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シュウカイドウは和風の美しさが魅力の山野草! 特徴や育て方は?

シュウカイドウは和風の美しさが魅力の山野草! 特徴や育て方は?

EQRoy/Shutterstock.com

シュウカイドウは、秋に開花する楚々とした風情が魅力の草花です。野趣感を残しており、和の庭にもしっとりと馴染みます。この記事では、シュウカイドウの基本情報や特徴、詳しい育て方、よく似た植物との見分け方などについてガイドします。

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シュウカイドウとは?

江戸時代に日本にもたらされたとされるシュウカイドウ。ここでは、基本情報や特徴、品種などについてご紹介します。

基本情報

シュウカイドウ
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シュウカイドウは、シュウカイドウ科シュウカイドウ属の球根植物です。原産地は中国で、暑さや寒さに強い性質をもっています。名前の由来はカイドウに似た花を秋に咲かせるためで、漢字では「秋海棠」と書きます。草丈は40〜80cmほどで、半日陰でやや湿り気のある土壌を好む性質です。

シュウカイドウは、春から新芽を出して、生育期に入ります。初夏から秋まで開花し、冬になると地上部を枯らして休眠。越年して翌春になると再び新芽を出す……というライフサイクルを繰り返します。環境に合えば、一度植え付けると何年も芽吹きと開花を楽しめる、息の長い植物です。

花や葉の特徴

シュウカイドウ
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シュウカイドウの開花期は7月下旬〜10月中旬で、花色は白、ピンクがあり、日が差すとキラキラと光るラメのような質感が特徴です。葉のわきから花茎を伸ばし、3cm前後の小さな花を多数咲かせます。雄花と雌花があり、雌花には三角錐状の子房があるのが見分けるポイントです。

葉は10〜15cmのハート形で、明るいグリーン。中には葉裏が赤くなるタイプもあります。また、葉のわきにムカゴをつける性質があり、晩秋に採取して植えると春には芽を出します。

シュウカイドウの種類

シュウカイドウ
cery/Shutterstock.com

シュウカイドウは基本種のほかに、白い花を咲かせるシロバナシュウカイドウ(白花秋海棠)、葉裏が赤いのが特徴のウラベニシュウカイドウ(裏紅秋海棠)があります。変異の起きにくい植物のためか、園芸品種はあまり出回っていません。

シュウカイドウの育て方のポイント8つ

ここまで、シュウカイドウの基本情報や特徴、品種などについてご紹介してきました。では、ここからはガーデニングの実践編として、適した栽培環境や植え付け、水やりや施肥、気をつけたい病害虫、増やし方など、育て方について詳しく解説します。

栽培に適した環境

シュウカイドウ
ikwc_exps/Shutterstock.com

シュウカイドウは、日差しが強く当たる場所を苦手とし、半日陰で水もちのよい環境を好みます。ただし、あまりに暗い場所では、ヒョロヒョロと間のびした草姿になり、花つきも悪くなるので注意。朝のみ日が差す東側や、落葉樹の足元などチラチラと木漏れ日が差すような場所が向いています。

シュウカイドウは暑さや寒さに強い性質です。関東以西では特に寒さ対策の必要はなく、戸外で越冬できます。

土づくり

土
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【地植え】

適度に水はけ・水もちのよい環境を好みます。植え付けの約2週間前に、腐葉土や堆肥、緩効性肥料少量を混ぜ込んでよく耕し、腐食質に富んだふかふかの土壌づくりを目指しましょう。土づくりをした後にしばらく時間をおくことで、分解が進んで土が熟成し、植え付け後の根張りがよくなります。

【鉢植え】

草花用にブレンドされた、市販の培養土を利用すると手軽です。

植え付け・植え替え

ガーデニング
Vlyaks/Shutterstock.com

シュウカイドウの植え付け・植え替えの適期は、3月下旬〜4月中旬です。ただし、ほかの時期にも苗は出回っているので、花苗店などで入手したら早めに植え付けるとよいでしょう。

【地植え】

土づくりをしておいた場所に、苗の根鉢よりも一回り大きな穴を掘り、軽く根鉢をほぐして植え付けます。最後にたっぷりと水を与えましょう。複数の苗を植える場合は、30〜40cmの間隔を取ってください。

庭で育てている場合、環境に合えば植え替える必要はありません。

【鉢植え】

鉢で栽培する場合は、6〜7号の鉢を準備します。用意した鉢の底穴に鉢底ネットを敷き、軽石を1〜2段分入れてから草花用の培養土を半分くらいまで入れましょう。苗の根鉢を軽くくずし、鉢の中に仮置きして高さを決めたら、少しずつ土を入れて植え付けます。水やりの際にすぐあふれ出さないように、土の量は鉢縁から2〜3cm下の高さまでを目安にし、ウォータースペースを取っておいてください。土が鉢内までしっかり行き渡るように、割りばしなどでつつきながら培養土を足していきます。最後に、鉢底から流れ出すまで、十分に水を与えましょう。

