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宿根草ショップの店長が教える! 旬の宿根草「冬〜早春」オススメ5種

宿根草ショップの店長が教える! 旬の宿根草「冬〜早春」オススメ5種

Photo/Lipatova Maryna/Shutterstock.com

宿根草(しゅっこんそう)という植物のグループをご存知ですか? ガーデニングを始めたばかりの人には、初めて知るワードかもしれない宿根草。実は手間がかからなくて、とっても簡単に育つ宿根草もたくさんあります。「ガーデニングの初心者にこそ、宿根草をオススメしたい!」という「おぎはら植物園」店長の荻原範雄さんに、冬〜早春に旬の宿根草を5種ピックアップしていただきます。

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冬は宿根草の休眠期

雪が積もった庭で開花をはじめたクリスマスローズのニゲル。

この時期のガーデンの仕事といえば、枯れ葉の掃除をして一段落。緑が少なくなった庭を眺めていると、春が待ち遠しくなりますね。寒い冬の間、多くの宿根草は休眠の時期に入って、地上部の葉を落葉させて存在を隠しています。でもこれから少しずつ気温が上がり、春が近づく頃、他の草花に先駆けて一足早く姿を現してくれる宿根草の種類がいくつかあります。まだ寒さの残る中で凛と咲く花を見つけると、いっそう美しく見えるものです。

そんな待ち遠しい春の足音を感じさせ、癒しを与えてくれる冬〜早春の宿根草の中でも、初心者にも育てやすいオススメの5種類をピックアップしました。

「雪のしずく」と呼ばれる可憐な花
スノードロップ

雪の降る地方では、雪解けとともに開花します。とても可憐なその姿は、まさにその名前がぴったり。実はスノードロップには、たくさんの種類がありますが、日本で主に流通しているのは「ガランツス エルウェシー」という種類で、オオマツユキソウ(大待雪草)という和名があります。性質が丈夫で育てやすく、日本の気候にも合った種類です。

スノードロップの生育の様子
育て方のポイント

秋に球根を植えるか、早春にポット苗で入手します。寒さに強く、暑さにはやや弱いので、落葉樹の下など、夏に半日陰になる場所を選んで植え込みます。後は植えっぱなしでよく、夏に掘り上げる必要もありません。早春の花が咲き終わると、葉が大きく茂り、その後に徐々に枯れて春の終盤には休眠します。翌年の早春に芽吹くまで、長期間休眠していますので、間違って掘り起こすことがないように注意しましょう。植えた場所が気に入ると、毎年開花し、少しずつ広がるように増えていきます。

注目の新品種が次々に登場する
クリスマスローズ

クリスマスローズという名前ですが、実はクリスマス頃から開花するものはニゲル種のみで、他の多くの品種は早春から開花します。国内で最も多く流通するものはオリエンタリスという系統のハイブリッド(交配させた園芸種)なのですが、この系統以外の種類も次々に登場して人気が出ています。特に近年注目されているのは、原種の木立ち(有茎種)とニゲル種をもとに交配し、つくり出された系統で、花が横向きにたくさん咲き、庭植えで見映えがよい品種です。丸く整った端正な花形も魅力的です。原種系なので、一般的なオリエンタリスの系統よりも早い時期から咲き始めます。

ニゲル

クリスマスローズの代表的な原種で、冬から開花する早咲き。

‘アンナズレッド’

有茎種のハイブリッドで、従来にないほど濃い赤が印象的。

‘アイスブレーカーマキシー’

ニゲルと有茎種のハイブリッドで、花が横向きにたくさん咲く。

‘ピンクフロスト’

ニゲルと有茎種のハイブリッドで、鮮やかなピンク色と整った花形が魅力。

クリスマスローズの生育の様子
育て方のポイント

早春に花が咲き、晩春に花色が緑に変わっても観賞価値が続きます。切り花にしても長く楽しめ、葉は年間を通して常緑です。庭植えの場合は、あまりジメジメしていない場所を選びましょう。日陰の植物と思われがちですが、西日を避ける程度で十分育ちます。一度植えれば、ほとんど放任で構いません。

鉢植えでの栽培にも適し、人気があります。鉢植えの場合は、年に1回、少しずつ鉢を大きく植え替える「鉢増し」を行うと、リフレッシュして花つきがよくなり、株の勢いが衰えません。肥料は生育の始まる秋から冬に与えましょう。

春を告げる 美しいブルーの花
プルモナリア

国内での流通は少ないのですが、ガーデニングの本場ヨーロッパでは、古くから栽培されており、長い歴史を持つ花です。早春に咲く鮮明な青い花は他に少なく、黄色のスイセンや華やかなチューリップなどの球根類との組み合わせは、とても美しいものです。また、花後には葉が大きく展開するので、徐々に枯れてくる球根類の葉を目隠ししてくれます。

