黄色いポンポン状の花がたわわに咲き、切り花やリース、スワッグ、ドライフラワーとしても人気の花木。ミモザは、アカシアとも呼ぶオーストラリア原産の樹木で、日本でも育てやすく庭で育てることができます。ここでは、オーストラリアの植物を中心としたガーデニングに熱中し、神奈川県の自宅の庭で100種以上のオージープランツを育てた経験の持ち主である遠藤昭さんに、庭で育てがいのあるオージープランツの一つ、アカシア(ミモザ)を解説していただきます。
目次
春一番に咲くミモザの花
「春は黄色い花からやって来る」といわれるが、我が家で真っ先に咲くのが銀葉アカシアだ。毎年、バレンタインデーには開花する。早春の青空に黄色い可憐な花が舞い、葉も銀葉で明るく美しく、春を感じて心ウキウキさせてくれる魅力的な花だ。
銀葉アカシア=Acacia baileyanaは、一般的に日本ではミモザとして知られているが、もともとアカシアは、実に多くの品種が世界中に分布するといわれる。しかし、多くがオーストラリア原産で、現地ではワトル・ツリー(wattle tree)と呼ばれている。ボンボリ状の可愛らしい黄色の花と、ミモザという響きも素敵で、近年、庭木としても人気だ。マメ科植物なので、比較的痩せた土地でも育つのも魅力。
アカシアというと、「♪アカシアの雨に打たれて……」という流行歌を思い出す方がおられるかも知れないが、この歌のアカシアはニセアカシア (Robinia pseudoacacia) で、北アメリカ原産のマメ科ハリエンジュ属の落葉高木。和名は「ハリエンジュ」といい、ミモザとは異なるので、ミモザ・アカシアの仲間ではない。
僕もかれこれ25年ほど、さまざまなアカシアの品種を育ててきたが、多くは成長が早く、数年で丈高くなり、風や雪で枝が折れたり、夏の蒸し暑さで枯れてしまったものだ。
成長が早いと木の寿命も短くなりがちで、花後には剪定をして小型に保ったほうが寿命は長く保てるという。翌年の花芽が7月頃には上がってくるので、剪定は花の直後にしないと、花芽を落とすことになる。
耐寒性があるパール・アカシア
上の写真は実生のパール・アカシア(Acacia podalyriifolia)で、成長が早く4年目で樹高が4mほどになった。一度、夏に枯れたが、残った枝を挿し木にしたら成功して、この木は2代目だ。亜熱帯のクイーンズランド州の南東部に分布しているが、耐寒性があり、雪が降っても枯れることはなかった。ただし、雪の重みで枝が折れることがあるので注意が必要だ。
丸く平たいシルバーリーフがきれいだ。
こんな三角葉アカシアという品種もある。
また、新芽が銅葉の、プルプレア種も魅力的だ。
アカシアの挿し木、タネ播きのススメ
アカシアは、日本ではあまり長寿ではなく、大きくなるし、夏に突然枯れてしまうことが多いので、梅雨時期に挿し木苗をつくっておくとよいかもしれない。また、花後にマメ科特有の鞘に入った種子ができるので、採取して播いて苗を育てるのも楽しい。タネは熱湯に一晩浸けておくと発芽しやすい(オーストラリアの植物は山火事を経験して発芽するものが多い。詳しくは、『オージーガーデニングのすすめ「発芽させる6つの方法」』参照)。
アカシアの花粉症に注意
ミモザの咲く春先、この時期は日本ではスギ花粉が飛び散っているが、僕はアカシア(ミモザ)花粉症なのである。あのボンボリのような花は、見るからに花粉がいっぱいではないか! 僕が最初に花粉症になったのは、メルボルン駐在中である。多くの日本人がワトル・ツリーと呼ばれるアカシアの花粉症で悩まされたのだ。
ガーデン都市と呼ばれるメルボルンの花粉の量は、きっと東京の比ではないと思う。家々の庭にはたくさんの花が咲き乱れ、花粉を撒き散らしているのだ。春先から夏にかけて、芝刈りをした夜はもう、花粉症の症状で眠れないほど苦しんだ。アカシアは花も葉も美しいが、花粉症の方は庭で育てるのは要注意かも知れない。
タネ播きをして発見した感動
長いこと園芸をやっていると、さまざまな感動があるが、僕は新しい植物の神秘を発見した時に感動する。咲いて当たり前の花が咲いても感動はあまりないが、植物の未知の世界に遭遇し、未知が既知のものとなる瞬間に感動がある。このミモザ(オーストラリア原産のアカシア)は普通、偶数羽状複葉であるが、中には三角葉や平葉のアカシアがある。
数年前に、パール・アカシア(Acacia podalyriifolia)という、平たい葉っぱの少し変わったアカシアの種子を入手して播いたら、普通のアカシアのような偶数羽状複葉の芽が出てきた。あれ?品種が違ったのかな?」と思いそのまま育てていたら、ある時、異変に気がついた。なんと羽状複葉の根元が平葉になっているではないか!
ユーカリにも幼木の時は丸い葉で、成木になると普通の長い葉になる品種があるが、パール・アカシア(Acacia podalyriifolia)も成長過程で葉のカタチが変化するようだ。不思議大陸の植物は本当に面白い。
ミモザのスワッグと剪定枝を庭で活用
ところで、このミモザは、最近流行のスワッグの材料にもぴったりだ。つぼみの状態も可愛い。ユーカリやメラレウカと一緒に束ねるのがオススメだ。そうだ、この原稿執筆の手を休めて、スワッグをつくろう…と、庭からつぼみのついたパールアカシアやオージープランツの枝を切ってきて、束ねて、ほんの数分で仕上がったのが上写真だ。庭にオーストラリアの木々があると、ユーカリの香りと共に、おしゃれなインテリアが思い立ったときすぐ楽しめる。
『ミモザのスワッグを作ろう! 簡単にできる、春を告げる黄色のスワッグ』
また、伐採したアカシアの木は、オーストラリア・レンガのアクセントに埋め込んで使用している。こうして考えてみると、いろいろと活用方法があるものだ。庭に植えて季節を感じるばかりでなく、生活に活用できるオージープランツ、ぜひ育ててほしい。
Credit
写真&文 / 遠藤 昭 - 「あざみ野ガーデンプランニング」ガーデンプロデューサー -
えんどう・あきら/30代にメルボルンに駐在し、オーストラリア特有の植物に魅了される。帰国後は、神奈川県の自宅でオーストラリアの植物を中心としたガーデニングに熱中し、100種以上のオージープランツを育てた経験の持ち主。ガーデニングコンテストの受賞歴多数。川崎市緑化センター緑化相談員を8年務める。コンテナガーデン、多肉植物、バラ栽培などの講習会も実施し、園芸文化の普及啓蒙活動をライフワークとする。趣味はバイオリン・ビオラ・ピアノ。著書『庭づくり 困った解決アドバイス Q&A100』(主婦と生活社)、『はじめてのオージープランツ図鑑』(青春出版)。
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