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修景バラは頻繁な手入れ不要のよく咲く優秀なバラ! おすすめ品種もご紹介

Alexander Prokopenko/Shutterstock.com
「バラは手がかかりそうだから、ビギナーにとってはハードルが高そう」という先入観をもっていませんか? 現代のバラは品種改良が進み、病気に強く放任してもよく育つ品種が数多く登場しています。中でも修景バラ(ランドスケープ・ローズ)は、メンテナンスフリーといえるほどに強健なため、ビギナーにもおすすめ。この記事では、修景バラの特徴や育て方のポイント、おすすめの品種などについて詳しくご紹介します。
目次
修景バラって何?
バラは知っているけれど、「修景バラ」ってどんなバラを指すのかな? そんな疑問を持つビギナーさんは多いかもしれませんね。ここでは、修景バラの基礎知識についてご紹介します。
修景に適したバラ

「修景」という言葉は、「都市計画などで自然の美しさを損なわないように風景を整備する」という意味を持っています。そのことから、「修景バラ」をざっくり説明するならば、「公園などの公共施設や広い敷地の庭の景観を整えるのに適しているバラ」というところでしょうか。もっと具体的にいえば、フェンス仕立てや生け垣として利用したり、アーチやオベリスク、パーゴラなどにバラを仕立てて見どころにしたりと、景観を作る目的に向いているバラということになります。「ランドスケープ・ローズ」や「ローズ・ペイサージュ」と呼ばれることもあります。切り花に向く、一輪の美しさで魅了する大輪のバラというよりは、小中輪のバラが房咲きとなって爛漫と咲き誇り、広い景観の一部となって花の色彩を楽しませてくれるバラ、というと分かりやすいかもしれませんね。
修景バラに分類される基準

ひと口に「修景バラ」といっても、植物の体系学的に分類されているわけではありません。品種改良の際に、広い景色を彩るのに適したバラを目的に作出されたものもあれば、昔からある品種を「修景バラとしても利用できる」と付加価値をつけて販売されることもあります。もっといえば、あるお店では修景バラとして販売されている品種が、別のお店では修景バラとしては販売されていない、なんてことも。主観に左右されやすく、線引きが曖昧なのが修景バラというジャンルです。とにかく「広い面積を彩って魅せることができるバラ」であれば、つるバラも、半つる性も、木立ち性も、ミニバラも、修景バラということになります。
修景バラの特徴

修景バラとして利用されるのは、小〜中輪の花が咲き、枝を横に広げていくつる性や半つる性の品種がほとんどです。中には木立ち性のフロリバンダタイプや、つるを旺盛に伸ばすミニバラも用いられることがあります。
注目しておきたいのは、「修景バラ」としての利用目的で作出された品種についてです。これらは、広い面積を彩ることに特化しているため、いくつかの共通した特性があります。まず、「耐病性」に優れていること。丈夫で病気に強く成長力があり、低農薬でもたくさんの花を咲かせる強健さをもっています。多くは花つきがよいうえに、繰り返しよく咲く四季咲きです。また花が終わると、自ら花弁をパラパラと散らして汚くならず、花がら摘みの手間が省けるように配慮された品種も登場しています。
修景バラの育て方

修景バラといっても、適した環境や土壌、水やりは普通のバラと変わりません。修景バラの目的で作出された品種は、病気に強い性質をもっていますが、まったく心配がないわけではないので、春先には予防を目的に薬剤散布をしておくのもよいでしょう。また、花がら摘みをせずとも自然に花弁を落とす品種もありますが、中にはそうでない品種もあるので、花がらがいつまでも木に残ってしまう場合は、病害虫予防のため早めに摘んでください。繰り返しよく咲く四季咲きタイプは、生育期間中は定期的に肥料を与え、株の勢いを保ちます。株が大きくなりすぎた場合は、葉を落として休眠期に入る冬まで待ってから、適宜刈り込みましょう。
修景バラを作出している有名ナーセリー
修景バラの利用を目的に、品種改良をしているナーセリー(新品種を作出したり苗を生産する専門店)はたくさんあります。ここでは、優秀な修景バラをたくさん作出している、国内外の有名ナーセリーについてご紹介します。
京成バラ園芸株式会社

