サンシュユは早春の花や秋の実が魅力! 特徴や育て方を詳しく解説
サンシュユは春に黄色い花をたっぷり咲かせるだけでなく、紅葉や実姿も楽しめ、一年を通して見どころの多い花木です。この記事では、サンシュユの基本情報や特徴、名前の由来・花言葉、育て方、近縁の仲間などについて、詳しくご紹介します。
目次
サンシュユの基本情報
植物名:サンシュユ
学名:Cornus officinalis
英名:Japanese cornel、Japanese cornelian cherry
和名:サンシュユ(山茱萸)
その他の名前:ハルコガネバナ、アキサンゴ
科名:ミズキ科
属名:ミズキ属
原産地:中国、朝鮮半島
分類:落葉性高木
サンシュユの学名は、Cornus officinalis(コーナス・オフィシナリス)。ハルコガネバナ、アキサンゴの別名も持っています。ミズキ科ミズキ属(サンシュユ亜属)の落葉樹です。原産地は中国、朝鮮半島。栽培適地は東北以南で、暑さや寒さに耐え、育てやすい花木の一つです。日本には江戸時代に薬用として導入されましたが、気候に合って放任してもよく育つので、公園や街路などにもよく植栽されるようになりました。樹高は約8mに達する高木ですが、毎年の剪定によって程よい高さにコントロールすることができます。秋には紅葉とともにかわいらしい赤い実をつけて、四季の移ろいによって表情の変化を楽しめる花木です。
サンシュユの花や葉、実の特徴
園芸分類:庭木
開花時期:3〜4月
樹高:約8m
耐寒性:普通
耐暑性:強い
花色:黄
サンシュユの開花期は、3〜4月です。花色は淡い黄色。一つひとつの花は小さいのですが、30個ほど集まって、花径2〜3cmのドーム状をした房咲きとなるので華やかです。葉が展開する前に花が咲き、パステルイエローの花が枝を覆うほどに満開になる姿は見事です。
葉は開花後に芽吹き、長さ4〜12cmの卵形をしています。葉脈が目立ち、葉裏には産毛があるのが特徴です。秋には紅葉する姿を楽しめます。
サンシュユの実は2cmほどの楕円形で、9〜11月に赤く熟します。
名前の由来や花言葉
サンシュユは、中国名の「山茱萸」を音読みしたもので、「茱萸」はグミのこと。秋の赤い実姿を、赤くて食用できるグミの実になぞらえたようです。別名のハルコガネバナは、春に黄金色の花を咲かせることから。アキサンゴは、秋にサンゴのような赤い実をつけるためです。サンシュユの花言葉は「持続」「耐久」など。
サンシュユの近縁種
サンシュユの近縁種で、代表的な美しい花木をご紹介します。いずれも庭の顔となるシンボルツリーとしての役割を担える、人気の高い花木です。
ハナミズキ
ハナミズキは、ミズキ科ミズキ属(ヤマボウシ亜属)の落葉高木です。原産地は北米東部〜メキシコ北東部で、寒さ、暑さともにやや弱い傾向にあります。最終樹形は8mにもなりますが、剪定によって樹高をコントロールすることができるので、一般家庭では4m以内におさめておくとよいでしょう。成長の速度はやや遅く、樹形も自然に整うので、メンテナンスしやすい樹木です。
ハナミズキの開花期は4月中旬〜5月中旬。花色は白、ピンク、赤があります。花弁に見える部分は苞で、じつはその真ん中に丸く集まったものが花の本体です。大変花つきがよく、開花期に満開になる様子は見応えがあります。
ヤマボウシ
ヤマボウシは、ミズキ科ミズキ属(ヤマボウシ亜属)の落葉高木で、原産地は日本、朝鮮半島、中国。日本では沖縄、九州、本州の山地に自生しており、環境に馴染みやすく初心者でも育てやすい樹木です。江戸時代には欧米に渡り、美しい花木として人気を博しています。
