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【バラの庭づくり】庭植えバラのペアリングとコンパニオン・プランツ<後編>
単体でも美しいバラですが、ほかのバラや草花と組み合わせたら魅力も倍増! さて、バラの魅力を引き立てるものとは、どんな植物か。ローズアドバイザーの経歴を持ち、数々の文献に触れてきた田中敏夫さんが、バラと合わせて楽しみたい、おすすめのコンパニオン・プランツの組み合わせ実例について、合わせるバラのタイプや活躍シーン、季節ごとにたっぷりとご紹介します。
バラとコンパニオン・プランツとの組み合わせを愛でる~はじめに~
前回は、品種の異なるバラ同士を庭植えして楽しむペアリングの例をいくつかおすすめしました。今回は、バラと一緒に植栽すると互いに引き立て合うコンパニオン・プランツを25種ご紹介します。ぜひ庭づくりの参考にしていただければと思います。
コンパニオン・プランツを考えることは、庭づくり全体を考えることとほとんど同じ。とても大きなテーマなので、簡単に語り尽くすことはできません。ここでは、前回ペアリングしたバラを想定しながら、バラを主体とした庭づくりのための組み合わせを考えてみました。
コンパニオン・プランツの選定は、次のように整理して進めました。
- 花がない季節でも庭を楽しめるように、灌木・草本のリーフプランツを選び、バラとのグループを作ってそれをベースとする
- そこへ、長く咲き、手入れが楽な草花を加える
- さらに、季節を感じさせる草花をフォーカル・ポイントとする
それでは、それぞれのケースにおすすめの実際の組み合わせ例をご紹介していきましょう。
A. バラとリーフプランツとのグループ作り
まず、バラの株サイズに合わせ、リーフプランツを選びました。サンプル①は中くらいのサイズとなるグループ、②は①より少し大きな株立ちとなる組み合わせ、そして③ではランブラーとの大株同士の組み合わせです。
サンプル①~‘レイニー・ブルー’と‘ゴールデン・ボーダー’に合わせる
‘レイニー・ブルー’はクライマーですが、高さはそれほど出ず、比較的扱いやすいサイズ感です。‘ゴールデン・ボーダー’は横広がりする修景バラです。選んだリーフプランツは、次のとおり。
シルバー:アルテミシア ‘ポウイス・キャッスル’ or アルテミシア・ルドビシアナ
ブロンズ:ペンステモン ‘ハスカーレッド’ or ‘ダークタワー’ or ストラビランテス ‘ブルネッティー’
ライム:羽衣ジャスミン ‘フィオサンライズ’ or 雲南オウバイ
斑入りなど:ツルバギア ‘シルバーレース’ or ロータス ‘ブリムストーン’
アルテミシア‘ポウイス・キャッスル’
アルテミシア ‘ポウイス・キャッスル’は、イギリスのポウイス城の庭園で発見(育種?)されたヨモギの仲間です。ハーブとして利用されるニガヨモギからの選別種または交配種だと思われますが、ニガヨモギに比べ葉色はよりシルバーを帯び、また小さくまとまるためとても利用しやすいリーフプランツです。ヨモギの仲間特有の防虫効果も期待できます。
同属のアサギリソウのほうがポピュラーかと思いますが、盛夏の直射日光に弱い、冬季に地上部が枯れこむなどの難点があるので、‘ポウイス・キャッスル’のほうが利用範囲が広いように思います。立ち性でよりシルバー・グレー気味のルドビシアナや、広葉の‘モリスストレイン’などを使っても楽しいでしょう。
ペンステモン ‘ハスカーレッド’
ペンステモン‘ハスカーレッド’は、東京などの暖地では冬季常緑であることが多いようですが、春になると古い葉を押し出すように美しいブロンズの新芽が芽吹き、5月にはバラの開花に合わせるように淡いピンクに花開きます。夏に色が褪せて濁った緑となりますが、秋にはパープルに近いブロンズ葉に戻り、一年を通して庭を飾ってくれる優れた宿根草です。
さらに、濃色の葉色となる’ダークタワーズ’でも同じ効果が得られると思います。
羽衣ジャスミン‘フィオサンライズ’
