【高貴な花】菊をきれいに咲かせる育て方のコツは? 特徴や種類も知っておこう

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菊は昔から日本人に愛されてきた花で種類も多く、豪華な花姿を見せるものから、楚々として素朴な雰囲気を持つものまで多様です。花もちもよいので、切り花としても大活躍。お正月に飾る花にも利用されます。この記事では、菊の基本情報や種類、基本的な育て方についてご紹介します。
目次
菊とは?
身近な植物の菊ですが、どのような特徴や性質を持っているのでしょうか。ここでは、菊の概要についてガイドします。
基本情報

菊は、キク科キク属の多年草です。原産地は中国で、暑さや寒さに強く、一年を通して戸外での栽培が可能です。日本へは奈良〜平安時代に伝わったとされています。園芸文化が花開いた江戸時代には品種改良が盛んに行われ、人気を博しました。日本から海外へ持ち出され、さらに欧米で品種改良が進み、洋菊のジャンルも確立されています。
菊の開花期は9〜11月。花色は赤、オレンジ、黄、白、紫、緑、茶、複色などさまざま。花姿もポンポン咲きや丁子咲き、スプーン咲きなど枚挙に暇がなく、選ぶ楽しみがあります。品種が多種多様で、草丈は15〜100cmと幅広いため、庭やベランダの広さにマッチするか、苗を購入する前にラベルなどで草丈の確認をしておくとよいでしょう。
菊の花と重陽の節句との関係

9月9日は重陽の節句で、旧暦では菊が開花する時期であることから、「菊の節句」ともいわれています。中国から伝わった五節句の一つで、ほかに1月7日の人日 (七草)の節句、3月3日の上巳(桃)の節句、5月5日の端午(菖蒲)の節句、7月7日の七夕(笹)の節句があります。菊は薬草として用いられた歴史があり、重陽の節句には健康や不老長寿を願って菊の花を浮かべた菊酒をいただいたり、菊の花びらを浮かべた湯船に入ったりといった風習があります。
菊の種類
菊は昔から親しまれてきた植物で、江戸時代から品種改良が盛んに行われてきました。そんな歴史を持つことから、その種類をここですべてはご紹介しきれませんが、主なものについて解説します。
古典菊

盛んに品種改良が行われていた江戸時代に生み出された品種。東京の江戸菊、京都・嵯峨野で作出された嵯峨菊、美濃地方で生まれた美濃菊、熊本で育種された肥後菊、伊勢地方で完成した伊勢菊、松坂菊などがあります。
大菊

一輪の花のサイズが18cm以上になる、大きな花を咲かせる菊のことです。花弁が鱗状に幾重にも重なって咲く厚物、長くて太い管状の花弁が集まってこんもりと咲き、外側の花弁は外へ流れるように広がる厚走り、花弁が管状になっている菅物(くだもの)、平たい花弁が放射状に伸びて一重咲きとなる一文字(いちもんじ)などがあります。
中菊

花のサイズが9〜18cmくらいになる、中型サイズの菊のことです。古くは古典菊の江戸菊を指す呼び方でしたが、今では洋菊もこのサイズにおさまるものは含まれることもあります。
小菊

花のサイズが9cm未満の、小型の菊のことです。盆栽向きとして、文人菊と呼ばれることもあります。小菊は洋菊も含まれ、種類が多彩で育てやすいのが特徴です。
洋菊

日本で盛んに栽培されていた菊が欧米に渡り、現地で品種改良が進んだ結果生まれた菊の系統。スプレー咲きになるスプレーマム、コンパクトな丸い花姿になるクッションマム、鉢植え用として小さくまとまるポットマムなどがあります。
菊の育て方のポイント7つ
ここまで、菊の基本情報や種類などについてご紹介してきました。では、ここからはガーデニングの実践編として、菊に適した栽培環境や植え付け、水やりや施肥、日頃の管理、増やし方など、育て方について詳しく解説していきましょう。古典菊や大菊の栽培には専門的な知識が必要なので、ここでは一般家庭でも庭やベランダでカジュアルに栽培できる中・小菊、洋菊の栽培方法に絞っています。
栽培に適した環境

【地植え】
一日を通してよく日が当たり、風通しのよい場所を好みます。日当たりの悪い場所では花つきが悪くなり、ひょろひょろと徒長気味に伸びて軟弱な株になるので注意しましょう。水はけのよい環境を好むため、10〜30cmほど土を盛って周囲より高くしたり、レイズドベッドや傾斜地に植え付けたりするのも一案です。
暑さにも寒さにも強いので取り立てて対策を講じる必要はなく、一年を通して戸外で植えっ放しにしてかまいません。
【鉢植え】
一日を通してよく日が当たり、風通しのよい場所に置いて管理します。開花期は、日当たりがよく、雨の当たらない軒下やベランダで管理すると、花が傷みにくく長く楽しめます。暑さにも寒さにも強いので、一年を通して戸外で管理してかまいません。
土づくり

