クルクマとウコン(ターメリック)の違いとは? それぞれの特徴や育て方のポイントも解説
5~10月に花が咲く「クルクマ」という植物をご存じですか? クルクマはスパイスとしても知られるウコン(ターメリック)の仲間です。この記事では、クルクマとウコンの違いや特徴、クルクマの育て方についてご紹介します。
目次
クルクマとウコンの関係は? どんな違いがある?
クルクマとウコンは、どちらもショウガ科ウコン属(Curcuma属)に分類され、夏に華やかな花を咲かせる多年草です。一般に、クルクマは、その中でも花を観賞するために栽培されているウコン属(=クルクマ属)の観賞用品種を広く指します。
一方、ウコンも同じショウガ科ウコン属に含まれますが、クルクマ・ロンガ(Curcuma longa)という種を指します。地下茎が肥大した塊茎を持ち、食用目的で栽培されています。塊茎は粉末状にしたり甘酢漬けにしたりとさまざまな活用方法があり、粉末状にしたものはターメリックとも呼ばれます。
つまりクルクマは主に観賞用として栽培されるウコン属の仲間のことで、ウコンはその中でも食用として栽培される、クルクマ・ロンガの別名です。
クルクマの特徴
ここでは、ウコンの仲間である観賞用のクルクマの特徴について、項目ごとに詳しく解説していきます。スパイスとして利用するウコン(ターメリック)も、同様の管理で育てることができます。
基本情報
前述のとおり、クルクマはショウガ科ウコン属(Curcuma属)の多年草。原産地は熱帯アジア、アフリカ、オーストラリアで、草丈は30~100cmになります。
園芸としての分類では、寒さに弱いため春植え球根として扱われます。直径3~4cmの球根(塊茎)から伸びた4~6本の細い根には、先端に栄養分が貯蔵された丸い球根がたくさん付いており、この丸い球根はミルクタンクとも呼ばれます。
花や葉の特徴
クルクマの開花時期は5~10月で、茎の先に上に伸びるように折り重なったトーチのような花を咲かせます。夏の暑さに強く、花が少なくなりがちな真夏にもよく生育して鮮やかな花を咲かせてくれます。
花に見える部分は苞と呼ばれる部位で、実際の花は小さく苞の内側にあり目立ちません。葉は先っぽが尖った楕円形で、4~8枚ほど束になって付きます。
クルクマの育て方のポイント6つ
色鮮やかな花が美しいクルクマは、ポイントを押さえれば家庭でも栽培を楽しむことができる植物です。
ここでは、クルクマを育てるためのポイントについて詳しくご紹介します。
1.栽培に適した環境
生育旺盛で水切れを嫌うクルクマは、鉢植えよりも地植えに向いています。日光に当てたほうが花つきがよく、株姿もまとまりやすいため、日当たりのよい場所に植えましょう。
柔らかく肥沃な土を好むので、完熟堆肥や腐葉土を3割ほど混ぜ、元肥として緩効性肥料を混ぜた土に植え付けます。
2.水やり・肥料
水やりの際は、生育期は乾燥しないよう注意が必要です。鉢植えで、夏に日当たりのよい場所で管理している場合は、毎日水やりをしましょう。地植えの場合は、夏に土の表面が乾いてきたら水やりするようにします。
肥料は、生育期には三要素(チッ素、リン酸、カリ)が等量か、リン酸成分がやや多めの化成肥料を置き肥します。また、開花期は液体肥料も併用するとよいでしょう。肥料のパッケージには「N-P-K=6-10-5」などと書かれていますが、Nはチッ素、Pはリン酸、Kはカリウムを意味します。この場合は「チッ素が6、リン酸が10、カリウムが5配合されている肥料」ということになり、リン酸分が多い配合がおすすめのクルクマ向きの肥料といえます。
3.植え付け
クルクマの植え付けの適期は4~5月中旬です。発芽体の上に4~5cm土がかかる深さまで穴を掘って植えます。あまり早く植え付けてしまうと、寒の戻りで傷んで発芽しないことがあるので、十分に気温が上がってから植えるように気をつけましょう。
