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- アイリスの育て方 夢見るような花色&丈夫でコスパ最高の球根植物
ギリシャ神話に登場する天と地の架け橋となる虹の女神「アイリス」。5月は女神の名を冠した花、アイリスが咲き出す季節です。その花色は、虹の女神がまとうドレスのごとく高貴で美しく多彩。画家ゴッホもアイリスに魅入られ何枚もの作品を残し、イギリスの名園風景にも必ず登場する花です。夢見るような繊細な花色とは裏腹に、丈夫で何年も咲き続けてくれるコスパのよい宿根草。虹の女神をあなたの庭に降臨させてみませんか。
目次
多彩な花色が虹のように美しい「アイリス」の花言葉

「アイリス」という名前は、ギリシャ神話の虹の神イリスに由来します(英名ではアイリス、仏名ではイリス)。ギリシャ神話では、イリスは虹を神格化した存在として七色に輝く衣をまとい、大きな翼を持つ美しい女神。天と地とを結ぶ使者です。アイリスの花言葉は「メッセージ」「吉報」「希望」などがあります。

その花色は、青、紫、白、黄、ピンク…。一つの花の中にいくつもの色がグラデーション状ににじんでいる様は、まさに虹の女神の衣のよう。花弁の縁が彩られるバイカラーやドラマチックなダークカラーまで多彩。花弁の縁が、ひるがえったドレスの裾のようにヒラヒラと優雅なフリル状になっているのはジャーマンアイリスで、花形が大きく特に花色のバリエーションが豊富です。魅惑的な花色があふれるアイリスは画家ゴッホも心酔し、何枚もの作品を残しています。


ゴッホはとりわけ紫と黄の補色対比に惹かれ、弟のテオへの手紙の中にもその色彩について伝えています。
一枚の方は、真黄色のきんぽうげが一面に咲いた野原で、紫の花に緑の葉の菖蒲のある溝、背景に町、数本の灰色のねこ柳、青空の帯。
1961年 岩波文庫 ヴィンセント・ファン・ゴッホ著、ボンゲル編、硲伊之助訳『ゴッホの手紙(中)テオドル宛』より


アイリスには、まさしくゴッホが惹かれた紫と黄の補色対比で構成されている花が多くあり、1輪でインパクトを残すユニークな花色も少なくありません。庭の中でもアイリスを用い、同様の色の組み合わせで花壇を構成する場合がしばしばあります。

シャープなラインと優雅な花形は庭での映えも抜群!

アイリスはその花色だけではなく、すっきりと縦に伸びる剣状の姿も美しいのが特徴です。花が終わった後にも、細くシャープな葉はオーナメンタルグラスとして活躍してくれるでしょう。草丈は40〜70cmで、他の草花とも組み合わせやすい高さです。


アヤメ、カキツバタ、ハナショウブ
アイリスは、アヤメ科アヤメ属(アイリス属)の多年草。学名はIris。原産地は北半球の温帯地域です。日本では「アヤメ」というと「アイリス・サンギニア」を指しますが、広くアヤメ属のカキツバタやハナショウブなども仲間です。
スラリとした粋な美人たちを「いずれ、アヤメかカキツバタ」と褒め称える言葉があります。どちらなのか、一見分かりにくいのですが、花弁の付け根の模様で見分けることができます。

付け根が網目状のものが「アヤメ①」、白い筋が「カキツバタ②」、黄色い筋が「ハナショウブ③」。また生育環境の違いでも、大きく、陸生(アヤメ、ジャーマンアイリス、ダッチアイリス)、水生(カキツバタ)、半乾湿地生(ハナショウブ)に分けられます。
なお、5月5日端午の節句に飾られる「ショウブ」はアヤメ科ではなく、サトイモ科です。ややこしいですが、それだけ魅力があり、古くから多くの園芸種も作出されています。
「ほととぎす 鳴くやさつきの あやめぐさ あやめも知らぬ 恋もするかな」
古今集には、読み人知らず(作者不明)として、こんな和歌が詠まれています。恋をしてあやめぐさの模様のように、どうにもならない思いの乱れに悩んでいる、といった意味でしょうか。素敵ですね。
ジャーマンアイリスの育て方
アヤメ属の植物はいずれも、寒さにも暑さにも強く、丈夫で育てやすいです。その中でも陸生でガーデンに気軽に取り入れやすく、さまざまな園芸品種があり、多彩な花色を楽しめるジャーマンアイリスの育て方をご紹介します。
花期と植え付け時期
開花は5月半ばから7月半ば。五月晴れの蒼天の下、また梅雨の雨の日にも鮮やかな花を咲かせてくれます。草丈は40〜70cm。
ジャーマンアイリスの球根(塊状の根)は、春と秋の2回販売されます。植え付けは、3月と9月下旬が適期。
植え付け場所