【地植え】
植え付けの約2週間前に、腐葉土や堆肥、緩効性肥料を混ぜ込んでよく耕し、有機質に富んだ水はけ・水もちのよい土壌をつくります。土づくりをした後にしばらく時間をおくことで、分解が進んで土が熟成し、植え付け後の根張りがよくなります。
【鉢植え】
市販の草花用培養土を利用すると手軽です。
植え付け・植え替え

植え付け・植え替えの適期は、3〜5月です。ただし、それ以外の時期にも苗は出回っているので、花苗店などで入手したら早めに植え付けるとよいでしょう。
【地植え】
土づくりをしておいた場所に、苗の根鉢よりも一回り大きな穴を掘り、根鉢をくずして植え付けます。最後にたっぷりと水を与えましょう。複数の苗を植える場合は、20〜40cmの間隔を取っておきます。草丈が高くなる種類は支柱を立てておき、生育と共に支柱に誘引して倒伏を防ぎます。水やりや降雨時の泥はねによって病気が発生するのを防ぐために、表土にバークチップなどを敷いておくとよいでしょう。
地植えにしている場合は、数年は植えたままにしてもかまいません。しかし、大株に育って込み合ってきたら、掘り上げて株分けして植え直し、株の若返りをはかるとよいでしょう。
【鉢植え】
鉢で栽培する場合は、6〜7号の鉢を準備します。用意した鉢の底穴に鉢底ネットを敷き、軽石を1〜2段分入れてから草花用の培養土を半分くらいまで入れましょう。苗を鉢の中に仮置きして高さを決めたら、根鉢を軽くほぐし、少しずつ土を入れて、植え付けます。水やりの際にすぐあふれ出さないように、土の量は鉢縁から2〜3cmほど下の高さまでを目安にし、ウォータースペースを取っておいてください。土が鉢内までしっかり行き渡るように、割りばしなどでつつきながら培養土を足していきます。草丈が高くなる種類は支柱を立てておき、生育と共に支柱に誘引して倒伏を防ぎます。水やりや降雨時の泥はねによって病気が発生するのを防ぐために、表土にバークチップなどを敷いておくとよいでしょう。最後に鉢底から水が流れ出すまで、十分に水を与えます。
鉢植えで楽しんでいる場合、成長とともに根詰まりして株の勢いが衰えてくるので、1年に1度は植え替えることが大切です。植え替え前に水やりを控えて土が乾いた状態で行うと、作業がしやすくなります。鉢から株を取り出して根鉢をくずし、新しい培養土を使って植え直します。もっと大きく育てたい場合は、元の鉢よりも大きな鉢を準備し、軽く根鉢をくずす程度にして植え替えてください。
水やり

水やりの際は、株が蒸れるのを防ぐために茎葉全体にかけるのではなく、株元の地面を狙って与えてください。
真夏は、気温の高い昼間に水やりをすると、すぐに水の温度が上がり、株が弱ってしまうので、朝か夕方の涼しい時間帯に行うことが大切です。
また、真冬は、気温が低くなる夕方に水を与えると凍結の原因になってしまうので、十分に気温が上がった真昼に行いましょう。
【地植え】
根付いた後は、地植えの場合は下から水が上がってくるのでほとんど不要です。ただし、雨が降らない日が続くようなら水やりをして補います。
【鉢植え】
日頃の水やりを忘れずに管理します。ただし、いつも湿った状態にしていると根腐れの原因になるので、与えすぎに注意。土の表面が乾いたら、鉢底から水が流れ出すまで、たっぷりと与えましょう。茎葉がしおれそうにだらんと下がっていたら、水を欲しがっているサイン。植物が発するメッセージを逃さずに、きちんとキャッチしてあげることが、枯らさないポイントです。特に開花期間中は水を欲しがるので、水切れしないように管理しましょう。また、冬は葉を落として休眠しますが、鉢内がカラカラに乾燥することのないように、適宜水やりを続けてください。
肥料

【地植え】
3〜10月までの成長期に、緩効性化成肥料を月に1度を目安に施します。
【鉢植え】
3〜10月までの成長期に、緩効性化成肥料を月に1度を目安に施します。9〜11月の開花期は、株の状態に勢いがないようであれば、液肥も与えて様子を見るとよいでしょう。
必要な作業・お手入れ

