バラは、本当にたくさんの種類があって、自分好みのバラは何を基準に探せばいいか困っていませんか? バラには、花の咲き方、花の大きさ、樹形などいろいろな分類法がありますが、主な花形の中から「一重」「八重」タイプについて、バラの専門家、河合伸志さんに教えていただきます。
世界各国で長い間改良を重ね、園芸植物としては類稀なる進化を遂げたバラは、実にさまざまな花形が存在します。しかし大別すると、①一重咲きと半八重咲きタイプ、②整形タイプ、③クラシック・タイプ、④その他のタイプの4つに大別でき、それぞれがまたいくつかの花形に分けることができます。バラの花形は、気温や成育状態によって変化することもあるので、一般には健全な成育状態にある春の一番花の花型を基準に判定します。
目次
一重咲きと半八重咲きタイプ
一重咲きは野生のバラが持つ本来の花型で、通常5枚の花弁を持ちます(一部にはロサ・セリケア・プテラカンタのように4枚のものも存在します)。一重咲きの園芸品種では、株に力があると花弁の枚数が8枚程度まで増えたり、貝殻状の不完全な小さな花弁が発生することもあります。
またそもそも基本が7~8枚の品種もあり、人によってはそれらを準一重咲き(セミ・シングル咲き)などと言うこともあります。一重咲きよりも花弁の数が多く、8~20枚程度の枚数を持つものを、半八重咲き(セミ・ダブル咲き)といいます。株に力があると一重咲きと同様に花弁の枚数が増えたり、貝殻状の不完全な小さな花弁が発生することもあります。
いずれの咲き方も1枚の花弁の形は先が丸くスムーズなものから先が尖ったもの、花弁一枚がハート型になっているものまでさまざまで、花弁の幅も広いものや狭いものなどの差もあります。
また改良が進んだものでは、浅く波を打ったような華やかな印象のものも存在します。一重咲きは通常は花弁の縁が外側に反転しない丸弁ですが、中にはやや反転して尖った印象のものもあります。高温期になると全般に花弁が反転して剣のように尖り、花全体としては星型になることもあります。
代表的な一重や八重のバラをご紹介しましょう
ロサ・グラウカを片親にした野生種通しの種間雑種で、親譲りの美しい葉を持つ。青みのある葉に清楚な花を咲かせ、やや耐暑性が弱いが耐寒性に優れる。1996年カナダで作出されたシュラブ系の品種。
野生のバラの趣を残したような素朴な雰囲気の花で、小ぶりの花が多数開花する。花径5㎝の四季咲き性で、耐病性に優れる。1994年日本で発表されたフロリバンダ系の品種。
花弁が剣弁になって星のような印象の一重咲き。一輪もしくは少数の房になって開花し、次々と開花する。学術的に貴重なプリミティブなチャイナ系の品種で、1820年以前の作出と考えられる。
一重咲きの品種の中でもひときわ華やかな印象。紫色のしべと花弁の対比が美しく、花にはスパイス系の芳香がある。1925年イギリスで作出されたハイブリッド・ティ系の古品種。
写真の‘ベティー・ブープ’は、クリームの花びらにくっきりと赤い覆輪が入る個性的な色合い。花付きがとてもよく、花保ちも優れている。耐病性に優れた品種。花径7㎝ほどで、1999年にアメリカで発表されたフロリバンダ系の品種。
花形には、「一重」や「八重」のほかに、「整形」「クラシック」「その他」があります。それぞれの魅力的な花形から、好きなバラを見つけて、ぜひ身近に育ててください。
Credit
アドバイス/河合伸志
千葉大学大学院園芸学研究科修了後、大手種苗会社の研究員などの経歴を経たのち、フリーとして活躍の場を広げる。現在は横浜イングリッシュガーデンを拠点に、育種や全国各地での講演や講座、バラ園のアドバイスやガーデンデザインを行う。著書に『美しく育てやすい バラ銘花図鑑』(日本文芸社)、『バラ講座 剪定と手入れの12か月(NHK趣味の園芸)』(NHK出版)監修など。
写真&文/3and garden
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