花色は白、うっすらとグリーンを帯びた白、ピンクなどがあります。花色と書きましたが、花に見える部分は苞で、葉が変化したものです。苞はもちがよいので、観賞期間も長いのが長所。花は苞の中央にあるグリーンの球状のものです。
サンシュユの栽培12カ月カレンダー
開花時期:3〜4月
植え付け・植え替え:11〜3月(真冬を除く)
肥料:2〜3月
種まき:3~4月
サンシュユの栽培環境
日当たり・置き場所
【日当たり/屋外】日当たりと風通しがよい場所で育てます。
【日当たり/屋内】一年を通して屋外で栽培します。
【置き場所】水もちがよく腐植質に富んだ肥沃な土壌を好みます。乾燥する時期は、根元にバークチップなどでマルチングをしておくとよいでしょう。
耐寒性・耐暑性
暑さ寒さに耐えるので、一年を通して戸外で管理でき、冬越し対策なども特に必要ありません。
サンシュユの育て方のポイント
用土
【地植え】
植え付けの2〜3週間前に、直径・深さともに50cm程度の穴を掘りましょう。掘り上げた土に腐葉土や堆肥、緩効性肥料などをよく混ぜ込んで、再び植え穴に戻しておきます。粘土質や砂質、水はけの悪い土壌であれば、腐葉土や堆肥を多めに入れるとよいでしょう。土づくりをしてからしばらく時間をおくことで、分解が進んで土が熟成し、植え付け後の根張りがよくなります。
【鉢植え】
樹木用にブレンドされた、市販の培養土を利用すると手軽です。赤玉土(小粒)と腐葉土を等量ずつよく混ぜ、配合土を作ってもよいでしょう。
水やり
水やりの際は、株が蒸れるのを防ぐために枝葉全体にかけるのではなく、株元の地面を狙って与えてください。
真夏は、気温の高い昼間に水やりをすると、すぐに水の温度が上がり株が弱ってしまうので、朝か夕方の涼しい時間帯に行うことが大切です。
また、真冬は気温が低くなる夕方に水やりをすると凍結の原因になってしまうので、十分に気温が上がった真昼に与えるようにしましょう。
【地植え】
植え付け後にしっかり根づいて枝葉をぐんぐん伸ばすようになるまでは、乾いたら水やりをしましょう。根づいた後は下から水が上がってくるので、ほとんど不要です。ただし、真夏に晴天が続く場合は水やりをして補いましょう。
【鉢植え】
日頃から水やりを忘れずに管理します。土の表面が乾いたら、鉢底から水が流れ出すまで、たっぷりと与えましょう。枝葉がややだらんと下がっていたら、水を欲しがっているサインです。植物が発するメッセージを逃さずに、きちんとキャッチしてあげることが、枯らさないポイント。特に真夏は高温によって乾燥しやすくなるため、朝夕2回の水やりを欠かさないように注意します。冬は休眠し、表土も乾きにくくなるので控えめに与えるとよいでしょう。
肥料
【地植え】
2〜3月に緩効性肥料を与え、土によくなじませましょう。生育期を迎える前に肥料を与えることで、新芽を出すエネルギーとなり旺盛に枝葉を広げることにつながります。
【鉢植え】
2〜3月に緩効性肥料を与え、土によくなじませましょう。生育期を迎える前に肥料を与えることで、新芽を出すエネルギーとなり旺盛に枝葉を広げることにつながります。
開花後と9月頃に、緩効性肥料を与えます。チッ素成分の多い肥料を与えると、花つきが悪くなることがあるので注意しましょう。
注意する病害虫
【病気】
サンシュユに発生しやすい病気は、うどんこ病です。
うどんこ病は、カビによる伝染性の病気です。葉、新梢、つぼみに発生しやすく、表面が白く粉を吹いたような状態になり、放置するとどんどん広がるので注意。対処せずにそのままにしておくと光合成ができなくなり、樹勢が衰えてしまいます。窒素肥料を施しすぎたり、枝葉が繁茂しすぎて風通しが悪くなったりしていると、発病しやすくなります。うどんこ病が出たら病気の葉を摘み取って処分し、適用のある殺菌剤を葉の表と裏に散布して、蔓延するのを防ぎましょう。
