【日陰の庭】エゴポディウムはシェードガーデンやグラウンドカバーにおすすめ
カラーリーフプランツとして人気の高いエゴポディウムは、日陰でも育ち、手がかからない植物です。暗くなりがちなシェードエリアに、明るい雰囲気をプラスするのにも役立ちます。この記事ではエゴポディウムの特徴や育て方のポイント、庭での利用の仕方など、幅広くご紹介します。
目次
主な特徴
葉姿が美しいエゴポディウムは、どんな特徴をもっているのでしょうか。ここでは、エゴポディウムの基本情報や特徴、注意点などについて解説します。
基本情報
エゴポディウムは、セリ科エゴポディウム属の多年草で、別名はイワミツバです。原産地はヨーロッパで、寒さに強い性質です。生育旺盛で地下茎を伸ばして範囲を広げていき、草丈は30〜80cm。開花期は6月頃で、セリに似た白い花を咲かせます。落葉性のため、冬は落葉して地下で休眠しますが、越年して生育期を迎えると新芽を出すサイクルを繰り返す、息の長い植物です。
葉の特徴
エゴポディウムは属名で、5種類ほどが確認されていますが、ガーデニングで園芸用に流通しているのはエゴポディウム・ポダグラリアです。園芸品種として特に人気が高いのが、葉に白い斑が入る‘バリエガータ’。この斑入り葉が大変美しいため、カラーリーフとして葉を観賞する目的で利用されることが多いようです。新芽を出したばかりの頃はまだグリーンですが、成長とともにはっきりと白い斑が目立ってきます。葉の観賞期は4〜10月。葉は1枚が7小葉からなり、生育旺盛で密に茂ります。
増えすぎに注意
エゴポディウムは地下茎を伸ばして範囲を広げていく性質があります。切れた根からも芽を出すので、想定外の範囲まで侵略してしまい「増えすぎて困った」というケースもあるようです。増えすぎを防ぎたい場合は、仕切り用の園芸資材を埋めて範囲を制限するか、最初から鉢植えにするなどの対策を取っておくようにしましょう。撤去する際には、土中に根を残さないことが大切です。
食用にもなる
エゴポディウムは、食用することもできます。春に芽吹いた柔らかな新芽は、サラダやスープに利用が可能です。春以降はハーブティーにしてもOK。注意したいのは、有毒のドクゼリと草姿が似ていることです。
栽培環境
エゴポディウムの栽培にあたって、環境や土壌はどのような状態が適しているのでしょうか。ここでは、栽培環境についてガイドします。
適した場所
エゴポディウムは、日向から半日陰まで、場所を選ばずよく育ちます。ただし、あまりに暗い場所では、ヒョロヒョロと間のびした草姿になり、花つきも悪くなるので注意。また、真夏に暑くなる地域では、強い日差しによって葉焼けしやすくなるので、朝のみ日が当たる東側か、一日中チラチラと木漏れ日が差すような半日陰の涼しい場所が向いています。
また、土壌に含まれる水分量によって生育の傾向が異なるのが特徴です。乾燥しやすい日向では生育が遅く、葉が小さくたくさん展開し、コンパクトな株姿となります。反対に、水分を多く含む土壌で半日陰の環境では葉が大きくなり、旺盛に広がっていきます。
用土
【地植え】
植え付けの約2週間前に、腐葉土や堆肥、緩効性肥料を混ぜ込んで、よく耕しておきます。このように土づくりをした後にしばらく時間をおくことで、分解が進んで土が熟成し、植え付け後の根張りがよくなります。
【鉢植え】
市販の花木用培養土を利用すると手軽です。自身で用土を配合する場合は、赤玉土小粒7、腐葉土3の割合で混ぜ合わせて用いるとよいでしょう。
育て方の基本
ここまで、エゴポディウムの基本情報や特徴、栽培環境などについてご紹介しました。では、ここからはガーデニングの実践編として、植え付け、水やり、施肥、増やし方、病害虫対策など、育て方について詳しく解説します。
植え付け・植え替え
植え付け・植え替えの適期は3〜5月頃か、10月頃です。ただし、花苗店などではほかの時期にも苗が出回っているので、購入したら早めに植え付けてください。苗を購入する際は、節間が間のびしておらず、がっしりと締まって勢いのあるものを選びましょう。
【地植え】