オフィシナリス

ヨーロッパに自生する原種。背が高くなり、花がたくさん咲く。

‘ダイアナクレア’

葉に銀色の模様(斑)が広く入り、花後も葉の観賞性が高い。

‘ブルーエンサイン’

濃い青花が美しい人気品種。花つきがよく、姿もコンパクト。

プルモナリアの生育の様子
育て方のポイント

春に花茎を立ち上げて一斉に開花します。花が終わる頃になると、葉が大きく広がり、カラーリーフとして楽しめます。冬になると寒冷地では葉が枯れて越冬しますが、温度がマイナスにならない地域では、ある程度葉を残したまま越冬します。

春は十分に日が当たると花が多く咲き、夏はやや日陰になると葉がきれいに楽しめるため、そのような場所を選んで植えます。落葉樹の下などが最適です。栄養の多い土壌で、水はけのよい場所を好みますので、腐葉土などを混ぜて植えましょう。極端に乾いていたり湿っていたりすると、真夏に枯れてしまうことがありますので注意しましょう。場所さえ慎重に選べば、あとは放任で大丈夫です。

春らしい、明るい色が美しい
原種のプリムラ

和名はサクラソウ。多くの種類が桜の開花の頃から咲き始めます。園芸店では「ジュリアン」などの鉢物が冬から流通しますが、庭植え向きの原種系プリムラは、冬は休眠し早春からゆっくりと咲き始めます。

代表的な原種のプリムラ・ブルガリスはヨーロッパに自生しており、現地では春を告げる目印のような存在です。その明るい黄色の花は「プリムローズイエロー」という色の名前になるほどポピュラーで親しまれています(プリムローズはプリムラ・ブルガリスの英名)。

ブルガリス

春の早い時期から咲く。

カーニバル・プリムローズ

バルカン半島に自生するピンクのブルガリス。

デンティキュラータ(玉咲きサクラソウ)

ボール状に開花する早咲きの原種。

ベリス

別名はカウスリップ。早咲きの原種。石鹸のようなよい香りを持つ。

プリムラの生育の様子
育て方のポイント

寒さ、暑さに強いので、水はけがよい日向に植えれば、あとは放任で育ちます。丈夫な性質ですが、高温時の多湿に弱いので、湿気の多い場所は避けて植えましょう。夏は午後から日が遮られる場所に植えると、葉も周年きれいに楽しめます。生育が優れないときに軽く肥料を与える程度で、特に手入れは必要ありません。

スミレの素朴な美しさを残す
原種系のビオラ

日本では可憐なスミレが春を知らせますが、海外にも多くの原種スミレが自生しています。スミレの学名が「ビオラ」なのですが、ビオラといえば園芸用の一年草を想像します。この一年草のビオラも、もともとは海外の原種スミレをもとに改良されたものです。原種系のビオラは、いわば改良前の姿なので、素朴な美しさがあります。性質も丈夫なので、上手に育てれば、多くは夏も冬も越せます。

コルヌタ

ツノスミレとも呼ばれるユニークな花形が特徴。春から夏まで長期間咲きます。

エラチオール

立ち上がるように40㎝ほどに伸びて咲く、背の高い原種。

コルシカ

ツタンカーメンとも呼ばれる花の大きな原種。コルシカ島原産で、暑さにも耐える。

ラブラドリカ

ブロンズ色のハート形の葉も観賞できる原種。スミレらしい可憐な紫の花で花期も長い。

スミレの生育の様子
育て方のポイント

一年草のビオラのように秋~冬はあまり咲きませんが、早春から一斉に開花します。真夏になると花は休みますが、葉が茂ってきます。夏の高温時に多湿になると弱りやすいので、水はけのよい用土で育ててください。鉢植えの場合は、暑さを避け、風通しのよい半日陰に移しましょう。上手に夏越しさせると、秋から再び生育を始めます。冬の寒さに当たることで開花しますので、冬は戸外で越冬させましょう。

生育がゆっくりなので、寄せ植えや小さいスペースのグラウンドカバーに使ってみてはいかがでしょうか。

最後に

冬〜早春の宿根草は丈夫なので、ときどき街中でも見かけることがあります。また、観光ガーデンや見本園のある園芸店などでもよく育てられているので、まずはその愛らしさを見に出かけることをオススメします。植物の名前を覚えることもガーデニングの第一歩。ぜひ、今年は宿根草の名前を一つずつ覚えてみませんか?

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