
Judith Lienert/Shutterstock.com

植物名:コブシ
学名:Magnolia kobusMagnolia praecocissima
英名:Magnolia kobus
和名:コブシ(辛夷)
その他の名前:田打桜、種蒔桜、田植桜
科名:モクレン科
属名:モクレン属
原産地:日本、韓国(済州島)
分類:落葉性高木

コブシの学名は、Magnolia Kobus(マグノリア・コブス)。モクレン科モクレン属の落葉樹です。原産地は日本、韓国。昔から日本の山野に自生していることから分かるように暑さや寒さに強く、育てやすい花木の一つです。放任してもよく育つことから、公園や街路などにもよく植栽されています。樹高は8〜10mで高木に分類されますが、毎年の剪定によって樹高をコントロールすることが可能です。 コブシは葉を展開する前に、大きな花が爛漫と咲き、早春を告げるシンボルツリーとして人気が高い花木です。また、花が咲くと、爽やかな甘い香りを楽しめます。花は香料の素材として、つぼみは漢方薬、樹皮は油に利用され、古くから人々の暮らしの傍にあった樹木です。

コブシの花や葉の特徴

コブシ
tamu1500/Shutterstock.com

園芸分類:庭木
開花時期:4月上旬
樹高:8〜10m
耐寒性:強い
耐暑性:強い
花色:白

コブシの開花期は4月上旬で、花径10cmほどの白い6弁花を咲かせます。開花時に1枚だけ葉をつけますが、目立たないので、満開になると木が雪をかぶったような姿を楽しめます。また、香料にも利用される甘やかな香りも魅力です。

開花後は、長さ5〜10cmの集合果をつけます。白い果実はだんだんピンクになり、さらに熟すと中から種子が出てきます。

コブシの葉は卵形で、10cm前後の大きさ。枝に互生につきます。

コブシの名前の由来や花言葉

コブシ
Drop of Light/Shutterstock.com

コブシの名前の由来は、果実が握りこぶしのような姿をしていることから。漢字で書くと「辛夷」ですが、これは中国の漢方からきています。開花によって農作を始める時期を告げる花木として、「田打桜」「種蒔桜」「田植桜」などの和名も持っています。

コブシの花言葉は「信頼」「愛らしさ」「友愛」「友情」「歓迎」など。

コブシと似た花とその見分け方

コブシには、似た花を咲かせる花木がいくつかあります。ここでは、特によく間違えられるハクモクレンとタムシバを取り上げ、見分け方についてご紹介します。

ハクモクレン

ハクモクレン
Atiger/Shutterstock.com

ハクモクレンは、コブシと同じモクレン科モクレン属の花木で、花姿が似ています。見分けるポイントは、花のサイズが10〜15cmほどと大きく、上向きに咲くことです。また、花弁はガクを含めて9枚で厚みがあり、チューリップのようにぽってりとした咲き姿を見せます。コブシの花弁は6枚でやや薄く、ぱっくりと開ききること、開花時に花の下に小さな葉が1枚つくことが相違点です。

タムシバ(ニオイコブシ)

タムシバ
fotorince/Shutterstock.com

タムシバもコブシと同じモクレン科モクレン属の花木です。コブシよりやや開花期が遅く、白い花弁が6枚つき、花姿はコブシによく似ています。しかし、コブシは開花するときに葉が1枚つきますが、タムシバにはつきません。また、葉もコブシが卵形なのに対して、タムシバはもっと細長く先端が尖っているのが見分けるポイントです。

コブシの栽培12カ月カレンダー

開花時期:4月上旬
植え付け・植え替え:1月〜3月上旬
肥料:1月、5月
種まき:9~10月

コブシの栽培環境

コブシ
SnowMannn/Shutterstock.com

日当たり・置き場所

【日当たり/屋外】日当たりと風通しのよい場所を好みます。あまり日当たりがよくない場所では、花つきが悪くなるので注意しましょう。

【日当たり/屋内】一年を通して屋外で栽培します。

【置き場所】コブシは水はけ・水もちがよく、有機質に富んでふかふかとした土壌を好みます。樹高が高くなるので、枝葉を伸ばしたときに邪魔にならないような場所をあらかじめ確保しておきます。根が粗くて細根が少ないため、成木になると移植を嫌うので、植える場所はよく考えてから選びましょう。

耐寒性・耐暑性

日本の気候に馴染みやすく、暑さ寒さに強いので、一年を通して戸外で管理でき、冬越し対策なども特に必要ありません。

コブシの育て方のポイント

用土

土
blueeyes/Shutterstock.com

【地植え】

植え付けの約2週間前に、直径・深さともに約50cmの穴を掘ります。掘り上げた土に腐葉土や堆肥、緩効性肥料を混ぜ込んで穴に戻しておきます。土づくりをした後にしばらく時間をおくことで、分解が進んで土が熟成し、植え付け後の根張りがよくなります。

