初夏から秋にかけて、愛らしい星形の花を次々と咲かせるニコチアナ。夕方になると甘い香りを漂わせるのも魅力の一つです。この記事では、ニコチアナの基本情報や名前の由来・花言葉、詳しい育て方、種類について、幅広く解説します。
目次
ニコチアナの主な特徴とは
庭に個性をもたらすニコチアナは、どんな特徴をもっているのでしょうか。ここでは、ニコチアナの基本情報や名前の由来・花言葉、特徴についてご紹介します。
基本情報
ニコチアナはナス科ニコチアナ属の植物です。本来は多年草ですが日本の寒さを苦手とし、冬に枯死してしまうことが多いために、一年草として流通しています。原産地はアメリカ、オセアニア、アフリカで50種以上が確認されており、タバコの原料となるものから開花を観賞するものまで多様です。タバコの原料となるものを葉タバコ、観賞用を花タバコと呼び分けています。草丈は種類によって幅があり、30〜100cmです。
名前の由来や花言葉
ニコチアナという花名は、学名のNicotianaの読みそのもので、フランスに初めてタバコをもたらした、ジャン・ニコ氏の名前が由来となっています。
花言葉は「あなたがいれば寂しくない」「孤独な愛」などです。
花や葉の特徴
ニコチアナの開花期は5〜10月で、花つきがよく、開花期間中は次から次へとつぼみが上がります。花色は赤、ピンク、紫、グリーン、白、複色など。花のサイズは3〜5cm。基部が筒状で、先端は5裂した星形の花が開花します。夕方から芳香を漂わせ、特に白花の香りは濃厚で、ジャスミンタバコという異名もあるほど。葉は広めの楕円形で、品種によっては触るとベタベタとした粘着物質が手につくことがあります。
ニコチアナの育て方のポイント9つ
ここまで、ニコチアナの基本情報や花言葉、名前の由来、特徴などについてご紹介してきました。では、ここからはガーデニングの実践編として、植え付けや水やり、施肥、日頃の管理や気をつけたい病害虫など、育て方について詳しく解説します。
1.栽培環境
ニコチアナは日当たり・風通しのよい場所を好みます。日当たりの悪い場所では、ひょろひょろと徒長した軟弱な株になり、花つきも悪くなるので注意しましょう。また、水はけのよい環境を好むので、水はけの悪い土壌であれば、腐葉土や堆肥を多めにすき込み、10〜20cm土を盛って周囲よりも高くしておくとよいでしょう。
2.種まき
ニコチアナは、ビギナーでも種まきから育てられます。種まきからスタートするメリットは、輸送などによる苗への負担がかからず、環境に馴染みやすいことです。敷地が広くてたくさんの苗が欲しい場合には、コストカットにもなりますね。
ただし、手軽に栽培したいなら、苗の植え付けからのスタートがおすすめです。ニコチアナの苗は春から花苗店に出回り始めます。「1〜2株あれば十分だから、苗の植え付けから始めたい」という方は、後ろの「植え付け」の項に進んでください。
発芽適温は20〜25℃、種まき適期は4〜5月です。
まず、種まき用のトレイに草花用にブレンドされた市販の培養土を入れ、種子を数粒ずつ播きます。ニコチアナは「好光性種子」といって、発芽に光を必要とする性質のため、覆土はしなくてOK。浅く水を張った容器に入れて底から給水します。これはジョウロなどで上から水やりすると微細な種子が流れ出してしまうことがあるからです。発芽までは明るい半日陰で管理し、乾燥しないように適度に底から給水しましょう。
10日前後で発芽するので、その後は日当たりのよい場所で管理します。勢いがあって元気のよい苗を1株のみ残し、ほかは間引きましょう。ヒョロヒョロと伸びて弱々しい苗や、葉が虫に食われたり黄色くなっている苗などを選んで間引きます。本葉が2〜3枚ついたら黒ポットに鉢上げして育苗し、十分に育ったら花壇や鉢などの植えたい場所に植え付けます。
3. 用土
【地植え】
植え付けの約2週間前に、腐葉土や堆肥、緩効性肥料を混ぜ込んで、よく耕してください。土に肥料などを混ぜ込んだ後にしばらく時間をおくことで、分解が進んで土が熟成し、植え付け後の根張りがよくなります。
【鉢植え】
市販の草花用培養土を利用すると手軽です。
4.植え付け・植え替え
ニコチアナの植え付け・植え替えの適期は、4月下旬〜6月上旬です。ただし、ほかの時期にも苗は出回っているので、花苗店などで入手したら早めに植え付けるとよいでしょう。苗を購入する際は、節間ががっしりと締まって勢いのあるものを選びます。葉が傷んでいるものや、ヒョロヒョロと間のびしているものは避けたほうが無難です。
