マンリョウ(万両)は緑の葉と赤い実が美しい縁起物! 特徴や育て方を詳しく解説

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昔から縁起植物として愛されてきたマンリョウ。冬にかわいらしい赤い実をつけ、みずみずしい緑の葉とともに庭に彩りをもたらしてくれます。この記事では、マンリョウの基本情報や特徴、名前の由来・花言葉、育て方について、詳しくご紹介します。
目次
マンリョウの基本情報

植物名:マンリョウ
学名:Ardisia crenata
英名:Coral bush
和名:マンリョウ(万両)
その他の名前:ヤブタチバナ
科名:サクラソウ科
属名:ヤブコウジ属
原産地:日本、朝鮮半島、中国、台湾、インド、東南アジア
分類:常緑性低木
マンリョウの学名はArdisia crenata(アルディシア・クレナタ)。サクラソウ科ヤブコウジ属の低木です。原産地は日本、朝鮮半島、中国、台湾、インド、東南アジアなどで、暑さや寒さに強い性質を持っています。日本での分布は関東以西。常緑性で、冬もみずみずしい葉姿を楽しめます。樹高は30〜80cmで、落葉樹の足元などでよく育ちます。
マンリョウの花や実の特徴

園芸分類:庭木
開花時期:7月
樹高:30〜80cm
耐寒性:普通
耐暑性:強い
花色:白
開花期は7月頃で、花径1cm弱の白い5弁花を咲かせます。もっとも、観賞価値が高いのは実のほうで、実姿を楽しめるのは12~3月。実の色は赤が最もポピュラーですが、ほかにも白、黄、ピンクがあります。品種は80種ほどあるとされ、赤葉や斑入り葉などもあります。実は野鳥に食べられることがあるので、お正月飾りに利用したい場合は、ネットを張るなどの対策をしておきましょう。
マンリョウの名前の由来や花言葉

マンリョウはセンリョウよりも、大きく真っ赤な実をたくさんつけることから、より価値が高いとして「万両」と呼ばれるようになったといわれています。
マンリョウの花言葉は「寿ぎ」「財産」「金満家」「徳のある人」「慶祝」など。財にまつわる言葉を多く持っています。
マンリョウ以外のお金にまつわる縁起木

お金にまつわる名前を持つ植物は、万両(マンリョウ)以外に、千両(センリョウ)、百両(カラタチバナ)、十両(ヤブコウジ)、一両(アリドオシ)があります。江戸時代、寛政年間の園芸ブームにより、斑入り葉や変わり葉は高い値段で売買され、お金を生む木として「金生樹」と呼ばれました。諸説ありますが、「百両」「十両」は取引値段が由来といわれています。お正月の飾り物として「千両、万両、有り通し(常にある)」の語呂合わせで寄せ植えなどを作り、お金に恵まれる一年を願ったそうですよ!
マンリョウの栽培12カ月カレンダー
開花時期:7月
植え付け・植え替え:4〜5月
肥料:2月頃
入手時期:12月
種まき:12~4月
マンリョウの栽培環境

日当たり・置き場所
【日当たり/屋外】明るい日陰を好みます。チラチラと木漏れ日が差す程度の林床地に自生する植物なので、強い直射日光が当たる場所や、夏に西日が差し込む暑い場所などは苦手で、葉焼けしたり、枝が枯れ込んだりと生育が悪くなりがち。日当たりのよくないシェードガーデンで重宝しますが、極端に暗い日陰では、実つきが悪くなります。
【日当たり/屋内】基本的に屋外で栽培しますが、斑入りの品種などは性質が弱いため、冬は室内に取り込んで管理するほうが無難です。
【置き場所】明るい日陰を好むので、落葉樹や常緑樹の株元などに植えるとよいでしょう。温暖な地域が原産地なので、暑さには強い一方で寒さにはやや弱く、冬に寒風が吹きつけない場所を選びましょう。寒さが厳しい地域では、最初から鉢栽培にするか、冬前に地植えから鉢上げして移動し、凍結の心配がない暖かい場所で管理してください。
耐寒性・耐暑性
耐暑性は高いので、夏は屋外で管理できますが、耐寒性はやや弱く、特に乾いた寒風が当たると傷みやすいです。関東以西の温暖な地域では地植えで越冬できますが、寒冷地では鉢植えにして、霜の当たらない軒下や日当たりのよい室内で冬越しさせるとよいでしょう。
マンリョウの育て方のポイント
用土

適度に水はけと水もちのよい、ふかふかとして腐植質に富んだ土壌を好みます。乾燥が苦手なので、乾きやすい砂質土などでは、植え付け前に有機質資材を投入して土壌改良しておくとよいでしょう。
【地植え】
植え付けの2〜3週間前に、直径・深さともに30〜40cmの穴を掘りましょう。掘り上げた土に腐葉土や堆肥、緩効性肥料などをよく混ぜ込んで、再び植え穴に戻しておきます。土づくりをした後にしばらく時間をおくことで、分解が進んで土が熟成し、植え付け後の根張りがよくなります。
【鉢植え】
用土は、樹木用にブレンドされた市販の培養土を利用すると手軽です。
水やり