左のライム葉が羽衣ジャスミン‘フィオサンライズ’です。一般的な緑葉または斑入り葉の羽衣ジャスミンは暖地では大株になりがちですが、この‘フィオサンライズ’は草丈200cmほどとそれほど大株にはならず、扱いやすいサイズです。つる植物ですが、絡み方もゆるやかで、葉色も春の新芽は少しピンクがかった明るいライム、夏にはやや緑がかり、秋には枯れ色がかったイエローへと変化するなど、年間を通じて楽しませてくれます。ライムのカラーリーフとして真っ先におすすめしたい品種です。なお、冬季に落葉することもあるようですが、東京などの暖地で観察している範囲では常緑でした。
写真は、ブドウ‘デラウェア’、ルブス‘サンシャインスプレーダー’との組み合わせの例です。
ツルバギア‘シルバーレース’
ツルバギア・ビオラセアはアガパンサスと同様、南アフリカ原産の小さな塊状の球根植物。東京などの暖地では冬季でも落葉せず、適温だと花茎を伸ばして藤色の愛らしい花を咲かせます。‘シルバーレース’はビオラセアの直葉の縁が白く色抜けする美しい斑入り葉種です。
写真左が‘シルバーレース’、奥にティーツリーとノブドウのライム葉種、横に斑入りミントブッシュ、手前にエケベリアの組み合わせです。
サンプル②~‘ヘーベス・リップ’と‘セント・ニコラス’との組み合わせ
‘ヘーベス・リップ’と‘セント・ニコラス’は、ともに高さ200cmを超えるシュラブ。いかにもオールドローズらしい、たおやかな枝ぶりが魅力です。①の‘レイニー・ブルー’と‘ゴールデン・ボーダー’よりも大株となるコンパニオン・プランツを選んでみました。
シルバー:ツリージャーマンダー or ウエストリンギア‘スモーキー’
ブロンズ:アメリカ・テマリシモツケ‘ディアボロ’ or ‘リトル・デビル’ or 紅メギ‘ローズグロー’
ライム:プリベット‘レモン&ライム’ or トサミズキ‘スプリングゴールド’
斑入りなど:ユーパトリウム‘ピンクフロスト’ or アメリカナンテン‘トリカラー’
ツリージャーマンダー
ツリージャーマンダーは横張りする性質が強く、また、剪定を繰り返すとよく分枝し、こんもりとしたブッシュになります。常緑のシルバーリーフとしてはもちろんのこと、バラの開花の季節には淡いブルーの花も楽しめ、とても利用価値の高いコンパニオン・プランツです。
アメリカ・テマリシモツケ‘ディアボロ’&シマグミ
画像真ん中が‘ディアボロ’、左はシルバーリーフが美しいシマグミです。ともに高さ200cmほどになる、優雅にアーチングする枝ぶりなので、シュラブ・ローズのペアリングばかりではなく、後で述べるランブラーのペアリングにも使える組み合わせです。2品種とも暖地では冬季でも常緑なので、とても利用しやすい組み合わせだと思っています。
プリベット‘レモン&ライム’
濃い緑葉、斑入り葉など多くの園芸種があるプリベットですが、品種によっては夏の高温多湿が苦手なものもあります。’レモン&ライム’は成長は遅いですが丈夫で、高さ200cmにも達する灌木です。東京などの暖地では季節による葉色の変化も少なく、冬季も葉を落とさない、とても信頼できるリーフプランツです。
ユーパトリウム‘ピンクフロスト’
画像は開花前のユーパトリウム ‘ピンクフロスト’。花のない季節でも斑入り葉がとても魅力的です。株元のピンク花はアキレアの矮性種、奥の白花はオルラヤ・グランディフローラです。
サンプル③~‘フランソワ・ジュランヴィル’と‘アルベリック・バルビエ’
フランスのバルビエ兄弟が育種した‘フランソワ・ジュランヴィル’と‘アルベリック・バルビエ’は、ともに500cmを超えるランブラーとなります。大きなスペースが求められる両品種ですが、コンパニオン・プランツも大株となるものを植栽するとバランスがとりやすいでしょう。
シルバー:シマグミor ロシアン・オリーブ or 糸ラン
ブロンズ:サンブカス・ギニア‘ブラック・レース’ or アゴニス‘ブラックテール’
ライム:ブッドレア‘ライム’ or サンブカス・ギニア‘ゴールデンタワー’
斑入りなど:チョウジソウor ギンバイカ‘バリエガータ’
シマグミ
シマグミは名前の通りグミの仲間です。細めで優雅にアーチングする枝ぶりが魅力です。よく見かける緑葉のアキグミは冬季に落葉しますが、シマグミは暖地では常緑です。秋には暗色の赤い実がなりますが、あまり食用には利用されていません。
西洋ニワトコ‘ブラック・レース’
