まるで綿飴のように咲く! 植えっぱなしで夏の庭を華やかに彩る宿根フロックス

Galina Bolshakova 69/Shutterstock.com
小花をボリュームたっぷりたわわに咲かせ、まるで綿飴ようにふわふわと庭を彩ってくれる宿根フロックス。近年、白、ピンク、緋色(スカーレットレッド)、ブルー、紫色、複色と多彩な花色が生み出されました。開花時期は春から夏にかけて咲く品種、夏から秋に咲く品種と幅広く庭で長く楽しめます。日本の気候にもよく合い、丈夫で手入れも簡単な宿根フロックスの新たな魅力を詳しくご紹介します。きっとあなたの庭に植えたい品種が見つかるでしょう。
宿根フロックスとは

宿根フロックスは、ハナシノブ科、クサキョウチクトウ属(Phlox フロックス属)の多年生植物。原産地は北アメリカ、北東アジア。高山帯から森林や草原地帯まで幅広く生息しています。

日本への渡来時期の詳細は不明ですが、江戸時代の書物に登場することから、その頃までには日本にやってきたことが分かります。濃いピンクの5弁の小さな花を房状に咲かせる豪華な花姿。甘い香り。江戸時代の遊郭の華、「花魁」を思わせることからか、「花魁草(オイランソウ)」と名付けられ親しまれてきました。
また、「クサキョウチクトウ」の別名もあります。小型の夾竹桃の意味。花の形、花期が似ていることから名付けられました。

真夏の花というイメージが強い植物でしたが、近年改良が進み、春咲き、夏咲き、花色も白、ピンク、赤、ブルー、絞り咲き、と多彩な展開を見せています。斑入り葉もありますから、花のない時期にも楽しめます。現在では「宿根フロックス」の名称で流通していることが多いです。

夏咲きの宿根フロックスは草丈が100cm前後に大きくなるものも多く、広い庭の中景を彩るのに最適です。小花が密集して株を覆うように咲くため、色の効果が抜群です。
宿根フロックスの品種
宿根フロックスの中で、人気の品種を春咲きタイプと夏咲きタイプに分けてご紹介します。
【春咲きタイプ】
花期は4月から6月。草丈は15cmから40cm程度。花は横に広がって咲きます。日当たりから半日陰、水はけのよい場所を好みます。花後、葉の緑は残りますが、冬には地上部は枯れ、翌年の3月に新芽を出します。
① フロックス‘ビルベーカー’

ピンク色の花が一面に広がり春らしい柔らかな風景を作ります。花がらをこまめにつむと3カ月近く花を楽しめます。
② フロックス ‘ホワイト・パヒューム’

花色は白。葉、茎が細く繊細。名前の通り芳香花をたくさん咲かせます。
③ フロックス‘クラウズ・オブ・パヒューム’

花色は淡いブルー。花期には株を覆うように花を咲かせ、よい香りを漂わせます。暑さ、寒さに強く丈夫な性質です。
④ フロックス‘モントローザ・トリカラー’

葉に白い斑が入る品種。季節によって白い斑がピンク色を帯びます。花色はブルー。花と葉の組み合わせがロマンチックで美しい。芳香花。
⑤ フロックス・ピロサ

桃色の花が可憐な品種。高温多湿を嫌うので風通しのよい場所に植えましょう。
【夏咲きタイプ】
花期は6月から9月初めまで。草丈60cmから100cm程度の比較的大型の草丈のものが多いです。
暑い中でも元気に咲く夏の代表的な宿根草で、性質が強く土質を選びません。日当たり、水はけのよい場所なら放任で毎年咲き大きくなります。乾燥には強いですが混み合ってくると、うどんこ病になりやすいので、その時は株分けをしましょう。
① フロックス‘スターファイヤー’

花色は鮮やかな赤。葉や茎が黒みを帯びて花の色を引き立てています。花茎が太く、ピラミッド状に盛り上がる豪華な花をしっかり支えている様は、夏花壇のまさに“スター”的存在です。
② フロックス‘クレオパトラ’

花は小さめですが、きれいなチェリーピンクが存在感抜群です。草丈が30cmから40cmと夏咲きタイプの中では低めの方です。
③ フロックス‘ブルー・パラダイス’