鉢植えで楽しんでいる場合、土がやせてくるので数年に1度は植え替えることが大切です。植え替え前に水やりを控えて土が乾いた状態で行うと、作業がしやすくなります。鉢から株を取り出してみて、根が詰まっていたら、根鉢をくずして古い根などを切り取りましょう。根鉢を1/2〜1/3くらいまで小さくして、元の鉢に新しい培養土を使って植え直します。

水やり

水やり
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水やりの際は、株が蒸れるのを防ぐために茎葉全体にかけるのではなく、株元の地面を狙って与えてください。

真夏は、気温の高い昼間に水やりをすると、すぐに水がぬるま湯のようになり株が弱ってしまうので、朝か夕方の涼しい時間帯に行うことが大切です。

また、真冬は、気温が低くなる夕方に水やりをすると凍結の原因になってしまうので、十分に気温が上がった真昼に行うようにしましょう。

【地植え】

根付いた後は、地植えの場合は下から水が上がってくるのでほとんど不要です。ただし、雨が降らない日が続くようなら水やりをして補います。

【鉢植え】

日頃の水やりを忘れずに管理します。シュウカイドウは乾燥を嫌うので、水切れに注意しましょう。ただし、いつもジメジメとした状態にしておくと、根腐れの原因になってしまいます。土の表面がしっかり乾いたら、鉢底から水が流れ出すまで、たっぷりと与えてください。茎葉がしおれそうにだらんと下がっていたら、水を欲しがっているサイン。植物が発するメッセージを逃さずに、きちんとキャッチしてあげることが、枯らさないポイントです。また、冬は土が乾燥しづらくなるので、与える頻度を控えめにしつつ、適宜水やりを続けてください。

肥料

肥料
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【地植え】

強健な性質なので、植え付け時に元肥として緩効性肥料を施してあれば、追肥の必要はありません。しかし、株の生育に勢いがない場合は、液肥を与えて様子を見てください。

【鉢植え】

元肥として緩効性肥料を施した後は、毎年3月中旬〜4月中旬に緩効性化成肥料を少量、株の周囲にまきます。スコップなどで軽く耕し、土に馴染ませておきましょう。株の生育に勢いがない場合は、液肥を与えて様子を見てください。

夏越し・冬越し

【夏越し】

シュウカイドウは半日陰の環境を好み、真夏は特に直射日光にさらされると、葉焼けしたり株が弱ったりします。地植えの場合は、あらかじめ半日陰の環境に植栽することが大切。鉢栽培の場合は、風通しがよく涼しい半日陰の場所に移動して管理しましょう。

【冬越し】

シュウカイドウは、冬になると地上部の茎葉を落として休眠期に入ります。寒さには強いので、地植えの場合でも特に防寒の必要はありません。鉢栽培の場合も戸外で越冬できますが、念のため凍結しない場所で管理するとよいでしょう。

増やし方

種まきポット
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シュウカイドウは球根植物ですが、分球して増やすことはできません。しかし、ムカゴの植え付けや挿し芽などで増やすことができます。

【ムカゴの植え付け】

ムカゴと聞くと、ナガイモやジネンジョなどから採れる豆サイズの塊をイメージすることが多いでしょう。ムカゴはこれらの野菜に限らずにできる、植物の栄養繁殖器官の一つです。シュウカイドウも開花後の秋頃、葉のわきにムカゴができます。これを植えると増やすことが可能です。

シュウカイドウのムカゴを触ってみてポロリと採れたら、そのムカゴを黒ポットなどに植え付けます。その際は、深植えせずに薄く覆土する程度にしてください。春になると芽が出て成長し始めます。

【挿し芽】

挿し芽とは、茎葉を切り取って地面に挿しておくと、発根して生育を始める性質を生かして増やす方法です。植物の中には挿し芽ができないものもありますが、シュウカイドウは挿し芽で増やせます。

挿し芽の適期は、5〜6月か10月頃です。新しく伸びた茎葉を2節以上つけて切り口が斜めになるように切り取ります。採取した茎葉(挿し穂)は、水を張った容器に1時間ほどつけて水あげしておきましょう。その後、水の吸い上げと蒸散のバランスを取るために下葉を半分くらいに切り取ります。黒ポットを用意して新しい培養土を入れ、水で十分に湿らせておきます。培養土に穴をあけ、穴に挿し穂を挿して土を押さえてください。明るい日陰に置いて乾燥させないように管理し、十分に育ったら植えたい場所へ定植しましょう。挿し芽のメリットは、親株とまったく同じ性質を持ったクローンになることです。