土づくりをしておいた場所に、根鉢よりも一回り大きな穴を掘って苗を植え付けます。複数の苗を植える場合は、30〜50cmの間隔を取っておきましょう。植え付けた後に、たっぷりと水やりします。
地植えの場合は、環境に合えば植え替えの必要はなく、そのまま植えっぱなしにしてかまいません。
【鉢植え】
苗を単植するなら、購入した苗よりも1〜2回り大きな鉢を準備します。
用意した鉢の底穴に鉢底ネットを敷き、軽石を1〜2段分入れてから培養土を半分くらいまで入れましょう。苗を鉢に仮置きし、高さを決めたら軽く根鉢をほぐして植え付けます。水やりの際にすぐあふれ出さないように、土の量は鉢縁から2〜3cmほど下の高さまでを目安にし、ウォータースペースを取っておいてください。土が鉢内までしっかり行き渡るように、割りばしなどでつつきながら培養土を足していきます。最後に、鉢底からたっぷりと流れ出すまで、十分に水を与えましょう。
鉢植えで楽しんでいる場合、成長とともに根詰まりして株の勢いが衰えてくるので、2〜3年に1度は植え替えることが大切です。植え替え前に水やりを控えて土が乾いた状態で行うと、作業がしやすくなります。鉢から株を取り出して根鉢をくずし、古い土や根を落として新しい培養土を使って植え直します。もっと大きく育てたい場合は、元の鉢よりも大きな鉢を準備し、軽く根鉢をくずす程度にして植え替えてください。
水やり
水やりの際は、株が蒸れるのを防ぐために茎葉全体にかけるのではなく、株元の地面を狙って与えてください。
真夏は、気温の高い昼間に水やりすると、すぐに水がぬるま湯のようになり株が弱ってしまうので、朝か夕方の涼しい時間帯に行うことが大切です。
また、真冬は、気温が低くなる夕方に水やりすると凍結の原因になってしまうので、十分に気温が上がった真昼に行うようにしましょう。
【地植え】
根付いた後は、地植えの場合は下から水が上がってくるのでほとんど不要です。ただし、乾燥すると生育が止まり、葉が変色したり枯れたりすることもあるので、雨が降らない日が続くようなら水やりをして補います。
【鉢植え】
乾燥すると生育が止まり、葉が変色したり枯れたりすることもあるので、日頃の水やりを忘れずに管理します。ただし、いつもジメジメした状態にしておくと、根腐れの原因になってしまうので注意しましょう。土の表面がしっかり乾いたら、鉢底から水が流れ出すまでたっぷりと与えてください。茎葉がしおれそうにだらんと下がっていたら、水を欲しがっているサイン。植物が発するメッセージを逃さずに、きちんとキャッチしてあげることが、枯らさないポイントです。また、冬でもカラカラに乾燥させることのないように、控えめにしつつも適宜水やりを続けてください。
肥料
【地植え】
強健な性質なので、植え付け時に元肥として緩効性肥料を施してあれば、追肥の必要はありません。ただし、株の生育に勢いがない場合は、液肥を与えて様子を見てください。
【鉢植え】
生育期の4〜9月に、10日に1度を目安に液肥を与えると新芽が出やすく、みずみずしい株の状態をキープできます。
必要な作業
【花がら摘み】
エゴポディウムはたくさん花が咲くので、終わった花は花茎の根元から摘み取りましょう。まめに花がらを摘んで株まわりを清潔に保つことで、病害虫発生の抑制につながりますよ! また、いつまでも花がらを残しておくと、種子をつけようとして株が消耗し、老化が早まって花数が少なくなってしまうので注意。花がらをまめに摘み取ると、次世代を残そうとして次から次に花がつき、長く咲き続けてくれます。
【枯れ葉の整理】
エゴポディウムは生育中に青々とした葉を保ちますが、新陳代謝を繰り返して新しい葉を出す一方、古くなって枯れる葉もあります。主に葉を観賞する植物なので、枯れた葉を見つけたら取り除き、見栄えのよさを保ちましょう。部分的に傷んだ葉は斜めにカットして取り除けば気にならなくなります。また、葉が1枚だけ枯れるのではなく、全体の葉の先端が枯れてきたら根詰まりを起こしているかもしれません。そんなときは鉢底もチェックしてみましょう。鉢の底から根が出ていたら、鉢の中が狭くなっているサインです。早めに植え替えましょう。
【刈り込み】
