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- 巨大柑橘「バンペイユ(晩白柚)」 美味しい果実と自家栽培のコツ
冬に出回るちょっと珍しい巨大な柑橘「バンペイユ」をご存じですか? すっきりとした芳香の黄色い大きな果実は見ているだけでも楽しく、果肉はプリプリしていて爽やかな風味です。高級フルーツの一つですが、果実から取った種子で種まきも簡単にできて成長が楽しめ、ミニ観葉として育てるのもおすすめです。園芸研究家の小川恭弘さんがバンペイユの魅力と栽培方法を解説します。
目次
バンペイユの基本情報
流通名:バンペイユ
学名:Citrus maxima (grandis)
和名:バンペイユ
科名:ミカン科
属名:ミカン属
分類:果樹・常緑性高木
バンペイユは、ブンタン(ザボン)の品種の一つで、世界最大の柑橘類といわれています。平均して大きさは直径20cm、重さは2㎏くらいになります。ギネス記録では5㎏超に達した果実もあります。
熊本県八代市の特産品で、日本の生産量の9割近くを占めています。花は4月中旬から5月中旬に咲き、収穫時期は12~3月。温室で育てられたものから早く出荷されます。
果肉は白っぽくて果汁は少ないですが、よく熟したものは酸味が強すぎず上品な甘味とのバランスに優れ、万人受けしやすい爽やかな味わいです。
果実の保存性はよく、購入してから1カ月後でも美味しく食べられるのも魅力。ただし保存状況や果実の状態にもよるので注意してください。長期保存する場合は、新聞紙などにくるんで、冷暗所で保管するとよいでしょう。
バンペイユの利用
表皮の下の白いスポンジ状のアルベドと呼ばれる部分が特に厚く、砂糖で煮て加工されます。果肉を利用する目的よりも、加工目的の愛好者もいるようです。レシピを紹介するサイトなどで、簡単な砂糖漬けやジャム、ピールのチョコ掛けなどが多数公開されているほどです。
皮は、ゆず湯のように風呂に入れて楽しむこともできます。バンペイユの特産地、熊本県八代市の温泉センター「ばんぺい湯」では、冬の名物イベントとしてバンペイユを浴槽に浮かべ、人気を博しています。自宅でお風呂に入れる場合は、肌の弱い人には刺激が強いことがあるので注意してください。
バンペイユの入手と果実の特徴
やや高めの値段の高級果実として、1~3月に、大型スーパーやデパート、フルーツ専門店などに流通しています。ブンタンと比べても2倍以上の大きい果実は、売り場でも人目を引いています。近場で入手が難しい場合は、ネットショップの利用がおすすめです。
購入する際は、形が整っていてずっしりと重く、表面がなめらかで明るい色のものを選ぶとよいでしょう。
鮮やかな黄色の大きい果実と爽やかな芳香から、飾って楽しむ柑橘ともいわれます。部屋に置いておくだけで、周囲の雰囲気を明るくしてくれます。また玄関先など人目につく場所に置いておけば、話のタネになるほど存在感がある柑橘です。
バンペイユの食べ頃と食べ方
まだ熟していない時期は、へたの色が緑で皮を押しても固い感触です。へたが茶色くなり、皮を押してみて感触が柔らかくなってきたら食べ頃です。
果肉を食べる場合、グレープフルーツのように半分に切ると、皮の苦みが果肉に移ってしまいます。
上写真のように、上部を2cmほど切り落とし、縦方向に果肉を傷つけないように1cmほどの深さで切れ込みを8カ所ほど入れ、厚みのある白いワタ状の部分ごと皮をむいてください。切れ込みを多く入れれば、よりむきやすくなります。
バンペイユの種まきとコツ
果肉の中には、やや大きめのタネがたくさん入っていて、発芽率は高いです。水に入れて沈まなかったタネも、ほとんど発芽します。ただし、沈んだタネのほうが蓄えられている栄養が充実しているので、優先的に播くと成長が早いでしょう。実際、筆者がタネ表面の薄皮なども剥がさずに播いたところ、発芽率や発芽までの早さも問題はないと確認しました。
発芽成功の条件として重要なのが、温度です。3月下旬頃から種まきするとよいでしょう。
バンペイユの種まきの方法
キッチンペーパーに種まき