【鉢植え】

市販の花木用培養土を利用すると手軽です。

水やり

水やり
topseller/Shutterstock.com

水やりの際は、株が蒸れるのを防ぐために枝葉全体にかけるのではなく、株元の地面を狙って与えてください。

真夏は、気温の高い昼間に水やりをすると、すぐに水の温度が上がり株が弱ってしまうので、朝か夕方の涼しい時間帯に行うことが大切です。

また真冬は、気温が低くなる夕方に水やりをすると凍結の原因になってしまうので、十分に気温が上がった真昼に与えるようにしましょう。

【地植え】

植え付けてしっかり根付いたら、その後は下から水が上がってくるのでほとんど不要です。ただし、雨が降らない日が続くようなら水やりをして補います。

【鉢植え】

日頃の水やりを忘れずに管理します。ただし、いつも湿った状態にしていると根腐れの原因になるので、与えすぎに注意。土の表面がしっかり乾いたら、鉢底から水が流れ出すまで、たっぷりと与えましょう。枝葉がしおれそうにだらんと下がっていたら、水を欲しがっているサイン。植物が発するメッセージを逃さずに、きちんとキャッチしてあげることが、枯らさないポイントです。特に開花期や真夏は水を欲しがるので、水切れしないように注意しましょう。

肥料

肥料
New Africa/Shutterstock.com

【地植え・鉢植えともに】

植え付け時には、元肥として緩効性肥料を施しておきましょう。木がまだ若いうちは5月と9月中旬〜下旬、1月に緩効性肥料を株の周囲にばらまき、スコップなどで軽く表土を耕し、土に馴染ませます。

木が十分に大きく育ったら、毎年1〜2月と5月に緩効性肥料を追肥します。

注意すべき病害虫

カイガラムシ
Decha Thapanya/Shutterstock.com

【病気】

コブシに発生しやすい病気は、うどんこ病、すす病などです。

うどんこ病は、カビによる伝染性の病気です。葉、新梢、つぼみに発生しやすく、表面が白く粉を吹いたような状態になり、放任するとどんどん広がるので注意。対処せずにそのままにしておくと光合成ができなくなり、樹勢が衰えます。窒素肥料を施しすぎたり、枝葉が繁茂しすぎて風通しが悪くなったりしていると、発病しやすくなります。うどんこ病が出たら病気の葉を摘み取って処分し、適用のある殺菌剤を葉の表と裏に散布して、蔓延するのを防ぎましょう。

すす病は、一年を通して葉や枝などに発生する病気です。葉に発生すると表面につやがなくなります。病状が進み。黒いすすが全体を覆っていくと見た目が悪いだけでなく、光合成がうまくできなくなり、樹勢が衰えてしまいます。カイガラムシ、アブラムシ、コナジラミの排泄物が原因で発生するので、これらの害虫を寄せ付けないようにしましょう。込んでいる枝葉があれば剪定し、日当たり、風通しをよくして管理します。

【害虫】

カイガラムコブシに発生しやすい害虫は、カイガラムシ、カミキリムシの幼虫などです。

カイガラムシは、ほとんどの庭木に発生しやすい害虫で、体長は2〜10mm。枝や幹などについて吸汁し、だんだんと木を弱らせていきます。また、カイガラムシの排泄物からすす病が発生して二次被害が起きることもあるので注意。硬い殻に覆われており、薬剤の効果があまり期待できないので、ハブラシなどでこすり落として駆除するとよいでしょう。

カミキリムシは、主に夏から秋に発生しやすくなります。カミキリムシの幼虫が幹に穴をあけて中に侵入し、木質部を旺盛に食い荒らすので注意。被害が進むと木が弱るうえ、中が空洞化して枯れてしまうこともあります。成虫が飛来して卵を産み付けるので、成虫や卵は見つけ次第捕殺しておきましょう。また、木の株元などにおがくず状のフンを見つけたら、木の内部で活動していると推測できます。おがくずが出ている穴があれば、穴に細長い針金状のノズルを差し込むタイプの薬剤散布をして駆除してください。

コブシの詳しい育て方

苗の選び方

苗木を選ぶ際は、虫食いや病気の痕がなく、幹ががっしりとして株元がぐらついていないものを選びましょう。葉がしおれたり変色しているものは避けたほうが無難です。

植え付け・植え替え

ガーデニング
Jurga Jot/Shutterstock.com

植え付けの適期は1月〜3月上旬です。ただし、ほかの時期にも苗は出回っているので、花苗店などで入手したら早めに植え付けるとよいでしょう。

【地植え】

土づくりをしておいた場所に、苗の根鉢よりも一回り大きな穴を掘り、根を切らないように根鉢を軽くくずして植え付けます。最後にたっぷりと水を与えましょう。苗木が若いうちは、支柱を立てて誘引し、強風などによる倒伏を防ぎましょう。しっかり根付いたら支柱を取り外してもかまいません。