【摘心・切り戻し】
小菊や洋菊は特に、苗が幼いうちに茎の先端を切り取る「摘心」または深めに切り取る「切り戻し」を行うと、よく分枝してこんもりと茂ります。適期は4月から7月にかけて。枝葉が増えることで、花数も増えるので、ひと手間かけておくことをおすすめします。
【花がら摘み】
終わった花は早めに摘み取りましょう。まめに花がらを摘んで株まわりを清潔に保つことで、病害虫発生の抑制につながりますよ! また、いつまでも花がらを残しておくと、種をつけようとして株が消耗し、老化が早まって花数が少なくなってしまうので注意。花がらをまめに摘み取ると、次世代を残そうとして次から次に花がつき、長く咲き続けてくれます。
【刈り取り】
秋が深まると地上部を枯らして休眠するので、地際で刈り込んでおきましょう。枯れた茎葉をそのまま残しておくと病害虫の越冬地となってしまうので、株まわりをきれいにしておきます。また、晩秋からロゼット状になって冬を越す芽が出てくることがありますが、寒さに当たることで春からの成長につながるので、過保護にして室内に取り込むことのないようにしてください。
増やし方

菊は、「株分け」と「挿し芽」で増やすことができます。
【株分け】
株分け適期は3〜5月です。株を植え付けて数年が経ち、大きく育ったら株の老化が進むので、「株分け」をして若返りをはかります。株を掘り上げて数芽ずつ付けて根を切り分け、再び植え直しましょう。それらの株が再び大きく成長し、同じ姿のクローンが増えていくというわけです。
【挿し芽】
挿し芽とは、茎葉を切り取って地面に挿しておくと発根して生育を始める性質を生かして増やす方法です。植物の中には挿し芽ができないものもありますが、菊は挿し芽で増やせます。
菊の挿し芽の適期は、5〜6月です。新しく伸びた茎を2節以上つけて、切り口が斜めになるように切り取ります。採取した茎(挿し穂)は、水を張った容器に1時間ほどつけて水あげしておきましょう。その後、水の吸い上げと蒸散のバランスを取るために下葉を2〜3枚切り取ります。黒ポットを用意して新しい培養土を入れ、水で十分に湿らせておきます。培養土に穴をあけ、穴に挿し穂を挿して土を押さえてください。発根するまでは明るい日陰に置いて乾燥させないように管理します。発根後は日当たり・風通しのよい場所に移動し、十分に育ったら植えたい場所へ定植しましょう。挿し芽のメリットは、親株とまったく同じ性質を持ったクローンになることです。
注意すべき病害虫

【病気】
菊が発症しやすい病気は、白さび病や灰色かび病などです。
白さび病は、カビによる伝染性の病気です。葉の裏に白く小さな楕円形の斑点が現れます。この斑点は、やや細長くイボ状に突起するのが特徴です。症状が進むと斑点が破れ、中から粉のように細かい胞子を飛ばします。発症すると株が弱り、枯死することもあるので注意。梅雨や秋の長雨の時期に発生しやすくなります。茎葉が茂りすぎたら適宜間引いて風通しよく管理しましょう。発病した葉は見つけ次第切り取って処分し、適用のある薬剤を散布して防除します。
灰色かび病は花や葉に発生しやすく、褐色の斑点ができて灰色のカビが広がっていきます。気温が20℃ほど、かつ多湿の環境下にて発生しやすい病気です。ボトリチス病、ボト病などとも呼ばれています。風通しが悪く込み合っていたり、終わった花や枯れ葉を放置していたりすると発生しやすくなるので注意。花がらをこまめに摘み取り、茎葉が込み合っている場合は、間引いて風通しよく管理しましょう。
【害虫】
キクに発生しやすい害虫は、アブラムシ、ハダニなどです。
アブラムシは、3月頃から発生しやすくなります。2〜4mm程度の小さな虫で繁殖力が大変強く、発生すると茎葉にびっしりとついて吸汁し、株を弱らせるとともにウイルス病を媒介することにもなってしまいます。見た目もよくないので、発生初期に見つけ次第こすり落としたり、シャワーではじいたりして防除しましょう。虫が苦手な方は、スプレータイプの薬剤を散布して退治するか、植え付け時に土に混ぜ込んで防除するアブラムシ用の粒状薬剤を利用するのがおすすめです。
ハダニは、葉裏に寄生して吸汁する害虫です。体長は0.5mmほどと大変小さく、黄緑色や茶色い姿をしています。名前に「ダニ」がつきますが、クモの仲間です。高温で乾燥した環境を好み、梅雨明け以降に大発生しやすいので注意が必要。繁殖力が強く、被害が大きくなると、葉にクモの巣のような網が発生することもあります。ハダニは湿気を嫌うため、高温乾燥期には葉裏にスプレーやシャワーなどで水をかけて予防するとよいでしょう。
こまめなお世話で美しい菊を咲かせよう

菊は古くから日本人に親しまれて家庭でも栽培されてきただけに、環境に馴染みやすく放任しても育ちやすい植物です。秋に庭を華やかに彩り、切り花として飾っても花もちがよく重宝します。ぜひ庭やベランダに迎え入れてはいかがでしょうか。
Credit
文 / 3and garden

スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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