1950年以来、半世紀を超える歴史を持つ、日本でも老舗のバラ育種・生産会社。1967年に故・鈴木省三さんが第1号の‘聖火’を作出して以来、バラの育種を続けており、これまで数々のバラの品種コンクールの受賞歴があります。自社品種のほか、多数の海外バラ育種会社の総代理店として、日本の気候に馴染みやすいバラを選抜して生産・販売。千葉県には、モデルガーデンとしての「京成バラ園」があり、約1,600種、約1万株のバラが楽しめます。京成バラ園芸が作出した修景バラに向く品種‘金蓮歩(きんれんぽ)’は、ウェーブがかった黄色い花弁の花が房咲きになって四季を通してよく開花。うどんこ病や黒点病などにも強い性質を持っています。
メイアン社

メイアン社はフランスに本拠を置く会社で、世界中で最も有名なバラのナーセリーといえるでしょう。魅力的なバラを作出することで知られ、2023年現在までに「バラの殿堂入り」に選ばれた全14種のうち、‘ピース’、‘パパ・メイアン’、‘ボニカ’82’、‘ピエール・ドゥ・ロンサール’の4種類が同社作出のものです。特に‘ピエール・ドゥ・ロンサール’は日本でも有名で、一度は育ててみたいバラとして憧れの品種です。メイアン社のバラの特徴は、フランスらしく大変華やかで大輪のバラが多いこと、耐病性が高く非常に丈夫な性質をもっていること、飽きのこない普遍的な美しさをまとっていることなどが挙げられます。メイアン社が修景バラとして作出した品種は、‘ピンク・ドリフト’、‘リモンチェッロ’「メイディランド」シリーズ、「ノックアウト」シリーズなどです。
コルデス社

ドイツ・ハンブルク郊外にある、1887年創立のナーセリーで、育種は5世代続く老舗中の老舗。特に耐病性に優れた機能性の高いバラの作出で知られ、優美さを誇る大輪のバラ、繰り返しよく咲く中輪のバラ、修景に向く強健なバラ、切り花向けなど、オールマイティーに世へ送り出しています。‘クリムゾングローリー’や‘アンジェラ’、‘ジークフリート’、‘ガーデン・オブ・ローゼズ’、‘ノヴァーリス’など、挙げてみれば名花がずらり。中でもピュアホワイトの‘アイスバーグ’は「バラの殿堂入り」に選ばれており、日本でもよく知られているバラです。コルデス社が作出した品種のうち、修景バラに向いているのは、コロンとした花姿が愛らしいピンクの‘ポンポネッラ’、一季咲きだけれど房咲きでピンクの色の塊となって主張してくる‘ジャスミーナ’などです。
タンタウ社

タンタウ社は1906年創業で、ドイツのハンブルクを拠点にしているバラのナーセリーです。寒さが厳しいドイツの気候でも育つバラを選抜しており、耐寒性に優れ、病気にも強いものを次々と発表してきました。バラといえば赤やピンク、黄色など鮮やかな花色が主流ですが、タンタウ社では藤色や茶色など珍しい色調のバラの開発にも力を注いでおり、「侘び寂び」が好きな日本人の嗜好に沿う品種も見つかります。よく知られている品種は、強い香りを放つ深い赤の‘ゲーテローズ’、青みの強い紫色で注目を浴びた‘レイニーブルー’、ロマンチックな雰囲気の赤バラ‘ゴスペル’など。タンタウ社が作出した品種のうち、修景バラとしても利用できるのは、丸みのある中輪カップ咲きではんなりピンクの‘ハンス・ゲーネバイン’、波打つ花弁が重なりピンクとアプリコット色が混じる‘アウグスタ・ルイーゼ’などです。
おすすめの修景バラ
修景バラとしての利用を目的に作出された、優秀な品種をご紹介します。旺盛に茂って花つきがよく、病気にも強い、ビギナーにおすすめのバラたちです。
「メイディランド」シリーズ

フランスのメイアン社が修景バラとして作出したシリーズのバラです。黒点病やうどんこ病などにも強く、耐暑性・耐寒性にも優れて育てやすいので、ビギナーにぜひおすすめ。たわわな房咲きとなり、たっぷりと咲くため色の塊となって目に飛び込んできます。枝が柔らかく横に這うように伸びるので、仕立てやすいのも特徴。花つきがよく、次から次に開花するのも美点です。赤花で中央に白がのる‘キャンディア・メイディランド’、純白で半八重平咲きになる‘アルバ・メイディランド’、愛らしいラベンダーピンクで小輪丸弁咲きの‘ラベンダー・メイディランド’などがあります。
「ボニカ」シリーズ

