【香りのハーブ】ギンバイカはトピアリーやシンボルツリーにも好適! 育て方のポイント5つ
小さな白い花が美しいギンバイカは、西洋ではマートルと呼ばれ、ハーブとして昔から利用されてきました。低木なので手入れがしやすく、草花とコーディネートしやすいのもいいですね。この記事では、ギンバイカの基本情報や特徴、詳しい育て方、種類などについてご紹介していきます。
目次
ギンバイカの特徴とは
白い花が清楚ながらも華やかな印象のギンバイカとは、どんな植物なのでしょうか。ここでは、ギンバイカの基本情報や特徴、花言葉について解説します。
基本情報
ギンバイカは、フトモモ科ギンバイカ属の常緑低木。原産地は地中海沿岸からヨーロッパ南西部で、暑さには強い一方で、寒さにはやや弱い性質です。ギンバイカは漢字で「銀梅花」と書き、白い梅のような花を咲かせることに由来。西洋ではマートルと呼ばれ、花はもちろん葉も芳香をもつために古くからハーブとして利用されてきました。樹高は1〜3mで、あまり大きくなりすぎずに扱いやすく、生け垣やトピアリーとしても利用できます。
花や葉の特徴
ギンバイカの開花期は5〜6月で、花色は白。5弁花に多数の細長いしべが展開し、小さいながらも花つきがよいため、満開時は見応えがあります。開花後には黒い果実ができ、秋が深まる頃に熟します。葉は楕円形で先端がややとがっており、摘み取って揉むと芳香がたち、料理の香りづけにも利用可能です。
花言葉
ギンバイカの花言葉は、「愛」「愛のささやき」「高貴な美しさ」「愛くるしさ」など。古代のエジプトやギリシャ、ローマなどでは、愛を象徴する女神に捧げるために用いられてきたことから、このような花言葉が与えられたとされています。そのため、結婚式のブーケなどにも好んでも取り入れられるようです。2022年には、エリザベスⅡ世女王の国葬の際、棺に飾られた植物としても話題となりました。
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ギンバイカの栽培のポイント7つ
ここまで、ギンバイカの基本情報と、花や葉の特徴、花言葉などについてご紹介してきました。では、ここからはガーデニングの実践編として、適した栽培環境や植え付け、水やりや施肥、気をつけたい病害虫など、育て方について詳しく解説します。
1.栽培に適した環境
ギンバイカは日当たり・風通しのよい場所を好みます。半日陰の環境でも育ちますが、あまりに日当たりがよくない場所では、花つきが悪くなってしまうので注意してください。また、水はけ・水もちがよく、有機質に富む肥沃な土壌を好みます。
ギンバイカは、暑さには強い一方で、寒さにはやや弱い性質を持っています。ほとんど凍結することがない暖地であれば戸外で越冬できますが、最低気温がマイナス5℃以下になる地域では鉢栽培にして、季節に応じて適した場所に移動しながら管理するとよいでしょう。
2.土づくり
【地植え】
植え付けの約2週間前に、直径・深さ約50cmの穴を掘ります。掘り上げた土に腐葉土や堆肥、緩効性肥料を混ぜ込んで穴に戻しておきます。このように土づくりをした後にしばらく時間をおくことで、分解が進んで土が熟成し、植え付け後の根張りがよくなります。
【鉢植え】
市販の花木用培養土を利用すると手軽です。自身で用土を配合する場合は、赤玉土中粒、日向坂土、腐葉土を等量ずつ混ぜ合わせて用いるとよいでしょう。
3.植え付け・植え替え
ギンバイカの植え付けの適期は3〜4月、植え替えの適期は5月頃です。ただし、ほかの時期にも苗は出回っているので、花苗店などで入手したら早めに植え付けるとよいでしょう。
【地植え】
土づくりをしておいた場所に、苗の根鉢よりも一回り大きな穴を掘り、根鉢を軽くくずして植え付けます。最後にたっぷりと水を与えましょう。
暖地では植えたままにしてもかまいません。しかし寒さにはやや弱いので、マイナス5℃以下になる地域では鉢に植え替えて、暖かく日当たりがよい場所で越冬させてください。
【鉢植え】