水やりの際は、木の幹や枝葉全体にかけるのではなく、株元の地面を狙って与えてください。真夏は気温の高い昼間に行うと、水がすぐにぬるま湯になり木が弱ってしまうので、朝か夕方の涼しい時間帯に与えることが大切です。反対に、真冬は気温が十分に上がった日中に行います。夕方に水やりすると凍結の原因になるので避けてください。
【地植え】
植え付け後にしっかり根付いて茎葉をぐんぐん伸ばすようになるまでは、乾いたら水やりをしましょう。根付いた後は、地植えの場合は下から水が上がってくるので、ほとんど不要です。ただし、晴天が続いてひどく乾燥する場合は、水やりをして補いましょう。
【鉢植え】
日頃から水やりを忘れずに管理します。マンリョウは極端な乾燥を嫌うので、水切れには注意。土の表面が乾いたら、鉢底から水が流れ出すまで、たっぷりと与えましょう。ただし、いつもジメジメした状態にしておくと根腐れの原因になってしまうので、適度な水管理を心がけてください。
茎葉がややだらんと下がっていたら、水を欲しがっているサインです。植物が発するメッセージを逃さずに、きちんとキャッチしてあげることが、枯らさないポイント。特に真夏は高温によって乾燥しやすくなるため、水切れに注意します。冬は生育が止まり、表土も乾きにくくなるので、株の状態を見ながら控えめに与えるとよいでしょう。
肥料

マンリョウに肥料を与えるのに適したタイミングは、2月頃です。
【地植え・鉢植えともに】
多肥を好まない性質なので、ほとんど不要です。あまり生育に勢いがないようであれば適期に緩効性化成肥料を与え、様子を見てください。
注意すべき病害虫

【病気】
マンリョウの栽培では、ほとんど病気の心配はありませんが、うどんこ病、すす病が発生することがあります。
うどんこ病は、カビによる伝染性の病気です。葉、新梢、つぼみに発生しやすく、表面が白く粉を吹いたような状態になり、放任するとどんどん広がり、そのままにしておくと光合成ができなくなって、やがて枯死してしまいます。窒素肥料を施しすぎたり、枝葉が茂りすぎて風通しが悪くなったりしていると発生しやすくなります。うどんこ病が出たら病気の葉を摘み取って処分し、適用のある殺菌剤を葉の表と裏に散布して、蔓延するのを防ぎましょう。
すす病は、一年を通して葉や枝などに発生する病気です。葉に発生すると表面につやがなくなり、病状が進むと黒いすすが全体を覆っていきます。葉に広がると光合成がうまくできなくなって樹勢が衰え、また見た目も悪くなります。すす病はカイガラムシ、アブラムシ、コナジラミの排泄物が原因で発生するので、これらの害虫を寄せ付けないようにしましょう。込み合っている枝葉があれば、剪定して日当たりや風通しをよくして管理します。
【害虫】
マンリョウの栽培では、ほとんど害虫の心配はありませんが、カイガラムシ、アザミウマが発生することがあります。
カイガラムシは、ほとんどの庭木に発生しやすい害虫で、体長は2〜10mm。枝や幹などについて吸汁し、だんだんと木を弱らせていきます。また、カイガラムシの排泄物にすす病が発生して二次被害が起きることもあるので注意。硬い殻に覆われて薬剤の効果があまり期待できないので、ハブラシなどでこすり落として駆除するとよいでしょう。
アザミウマは花や葉について吸汁する害虫で、スリップスの別名を持っています。体長は1〜2mmで大変小さく、緑や茶、黒い色の昆虫です。群生して植物を弱らせるので注意しましょう。針のような器官を葉などに刺して吸汁する際にウイルスを媒介するので、二次被害が発生することもあります。被害が進んだ花や葉は傷がついてかすり状になるので、よく観察してみてください。花がらや枯れ葉、雑草などに潜みやすいので、株まわりを清潔に保っておきます。土に混ぜるタイプの粒剤を利用して防除してもよいでしょう。
マンリョウの詳しい育て方
苗の選び方
植え付け適期は4~5月ですが、お正月用の花材として年末によく出回ります。鉢ものを入手した場合には、一通り観賞を楽しんでから、適期に植え替えるとよいでしょう。
植え付け・植え替え

