ホタルブクロは、花茎を長く立ち上げ、ベル形の花をうつむくように連ねて咲かせる草花です。楚々とした花姿には趣があり、ナチュラルガーデンや和風の庭によく馴染みます。この記事では、ホタルブクロの基本情報や特徴、育て方などについてご紹介していきます。
目次
ホタルブクロの主な特徴
ホタルブクロは名前に風情がある花ですが、「どんな花が咲くんだっけ?」とピンとこない方も多いかもしれませんね。ここでは、ホタルブクロの基本情報や特徴、名前の由来や花言葉についてご紹介します。
基本情報
ホタルブクロは、キキョウ科ホタルブクロ属の多年草です。原産地は、東北アジア、朝鮮半島、日本。古くから野山に自生してきたので、環境に馴染みやすく育てやすい草花です。日当たりのいい場所を好みますが、真夏の強い日差しにさらされると弱ることがあり、一方で寒さには強い性質を持っています。草丈は30〜80cmです。
ホタルブクロは、一度植え付ければ越年して毎年開花する、息の長い植物です。春になると生育期を迎えて新芽を出し、初夏から開花し始めます。秋になると落葉して地上部がなくなりますが、枯れたわけではありません。休眠して越冬し、翌春になるとまた新芽を出して生育をし始める……というライフサイクルで、コストパフォーマンスに優れています。
花や葉の特徴
ホタルブクロの開花期は5〜7月。花色には紫、ピンク、白などです。花茎を長く立ち上げて5cmほどのベル形の花を下向きに咲かせるのが特徴。一重咲きがほとんどですが、ダブル咲きもあります。花茎に花をいくつか連ねるので、縦のラインが強調でき、立体的なシーンを作ることが可能です。
ホタルブクロの葉は細長い卵形で、長さは5〜7cm。薄い質感の濃い緑色の葉が互生につきます。
名前の由来や花言葉
ホタルブクロは、別名にトウロウバナ、チョウチンバナ、フクロバナ、ツリガネソウなどがあります。ホタルブクロの花名の由来は、昔の子どもたちは花の中に蛍を入れて遊んでいたことからなど、諸説あります。トウロウバナやチョウチンバナなどの別名は、花の見た目が灯籠や提灯など、それぞれの姿に似ているからとされています。
ホタルブクロの花言葉は「忠実」「誠実」「正義」「貞節」など。教会の鐘に似ているために、このような言葉が与えられたようです。
育て方のポイント
ここまで、ホタルブクロの基本情報や特徴、花言葉、名前の由来などについてご紹介してきました。では、ここからはガーデニングの実践編として、植え付けや水やり、施肥、花がら摘みや病害虫対策など、育て方について詳しく解説します。
栽培に適した場所
【地植え】
ホタルブクロは、日当たり・風通しのよい場所を好みます。半日陰の場所でも育ちますが、あまりに暗いようだと茎葉が細くなって頼りなく伸び、花つきも悪くなるので注意しましょう。
水はけがよい環境を好むので、水はけの悪い土壌であれば、腐葉土や堆肥を多めにすき込み、10〜20cm土を盛って周囲よりも高くしておくとよいでしょう。
また、真夏の強烈な日差しがやや苦手なので、午前だけ日が差すような東側か、木漏れ日がチラチラと差す落葉樹の足元など、半日陰の涼しい場所で夏越しさせるのがおすすめです。一方で寒さには強く、地上部を枯らして休眠するので植えっ放しにしてかまいません。
【鉢植え】
基本的に、日当たり・風通しのよい場所に置いて管理します。真夏は暑さに弱ってしまうことがあるので、風通しのよい半日陰など涼しい場所に移動してください。寒さには強いので、戸外に置いて越冬できます。
土壌
【地植え】
植え付けの2〜3週間前に、腐葉土や堆肥、緩効性肥料少量を混ぜ込んで、よく耕しておきます。水はけのよい環境を好むので、粘土質など水はけの悪い状態であれば、川砂を投入して腐葉土や堆肥を多めにすき込み、10〜20cm土を盛って周囲よりも高くしておくとよいでしょう。このように土づくりをした後にしばらく時間をおくことで、分解が進んで土が熟成し、植え付け後の根張りがよくなります。
【鉢植え】
草花用にブレンドされた、市販の培養土を利用すると手軽です。
植え付け・植え替え
ホタルブクロの植え付け・植え替えの適期は、2〜3月です。ただし、ほかの時期にも苗は出回っているので、花苗店などで入手したら早めに植え付けるとよいでしょう。苗を選ぶ際は、節間が短くがっしりと締まって勢いのあるものを。黄色く傷んだ葉がついているものや虫食い痕のあるもの、ヒョロヒョロと茎葉が長く伸びて弱々しいものは避けたほうが無難です。