咲き始めは赤紫で、咲き進むと徐々に青く変化します。生育が早く丈夫で100cmになる大型種。1輪が4cmもある大輪花が咲きそろう姿は見事。香りも素晴らしくブルー系の中では特におすすめの品種です。
④ フロックス‘ジェイド’

可愛い丸弁の白花で、花の外側に淡いグリーンの縁取りが入ります。夏の庭に爽やかな印象をもたらしてくれます。草丈は50cm程度でコンパクト。性質が丈夫で花もちもいいです。
⑤ フロックス‘ペパーミント・ツイスター’

白地にピンクのパラソル模様が入る、お洒落で爽やかな品種。草丈は60cm程度。他の色の濃いフロックスと取り合わせてもよくマッチします。切り花としても注目されています。
⑥ フロックス‘ミスリンガード’

ウエディングドレスを連想させる純白の花です。草丈90cmほどに伸び、ボリュームのある姿は夏のホワイトガーデンに欠かせない存在です。6月から9月まで長く咲きます。
⑦ フロックス‘クレームドマント’

白い花弁の中心にピンク色のボカシが入るエレガントな花が房状に咲きます。さらにクリーム色の斑入りは花期以外もリーフプランツとして楽しめます。植栽に変化を与えてくれるおすすめの品種です。
フロックスの育て方
宿根フロックスは日本の気候に適した植物ですからあまり手をかけずに育ちます。

植え付け場所
日当たりがよく、水はけのよい場所に植え付けます。蒸れると、うどんこ病が発生する恐れがありますから、風通しのよい場所を選びましょう。
群植すると開花期は見事な景観を作ります。大きく育ちますから、株間を30cmから40cm程度とりましょう。また、品種によって草丈が異なりますので、「スターファイヤー」のような高性種は庭の後方か、もしくは中心部に植えるとよいでしょう。
植え付け時期
春は3月から5月、秋は9月から11月に植え付けます。
用土・肥料・水やり
宿根フロックスは多湿を嫌いますから、地植えの場合は植え付け時にたっぷり腐葉土をすき込み、元肥として堆肥と緩効性化成肥料を与えます。
鉢植えの場合は、市販の草花用培養土を使い、緩効性化成肥料を与えます。追肥は特に必要ありません。毎年春の発芽前に元肥と同じものを株間にすき込みます。
水やりは植え付け時にたっぷり与え、その後は土の表面が乾いたら与えるようにします。地植えは根付いたら必要ありません。宿根フロックスは基本的に乾燥には強いです。

摘心と切り戻し
草丈が15cmくらいのうちに芯を止めると脇芽がたくさん出て花つきがよくなります。花が咲き終わったら花穂の切り戻しをしてください。次々に花穂があがって長く楽しむことができます。
病害虫
6月と9、10月にうどんこ病が発生しやすいです。株間をゆったりとって、風通しをよくして予防に努めましょう。発生したら蔓延する前に、うどんこ病にかかった部分を取り去ってください。
冬越し
地上部が枯れたら株元を少し残して切り戻します。耐寒性は高いですから特に対策をしなくても冬越しできます。春3月頃、再び芽吹きます。

増やし方
株分けと根伏せで増やします。適期は春の3月から5月、秋の10月です。共に植え替え時に行います。
株分けはあまり小さく分けず、1株に5芽程度つくように分けると、その後の生育もよく元気に育ちます。
根伏せは、株を掘り上げたらまず土を洗い落とします。元気な若い根を選んで、7〜12cm程度の長さに切り取ります。根の先端部を切り落として用土の入ったポットや箱に寝かせた状態で埋めてください。水を切らさないように明るい日陰で管理し、発芽を待ちます。

宿根フロックスの魅力は、「丈夫さ」と「多彩な花色」です。あなたの庭をさらにダイナミックに、また優しく柔らかに見せたいと願う時、必ずぴったりの品種が見つかります。
そして、丈夫な宿根草ですから、一度根づいたら春から秋まで途切れることなく庭を美しく彩ってくれます。夏枯れに悩むことなく、元気でゴージャスな花が楽しめるのがうれしいですね。
宿根フロックスのもう一つの魅力は、「香り」です。品種によって様々な香りがありますから是非お気に入りの香りを見つけてください。
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