ケイトウの特徴や育て方を知ってトサカのような独特の花姿を楽しもう

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夏から秋にかけて、カラフルでふわふわと柔らかな質感の花を咲かせるケイトウ。種類が豊富で選ぶ楽しみがあります。暑さに強く、こぼれ種で増えるほど強健な性質なので、ビギナーにもおすすめ。この記事では、ケイトウの基本情報や花言葉、特徴、育て方、種類などについて、幅広くご紹介します。
目次
ケイトウの主な特徴とは
ユニークな花姿が目にとまりやすく、真夏の庭のアイキャッチになるケイトウ。ここでは、基本情報や名前の由来、花言葉、特徴などについて解説します。
基本情報

ケイトウはヒユ科ケイトウ属(セロシア属)の一年草です。原産地はインド、熱帯アジアで、暑さに強く寒さに弱い性質です。草丈は10〜200cmと大きな幅がありますが、これは矮性種から高性種まで品種が豊富に揃うため。品種によっては支柱が必要となるものや、地植えにするならある程度スペースを必要とするものなどがあるので、苗や種子を購入する際には、サイズ感などをラベルでチェックしておくことをおすすめします。
ケイトウは春夏まきの一年草で、4月下旬〜8月に種子をまいて苗が順調に生育すると、7〜11月に開花します。開花後は冬の寒さに耐えられずに枯死してしまうので、観賞期間は半年ほど。宿根草のように越年して春に再び芽を出すことはないので、株が衰えたら抜き取って整地します。
名前の由来や花言葉

ケイトウは、漢字で「鶏頭」と書きます。これは、花のフォルムがニワトリのトサカに似ているためです。英名は「Cockscomb」といい、これも雄鶏のトサカという意味です。
花言葉は、カラフルでユニークな花姿から「おしゃれ」「気取り屋」などがあります。
花の特徴

ケイトウの開花期は、7〜11月で、花色は赤、ピンク、オレンジ、黄、淡いグリーンなど。花房の先端が平たくなるタイプや扇状に広がるタイプなどフォルムも多様で、選ぶ楽しみがあります。
ケイトウの育て方のポイント8つ
ここまで、ケイトウの基本情報や名前の由来、花言葉、特徴などについてご紹介してきました。では、ここからはガーデニングの実践編として、植え付けや水やり、施肥、花がら摘みや病害虫対策など、育て方について詳しく解説します。
1.栽培環境

ケイトウは基本的には日当たりと風通しのよい場所を好みます。日当たりの悪い場所では、花つきが悪くなったり、ヒョロヒョロとか弱い茎葉が茂って草姿が乱れたりするので注意。暑さに強く、日本の気候に馴染んで放任してもよく育ちます。土壌は水はけ・水もちのよいふかふかとした状態を好みます。
2.用土

【地植え】
丈夫な性質で土壌を選びませんが、植え付ける1〜2週間前に、腐葉土や堆肥などの有機質資材、緩効性肥料を投入し、よく耕してふかふかの土を作っておくとよいでしょう。このように事前に土づくりをしておくことで、分解が進んで土が熟成し、植え付け後の根の生育がよくなります。
【鉢植え】
草花の栽培用に配合された園芸用培養土を利用すると便利です。
3.植え付け

花苗店でケイトウの苗を購入する際は、節間が短く茎ががっしりと締まって丈夫なものを選びましょう。
苗の植え付け適期は、6月下旬〜7月中旬です。ただし、開花株などそれ以外の時期に苗を入手した場合は、早めに植えたい場所に植え付けます。
【地植え】
土づくりをしておいた場所に苗よりも一回り大きな穴を掘って植え付けます。ケイトウの苗をポットから出したら、根鉢をくずさずに植え付けるのがポイントです。複数の苗を植え付ける場合は、草丈に応じて15〜30cmの間隔を取りましょう。最後に、たっぷりと水やりします。
【鉢植え】
5〜6号鉢に1株を目安に植え付けます。
用意した鉢の底穴に鉢底ネットを敷き、軽石を1〜2段分入れてから培養土を半分くらいまで入れましょう。苗を鉢に仮置きし、高さを決めたら、根鉢をくずさずに植え付けます。水やりの際にすぐあふれ出さないように、土の量は鉢縁から2〜3cm下の高さまでを目安にし、ウォータースペースを取るとよいでしょう。土が鉢内までしっかり行き渡るように、割りばしなどでつつきながら培養土を足していきます。最後に、鉢底からたっぷりと流れ出すまで、十分に水を与えましょう。寄せ植えの素材として大鉢にほかの植物と一緒に植え付けてもOKです。
4.水やり