【地植え】
土づくりをしておいた場所に、苗の根鉢よりも一回り大きな穴を掘り、軽く根鉢をほぐして植え付けます。最後にたっぷりと水を与えましょう。複数の苗を植える場合は、30〜50cmの間隔を取っておきます。
庭で育てている場合、環境に合えば植え替える必要はありません。しかし、大株に育って窮屈になっているようであれば、掘り上げて株分けし、植え直します。
【鉢植え】
鉢で栽培する場合は、5〜7号の鉢を準備します。用意した鉢の底穴に鉢底ネットを敷き、軽石を1〜2段分入れてから草花用の培養土を半分くらいまで入れましょう。苗を鉢の中に仮置きして高さを決めたら、ポットから取り出して軽く根鉢をくずし、少しずつ土を足して植え付けます。水やりの際にすぐあふれ出さないよう、土の量は鉢縁から2〜3cmほど下の高さまでを目安にし、ウォータースペースを取っておいてください。土が鉢内までしっかり行き渡るように、割りばしなどでつつきながら培養土を足していきます。最後に、鉢底から流れ出すまで、十分に水を与えましょう。
鉢植えで楽しんでいる場合、成長とともに根詰まりして株の勢いが衰えてくるので、1〜2年に1度は植え替えることが大切です。植え替え前に水やりを控えて土が乾いた状態で行うと、作業がしやすくなります。鉢から株を取り出してみて、根が詰まっていたら、根鉢をくずして古い根などを切り取りましょう。根鉢を1/2くらいまで小さくして、元の鉢に新しい培養土を使って植え直します。もっと大きく育てたい場合は、元の鉢よりも大きな鉢を準備し、軽く根鉢をくずす程度にして植え替えてください。
水やり
水やりの際は、株が蒸れるのを防ぐために茎葉全体にかけるのではなく、株元の地面を狙って与えましょう。
真夏は、気温の高い昼間に水をやると、すぐに水の温度が上がり、株が弱ってしまうので、朝か夕方の涼しい時間帯に行うことが大切です。
また、真冬は、気温が低くなる夕方に水をやると凍結の原因になってしまうので、十分に気温が上がった真昼に与えるようにしましょう。
【地植え】
根付いた後は、地植えの場合は下から水が上がってくるのでほとんど不要です。ただし、雨が降らない日が続くようなら水やりをして補います。
【鉢植え】
日頃の水やりを忘れずに管理します。ただし、いつもジメジメした状態にしておくと、根腐れの原因になってしまいます。土の表面が乾いたら、鉢底から水が流れ出すまで、たっぷりと与えてください。茎葉がしおれそうにだらんと下がっていたら、水を欲しがっているサイン。植物が発するメッセージを逃さずに、きちんとキャッチしてあげることが、枯らさないポイントです。また、冬に地上部が枯れて休眠期に入っても、カラカラに乾燥させることのないように、控えめにしながら水やりを続けてください。
肥料
【地植え・鉢植えともに】
植え付け時に元肥として緩効性肥料を施しておきます。その後は、真夏をのぞいた生育期に液体肥料を10日に1度を目安に与えましょう。山野草のような楚々とした草姿を楽しみたい場合、追肥は控えめにして株の状態を見ながら与えるとよいでしょう。
必要な作業
【花がら摘み】
ホタルブクロの終わった花は、適宜摘み取りましょう。株まわりを清潔に保つことで、病害虫発生の抑制につながりますよ! また、いつまでも花がらを残しておくと、種をつけようとして株が消耗し、老化が早まって花数が少なくなってしまうので注意。花がらをこまめに摘み取ると、次世代を残そうとして次から次に花がつき、長く咲き続けてくれます。種を採取したい場合は、開花が終わりそうな頃に花がら摘みをやめて、種をつけさせましょう。
【切り戻し】
開花期が終わった後、草姿が乱れてきたら切り戻して株の若返りをはかります。地際から草丈の半分くらいまでを目安に、深めにカットしましょう。梅雨頃からの高温多湿の時期に株が蒸れやすくなるのを防ぎ、風通しよく管理することができます。
増やし方
ホタルブクロは、種まき、株分け、挿し芽で増やすことができます。
【種まき】
ホタルブクロを種まきから増やしたい場合、開花後に種を採取して播くとよいでしょう。日本に古くから自生してきた種類なら、ビギナーでも種まきから簡単に育てられますよ! 種まきからスタートするメリットは、輸送などによる苗への負担がかからず、環境に馴染みやすいことです。敷地が広くて多数の苗を植えたい場合は、コストカットにもなります。
