【暑さに強い!】リアトリスはどんな花? 特徴や育て方のポイント・注意点を解説

Algirdas Gelazius/Shutterstock.com
花穂を長く伸ばして咲くリアトリスは、縦のラインを強調して庭に変化をつける役割を果たしてくれます。群植すると迫力のあるシーンを演出できるのも魅力の一つです。この記事では、リアトリスの基本情報や花言葉、育て方、種類など、多岐にわたってガイドします。
リアトリスの主な特徴とは
長く伸ばした花茎にびっしりと花を咲かせるリアトリスは、人気の高い草花の一つです。ここでは、基本情報や名前の由来・花言葉、花や葉の特徴について解説していきます。
基本情報

リアトリスはキク科ユリアザミ属の草花で、和名は「麒麟菊(キリンギク)」。原産地は北アメリカで、寒さや暑さに強い性質のため育てやすい植物です。冬に地上部の葉を落とす落葉性の多年草で、根が塊根状になっているため球根植物に分類されることもあるようです。草丈は40〜120cmで、花壇の中段から後段に向いています。花もちがよいので、切り花にしてインテリアに飾っても素敵です。
名前の由来や花言葉

リアトリスの名前は、ギリシア語の「leios(無毛)」と「iatros(医者)」から来ており、草姿の特徴と、薬草として用いられていたことが由来となっているようです。和名のキリンギクは、長い花穂を持つことから。
花言葉は、「燃える思い」「向上心」「長すぎた恋愛」などで、いずれもその咲き姿からイメージされたもののようです。
花や葉の特徴

リアトリスの開花期は6〜9月頃で、花色は紫、ピンク、白など。真っ直ぐに花穂を立ち上げて小さな花をびっしりとつけ、頂部から下に向かって咲き進むのが特徴的です。花のつき方によって「槍咲き」と「玉咲き」とがあります。リアトリスの葉は細長い線のような形で、放射状につきます。葉がユリに似ていることから、「ユリアザミ」と呼ばれることもあります。
リアトリスの育て方のポイント7つ
ここまで、リアトリスの基本情報や名前の由来・花言葉、特徴などについてご紹介してきました。では、ここからはガーデニングの実践編として、リアトリスに適した栽培環境や植え付け、水やりや施肥、日頃の管理、注意したい病害虫など、育て方について詳しく解説します。
栽培環境

リアトリスは日当たり、風通しのよい場所を好みます。日当たりの悪い場所では、ひょろひょろと徒長した軟弱な株になり、また花つきも悪くなるので注意しましょう。また、水はけのよい環境を好むので、水はけの悪い土壌であれば、腐葉土や堆肥を多めにすき込み、10〜20cmくらい土を盛って周囲よりも高くしておくとよいでしょう。高温多湿を嫌うため、茂りすぎているようなら適宜間引くように切り戻し、風通しをよくしておきます。
リアトリスは暑さ寒さに強いので、取り立てて季節による対策を講じる必要はありません。
リアトリスを植え付ける用土

【地植え】
植え付けの約2週間前に腐葉土や堆肥、緩効性肥料を混ぜ込んでよく耕し、有機質に富んで水はけ・水もちのよい土壌をつくります。土に肥料などを混ぜ込んだ後にしばらく時間をおくことで、分解が進んで土が熟成し、植え付け後の根張りがよくなります。
【鉢植え】
市販の草花用培養土を利用すると手軽です。
植え付け・植え替え

リアトリスの植え付け・植え替えの適期は、4〜5月頃です。ただし、植え付け適期以外にも苗は出回っているので、花苗店などで入手したら早めに植え付けるとよいでしょう。苗を購入する際は、節間ががっしりと締まって勢いのあるものを選びます。葉が傷んでいるものや、ヒョロヒョロと間のびしているものは避けた方が無難です。
【地植え】
土づくりをしておいた場所に、苗の根鉢よりも一回り大きな穴を掘って植え付けます。最後にたっぷりと水を与えましょう。
地植えにしている場合は、2~4年は植えたままにしてもかまいません。しかし、大株に育って込み合ってきたら、掘り上げて株分けして植え直し、株の若返りをはかるとよいでしょう。
【鉢植え】
鉢で栽培する場合は、6〜10号の鉢を準備します。用意した鉢の底穴に鉢底ネットを敷き、軽石を1〜2段分入れてから草花用の培養土を半分くらいまで入れましょう。リアトリスの苗をポットから取り出して鉢の中に仮置きし、高さを決めます。少しずつ土を入れて、植え付けていきましょう。水やりの際にすぐあふれ出さないように、土の量は鉢縁から2〜3cmほど下の高さまでを目安にし、ウォータースペースを取っておいてください。土が鉢内までしっかり行き渡るように、割りばしなどでつつきながら培養土を足していきます。最後に、鉢底から流れ出すまで、十分に水を与えます。
鉢植えで楽しんでいる場合、成長とともに根詰まりして株の勢いが衰えてくるので、1〜2年に1度は植え替えることが大切です。植え替え前に水やりを控えて土が乾いた状態で行うと、作業がしやすくなります。鉢から株を取り出して根鉢をくずし、新しい培養土を使って植え直します。もっと大きく育てたい場合は、元の鉢よりも大きな鉢を準備し、軽く根鉢を崩す程度にして植え替えてください。
水やり