ギンバイカを鉢で栽培する場合は、入手した苗木よりも1〜2回り大きな鉢を準備します。用意した鉢の底穴に鉢底ネットを敷き、軽石を1〜2段分入れてから花木用の培養土を半分くらいまで入れましょう。苗木を鉢の中に仮置きして高さを決めたら、根鉢を軽くほぐし、少しずつ土を入れて植え付けます。水やりの際にすぐあふれ出さないように、土の量は鉢縁から2〜3cmほど下の高さまでを目安にし、ウォータースペースを取っておいてください。土が鉢内までしっかり行き渡るように、割りばしなどでつつきながら培養土を足していきます。最後に、鉢底から流れ出すまで、十分に水を与えましょう。
鉢植えで楽しんでいる場合、成長とともに根詰まりして株の勢いが衰えてくるので、1〜2年に1度は植え替えることが大切です。ギンバイカはやや寒さを苦手とするので、植え替えの適期は、十分に気温が上がって生育が旺盛になり始める5月頃です。植え替え前に水やりを控えて土が乾いた状態で行うと、作業がしやすくなります。鉢から株を取り出してあまり根鉢をくずさずに、新しい培養土を使って植え直しましょう。
4.水やり
水やりの際は、株が蒸れるのを防ぐために枝葉全体にかけるのではなく、株元の地面を狙って与えてください。
真夏は、気温の高い昼間に水をやると、すぐに水の温度が上がり株が弱ってしまうので、朝か夕方の涼しい時間帯に行うことが大切です。
また、真冬は、気温が低くなる夕方に水をやると凍結の原因になってしまうので、十分に気温が上がった真昼に行いましょう。
【地植え】
植え付けから2年目くらいまでは、表土が乾いたら適宜水やりをしましょう。その後しっかり根付いたら、地植えの場合は下から水が上がってくるのでほとんど不要です。ただし、雨が降らない日が続くようなら水やりをして補います。
【鉢植え】
日頃の水やりを忘れずに管理します。ただし、いつも湿った状態にしていると根腐れの原因になるので、与えすぎに注意。土の表面が乾いたら、鉢底から水が流れ出すまでたっぷりと与えましょう。茎葉がしおれそうにだらんと下がっていたら、水を欲しがっているサイン。植物が発するメッセージを逃さずに、きちんとキャッチしてあげることが、枯らさないポイントです。特に開花期や真夏は水を欲しがるので、水切れしないように注意しましょう。
5.肥料
【地植え】
植え付け時には、元肥として緩効性肥料を施しておきましょう。
暖地で植えたままにして栽培する場合は、越年後は毎年2月に緩効性肥料を株の周囲にばらまき、スコップなどで軽く表土を耕し、土に馴染ませます。その後は、株に勢いがないようであれば、液肥を施して様子を見守りましょう。
【鉢植え】
植え付け時には、元肥として緩効性肥料を施しておきましょう。
越年後、3月頃に緩効性肥料を株の周囲にばら撒き、スコップなどで軽く表土を耕し、土に馴染ませます。その後は、株に勢いがないようであれば、液肥を施して様子を見守りましょう。
6.日常のお手入れや注意点
●剪定
【地植え・鉢植えともに】
自然に樹形が整い、幹の生育も遅めなので、毎年形を整える剪定をする程度でOK。剪定の適期は、開花後の6月中旬〜7月中旬です。伸びすぎたり、込み合っているところがあれば、枝を間引く剪定をしましょう。弱々しい枝、内側に伸びている枝、勢いよく伸びすぎて全体のバランスを崩している枝、下向きに伸びている枝などを選んで根元から切り取り、風通しをよくします。勢いよく伸びすぎて邪魔になっている枝などが発生している場合は、剪定適期以外でも、季節を問わず切り取ってかまいません。
●冬越し
【地植え】
ギンバイカは寒さにやや弱く、関東以西の暖地なら地植えのまま越冬できますが、最低気温がマイナス5℃を下回るエリアでは、寒くなる前に鉢に植え替え、凍結しない場所へ移動して越冬させてください。暖地で地植えのまま乗り切る場合、寒さが厳しくなる時期は、不織布で全体を覆って、風よけや寒さ対策をしておくとよいでしょう。
【鉢植え】
ギンバイカは、寒さにやや弱いので、日当たりのよい軒下や屋根つきのベランダなど、凍結しない場所へ移動しておきましょう。最低気温がマイナス5℃を下回るエリアでは、暖かい室内の窓辺に移動します。
7.注意すべき病害虫
【病気】
ギンバイカは病気にかかる心配はほとんどありませんが、まれにさび病を発症することがあります。