開花期が終わりを迎える頃に花がら摘みをやめ、秋口に果実が熟したら採取。日陰で乾燥させた後にサヤの中から種を取り出し、種まきの適期まで密閉袋に入れて冷暗所で保存しておきます。
種まきの適期は2〜3月です。3号の黒ポットに草花用にブレンドされた市販の培養土を入れて十分に水で湿らせた後、数粒ずつ種を播いて軽く土をかぶせます。発芽までは乾燥・過湿にならないように適度な水管理をしてください。発芽後に間引いて元気のいい苗を1本のみ残し、その後は日当たり・風通しのよい場所で管理します。本葉が4〜5枚ついたら根鉢を傷めないように苗を取り出し、植えたい場所に定植しましょう。苗の育成には時間がかかり、開花し始めるのは2年目以降と捉えてください。
【株分け】
ホタルブクロの株分け適期は2〜3月頃です。株を植え付けて数年が経ち、大きく育ったら株の老化が進むので、「株分け」をして若返りをはかります。株を掘り上げて、地下茎から増えている子株を切り分け、再び植え直しましょう。それらの株が再び大きく成長し、株が増えていくというわけです。
【挿し芽】
挿し芽とは、茎葉を切り取って地面に挿しておくと、発根して生育を始める性質を生かして増やす方法です。植物のなかには挿し芽ができないものもありますが、ホタルブクロは挿し芽で増やせます。
ホタルブクロの挿し芽の適期は、10月頃です。新しく伸びた茎を2節以上つけて切り口が斜めになるように切り取ります。採取した茎(挿し穂)は、水を張った容器に1時間ほどつけて水あげしておきましょう。その後、水の吸い上げと蒸散のバランスを取るために下葉を半分くらいに切り取ります。黒ポットを用意して新しい培養土を入れ、水で十分に湿らせておきます。培養土に植え穴をあけ、穴に挿し穂を挿して土を押さえてください。明るい日陰に置いて乾燥させないように管理し、十分に育ったら植えたい場所へ定植しましょう。挿し芽のメリットは、親株とまったく同じ性質を持ったクローンになることです。
病害虫
【病気】
ホタルブクロは、病気が発症する心配はほとんどありません。
【害虫】
ホタルブクロに発生しやすい害虫は、ヨトウムシなどです。
ヨトウムシは蛾の幼虫で、漢字で「夜盗虫」と書き、主に夜に姿を現して茎葉を食害します。大きくなった幼虫は食欲が旺盛で、一晩で株を丸裸にしてしまうほどです。葉から食害し始めるので、異変を察したら幼虫がまだ若いうちに駆除しましょう。発生しやすい時期は4〜6月、9〜10月です。食害の痕を見つけたら、夜にパトロールして捕殺するか、適用のある薬剤を散布して防除します。
夏越し・冬越し
【夏越し】
- 地植え
真夏の強烈な日差しがやや苦手なので、真夏のみ午前だけ日が差すような東側か、木漏れ日がチラチラと差す落葉樹の足元など、半日陰の涼しい場所で夏越しさせるのがおすすめです。または、植えている場所の上部に遮光ネットをかけて日差しを弱めるのも一案です。
- 鉢植え
半日陰で風通しのよい涼しい場所へ移動し、夏越しさせてください。
【冬越し】
冬の寒さには強いので、地植え、鉢植えともに戸外で越冬できます。
ホタルブクロの種類
ホタルブクロの変種について、ご紹介します。
ヤマホタルブクロ
ホタルブクロの変種。ほとんど見分けがつきませんが、花をよく見ると顎裂片の間に付属片がないのが特徴です。草丈は30〜60cmで、野山で多く見られます。
イシダテホタルブクロ
四国地方の石立山に自生するホタルブクロ。草丈30cmほどと小さめで、花も小ぶりなのが特徴です。
シマホタルブクロ
伊豆諸島に多く見られるホタルブクロの変種。花色は真っ白で、斑点が入らないのが特徴です。花のサイズは3cmぐらいで、やや小さめ。草丈は30cmくらいです。
育てやすく可憐なホタルブクロは初心者にもおすすめの花
古くから日本の野山に自生してきたホタルブクロは、環境に馴染みやすく放任してもよく育つ植物です。楚々とした花がそよ風にゆらゆらと揺れる様子は野趣感があり、ナチュラルガーデンなどで大人気。ビギナーでも育てやすいので、ぜひ庭に取り入れてはいかがでしょうか。
Credit
文 / 3and garden
スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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