地植えの場合、環境に合って健全に育っていれば、植え替えの必要はありません。

【鉢植え】

コブシを鉢で栽培する場合は、10号以上の鉢を準備します。用意した鉢の底穴に鉢底ネットを敷き、軽石を1〜2段分入れてから花木用の培養土を半分くらいまで入れましょう。コブシの苗木を鉢の中に仮置きし、高さを決めたら、根を切らないように根鉢を軽くほぐし、少しずつ土を入れて植え付けます。水やりの際にすぐあふれ出すことのないように、土の量は鉢縁から2〜3cmほど下の高さまでを目安にし、ウォータースペースを取っておいてください。土が鉢内までしっかり行き渡るように、割りばしなどでつつきながら培養土を足していきます。最後に、鉢底から流れ出すまで、十分に水を与えましょう。苗木が若いうちは、支柱を立てて誘引し、強風などによる倒伏を防ぎましょう。しっかり根付いたら支柱を取り外してもかまいません。

鉢植えで楽しんでいる場合、成長とともに根詰まりして株の勢いが衰えてくるので、1〜2年に1度は植え替えることが大切です。コブシの植え替え適期は開花が終わった頃の4月下旬〜5月上旬です。植え替え前に水やりを控えて土が乾いた状態で行うと、作業がしやすくなります。鉢から株を取り出し、あまり根鉢をくずさずに、新しい培養土を使って植え直しましょう。

剪定

剪定
Opas Chotiphantawanon/Shutterstock.com

剪定適期は花後すぐで、新葉が出る前に行います。一般家庭では、樹高3〜4mまでに抑える剪定を行いましょう。コブシは比較的樹形が自然に整うので、それほど剪定には手がかかりません。地際から出てくるひこばえは付け根から切り取り、枯れ枝や木の内側に向かって伸びている「逆さ枝」、垂直に立ち上がっている「立ち枝」なども元から切り取りましょう。また、込み合っている部分があれば、日当たり、風通しがよくなるように、透かし剪定をします。勢いよく長く伸びている徒長枝は、下から3〜4節残して切ると、花芽をつける短枝が出やすくなります。

増やし方

種まきポット
Kunlanan Yarist/Shutterstock.com

コブシは、種まきで増やすことができます。

コブシは開花後に果実をつけ、熟すと中から種子が出てきます。種子が出てくる前に切り取って陰干しし、数日後に果実が裂けて出てきた種子を採取します。果肉を取り除いて流水できれいに洗い流し、そのまま種まきしましょう。

黒ポットに新しい培養土を入れて十分に水で湿らせます。コブシの種子を黒ポットに数粒まいて軽く土をかぶせ、明るい日陰で管理。春に発芽した後は日当たりのよい場所に置きましょう。本葉が2〜3枚ついたら勢いのある苗を1本のみ残し、ほかは間引いて育苗します。ポットに根が回るまでに成長したら、少し大きな鉢に植え替えて育苗します。苗木として十分な大きさに育ったら、植えたい場所に定植しましょう。

コブシは花や実が食用になる

コブシの実
tamu1500/Shutterstock.com

コブシのつぼみや花は、酢のものや揚げもの、サラダなどにして食べることができます。開花直前のつぼみを採って、陰干しした後にティーにしてもOK。つぼみまたは果実を、氷砂糖を入れたホワイトリカーにつけた後に取り出し、熟成させると花酒・果実酒が楽しめます。食用にする場合は、農薬の散布に注意しましょう。

コブシの花が咲かないときの原因と対処法

コブシ
Irina Borsuchenko/Shutterstock.com

コブシの花がうまく咲かないというケースもあるようです。ここでは、その原因と対処方法についてご紹介します。

隔年開花が起こったから

隔年開花とは、満開になった次の年はほとんど花が見られなくなり、開花する年と開花しない年が交互にやってくる現象をいいます。これは、花の咲きすぎが原因。過剰な開花によって木が消耗し、エネルギー不足になって翌年は咲かなくなってしまうのです。隔年開花の傾向がある場合は、秋から冬にかけて花芽を確認し、多すぎるようであれば花芽を摘んで減らしておくとよいでしょう。

剪定時期が悪かったから

コブシは4月上旬に開花した後に枝葉をぐんぐん伸ばし、7月頃には翌年に咲かせる花芽を形成します。そのため、7月以降に剪定するとせっかくついた花芽を切ってしまうことになり、開花が少なくなるので注意します。したがって、剪定は開花後すぐに行うのがよいのです。もしくは、11月〜翌年3月には花芽がはっきり分かるようになるので、その時期に花芽を落としすぎないような剪定をするとよいでしょう。

コブシを植えて春に花を楽しもう

コブシ
tamu1500/Shutterstock.com

白い花を爛漫と咲かせて春を告げるコブシは、高木になるため庭のシンボルツリーとしてもおすすめです。もともと日本に自生してきた樹木なので、放任してもよく育ち、手間いらずでビギナーにもおすすめです。ぜひ庭に植栽して、見応えのあるシーンを演出してはいかがでしょうか。

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