ジャーマンアイリスは、日当たりと風通しがよくて、水のたまらない場所を好みます。酸性土を嫌うので、植え付け前に苦土石灰をまいておきましょう。また、腐葉土を入れておくと水はけがよくなって、根張りにいい影響を与えます。
ジャーマンアイリスは、何より土が過湿になることを嫌うので、20〜30cm土を高く盛って植え付けましょう。球根の間隔は40〜50cmあけます。球根の半分が土の上に出るように、芽を上に向けて、球根を土に軽く押しつけます。
鉢植えの場合は、24cmの素焼き鉢に1球を目安に植え付けます。植え付け後は、土が湿っていれば水やりは不要です。

肥料
植え付け後1年間は肥料を与えません。肥料が多すぎると病気が発生する原因になります。2年目以降は、窒素分の少ない液肥を生育期間に3回ほど与えます。緩効性肥料を株間に与えてもいいでしょう。
病害虫
病気で注意するのは、株元が腐り、葉が枯死する軟腐病。株元に雑草が茂ると日当たりや風通しが悪く病気の発生原因になるので、清潔な環境を保つようにします。
増やし方
ジャーマンアイリスは植えっぱなしでよく増えるので、2〜3年に1度、株分けを兼ねて植え替えをします。株が元気になり、花付きもよくなります。
植え替え適期は9〜10月。清潔なナイフやハサミで、1つの株に芽が1〜3個付くように株元を切り分けます。分けた株は葉を半分くらい切り落とします。それぞれの株を、球根の背中が土から半分くらい出るように浅く植え付けてください。

品種
ジャーマンアイリスは1800年代にドイツやフランスで品種改良が進み、現在ではアメリカでさまざまな品種が作り出されています。
ひらひらした透き通る花弁が魅力的で、色も多彩。アイリスは立ち上がる上弁、垂れ下がる下弁で構成されていて、上弁と下弁が違う色の複色種、また上弁と下弁が同じ色の単色種、花弁を異なる色で縁取る覆輪種などがあります。
春と秋に開花が楽しめる二期咲き種、甘い上品な香りを漂わせる芳香種などもあり、よりどりみどり、迷うほど豊富なラインアップの中から好みの花が選べます。
カキツバタ、ハナショウブの楽しみ方

カキツバタは水生植物ですから、根元が水の中にひたっていなければなりません。鉢に植えたカキツバタを水鉢に入れることで、簡単に育てることができます。メダカなどを飼っているビオトープに入れても楽しめます。
一方、ハナショウブは水生植物ではありません。乾燥しすぎないところであれば、どんな場所でも育てられます。ただし、つぼみを持ち開花する頃は十分な水やりが必要です。乾燥すると花がきれいに開かずしぼんでしまいます。鉢植えでは、鉢受けにたっぷり水を張っておきましょう。
5月下旬から6月にかけて、各地の「花菖蒲園」でハナショウブが開花を迎えます。
明治神宮御苑内の花菖蒲田(150種1,500本)、東京都葛飾区の堀切菖蒲園(200種1,500本)などが有名ですが、日本各地にもっと規模の大きい花菖蒲園があります。お住まいの近くの花菖蒲園に、ぜひおでかけになってください。ハナショウブの美しさと同時に、伝統的な日本庭園の趣も味わえることでしょう。
Credit
文&イラスト / 二方満里子
ふたかた・まりこ/早稲田大学文学部国文科卒業。CM制作会社勤務、専業主婦を経て、現在は日本語学校教師。主に東南アジアや中国からの語学研修生に日本語を教えている。趣味はガーデニング、植物観察、フィギュアスケート観戦。
写真/3and garden(記載外)
写真(表記以外) / 3and garden

スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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