【害虫】
サンシュユに発生しやすい害虫は、アオイラガです。
アオイラガは蛾の幼虫です。毒をもつ多数の黄緑色のトゲに覆われ、いかつい格好をしています。樹木によく発生し、体長は20〜25mm。葉裏などに幼虫が大発生することがあり、見た目がよくないだけでなく、刺される危険もあるので、見つけ次第薬剤を散布して駆除しましょう。アオイラガは「でんき虫」という別名をもち、トゲに触れるとまるで感電したかのような鋭い痛みを感じるので、接触しないように注意してください。
サンシュユの詳しい育て方
苗の選び方
サンシュユの苗木を選ぶ際は、虫食いや病気の痕がなく、幹ががっしりとして株元がぐらついていないものを選びましょう。葉がしおれたり変色しているものは避けたほうが無難です。また枝葉が多く、葉の色が濃く艶のあるものを選ぶとよいでしょう。
植え付け・植え替え
植え付け・植え替え適期は、休眠期の11月〜翌年3月です。ただし、寒さが特に厳しくなる1〜2月は避けたほうが無難です。
【地植え】
土づくりをしておいた場所に、苗の根鉢よりも一回り大きな穴を掘って植え付けます。しっかりと根づくまでは支柱を立てて誘引し、倒伏を防ぐとよいでしょう。最後にたっぷりと水を与えます。
地植えの場合、環境に合って健全に育っていれば、植え替えの必要はありません。
【鉢植え】
鉢で栽培する場合は、10号以上の鉢を準備します。用意した鉢の底穴に鉢底ネットを敷き、軽石を1〜2段分入れてから樹木用の培養土を半分くらいまで入れましょう。苗木を鉢に仮置きし、高さを決めたら、少しずつ培養土を入れて植え付けます。水やりの際にすぐあふれ出さないように、土の量は鉢縁から2〜3cmほど下の高さまでを目安にし、ウォータースペースを取るとよいでしょう。土が鉢内までしっかり行き渡るように、割りばしなどでつつきながら培養土を足していきます。しっかりと根づくまでは、支柱を立てて誘引しておくとよいでしょう。最後に、鉢底から流れ出すまで、十分に水を与えます。一年を通して日当たり、風通しのよい場所に置いて管理しましょう。
鉢植えで楽しむ場合は、成長とともに根詰まりしてくるので、2〜3年に1度は植え替えることが大切です。植え替え前に水やりを控えて土が乾いた状態で行うと、作業がしやすくなります。鉢から株を取り出し、軽く根鉢をくずして新しい培養土を使って植え直しましょう。
剪定
サンシュユの剪定適期は、休眠中の12月〜翌年2月と、花後の5〜6月です。
休眠中の12月〜翌年2月に行う剪定は、樹形を整えるためです。これ以上大きくしたくない場合は、大体のアウトラインを決めて、そこからはみ出している枝を、分岐点までさかのぼって切り取ります。地際から立ち上がっている「ひこばえ」は元から切り取りましょう。木の内側に向かって伸びている「逆さ枝」、垂直に立ち上がっている「立ち枝」、勢いよく伸びすぎている「徒長枝」も元から切り取ります。1カ所から3本以上の枝が出ていたら、間引いて枝を透かすとよいでしょう。
花後の5〜6月に行う剪定は、透かし剪定を目的とします。茂りすぎて木の内側まで日光が当たらなくなっていたり、風通しが悪くなっていたりしたら、間引くように枝を切り取ります。内側に伸びている枝や、重なり合ってほかの枝を邪魔している枝、細い枝や枯れ枝などを選んで切り取り、日当たりや風通しをよくします。7〜8月には翌年の花のもととなる花芽分化が始まるので、タイミングを逃さないようにしてください。
サンシュユの増やし方
