みなさんはヤマモモという植物を知っていますか? 日本の山地にも自生し、公園や市街地の緑化に使われることも多く、また自宅でも栽培することができます。赤くて可愛い実を付けた姿が印象的で、「何の木だろう」と気になった人もいるのではないでしょうか。このヤマモモ、「モモ」と名前が付くだけあって食用にもなります。ここではヤマモモの特徴や栽培するためにはどうしたらいいのか、モモとヤマモモの関係性についても解説します。
目次
主な特徴
ヤマモモは日本にも自生していることで、古くから食用はもちろん、さまざまな用途に利用されてきました。一見すると似た植物も多いため、違いを理解することも大切です。ここでは、そんなヤマモモの主な特徴について解説します。
基本情報
ヤマモモは学名をMorella rubraといい、ヤマモモ科ヤマモモ属の常緑性高木で、樹高は5~10m、ときには20mを超えることもあります。原産地は中国~インド、日本にも自生しています。その地の環境に馴染みやすく、大気汚染にも強いため、道路沿いの街路樹や都市の緑化植物として、さまざまなところに植栽されています。温暖地の山に自生する樹木で、寒さにはやや弱い特徴がありますが、耐暑性に優れていて、関東地方以西では問題なく育てることができるでしょう。
花や葉の特徴
ヤマモモの花期は3~4月で、枝の先端に穂状の細かい花を多数付けますが、あまり目立ちません。果実は6~7月に実りますが、雄花と雌花がある雌雄異株のため、果実は雌株にのみ付きます。果実は球形で、直径1〜2cm。多数の小さな突起があり、6月頃に暗い紅紫色に熟します。甘酸っぱく、独特の風味があり、生食できますが、日もちしないため、ジャムや果実酒などの加工品として流通することが多いです。葉は5~10cmの楕円形で、艶のある深緑色。密に互生し、枝先に束生します。
桃とヤマモモの関係
モモもヤマモモも日本に自生しており、遠目に見るとモモの果実に似ていたことから、「山に生えるモモ」ということでヤマモモという名前が付けられました。しかしながらモモはバラ科であり、ヤマモモ科のヤマモモとは関係がなく、全くの別種です。
育て方の基本
さまざまなところで植栽されるヤマモモは、大きくなることと、果実が収穫できるまでに時間がかかることに留意すれば、一般の家庭でも簡単に育てることができます。ここでは育て方の基本について解説したいと思います。
栽培環境・用土
ヤマモモは日当たりがよく、肥沃な土壌を好みます。耐陰性もある程度あるため、スペースさえあれば植える場所はそれほど慎重になる必要はないでしょう。また、用土は通気性と保湿性に優れたものがベストです。ヤマモモは根に共生菌をすまわせ、大気中の窒素を共生菌経由で利用することができるため、痩せた土地でも生育します。
水やり・肥料
鉢植えの場合は、土の表面が乾いたらたっぷり与えましょう。地植えの場合は、しっかり根が張ったあとであれば自然の降雨で問題ありません。夏場の乾燥がひどいときは水やりしてください。肥料はそれほど必要としません。生育が遅いなど、気になる場合は、有機肥料を果実の収穫後と寒い時期に施しておきましょう。
植え付け・植え替え
ヤマモモの植え付けは3~4月が適期です。日当たりと高木になることを想定し、スペースのある場所に植え付けましょう。植え付け後、根付くまではしっかりと水やりし、風で倒れないよう支柱を立てておきましょう。鉢植えで栽培する場合は2年に1度、あるいは鉢内に根が回り、根詰まりを起こしていたら植え替えを行います。枯れた古い根を整理し、一回り大きな鉢に植えるようにしましょう。
剪定・摘果
ヤマモモは、放っておくと樹高が高くなりすぎ、とても大きくなって管理しにくくなります。また葉が密に付くことで風通しや実付きが悪くなるため、毎年の剪定を行うようにしましょう。剪定方法としては、枝が密集しないよう不要な枝を切り取る、透かし剪定が一般的です。春に全体の枝を減らすことで風通しと実付きの調整ができ、毎年安定した果実を収穫することができます。