室内で発芽を楽しめて、土を使わずに清潔に管理できる簡単な方法をご紹介します。
パック容器などに湿らせたキッチンペーパーを2~3枚重なるように置き、タネを上にのせるだけで発芽します。キッチンペーパー全体が濡れるくらいに水を与え、乾燥させないようにしてください。根があまり伸びないうちに土に植え替えれば、失敗が少ないです。
用土に種まき
手間がかからず、管理しやすい方法です。
培養土や種まき用土などを鉢(2.5〜3.5号)に入れ、1cm程度の深さの穴を作ったら、その中にタネを播いてください。水やりは、表土に水をかけるよりも、受け皿に水をためて吸わせるとよいでしょう。ただし用土が乾燥しすぎると水を吸いにくくなるので注意してください。また、素焼き鉢は受け皿の水分をよく吸いますが、環境によってはカビが出る場合があります。
種まき後の管理
【発芽までの置き場所】部屋の中央付近など、温度が下がりにくい場所を選んでください。ただし暖房器具の風が当たる場所や、その近くは避けてください。
【水やり】表土が乾いてから与えます。ただし乾燥には弱いので、水切れ注意してください。
上写真くらいに成長したら、2~3号(直径6〜9cm)のポットに観葉植物用の培養土などを入れて植え付けます。3~4号鉢に3~4本寄せ植えしても見栄えがします。光沢のある濃い緑色の葉が映えて美しく、ミニ観葉として楽しむのに最適です。
【植え替え後の置き場所】窓際の明るい場所が適します。ただし、閉め切った室内の南側、または西側の窓辺は、非常に高温になりやすいので注意してください。
バンペイユの苗木から育てて結実させるコツ
夏ミカンや他品種のブンタンなどとの人工交配(人工授粉)が必要です。花が咲いただけでは、実はほとんど付かないでしょう。
また寒さには強くなく、レモンと同程度の最低温度、−3℃以上が保てる栽培環境が必要です。そのため、生産地でも品質向上と生産安定のためにビニールハウス内で栽培することが多いです。関東南部の海沿いの地域であれば、地植えも可能です。日当たりと排水がよく、風当たりの弱い場所を選びましょう。
実がついたら果実の重さで枝が折れることがあるので、支柱を立てるとよいでしょう。
実生苗で結実させたい場合は
甘夏や八代ザボンなど他品種と人工授粉で交配されているため、タネからの苗はバンペイユとはいえません。果実はバンペイユより小さくなりますが、花が咲くまでの期間は早くなり、寒さに強く実が付きやすくなる可能性が高くなります。とはいえ、実が付くまでには、10年以上かかるでしょう。
バンペイユの仲間
ブンタン
九州、四国地方などに多くの品種がありますが、高知県が日本のブンタン生産量の9割を占めています。土佐ブンタンが最も生産量が多いほか、より高級でハウス栽培される水晶ブンタン、果実の大きい広島の安政柑(あんせいかん)などがあります。
ポメロ
マレーシアなどの原産地から日本に伝わったのがブンタンなのに対し、西に伝わったのがポメロです。カリフォルニアやタイなどで生産されたポメロが日本に輸入されて販売されています。外観や味はバンペイユにそっくりで、流通時期も12〜2月です。
イエローポメロ
ハッサクと平戸ブンタンの交配種で、日本で作出されました。ブンタンとの交配種でポメロの名がつく品種として、メイポメロ、サワーポメロ(かごしまブンタン)などがあります。
贈答品としても選ばれる魅力的なフルーツ「バンペイユ」
高級感や珍しいイメージ、インパクトのある大きさがあり、贈り物にもおすすめです。
食べても美味しく、種まきして楽しむこともできます。苗はコーヒーの木と同じくらいに美しく、さらにバンペイユのほうが丈夫で育てやすいです。タネも多く入っているので、思う存分たくさんのミニ観葉を作ることができます。配っても喜ばれることでしょう。
飾って楽しく食べても美味しいバンペイユを入手して、種まきにもチャレンジしてみてください。
Credit
文&写真(クレジット記載以外) / 小川恭弘 - 園芸研究家 -
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