【地植え】
土づくりをしておいた場所に、苗の根鉢よりも一回り大きな穴を掘り、根鉢を軽くくずして植え付けます。最後にたっぷりと水を与えましょう。
一年草の場合は、開花後は衰えて枯死するので、抜き取って処分します。多年草を地植えにしている場合は、2〜3年は植えたままにしてもかまいません。しかし、大株に育って込み合ってきたら、掘り上げて株分けして植え直し、株の若返りをはかるとよいでしょう。
【鉢植え】
鉢で栽培する場合は、6〜8号の鉢を準備します。用意した鉢の底穴に鉢底ネットを敷き、軽石を1〜2段分入れてから草花用の培養土を半分くらいまで入れましょう。苗をポットから取り出して鉢の中に仮置きし、高さを決めたら、根鉢を軽くくずして植え付けます。水やりの際にすぐあふれ出すことのないように、土の量は鉢縁から2〜3cmほど下の高さまでを目安にし、ウォータースペースを取っておいてください。土が鉢内までしっかり行き渡るように、割りばしなどでつつきながら培養土を足していきます。最後に、鉢底から流れ出すまで、十分に水を与えましょう。大きな鉢にほかの草花と一緒に寄せ植えてもOKです。
一年草の場合は、開花後は衰えて枯死するので、抜き取って処分します。多年草の場合は、成長とともに根詰まりして株の勢いが衰えてくるので、1〜2年に1度は植え替えることが大切です。植え替え前に水やりを控えて土が乾いた状態で行うと、作業がしやすくなります。鉢から株を取り出して根鉢をくずし、新しい培養土を使って植え直します。もっと大きく育てたい場合は、元の鉢よりも大きな鉢を準備し、軽く根鉢をくずす程度にして植え替えてください。
5.水やり
水やりの際は、株が蒸れるのを防ぐために茎葉全体にかけるのではなく、株元の地面を狙って与えてください。
真夏は、気温の高い昼間に行うと、すぐに水の温度が上がり株が弱ってしまうので、朝か夕方の涼しい時間帯に行うことが大切です。
また、真冬は、気温が低くなる夕方に水をやると凍結の原因になってしまうので、十分に気温が上がった真昼に与えるようにしましょう。
【地植え】
根付いた後は、地植えの場合は下から水が上がってくるのでほとんど不要です。ただし、雨が降らない日が続くようなら水やりをして補います。
【鉢植え】
日頃の水やりを忘れずに管理します。ただし、いつも湿った状態にしていると根腐れの原因になるので、与えすぎに注意。土の表面が乾いたら、鉢底から水が流れ出すまで、たっぷりと与えましょう。茎葉がしおれそうにだらんと下がっていたら、水を欲しがっているサイン。植物が発するメッセージを逃さずに、きちんとキャッチしてあげることが、枯らさないポイントです。
6.肥料
【地植え・鉢植えともに】
植え付けの際に肥料を施しておきます。開花期間は、10日〜2週間に1度は液体肥料を与えて、株の勢いを保ちましょう。
7.日常のお手入れや注意点
【支柱の設置】
草丈が高くなるタイプは、早めに支柱を設置して茎を誘引しておくと、強風による倒伏を防げます。
【花がら摘み】
ニコチアナは次から次へと花が咲くので、終わった花は花茎の根元から園芸用バサミで切り取りましょう。まめに花がらを摘んで株まわりを清潔に保つことで、病害虫の抑制につながりますよ! また、いつまでも花がらを残しておくと、種子をつけようとして株が消耗し、老化が早まって花数が少なくなってしまうので注意。花がらをまめに摘み取ると、次世代を残そうとして次から次に花がつき、長く咲き続けてくれます。
8.増やし方
ニコチアナは種まきで増やせます。その場合は、開花後に種子を採取します。開花期が終わりを迎える頃に花がら摘みをやめ、熟したら種子を採取して密閉容器に入れ、種まき適期まで保管しておきましょう。ただし、交配された園芸品種の場合は、親と同じ性質になるとは限らないことに留意しましょう。
種まきの方法については、前述の「種まき」の項目を参照してください。
9.注意すべき病害虫
【病気】
ニコチアナが発症しやすい病気は、モザイク病、灰色かび病です。