植え付け・植え替えの適期は4〜5月です。これ以外の時期にも、花苗店などでは苗木が流通しているので、入手したら早めに植えたい場所に定植してください。冬に入手した場合は、適期まで待ちましょう。
あらかじめ土づくりをしておいた場所に、苗の根鉢よりも一回り大きな穴を掘り、軽く根鉢をほぐして植え付けます。最後にたっぷりと水を与えましょう。
地植えの場合は、環境に合ってよく育っているようなら、植え替えは不要です。
【鉢植え】
鉢で栽培する場合は、5〜6号鉢を準備します。用意した鉢の底穴に鉢底ネットを敷き、軽石を1〜2段分入れてから樹木用の培養土を半分くらいまで入れましょう。苗木をポットから取り出して軽く根鉢をくずし、鉢の中に仮置きして高さを決めたら、少しずつ土を入れて植え付けます。水やりの際にすぐあふれ出すことのないように、土の量は鉢縁から2〜3cmほど下の高さまでを目安にし、ウォータースペースを取るとよいでしょう。土が鉢内までしっかり行き渡るように、割りばしなどでつつきながら培養土を足していきます。最後に、鉢底から流れ出すまで、十分に水を与えます。
鉢植えで楽しんでいる場合、成長とともに根詰まりしてくるので、2〜3年に1度は植え替えることが大切です。植え替え前に水やりを控えて土が乾いた状態で行うと、作業がしやすくなります。鉢から取り出してみて、根が詰まっていたら、根鉢をくずして古い根などを切り取りましょう。根鉢を1/2〜1/3くらいまで小さくして、元の鉢に新しい培養土を使って植え直します。
剪定・切り戻し

剪定適期は4月頃ですが、マンリョウは自然に樹形が整うので、剪定の必要はほとんどありません。しかし、樹形が乱れてきた場合には、込み合っている部分の弱々しい枝、内側に伸びている枝、交差している枝、長く伸びすぎている枝などを選んで切り取ります。長い期間育てていると下葉が落ちて見栄えが悪くなることもあるので、気になる場合は上部を切り戻して仕立て直しをします。ただし、仕立て直しをすると一時的に葉がなくなって姿が悪くなり、また2~3年は実もつかなくなります。
増やし方

挿し木、種まきで増やすことができます。ここでは、それぞれの方法についてご紹介します。
【挿し木】
挿し木とは、枝を切り取って土に挿しておくと発根し、生育を始める性質を生かして増やす方法です。植物の中には挿し木ができないものもありますが、マンリョウは挿し木で増やせます。
挿し木の適期は、6月頃です。その年に伸びた新しい枝を2〜3節つけた長さで切り取ります。採取した枝(挿し穂)は、水を張った容器に1時間ほどつけて水あげしておきましょう。その後、吸い上げと蒸散のバランスを取るために、先端の葉を3〜4枚残して下葉を切り取ります。残した葉も先端から1/3ほど切り取って蒸散する面積を小さくしておきましょう。3号くらいの鉢を用意してゴロ土を入れ、新しい培養土を入れて水で十分に湿らせておきます。培養土に穴をあけ、挿し穂を挿して土を押さえてください。明るい半日陰に置いて水切れしないように管理し、大きく育ったら植えたい場所に定植しましょう。挿し木のメリットは、親株とまったく同じ性質を持ったクローンになることです。
【種まき】
実がついたら種子を採取し、その種子を播いて増やすことができます。熟した果実から種子を取り出し、流水でよく洗います。乾燥すると発芽しなくなるので、すぐに植え付けましょう。黒ポットに新しい培養土を入れて十分に湿らせたら、洗った種子を播き、薄く土をかけて明るい日陰で管理。発芽後、本葉が3〜4枚ついたら勢いのある苗を1本のみ残し、ほかは間引いて育苗します。根が回るくらいに成長したら、植えたい場所に定植しましょう。
間のびしてきたときの対策

マンリョウは上へ幹が伸びていき、枝も上部から出るので、気づいたときには足元がスカスカで不恰好になってしまいがち。ここでは仕立て直しや挿し木で対策する方法についてご紹介します。
幹の仕立て直し
仕立て直しの適期は4月頃です。幹を好きな高さで切り取ると新芽が吹き出して、再び枝を伸ばして元の姿に戻ります。ただし、実をつけるまでは2〜3年かかります。
挿し木で更新
マンリョウは、挿し木で簡単に増やせる植物です。剪定した枝葉を利用して挿し木にし、新しい株を作ってもよいでしょう。挿し木なら、採取した株のクローンになります。挿し木の方法は、「挿し木」の項目を参照してください。足元をカバーするように新しい株を植えれば、高低差がついて見栄えもよくなります。
葉が枯れる・実がつかないときの原因と対処法

「マンリョウの葉が枯れる」「実がつかない」といったトラブルの原因は、「強い日差しに長く当たって葉焼けした」「乾燥が続いて水切れした」「冬の寒風にさらされた」などが考えられます。もともと林床地に自生してきた低木で半日陰を好むため、あまり日当たりのよい場所は避けたほうが無難です。同じ理由でマンリョウは乾燥するのを嫌うため、水切れには注意して管理しましょう。また、関東以西に分布する植物で寒さは苦手なので、冷たい風がいつも吹き付けるような場所では葉が傷み、枯死することもあります。寒冷地では晩秋に鉢上げして、霜の当たらない軒下や日当たりのよい室内などに移動してください。
マンリョウを育てて美しい実を観賞しよう

冬もエバーグリーンで美しく、みずみずしい実をつけるマンリョウは、江戸時代にもてはやされた植物です。赤と白の実を寄せ植えして紅白にするのも縁起がよく、お正月飾りなどにおすすめ。ぜひマンリョウの栽培にチャレンジしてみましょう。
Credit
文 / 3and garden

スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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