生育期間中に大きく伸びすぎて、周囲との調和を乱しているようであれば、深めに刈り込みます。すると新芽が伸び出して、再び盛り返します。
増やし方
エゴポディウムは、株分け、根伏せで増やすことができます。
【株分け】
エゴポディウムの株分けの適期は3〜5月か10月頃です。
株を植え付けて数年が経ち、大きく育ったら株の老化が進むので、「株分け」をして若返りをはかります。株を掘り上げて地際から出ている枝を4〜5本ずつ付けて根を切り分け、再び植え直しましょう。それらの株が再び大きく成長し、同じ姿の株が増えていくというわけです。
【根伏せ】
エゴポディウムを根伏せにより増やす適期は、3〜5月頃か10月頃です。
まず、黒ポットに市販の草花用培養土を入れて、十分に湿らせておきましょう。エゴポディウムを掘り上げた際に、比較的太い根を採取し、5〜7cmくらいにカットします。黒ポットにカットした根を平らに置き、2cmほど土をかぶせておきます。水切れしないように管理すると、根から芽を出し、新しい個体として生育し始めます。しばらく育苗し、ポットに十分に根が回った頃に、植えたい場所に植え付けます。根伏せのメリットは、親株とまったく同じクローンになることです。
夏越し・冬越し
【夏越し】
地植えにしている場合、真夏に強い日差しが照りつける場所では葉焼けしやすくなるので、遮光ネットを張って半日陰の環境を作り出してあげるとよいでしょう。鉢植えの場合は、風通しがよく涼しい半日陰の場所へ移動して管理します。
【冬越し】
寒さには強いので、特に寒さ対策の必要はなく、戸外で越冬できます。鉢植えの場合は、カラカラに乾燥させることのないように、表土が乾いたら水やりしてください。
病害虫
【病気】
エゴポディウムは、病気の心配はほとんどありません。
【害虫】
エゴポディウムに発生しやすい害虫は、キアゲハの幼虫などです。
キアゲハはアゲハチョウ科の昆虫で、春から秋にかけて発生しやすく、主に幼虫がセリ科の植物を好んで食害します。幼虫が若いうちは黒地に白斑が入る姿で、まだ小さく見つけづらいのですが、大きくなると5㎝ほどのビッグサイズになって黒と黄緑の横縞にオレンジの斑点が散りばめられた姿を現し、ギョッとしてしまいます。若芽や葉を好み、旺盛に葉に穴をあけて一晩で被害が拡大することもあるので注意。葉に穴があいていないか裏表をチェックして、見つけ次第捕殺します。成虫は花の蜜をエサとするので、近くに花が咲く植物を植えないこともポイントです。
エゴポディウムのおすすめアレンジ
カラーリーフとして活躍するエゴポディウムは、ガーデンの随所で活躍する草花の一つです。ここでは、おすすめの取り入れ方についてご紹介します。
シェードガーデン
シェードガーデンは、ガーデニングでは日当たりに恵まれない環境下の庭を指します。エゴポディウムは半日陰の環境でよく育つので、シェードガーデンにピッタリ。特に葉に白い斑が入る‘バリエガータ’ は、庭を明るく見せる効果があります。日陰に強いカラーリーフプランツをいくつか組み合わせて植栽し、グリーンのグラデーションを作り出すのも素敵です。
グラウンドカバー
グラウンドカバーとは、這うように茂る植物を植栽して表土を覆うことをいいます。雑草防止になるほか、みずみずしい見栄えを保つメリットがあります。エゴポディウムは地下茎を伸ばして範囲を広げていくので、広い面積を埋めるグラウンドカバーとして利用するのもおすすめ。ただし、増えすぎて困るケースもあるのできちんと対策をして使いましょう。
斑入りの葉が美しいエゴポディウムで庭に彩りを
エゴポディウムは半日陰の環境に馴染みやすく、やや暗い場所もみずみずしい葉色で明るく彩ってくれます。あまり手をかけずとも旺盛に生育するので、ビギナーにもおすすめです。ぜひ庭やベランダなどに取り入れてみてはいかがでしょうか。
Credit
文 / 3and garden
スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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