寒冷紗やビニールなどの被覆資材でトンネルをかけると温度が上がり、発芽が早くなります。トンネルをかけた場合は梅雨明けまでそのままにしておき、その後取り除くようにしましょう。
4.日常のお手入れや注意点
クルクマは寒さに弱いため、秋になったら根茎を掘り上げてバーミキュライトなどに埋め、翌年植え付けるまで10℃以下にならない場所で保管しましょう。
花もちがよく、開花後も長く綺麗な姿を保つため、こまめに花がらを摘む必要はありませんが、花色が悪くなって気になるときは茎の付け根から切ります。特に注意すべき病害虫はありません。
5.増やし方
大きく育った塊茎を分けて植え付けて増やすことができます。適期は4~5月です。
根茎から伸びた先についているミルクタンクに栄養を蓄えるため、取らないように注意しながら2~3個に分け、植え付け時と同じ手順で植えます。
6.注意すべき病害虫
クルクマは丈夫ですので、夏の間は特に心配すべき病害虫はありません。
ただし、花の内部にアブラムシが付くことがあります。また、ヨトウムシやナメクジ、カタツムリの食害にあうことがあるので、見つけたらすぐに駆除しましょう。
ウコン以外のクルクマの園芸品種
クルクマの仲間には、ウコン以外にもさまざまな園芸品種があります。
ここでは、主な品種についてご紹介します。
クルクマ・シャローム
一般に園芸でクルクマというと、クルクマ・シャロームのことを指します。
学名はクルクマ・アリスマティフォリア(Curcuma alismatifolia)ですが、日本ではクルクマ・シャロームとして流通しています。草丈は60~70cmで、夏に白やピンクの大きな花を咲かせ、1カ月以上楽しめます。
クルクマ・ペティオラータ
クルクマ・ペティオラータ(Curcuma petiolata)は、クルクマ・シャロームとともに広く栽培されている種類です。
ロータス・ジンジャーとも呼ばれ、夏に白やピンクの花を咲かせます。
ウコンの主な特徴
ここからは、主に食用として栽培されるウコンについて、項目ごとに詳しくご紹介します。
基本情報
ウコンは学名ではクルクマ・ロンガ(Curcuma longa)と呼ばれます。塊茎は食用のほかに薬用や染料、香辛料として使用され、塊茎を粉末状にしたものがターメリックと呼ばれます。
草丈は50~150cmで、白い花(厳密には苞)を咲かせます。本来の花は黄色で苞の間にあり、あまり目立ちません。
種類
日本でウコンという呼び名が使われるものの中には、春ウコン・秋ウコン・紫ウコン・黒ウコンがあります。それぞれ別種で、ターメリックと呼ばれるものは秋ウコンを指します。前述のクルクマ・ロンガも秋ウコンのことです。秋ウコンは色素成分であるクルクミンを多く含みます。
ウコンに含まれる主な成分や期待できる効能
ウコンは、さまざまな料理だけでなく、生薬としても利用されてきました。
ミネラル、食物繊維、クルクミンなどが含まれており、肝機能の向上や胆汁の分泌の促進、食欲増進や血行促進、免疫力の向上や腸内環境を整えるなどの効果が期待できるとされています。
観賞価値の高いクルクマと食べられるウコン
クルクマはウコン属の植物のうち観賞目的で栽培されるものの呼び名です。一方、ウコンは食用として栽培されるクルクマ・ロンガのことを指します。
クルクマの花は鮮やかな色合いとエキゾチックな見た目が魅力で、病害虫に強く、ポイントを押さえれば育てやすい植物です。夏の暑さに負けずに花を咲かせてくれるのも嬉しいところ。ぜひご自宅でクルクマを育てて、南国のような雰囲気を作ってみてはいかがでしょうか。
Credit
文 / 3and garden
スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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