株が蒸れるのを防ぐために、茎葉全体にかけるのではなく、株元の地面を狙って与えてください。
真夏は、気温の高い昼間に水やりをすると、すぐに水がぬるま湯のようになり株が弱ってしまうので、朝か夕方の涼しい時間帯に行うことが大切です。
【地植え】
根付いた後は、地植えの場合は下から水が上がってくるのでほとんど不要です。ただし、雨が降らずに乾燥が続くようなら、水やりをして補います。
【鉢植え】
日頃の水やりを忘れずに管理します。ただし、常にじめじめと湿った状態にすると根腐れの原因になるので禁物です。土の表面がしっかり乾いたら、鉢底から水が流れ出すまで、たっぷりと与えましょう。茎葉がしおれそうにだらんと下がっていたら、水を欲しがっているサイン。植物が発するメッセージを逃さずに、きちんとキャッチしてあげることが、枯らさないポイントです。
5.肥料

【地植え】
植え付け時に元肥として緩効性肥料を施してあれば、追肥は不要です。ただし、株に勢いがないようであれば、液肥を与えて様子を見ましょう。
【鉢植え】
苗の植え付け後、つぼみが見えるまでは10日に1度を目安に液肥を与えます。
6.日常のお手入れ

【摘心】
ケイトウは自然に分枝してこんもりとした株姿になりますが、幼苗のうちに茎の先端を切り取る「摘心」をしておくと、より分枝して茂り、株張りがよくなります。
【花がら摘み】
ケイトウは次々に花が咲くので、終わった花は早めに摘み取りましょう。まめに花がらを摘んで株まわりを清潔に保つことで、病害虫発生の抑制につながりますよ! また、いつまでも花がらを残しておくと、種をつけようとして株が消耗し、老化が早まって花数が少なくなってしまうので注意。花がらをまめに摘み取ると、次世代を残そうとして次から次に花がつき、長く咲き続けてくれます。
【支柱の設置】
草丈が高くなる高性種を栽培する場合は、早めに支柱を設置して麻ひもまたは園芸用のビニールタイで誘引しておくと、強風による倒伏を防ぐことができます。
7.注意すべき病害虫

【病気】
ケイトウの栽培で発症しやすい病気は、立ち枯れ病、灰色かび病などです。
立ち枯れ病は、根や地際の茎から感染する病気で、だんだん生育が悪くなり、葉が黄色くなって株全体に広がり、やがて腐って枯れてしまいます。発生初期に適応する殺菌剤を使って防除しましょう。病気が広がるようなら、抜き取って処分します。
灰色かび病は花や葉に発生しやすく、褐色の斑点ができて灰色のカビが広がっていきます。気温が20℃ほど、かつ多湿の環境下で発生しやすい病気で、ボトリチス病、ボト病とも呼ばれています。風通しが悪く込み合っていたり、終わった花や枯れ葉を放置していたりすると発生しやすくなるので注意。花がらをこまめに摘み取り、茎葉が込み合っている場合は、間引いて風通しよく管理しましょう。
【害虫】
ケイトウの栽培で発生しやすい害虫は、アブラムシ、ハダニなどです。
アブラムシは、3月頃から発生しやすくなります。2〜4mm程度の小さな虫で繁殖力が大変強く、発生すると茎葉にびっしりとついて吸汁し、株を弱らせるとともにウイルス病を媒介することにもなってしまいます。見た目もよくないので、発生初期に見つけ次第こすり落としたり、水ではじいたりして防除しましょう。虫が苦手な方は、スプレータイプの薬剤を散布して退治するか、植え付け時に土に混ぜ込んで防除するアブラムシ用の粒状薬剤を利用するのがおすすめです。
ハダニは、葉裏に寄生して吸汁する害虫です。体長は0.5mmほどと大変小さく、黄緑色や茶色い姿をしています。名前に「ダニ」がつきますが、クモの仲間です。高温で乾燥した環境を好み、梅雨明け以降に大発生しやすいので注意が必要。繁殖力が強く、被害が大きくなると、葉にクモの巣のような網が発生することもあります。ハダニは湿気を嫌うため、予防として高温乾燥期に葉裏にスプレーやシャワーなどで水をかけておくとよいでしょう。
8.増やし方