一般種の西洋ニワトコは500㎝を超えるような大株となってしまいますが、この‘ブラック・レース’は高さ200~300㎝にとどまり、使いやすいサイズです。冬季は落葉しますが、春や秋にはパープリッシュな濃いブラウン葉となり、バラが開花する時期には淡いピンクの小さな花が開いた傘のように開花する、散形花序の花を付けます。
盛夏の直射日光にさらされると葉色が失せてしまうため、半日陰などへ植えこむのがおすすめです。
ブッドレア
ブッドレアは花色にピンク、ブルー、白、パープルと変化が多く、また葉色もライム、シルバーなど選択の幅が広いのが魅力です。従来種は300cm以上になることが多いのですが、最近は‘シルバー・アニバーサリー’など、高さ100cmに満たない矮性種も見られるようになりました。
チョウジソウ
チョウジソウは細めの葉がこんもりと高さ60cmほどに茂る美しい宿根草です。斑入り葉ではありませんが、秋に見事な黄紅葉が見られます。バラの開花期にスカイブルーの小花を咲かせるのも魅力です。
日本にも自生していて山野草として人気がありますが、アメリカ産の細葉チョウジソウも草姿、秋の黄葉を楽しむことができ、おすすめです。
B. 花の開花期間が長く、かつ手入れが楽な草花
バラの開花の前、あるいは開花後は、華やかだった庭も寂しくなりがちです。春から秋にかけて開花期間が長い草花が庭にあると、そんなギャップをある程度埋めることができます。たくさんご紹介したいところですが、今回は3つだけセレクト。
バーベナ・ボナリエンシスor バーベナ ‘メテオールシャワー’(PW)
バーベナには多くの園芸種がありますが、バーベナ・ボナリエンシスは100cmほどになる大型種で、三尺バーベナと呼ばれることのほうが多いと思います。ちなみに三尺は約100cmを表します。8月の盛夏を除き、5月から10月までずっと咲き続けます。植栽の中から花茎を立ち上がらせる景色は、自然風の庭ではおなじみの光景となりました。丈夫なだけではなく、こぼれ種でもよく増えるので、とても経済的で便利な草花でもあります。
最近販売されるようになったPW(Proven Winners)の‘メテオールシャワー’はボナリエンシスの茎を太めに、草丈が70cmほどに収まるように改良を加えた品種だと思います。背が高くなりすぎる、やっぱり倒れるといった点に苦労されている人には朗報ですね。
高性ジニア ‘シンデレラ’など
ジニアは一年草ですが、百日草と呼ばれるとおり、6月から10月まで休むことなく開花してくれます。主に草丈20cmほどの矮性種が出回っていますが、60cmほどになる高性種も長く咲く性質はそのままなので、とても使いやすいです。なお、花の少ない盛夏でも咲き続けてくれる一方、日照に恵まれないと花芽がつきにくいという性質もあります。
ルドベキア‘タカオ’
ます。気に入った品種をお楽しみいただくのが一番だと思いますが、多くの園芸種の開花時期は初夏からの2カ月ほど。‘タカオ’は他の園芸種より遅れて咲き始め、東京など暖地では開花は7月からとなります。7月にはほかの園芸種の後を追うように花開き、10月までと長く楽しめるため、庭の花を咲き継がせたい場合に効果的です。さらに、こぼれ種でもよく増えるという優れた性質があります。
C. 季節を感じさせる草花
季節を感じさせる草花は、比較的容易に入手できるものだけでも数千を超えます。そうした季節を彩る球根、多年草、一年草の中から、お好みで選んでいただければと思います。
ここでは、植栽してみてよかったと感じている草花を季節ごとに数点だけ挙げることにしました。膨大な品種群を探索しながら、選び、播き、あるいは苗を入手し、育て、花咲く姿を楽しむことは、庭づくりの醍醐味だと思います。どうぞ、お楽しみください。
① バラが咲く前~早春(3~4月)
Bの項でリストアップした開花期間が長い草花は、春爛漫の時期から秋または初冬まで咲くものがほとんどで、早春に花を愛でることはできません。そのギャップは、秋植えした早咲き球根などで埋めることができます。
ハナニラ
ハナニラは2月からポツポツと開花し、4月の初め頃まで花を楽しむことができます。環境が適切であれば、植えっぱなしでもよく繁殖します。また、5月から長い休眠期を過ごした後、12月には地表を這うように葉が展開するので、冬のグラウンドカバーとしても利用できます。
スノーフレーク