また、ヤマモモは隔年結果といって、実が多く付いた年の翌年は実付きが悪くなるという性質があります。安定した収量の果実を毎年確保したい場合は、摘果(摘花)が必要になります。房状の花や花後の未成熟な果実を間引き、1枝に2果程度の実付きにしておくとよいでしょう。
収穫
収穫時期は6~7月、果実の赤みが増し、黒っぽくなってくる頃が収穫のタイミングです。前述のように、放っておくと隔年結果といって実付きのよい年とそうでない年を繰り返します。凶作時には全く実が付かないこともあるので注意しましょう。また雌雄異株のため、実を付けさせるためには雄株と雌株を近くに植える必要があります。基本的には風媒花といって風に花粉が運ばれて受粉する性質のため、開花期が重なれば自然と実が付くようになります。ただし、苗木で購入し、植え付けた場合は、実がなるまで最低10年は必要です。
増やし方
ヤマモモは挿し木や接ぎ木で増やすこともできますが、成功しにくいため、種まきで増殖するのがよいでしょう。6月に落ちた果実を拾って、よく水洗いしたあと冷暗所や冷蔵庫など低温の場所に保存しておきます。翌春、3~4月に種まき用の用土とポットを用意して播きましょう。種まき後は用土が乾かないように水やりを続けます。発芽までに時間を要する場合もあるため、数週間様子を見ましょう。
病害虫
菌が幹や枝に入り込み、こぶ状の病変となる、こぶ病に注意しましょう。多湿環境で発生しやすいことから、定期的な不要枝の剪定を行い、風通しよく管理することで予防できます。もしこぶができてしまったら、早めに切り取りましょう。またハマキムシにも注意が必要です。このハマキムシは蛾の幼虫で、吐き出す糸で葉を丸めたり、2枚をくっつけるなどし、中に棲みつきながら葉を食害します。見つけ次第、葉ごと取り去るなどして取り除きましょう。
主な品種
ヤマモモには、収量の多い種や食味のよい種など、いろいろな品種があります。ここではそれらについて解説します。
シロモモ(シロヤマモモ)
大きな実と酸味のない甘い実が特徴です。ヤマモモほど赤くならず、ピンク色で熟します。4月から開花を始め、6月中旬から下旬にかけて実を収穫することができます。
ヒメヤマモモ
中国原産の品種です。ヤマモモよりコンパクトに育ち、樹高30cm程度から実を付け始めるため、鉢植えなどでも栽培可能です。
食べて楽しむ
ヤマモモは爽やかな酸味と甘みがあり、生食はもちろん、ジャムや果実酒などいろいろな利用方法があります。ここではヤマモモの活用方法について解説します。
ジャムの作り方
ヤマモモ(250g)をよく水洗いします。水気を切って鍋に入れ、ヤマモモがひたひたになるくらいの水を加えて中火で煮ます。沸騰して5分ほど経ち、ヤマモモが柔らかくなったら火から下ろして湯切りをし、ザルで漉しながら種子を取り除きます。その後鍋に移して、グラニュー糖(100g)、レモン汁(大さじ1)を加え、木べらを使って弱火で焦げ付かないように混ぜながら煮ます。20分ほどして、分量が元の2/3ほどになったら、火から下ろします。煮沸消毒した瓶に入れて粗熱を取れば完成です。
果実酒の作り方
ヤマモモ(1.6kg)を水洗いし、熱湯消毒した広口のビンに入れます。氷砂糖(1kg)を加え、焼酎(1.8L)を注ぎ、2カ月ほど保存します。焼酎にヤマモモの赤みが移ったら実を取り出し、濾過して別のビンに詰めればヤマモモ酒の完成です。
自宅で栽培してヤマモモを味わおう
ヤマモモは苗木から果実を収穫できるまで時間はかかりますが、栽培は比較的簡単で、たくさん収穫できる果樹です。日もちしないヤマモモの実をそのまま味わえるのは、自宅で育てている人の特権。ぜひお庭に植えて、生食はもちろん、ジャムや果実酒などいろいろな楽しみ方をしてみてはいかがでしょうか。
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