水やりの際は、株が蒸れるのを防ぐために茎葉全体にかけるのではなく、株元の地面を狙って与えてください。
真夏に水やりする場合は、気温が上がっている昼間に行うと、すぐに水の温度が上がり株が弱ってしまうので、朝か夕方の涼しい時間帯に行うことが大切です。
また、真冬に水やりする場合は、気温が低くなる夕方に与えると凍結の原因になってしまうので、十分に気温が上がった真昼に与えるようにしましょう。
【地植え】
根付いた後は、地植えの場合は下から水が上がってくるのでほとんど不要です。ただし、雨が降らない日が続くようなら水やりをして補います。
【鉢植え】
日頃の水やりを忘れずに管理します。ただし、いつも湿った状態にしていると根腐れの原因になるので、与えすぎに注意。土の表面が乾いたら、鉢底から水が流れ出すまで、たっぷりと与えましょう。茎葉がしおれそうにだらんと下がっていたら、水を欲しがっているサイン。植物が発するメッセージを逃さずに、きちんとキャッチしてあげることが、枯らさないポイントです。また、冬でもカラカラに乾燥させることのないように、適宜水やりを続けてください。
肥料

【地植え・鉢植えともに】
植え付けた年は、強健な性質なので植え付け時に元肥として緩効性肥料を施してあれば、追肥の必要はありません。しかし、株の生育に勢いがない時などがあれば、液肥を与えて様子を見てください。
越年後は、3月と9月に緩効性化成肥料を少量、株の周囲にまきます。スコップなどで軽く耕し、土に馴染ませておきましょう。追肥の適期以外に株の生育に勢いがない時などがあれば、液肥を与えて様子を見てください。
日常のお手入れや注意点

【摘心】
槍咲きタイプは、苗が幼いうちに茎の先端を切り取る「摘心」を行うと、わき芽が発生して枝葉が増え、花数も増えるので、ひと手間かけておくことをおすすめします。
【支柱の設置】
草丈が高くなるタイプは、早めに支柱を設置して茎を誘引しておくと、強風による倒伏を防げます。
【花がら摘み】
終わった花がいつまでもついているようであれば取り除き、花穂が衰えたら、元から切り取ります。花がらを除去して株まわりを清潔に保つことで、病害虫発生の抑制につながりますよ! また、いつまでも終わった花を残しておくと、種をつけようとして株が消耗し、老化が早まって花数が少なくなってしまうので注意。花がらをまめに摘み取ると、次世代を残そうとして、長く咲き続けてくれます。
【刈り取り】
リアトリスは秋が深まると地上部を枯らして休眠するので、地際で刈り込んでおきましょう。枯れた茎葉をそのまま残しておくと病害虫の越冬地となってしまうので、株まわりをきれいにしておきます。
注意すべき病害虫

【病気】
リアトリスが発症しやすい病気は、白絹病、うどんこ病です。
白絹病はカビが原因の周囲に伝染しやすい病気です。根や茎に発生しやすく、発症初期は地際あたりに褐色の斑点が見つかります。病状が進むと株元の土に白いカビがはびこり、やがて株は枯れてしまうので注意が必要。病株を発見したら、周囲に蔓延させないためにただちに抜き取り、土ごと処分してください。土づくりの際に、水はけのよい環境に整えることが予防につながります。
うどんこ病は、カビによる伝染性の病気です。葉、新梢、つぼみに発生しやすく、表面が白く粉を吹いたような状態になり、放任するとどんどん広がるので注意。対処せずにそのままにしておくと光合成ができなくなり、やがて枯死してしまいます。窒素肥料を施しすぎたり、枝葉が繁茂しすぎて風通しが悪くなったりしていると、発病しやすくなります。うどんこ病が出たら病気の葉を摘み取って処分し、適用する殺菌剤を葉の表と裏に散布して、蔓延するのを防ぎましょう。
【害虫】
リアトリスに発生しやすい害虫は、アブラムシ、アザミウマなどです。
アブラムシは、3月頃から発生しやすくなります。2〜4mm程度の小さな虫で繁殖力が大変強く、発生すると茎葉にびっしりとついて吸汁し、株を弱らせるとともにウイルス病を媒介することにもなってしまいます。見た目もよくないので、発生初期に見つけ次第こすり落としたり、シャワーではじいたりして防除しましょう。虫が苦手な方は、スプレータイプの薬剤を散布して退治するか、植え付け時に土に混ぜ込んで防除するアブラムシ用の粒状薬剤を利用するのがおすすめです。
アザミウマは花や葉について吸汁する害虫です。スリップスの別名を持っています。体長は1〜2mmほどで大変小さく、緑や茶色、黒の姿をした昆虫です。群生して植物を弱らせるので注意しましょう。針のような器官を葉などに差し込んで吸汁する際にウイルスを媒介するので、二次被害が発生することもあります。被害が進んだ花や葉は傷がついてかすり状になって、異変が見られるのでよく観察してみてください。花がらや枯れ葉、雑草などに潜みやすいので、株まわりを清潔に保っておきます。土に混ぜるタイプの粒状薬剤を利用して防除してもよいでしょう。
リアトリスの増やし方