サンシュユは、種まき、挿し木で増やすことが可能です。ここでは、それぞれの方法について、詳しく解説していきます。
【種まき】
サンシュユは開花後に果実をつけ、11〜12月に熟します。そのタイミングで果実を採取し、種子を取り出して流水でよく洗っておきましょう。さらに湿らせた砂と種子を混ぜて密閉袋に入れ、春まで冷暗所で保存しておきます。
種まきの適期は3〜4月です。黒ポットに新しい培養土を入れ、十分に湿らせます。種子を密閉袋から取り出して砂をきれいに洗い流し、黒ポットに数粒播きます。軽く土をかぶせ、明るい日陰で管理。発芽した後は、日当たりのよい場所に置きましょう。本葉が2〜3枚ついたら勢いのある苗を1本のみ残し、ほかは間引いて育苗します。ポットに根が回るまでに成長したら、少し大きな鉢に植え替えて育苗します。苗木として十分な大きさに育ったら、植えたい場所に定植しましょう。
【挿し木】
挿し木とは、枝を切り取って地面に挿しておくと発根して生育を始める性質を生かして増やす方法です。植物の中には挿し木ができないものもありますが、サンシュユは挿し木で増やすことができます。
挿し木の適期は、7月頃です。その年に伸びた新しくて勢いのある枝を10〜15cmほどの長さで切り取ります。採取した枝(挿し穂)は、水を張った容器に1時間ほどつけて水あげしておきましょう。その後、吸い上げと蒸散のバランスを取るために下葉を数枚切り取ります。3号くらいの鉢を用意してゴロ土を入れ、新しい培養土を入れて十分に湿らせておきます。培養土に穴をあけ、穴に挿し穂を挿して土を押さえてください。発根するまでは明るい日陰に置いて管理します。その後は日当たりのよい場所に置いて育苗し、ポットに根が回るまでに成長したら、少し大きな鉢に植え替えて育苗します。苗木として十分な大きさに育ったら、植えたい場所に定植しましょう。挿し木のメリットは、親株とまったく同じ性質を持ったクローンになることです。
サンシュユの実は食用可能
秋に熟す実は食用にすることができます。赤い実はグミの実に似た美味しそうな姿をしていますが、渋みが強いので生食には不向き。ジャムにするなら、実を煮て柔らかくなったら裏漉しして種と皮を除いた後、同量の砂糖と一緒に鍋に入れて弱火で煮込みます。水分が飛んで適度な柔らかさになったらレモンを絞って仕上げます。ホワイトリカーと氷砂糖と一緒に漬け込んで、果実酒にすることも可能です。
サンシュユが咲かないときの原因と対策
サンシュユが咲かない原因は、
- 日当たりが悪いために花つきが悪い
- 花芽を剪定の際に切り落としてしまった
- 土壌の水はけ・水もちのバランスが悪い状態である
などが考えられます。
対策としては、
- 植え付ける際に日当たりと風通しのよい場所を選ぶ
- サンシュユの花芽は7〜8月につくので、剪定の際は全て切り落としてしまわないように注意する
- 植え付け前に、堆肥や腐葉土などの有機質資材をすき込んで、ふかふかとした土壌を作っておく
ことが大切です。
花と実で2倍楽しめるサンシュユを育てよう
いち早く春を告げるかのように黄色い花を樹冠いっぱいに咲かせた後は、新緑が芽吹いて美しく、夏には緑陰をもたらすサンシュユ。秋には紅葉と赤い実姿を楽しめ、季節の移ろいを強く感じることができます。放任してもよく育つので、ビギナーにもおすすめ。ぜひ庭に取り入れてはいかがでしょうか。
Credit
文 / 3and garden
スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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