スノーフレークも3、4月の庭を彩る丈夫な球根です。早春に花咲くので、6月には休眠期に入り地上部が枯れこみますが、ハナニラと同様、環境が適切であれば植えっぱなしでどんどん増えていきます。
スパニッシュ・ブルーベル
スノーフレークを追いかけるように4月頃からブルーの花を咲かせるのが、スパニッシュ・ブルーベルです。植えっぱなしでよく増えます。6月になると休眠期に入り、地上部がなくなるのもスノーフレークと同様です。
② バラと一緒に~春爛漫(5~6月)
オルラヤ・グランディフローラ
バラの開花と時期を合わせるように清楚に花開くのが、オルラヤ・グランディフローラです。開花期間は長いですが、高温多湿の梅雨を乗り越えるのが難しく、一年草扱いとなっています。大きな種子がよく結実し、こぼれ種でも増えますが、9月頃に播くとよく発芽します。冬越しして初夏を迎えると、群生して庭を豪華に彩ってくれます。
ポピー
5月頃から6月頃まで開花し、春を告げる花として愛されているポピーですが、やはり数多くの園芸種があります。一年草タイプが多いですが、宿根する品種もあります。
画像の品種はヨーロッパで広く見られる一年草タイプの野生種、ワイルド・ポピーと呼ばれるもの。花苗としては園芸店ではあまり出回っていないようです。種まきして増やせますが、種子はとても小さく、また、植え替えを嫌うので、直まきするとよいでしょう。
アキレア‘テラコッタ’ or ‘ピーチセダクション’
アキレアは5月から7月にかけて高さ100cmほどに成長する、庭を彩る美しい花です。ノコギリソウという別名があるように強く切れ込んだ葉も魅力的で、リーフプランツとしても利用できます。
③ バラの花後~初夏から秋(7~9月)
ベルガモット
ベルガモット(モナルダ)はバラの開花の後、6月から8月にかけて開花する宿根草です。原種はモーヴ(藤色)花ですが、もっとも流通しているのはタイマツバナとも呼ばれる鮮やかな赤花の品種です。花色はほかにピンク、白があります。
年を重ねるごとに地下茎が伸びて群落のようになっていきますが、こぼれ種でも増えるし、挿し木で増やすことも可能です。8月に枯れこんだ花はシードリングとなってオーナメントのような効果を生じます。夏には欠かせない花の一つだと思います。
アガパンサス
6月から7月、花の少ない季節に大株となり、存在感が一段と増すのが常緑性のアガパンサスです。冬季に落葉して地上部が枯れる矮性種もあって、ともに広く流通しています。花色はブルー系が主ですが、ピンク、あるいは二色咲きの品種もあります。
クロコスミア
クロコスミアは6、7月に開花する球根植物です。植えっぱなしで群落化してくるほど丈夫で、冬季には地上部はなくなりますが、春、5月頃には剣葉をどんどん展開して70cmほどになります。
8月には葉はしおれて休眠期に入ります。新しい球根は元株の横に新たに形成されることが一般的ですが、旧球の真上に新球ができることも多く、休眠期に掘り上げると串団子のようになっていることもあり、面白い性質だと思っています。
花色はオレンジのほか、鮮やかな朱色、イエローなどがあります。
④ バラの花後~晩秋から初冬(9~11月)
シュウメイギク
秋を感じさせる代表的な花の一つがシュウメイギク。盛夏に直射日光を浴び続けると葉に障害が出ることがあるので、半日陰で育てるとよいでしょう。適切な環境では地下茎を伸ばし群生するようになります。個人的には白花の高性種が好みですが、市場に出回っているのは主に八重花種です。ピンクの花も美しいです。
シミシフーガ
シミシフーガは大きく切れ込みのある濃色の葉と、春から秋にかけてポツポツと開花する白または淡いピンクの穂状の花とのコントラストが美しい宿根草です。高温多湿に弱く、半日陰に植えこまないとよいパフォーマンスを発揮できませんが、適切な場所に植えれば時に高さ150cmに達する大株になり、見応えがあります。
‘ブルネット’ ‘ピンクスパイク’ ‘クィーンオブシバ’などの園芸種はパープリッシュな銅葉を持ち、リーフプランツとしても利用できます。
Credit
文&写真(クレジット記載以外) / 田中敏夫 - ローズ・アドバイザー -
たなか・としお/2001年、バラ苗通販ショップ「
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