ケイトウは種まきで増やすことができます。種まきからスタートするメリットは、輸送などによる苗への負担がかからず、環境に馴染みやすいことです。敷地が広くて多数の苗を植えたい場合は、コストカットにもなります。
発芽適温は25℃前後で、種まきの適期は4月下旬〜8月です。種まきから栽培する場合、花壇などに種を直まきすると、幼苗のうちに病気や虫の害にあいやすく、天候不順に左右されやすいので、種まき用のトレイを使って種をまき、適した場所で管理すると、より確実です。ただし、ケイトウの根は「直根性」で、ゴボウのように太く長く伸びます。この根を傷めると後の生育が悪くなるので、移植する際は根鉢をくずさないよう丁寧に扱ってください。
種まきの際は、種まき用のトレイに市販の清潔な種まき用培養土を入れて種をまきますが、微細な種なので覆土はごく薄くしてください。種が流れ出さないように、水やりは水を浅く張った容器にトレイを入れ、底から給水します。発芽までは乾燥させないように水の管理をしましょう。1週間ほど経つと発芽し、双葉が揃います。
発芽したら日の当たる場所で管理し、数本が込み合っている部分などがあれば抜き取って間引きましょう。もったいないからといって密になっている部分をそのままにしておくと、ヒョロヒョロと間のびした徒長苗になってしまうので、ご注意を。
本葉が2〜4枚ついたら、トレイから抜いて鉢上げします。黒ポットに草花用の培養土を入れて、根を傷つけないように苗を周りの土ごと抜き取って植え付けましょう。日当たりのよい場所に置き、表土が乾いたら水やりします。多湿になると根の張りが悪くなり、徒長苗になったり、病気が発生したりするので注意。適切な水分管理をすることがポイントです。ポットに根が少し回るくらいまでを目安に育苗し、幼苗のうちに植えたい場所に定植します。
ケイトウの分類
ケイトウは、花のフォルムや性質の違いで、5つの系統に分類することができます。ここでは、それぞれの系統についてご紹介していきます。
トサカ系

ケイトウの中で最もポピュラーなのがトサカ系。文字どおりニワトリのトサカにそっくりな扇形に広がる花姿に細かいヒダがのぞく、ユニークな表情が特徴です。個体差が大きく、サイズや形もさまざまに揃います。主な品種は‘トレアドール’ ‘サカタプライド’ ‘ボンベイ’など。
クルメ(久留米)系

福岡・久留米で改良された品種です。頂部につく花がドーム状になり、細かくたっぷりとヒダが折り重なるタイプ。目を引くフォルムとともにボリューム感があり、アイキャッチとして利用できます。代表的な品種は‘アーリーローズ’など。
キルドシー系

先端につく花は円錐形で槍に似ていることから、ヤリゲイトウとも呼ばれています。ずんぐりした姿とふさふさした質感が特徴です。代表的な品種は‘八千代’など。
プルモサ系

キルドシー系に花姿が似ていますが、こちらはよりスマートで羽毛のようなフォルム。フサゲイトウ、ウモウゲイトウとも呼ばれています。主な品種は‘センチュリー’ ‘キモノ’ ‘ゴールデン・フェザー’など。
ノゲイトウ系

花穂がトサカのようにはならず、一つひとつの花が細長く、ロウソクの炎のような形をしています。花に含まれる水分が少なく、簡単にドライフラワーにすることができます。花苗店では、ケイトウとしてではなく、属名のセロシアとして出回っていることが多いようです。主な品種は‘シャロン’ ‘ピア’など。
カラフルなケイトウで庭に彩りを

夏の暑さに強く、秋まで色鮮やかな花姿を楽しめるケイトウ。種類が豊富で、花姿が多様なうえに、草丈は矮性種から高性種まで揃います。丈夫な性質で放任してもよく育つので、ビギナーにも失敗が少なくおすすめ。主役にも脇役にもなるケイトウを、さまざまな夏秋の花と組み合わせて、コーディネートを楽しんではいかがでしょうか。
Credit
文 / 3and garden

スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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