モザイク病はウイルス性の病気で、アブラムシやアザミウマ、コナジラミなどの虫が媒介となって発症します。したがって、発症しやすい時期はアブラムシなどが活発に動き出す春から秋にかけて。主に花や葉に被害が発生し、モザイク模様が現れます。症状が進むとウイルスの種類によっては葉などが縮れてきたり、湾曲して変形したりし、株の生育が著しく悪くなります。治療効果のある薬剤はないので、発症したら抜き取って土ごと処分し、周囲に蔓延するのを防ぎましょう。アブラムシ対策をしておくことが、発症を抑制することにつながります。
灰色かび病は花や葉に発生しやすく、褐色の斑点ができて灰色のカビが広がっていきます。気温が20℃ほど、かつ多湿の環境下にて発生しやすい病気です。ボトリチス病、ボト病などとも呼ばれています。風通しが悪く込み合っていたり、終わった花や枯れ葉を放置していたりすると発生しやすくなるので注意。花がらをこまめに摘み取り、茎葉が込み合っている場合は、間引いて風通しよく管理しましょう。
【害虫】
ニコチアナに発生しやすい害虫は、アブラムシ、オオタバコガなどです。
アブラムシは、3月頃から発生しやすくなります。2〜4mm程度の小さな虫で繁殖力が大変強く、発生すると茎葉にびっしりとついて吸汁し、株を弱らせるとともにウイルス病を媒介することにもなってしまいます。見た目もよくないので、発生初期に見つけ次第こすり落としたり、水ではじいたりして防除しましょう。虫が苦手な方は、スプレータイプの薬剤を散布して退治するか、植え付け時に土に混ぜ込んで防除するアブラムシ用の粒状薬剤を利用するのがおすすめです。
オオタバコガは蛾の一種で、主に幼虫が植物を食い荒らして被害をもたらします。主に葉などを食害し、老齢になると体長は3.5〜4cmに到達して食欲も旺盛に。春から秋にかけて動きが活発になり、特に高温・乾燥が続くと発生しやすくなります。産卵数が多いために大量発生して被害が拡大することがあるので注意。見つけ次第捕殺するか、適用の薬剤を散布して防除します。
ニコチアナの夏越し・冬越しの方法
ニコチアナの栽培で、夏越しや冬越しの注意点についてご紹介します。
夏越しの方法
長雨に当たると花が傷みやすいので、鉢植えの場合は梅雨前に軒下などに移動すると、きれいな開花を長く楽しめます。庭植えの場合も、傷んだ花はまめに摘んで株まわりを清潔にしておきましょう。
冬越しの方法
ニコチアナは寒さに弱く、冬に枯れることが多いのですが、暖地では越年できるケースもあるようです。霜対策として、バークチップなどを株元に敷き詰めておきます。鉢植えの場合は霜のあたらない軒下などに移動するか、室内の暖かい場所で越冬させるのもよいでしょう。冬越しできなかった場合に備えて、開花後に種を採取しておくのも一案です。
ニコチアナは連作障害に注意
ニコチアナは、連作障害が起きやすい植物です。連作とは、同じ科に属する植物を同じ場所に植え続けることをいいます。連作することによって土壌バランスが悪くなって病気や生理障害が発生しやすくなり、極端に生育が悪くなる状態を連作障害といいます。前年に同じナス科の植物を植えていた場所は避けましょう。植え替える場合、地植えでは別の場所を選び、鉢植えでは新しい培養土を用意して作業します。
ニコチアナの仲間
日本でよく見かけるニコチアナは、シルベストリスやラングスドルフィーです。それぞれの特性についてご紹介します。
シルベストリス
大型で草丈は約1.5mに達します。花筒が細長く、下向きに星形の花が咲くのが特徴です。花色は白で、甘い香りを放ちます。開花期は6〜8月で、暑さに強く、真夏も花を絶やすことなく、咲き続けます。冬の寒さに弱く、寒くなる前に枯死しますが、こぼれ種で増えるほど強健です。
ラングスドルフィー
ハナタバコの原種の一つです。グリーンの花色で、シルベストリスに比べてずんぐりとした花姿で愛らしい表情を楽しめます。花つきがよく、そよ風にゆらゆらと揺れる優しい株姿はナチュラルガーデンにぴったり。草丈は60〜120cmです。
星形の可愛い花を観賞しよう
夕暮れ時から甘い香りを漂わせるニコチアナ。星形の花姿も愛らしく、たくさんの花をつけて初夏から秋まで庭を豊かに彩ってくれます。ぜひ植栽にチャレンジしてほしい、おすすめの草花です。
Credit
文 / 3and garden
スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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