フランスのメイアン社が作出したシリーズ。樹勢が強く、病気に強い性質で、手をかけずとも旺盛に茂るバラです。名花の誉れ高く、淡いピンクの丸弁半八重咲きの‘ボニカ’82’は「バラの殿堂入り」に選ばれています。‘チェリー・ボニカ’は赤みの強いピンクで、小中輪のカップ咲き。木立樹形で横に広がっていくタイプですが、90〜120cmくらいにまとまるので扱いやすいのも魅力の一つです。‘スカーレット・ボニカ’は燃えるような赤い花。中輪の丸弁平咲きで微香があります。枝を横に伸ばし、株張りは70〜80cmぐらいです。‘バニラ・ボニカ’は、黄色みがかった白色で、その名の通りバニラアイスクリームのような色合い。小輪の半剣弁平咲きで、繰り返しよく咲きます。つる性で株張りは1.5〜1.8mくらい。‘ロイヤル・ ボニカ’は、‘ボニカ’82’の枝変わり種で、より花色が濃く、半つる性になるのが特徴です。中輪の半剣弁高芯咲きで、株張りは1.5mくらい。特にうどんこ病に強い性質をもっています。
‘ラベンダードリーム’

オランダのインタープランツ社が作出した修景バラです。淡い紫色で、小輪の丸弁八重咲き。横張りタイプのシュラブ樹形で、樹高は90〜120cmくらいにまとまり、扱いやすい品種です。春から秋まで長く咲く四季咲きで、ほのかに香ります。暑さに強く、生命力旺盛に茂るバラです。
‘マイナーフェアー’

ドイツのコルデス社作出。目にも鮮やかな赤バラで、花径は約7cmほどです。花弁にウェーブがかかる愛らしい花姿が魅力的。四季咲きで、花つきがよく株を覆い隠すほどに開花します。横張りタイプのシュラブ樹形で、樹高は90〜120cmくらい。樹勢が強く、強健でよく茂ります。
「フラワーカーペット」シリーズ

ドイツのノアックローゼン社が作出したシリーズ。高さ60〜80cmのミニバラで、横へよく茂り、株幅は1mくらいになるため、グラウンドカバーローズとも呼ばれています。うどんこ病や黒点病などへの耐病性があるうえに、寒さに強く、マイナス10℃まで耐えるほど。小輪の丸弁平咲きで、春から秋までよく咲きます。国際的なバラの賞を25以上も受賞しており、世界中から愛されるベストセラー品種です。シリーズには、発色の美しい赤バラの‘レッド’、明るい赤バラの‘スカーレット’、インパクトのある桃色の‘ピンク’、優美なパステルピンクの‘アップルブロッサム’、輝くような黄色の‘ゴールド’、オレンジ色の‘アンバー’、眩しいほどに純白の‘ホワイト’、白地に濃いピンクの絞りが入る‘ピンクスプラッシュ’があります。
「ドリフト」シリーズ

フランスのメイアン社が修景バラとして作出した品種のシリーズ。病気に強く、春から秋まであふれるように咲く見応えのある品種群で、これまで世界中のバラに関する数々の賞を受賞してきました。‘ピンク・ドリフト’は濃いピンク色で花弁の中央が白く、黄色いしべとのコントラストも目を引きます。小輪の一重咲き。‘スイート・ドリフト’は明るいピンクの八重咲き。1枝に5〜10輪がつく房咲きになり、大変華やかです。‘ピーチ・ドリフト’はオレンジ、イエロー、アプリコット色が混じるようなニュアンスカラーのピンクが魅力。小輪の丸弁半八重咲きで、霜が降りる頃まで長く咲きます。‘アプリコット・ドリフト’は優しいサーモンピンク色で、丸弁八重咲き。開花するとボタンアイがのぞきます。‘ポップコーン・ドリフト’は咲き始めの黄色からクリームホワイトへと色が変化するのが特徴。小輪の丸弁八重咲きで、芳香もあります。‘レッド・ドリフト’は、シリーズの中でも最も小さい花を咲かせ、花径は2cmくらい。スカーレット色で、半剣弁咲き。横に広がる性質で、樹高は45cmくらいでまとまります。
修景バラで手軽に美しい庭づくりを

広い面積をバラの花色で彩ることができるのが、修景バラ。旺盛に枝葉を広げてぐんぐん成長する生命力を持ち、花数が多く華やかで、病気に強いという、ビギナー向きの三拍子が揃う優秀なバラです。庭の見せ場として重宝する修景バラを、ぜひ取り入れてみませんか?
参考文献/
『はなとやさい』(タキイ種苗)2012年6月号、2013年6、10、12月号
Credit
文 / 3and garden

スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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