リアトリスは、種まきと株分けで増やすことができます。ここでは、それぞれの方法について詳しくご紹介します。
種まき
リアトリスを種まきからスタートするメリットは、輸送などによる苗への負担がかからず、環境に馴染みやすいことです。敷地が広くて多数の苗を植えたい場合は、コストカットにもなります。
リアトリスの発芽適温は20℃くらいで、種まきの適期は5〜6月頃です。種まきから栽培する場合、花壇などに種を直まきすると、幼苗のうちに病気や虫の害にあいやすく、天候不順に左右されやすいので、種まき用のトレイに清潔な市販の種まき用の培養土を使って種をまき、適した場所で管理すると、より確実です。
種まき用のトレイを準備し、市販の草花用の培養土を入れて種をまきます。覆土は種が隠れる程度が目安です。種が流れだすことのないように、水やりは水を浅く張った容器にトレイを入れ、底から給水します。発芽までは乾燥させないように水の管理をしましょう。2週間ほど経つと発芽し、双葉が揃います。
発芽したら日の当たる場所で管理し、数本が込み合っている部分などがあれば抜き取って間引きましょう。もったいないからといって密になっている部分をそのままにしておくと、ヒョロヒョロと間のびした徒長苗になってしまうので、ご注意を。
本葉が2〜4枚ついたら、トレイから抜いて鉢上げします。黒ポットに草花用の培養土を入れて、根を傷つけないように苗を周りの土ごと抜き取って植え付けましょう。日当たりのよい場所に置き、表土が乾いたら水やりして育成します。多湿になると根の張りが悪くなり、ヒョロヒョロと頼りなく伸びる徒長苗になったり、病気が発生したりするので注意。適切な水分管理をすることがポイントです。ポットに根が少し回るくらいまでを目安に育苗し、幼苗のうちに植えたい場所に定植します。年内に開花することはなく、越年後の初夏から開花します。
株分け
リアトリスの株分け適期は2〜3月頃か、開花が終わった後です。株を植え付けて数年が経ち、大きく育ったら株の老化が進むので、「株分け」をして若返りを図ります。株を掘り上げて数芽ずつつけて根を切り分け、再び植え直しましょう。それらの株が再び大きく成長し、同じ姿の株が増えていくというわけです。
リアトリスは連作障害に注意

リアトリスは、連作障害が起きやすい植物です。連作とは、同じ科に属す植物を同じ場所に植え続けることをいいます。連作障害とは、連作することによって土壌バランスが悪くなって病気や生理障害が発生しやすくなり、極端に生育が悪くなる状態をさします。そのため、前年にリアトリスと同じキク科の植物が植えられていない場所に植えることを心がけましょう。植え替える場合、庭植えでは別の場所を選び、鉢植えでは新しい培養土を用意して作業します。
リアトリスの主な品種
リアトリスは、約40種が確認されています。ここでは、主に日本でガーデニング用として流通している種類をご紹介します。
リアトリス・スピカータ

スピカータは、切り花用として流通していることが多い槍咲きタイプで、花序は15〜30cmほどになります。花色は紫、白、ピンク。草丈は40〜110cmくらいになり、迫力のあるシーンを演出することができます。
リアトリス・リグリスティリス

リグリスティリスは、花穂の頂部で球状になる玉咲きタイプで、スピカータに比べて流通量は少なめ。草丈は30〜100cmほどです。
リアトリス・スカリオサ

スカリオサは玉咲きタイプで、草丈は60〜120cmくらい。小さな花がドーム状に集まる花が長く伸びる穂にたくさんつくのが特徴的。草丈が高くなり、花姿が個性的なため目を引く存在感があります。
リアトリスを育て庭や切り花で楽しもう

リアトリスは暑さや寒さに強く、ビギナーでも育てやすい草花の一つです。ダイナミックな花穂を展開するのでガーデンの主役にもなれる存在。切り花としての人気も高く、インテリアに飾って楽しむのもおすすめです。ぜひガーデンに取り入れて、その咲き姿を愛でてはいかがでしょうか。
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