さび病は、かびによる伝染性の病気です。葉にくすんだオレンジ色で楕円形の斑点が現れます。この斑点は、やや細長くイボ状に突起するのが特徴です。症状が進むと斑点が破れ、中から粉のように細かい胞子を飛ばします。放置すると株が弱り、枯死することもあるので注意。発病した葉は見つけ次第切り取って処分し、適用のある薬剤を散布して防除します。
【害虫】
ギンバイカは害虫が発生する心配はほとんどありませんが、まれにカイガラムシがつくことがあります。
カイガラムシは、ほとんどの庭木に発生しやすい害虫で、体長は2〜10mm。枝や幹などについて吸汁し、だんだんと木を弱らせていきます。また、カイガラムシの排泄物にすす病が発生して二次被害が起きることもあるので注意。硬い殻に覆われており、薬剤の効果があまり期待できないので、ハブラシなどでこすり落として駆除するとよいでしょう。
ギンバイカの増やし方
ギンバイカは、種まきと挿し木で増やすことができます。ここでは、増やし方それぞれの手順について、解説します。
種まき
ギンバイカは、開花後に黒い果実をつけます。種を採取する場合はそのまま熟すまで待って、10月頃に完熟した果実を摘み取ります。中の種を取り出し、果肉を流水できれいに洗い流しましょう。湿らせた砂と一緒に密閉袋に入れて、種まきの適期まで冷暗所で保存します。
ギンバイカの種まきの適期は3月中旬〜4月。黒ポットに新しい培養土を入れて十分に水で湿らせます。保存しておいたギンバイカの種を水で洗い、黒ポットに数粒播いて明るい日陰で管理。発芽後は日当たりのよい場所に置きましょう。本葉が3〜4枚ついたら勢いのある苗を1本のみ残し、ほかは間引いて育苗します。根が回るくらいに成長したら、植えたい場所に定植しましょう。
挿し木
挿し木とは、枝を切り取って地面に挿しておくと発根して生育を始める性質を生かして増やす方法です。植物のなかには挿し木ができないものもありますが、ギンバイカは挿し木で増やすことができます。
ギンバイカの挿し木の適期は、7月頃です。その年に伸びた新しい枝を10cmほどの長さで切り取ります。採取した枝(挿し穂)は、水を張った容器に1時間ほどつけて水あげしておきましょう。その後、吸い上げと蒸散のバランスを取るために下葉を切り取ります。3号くらいの鉢を用意してゴロ土を入れ、新しい培養土を入れて十分に湿らせておきます。培養土に植え穴をあけ、穴に挿し穂を挿して土を押さえてください。発根するまでは明るい日陰に移して管理します。その後は日当たりのよい場所に置いて2〜3カ月ほど育苗し、大きく育ったら植えたい場所に定植しましょう。挿し木のメリットは、親株とまったく同じ性質を持ったクローンになることです。
ギンバイカを生け垣にする方法
ギンバイカは冬に葉を全て落とさない常緑樹で、また枝葉が密生するため生け垣として利用できます。生け垣にする場合は、約30cm間隔で列植しましょう。求める樹高に成長したら幹の先端をカットし、横から枝葉が密に出るように促します。1年に1度は適期に樹高を抑える剪定をし、密になりすぎている部分は切り取って形を整えるとよいでしょう。
ギンバイカの種類
ギンバイカには数種類が流通しており、ここでは代表的なものをご紹介します。
ヒメギンバイカ
名前に「姫」が入る場合、やや小さめであることが多いのですが、ヒメギンバイカもよりコンパクトにまとまるのが特徴です。ドワーフマートルとも呼ばれています。樹高は1〜1.5mで、剪定などの管理がしやすく、狭小地などにも向いています。葉も小さいのですが、色はやや濃いめです。
バリエガータ
光沢のある葉に白い覆輪が入るタイプで、開花しない時期でもカラーリーフとして楽しめます。樹高は1m前後で、草花とコーディネートしやすいのも魅力です。
花も実も楽しめるギンバイカをぜひガーデンで
たくさんのしべを持つピュアホワイトの花姿は愛らしく、満開時には見応えがあるギンバイカ。秋には黒い果実をつける姿も素敵です。花や葉には爽やかな芳香があり、ハーブとしても愛されてきたギンバイカを、ぜひ庭やベランダに取り入れてはいかがでしょうか。
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