注意すべき病害虫

アザミウマ
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【病気】

シュウカイドウは、ほとんど病気の心配はありませんが、まれに灰色かび病を発症することがあります。

灰色かび病は花や葉に発生しやすく、褐色の斑点ができて灰色のカビが広がっていきます。気温が20℃ほど、かつ多湿の環境下にて発生しやすい病気です。ボトリチス病、ボト病とも呼ばれています。風通しが悪く込み合っていたり、終わった花や枯れ葉を放置していたりすると発生しやすくなるので注意。花がらをこまめに摘み取り、茎葉が込み合っている場合は、間引いて風通しよく管理しましょう。

【害虫】

シュウカイドウは、アザミウマなどの害虫が発生することがあります。

アザミウマは花や葉につき、吸汁する害虫です。スリップスの別名を持っています。体長は1〜2mmほどで大変小さく、緑や茶色、黒の姿をした昆虫で、群生して植物を弱らせるので注意しましょう。針のような器官を葉などに差し込んで吸汁する際にウイルスを媒介するので、二次被害が発生することもあります。被害が進んだ花や葉は傷がついてかすり状になるので、異変に注意してみてください。花がらや枯れ葉、雑草などに潜みやすいので、株まわりを清潔に保っておきます。土に混ぜるタイプの粒剤を利用して防除してもよいでしょう。

シュウカイドウ科の木立性ベゴニアはどんな花? 違いは?

シュウカイドウはベゴニアの仲間で、木立性ベゴニアと見た目もよく似ています。しかし、異なる点がいくつかあるので、見分け方についてご紹介します。

木立性ベゴニアの特徴

木立性ベゴニア
Peter Turner Photography/Shutterstock.com

木立性ベゴニアは、シュウカイドウ科シュウカイドウ属の多年草です。原産地は世界の熱帯・亜熱帯地域で、寒さに弱い性質を持っています。茎が上方へ真っ直ぐに立って伸びるのが、木立性ベゴニアの特徴です。花茎を伸ばした先に枝分かれして小さな花をびっしりと咲かせる華やかさが魅力。花色は白、赤、ピンク、オレンジ、複色咲きなどがあり、シュウカイドウと同様に雄花と雌花があります。四季咲き性の品種が多く、冬も10℃以上を保てば、開花を楽しめます。冬越しできる最低温度は7℃くらいです。1mを超える大型の品種もあれば、鉢栽培できるコンパクトな品種もあります。

シュウカイドウと木立性ベゴニアの違い

シュウカイドウは、熱帯性植物の木立性ベゴニアと違って、寒さに強いのが異なる点です。また、シュウカイドウは地下に塊茎をもつ球根植物であり、ムカゴで増やすことができますが、木立性ベゴニアには塊茎がなく、ムカゴもできません。

シュウカイドウに似たカイドウはどんな花?

シュウカイドウは、カイドウに似た花を秋に咲かせるためにこの名前が付けられたとされています。似ているとされるカイドウとはどんな花でしょうか。それぞれにどんな違いがあるのかを解説していきます。

カイドウの特徴

カイドウ
tamu1500/Shutterstock.com

カイドウは、バラ科リンゴ属の落葉低木で、原産地は中国です。栽培適地は北海道南部〜九州で暑さにも寒さにも強く、放任してもよく育ちます。丈夫で育てやすいため、庭木はもちろん盆栽としても古くから親しまれてきました。自然樹高は4mほど。開花期は4月中旬〜5月上旬で、花色は淡いピンクです。花茎を長めに伸ばし、径3〜4cmほどの花が半開状態で下向きに開花。種類によって一重咲き、半八重咲きがあります。大変花つきがよく、木を埋め尽くすように咲いて見応えがあるので、人気の高い花木です。冬にはすっかり葉を落とす落葉樹で、秋には小さな赤い実がつき、紅葉も楽しめます。

シュウカイドウとカイドウの違い

シュウカイドウとカイドウは、垂れ下がって咲く花の姿や色が「少し似ているかな」というくらいで、花の形をよく見るとそれほどの類似性はありません。またシュウカイドウは球根植物に分類される草花であり、カイドウが花木に分類されていることからも分かるように、それぞれ属する科や属も異なるため、区別は簡単につけられます。

シュウカイドウで秋の庭を彩ろう

シュウカイドウ
Hiyoman/Shutterstock.com

半日陰の環境を好むシュウカイドウは、日当たりに恵まれないシェードガーデンで活躍する草花です。環境に合いさえすれば、放任してもよく育つので、ビギナーにもおすすめ。ぜひ庭やベランダで育てて、しっとりとした花の風情を楽しんではいかがでしょうか。

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