バラは、本当にたくさんの種類があって、自分好みのバラは何を基準に探せばいいか困っていませんか? バラには、花の咲き方、花の大きさ、株姿などいろいろな分類法がありますが、花の大きさについて、バラの専門家、河合伸志さんに教えていただきます。
目次
バラの花径は大きく分けて5タイプ
バラの花の花径には、これが同じ植物かと思うほど大きな差があります。また、同じ品種であっても生育状況や気温によっても大きさは変化し、全般には生育状況がよい株ほど、気温が冷涼なほど花は大きくなる傾向があります。しばしば春に買ったバラの花が夏になると小さくなってしまうことがありますが、これは夏の高い気温が原因で肥料不足等ではありません。
タイプ1 巨大輪
春の一番花の花径が概ね12~15cmを超えるようなものを、概ね巨大輪としています。株の生育状況が良好で、冷涼な気候などの条件が重なると、大きい場合は20cmを越えることもあります。巨大輪の品種は一枝に一輪の花を咲かせ、全般に株当たりの花数は少ない傾向がありますが、中には‘ホワイト・マスターピース’や‘正雪’のように花数が多く、房になって咲く品種もあります。ただしこれらの品種は側蕾の花は小さくなる傾向があり、側蕾を多数咲かせると中心の花も小さくなってしまうこともあります。思い切り大きな花を咲かせたい場合は、つぼみが小さいうちに側蕾の数を制限するとよいでしょう。
巨大輪品種をローズ・ガーデンで主役にしてしまうと、咲いている時は見事でも花数が少ないのですぐに寂しくなってしまいます。どちらかというと、アクセントとして使う方が効果的かもしれません。
‘スーザン・ハンプシャー’
半剣弁、高芯咲きの花が完全に開くと、両手の平ほど大きな花。巨大輪品種はつぼみのうちから大きく、開くとインパクトがあり、庭では抜群の存在感を発揮します。写真の‘スーザン・ハンプシャー’は、花径約15㎝の四季咲き性。1972年にフランスで発表されたハイブリッド・ティ系の品種で、香り高い。
タイプ2 大輪
春の一番花の花径が概ね9~12cm程度のものを、大輪としています。巨大輪と同様に株の生育状況が良好で、冷涼な気候などの条件が重なると、花は大きくなります。大輪の品種の多くは一枝に一輪の花を咲かせますが、中には‘マヌウ・メイアン’や‘オフィーリア’のように花数が多く、数輪の房になって咲く品種もあります。ただしこれらの品種でも側蕾の花は小さくなる傾向があり、側蕾を多数咲かせると中心の花も小さくなってしまうこともあります。大きな花を楽しみたい場合は、巨大輪と同様につぼみが小さいうちに側蕾の数を制限するとよいでしょう。
多数の花が咲くローズ・ガーデンのでも、大輪品種は存在感があり人目を引く存在です。花数は中輪や小輪品種ほど多くないので、準主役程度で使うのがオススメです。
‘ラ・フランス’
写真のバラは大輪の花を咲かせる ‘ラ・フランス’。花径約12㎝の四季咲き性。1867年にフランスで発表された世界初のハイブリッド・ティ系の品種で、この品種がモダン・ローズとオールド・ローズの分岐点になっている。ダマスク系の濃厚な香りも魅力的で、悪条件に耐えて生き残る。
タイプ3 中輪
春の一番花の花径が概ね5~10cm程度のものを、中輪としています。他と同様に株の生育状況が良好で、冷涼な気候などの条件が重なると、花は大きくなります。中輪の品種の多くは一枝に複数輪の花を咲かせ、房の大きなものでは10輪を超えるような大房で開花しますが、中には‘ショッキング・ブルー’や‘ショコラ’のように房咲きになりにくい品種もあります。前者に比べると後者の品種は房にならないため花数が少ないようにも思えますが、花枝の数が前者よりも多いため、結果的には同程度の数の花を楽しめます。
中輪系の品種は花数が多い分だけ長く楽しめることから、ローズ・ガーデンでは主役として活躍します。
‘イングリッド’
花径10cmほどの鮮やかな色彩の花を数輪の房で咲かせる。花つきがよく、年間を通して繰り返し開花し、多数の花を楽しめる。コンパクトでまとまりのよい株に成育するミニ・フローラ系。2005年にカナダで発表された品種。
タイプ4 小輪
春の一番花の花径が概ね2~6cm程度のものを、小輪としています。他と同様に株の生育状況が良好で、冷涼な気候などの条件が重なると、花は大きくなります。小輪の品種は一枝に複数輪の花を咲かせ、房の大きなものでは20輪を超えるような大房で開花します。大房のものは房がブドウのように円錐状のものと、中心の花と側蕾の高さが揃うスプレー状のものがあります。
中輪系と同様に花数が多く長く楽しめることから、ローズ・ガーデンでは主役として活躍します。
‘風花火’ (かぜはなび)
花径3㎝前後の小ぶりな花。数輪から円錐状の大房で多数の花を咲かせる。四季咲き性のシュラブ系の品種で、こんもりとした株に成育。1980年代に日本の大手メーカーで育種・選抜されたと考えられ、長年生産者の圃場で細々と残っていたものを、筆者が発見・命名し世に送り出した。
タイプ5 極小輪
春の一番花の花径が概ね2cm以下のものを、極小輪としています。他と同様に株の生育状況が良好で、冷涼な気候などの条件が重なると、花は大きくなります。極小輪の品種は一枝に複数輪の花を咲かせ、房の大きなものでは20輪を超えるような円錐状の大房で開花します。極小輪の品種はミニチュア系(ミニバラ)に分類されるものが多く、株は特に小型のものが多いため、鉢植えで栽培されることが多いです。一部のつる性やシュラブ樹形のものはガーデンでの地植えでも楽しむことができます。
‘ロイヤル・エンブレム’
写真の‘ロイヤル・エンブレム’は、花径2㎝ほどで、キクの紋章を思わせる花型から命名された。一季咲き性で、枝は細く葉も細かく小さい。2001年に日本で発表されたクライミング・ミニチュア系。
いかがでしたか?バラにはたくさんの種類があって、知れば知るほど魅力がある花です。ぜひ記事を参考にして、自分好みのバラを見つけてください。
Credit
アドバイス/河合伸志
千葉大学大学院園芸学研究科修了後、大手種苗会社の研究員などの経歴を経たのち、フリーとして活躍の場を広げる。現在は横浜イングリッシュガーデンを拠点に、育種や全国各地での講演や講座、バラ園のアドバイスやガーデンデザインを行う。著書に『美しく育てやすい バラ銘花図鑑』(日本文芸社)、『バラ講座 剪定と手入れの12か月(NHK趣味の園芸)』(NHK出版)監修など。
写真&文/3and garden
撮影協力/横浜イングリッシュガーデン
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