ハーブは、「生活に役に立つ香りのある植物」。単にいい香りに気分的に癒やされるだけではなく、香りは心身に影響を及ぼし、日々の暮らしの中でも食用や虫除けなどにも使え、活用価値の高い有用植物です。日々成長する姿を楽しみ、香りに癒され、料理や日用品に活かす…たくさんの利用方法があるのは、植物の中でもハーブならでは! とはいえ、ハーブと一口に言っても1万種類もあり、どれを選んだらよいか迷子になってしまう方も多いかもしれません。そこで今回は、育てておいて損はないハーブを7つ厳選してご紹介します。
ハーブとはどんな植物? メリットは?
ハーブとは、日々の生活に役立つ香りのある植物の総称です。葉や茎、つぼみ、花、根など特定の部位を用いて、「料理」「薬用」「園芸」「クラフト」「お茶」「健康」など、さまざまな用途に使用されます。加えて、それぞれリラックス作用・デトックス作用・リフレッシュ作用など、身体に有効な効能を持っているのが、ハーブの特徴です。
このハーブの持つ効能を、日々の暮らしの中でうまく利用できると、生活の豊かさにもつながりますね。そして、ハーブは育てたら使える! という点が最大のメリット。栽培しておけば使いたいときに使う分だけ収穫できます。
また、ハーブは病害虫に強い種類が多いため、農薬を使用しなくても栽培可能。飲んだり食べたりと口にする機会も多いハーブですから、安心安全に使用できるのも自家栽培の嬉しいポイントです。
ここからは、活用の幅が広く、1つあると重宝するおすすめのハーブ7つを厳選して、ご紹介していきます。
おすすめハーブ1:レモングラス

レモングラスは、イネ科の多年草。軽く触れるだけで、レモンのような爽やかな香りのするハーブです。
ショウガの持つスパイシーな香りと、レモンの持つ爽やかな香りを併せ持つ香りが特徴。東南アジアではとてもポピュラーなハーブで、タイの代表的スープ「トムヤムクン」の風味付けや、カレーのスパイスによく使われます。
こうした料理の香り付けはもちろん、クッキーやケーキなどのお菓子にも合いますし、お茶としても楽しまれています。特にフレッシュ(生葉)のさわやかなハーブティーは特別! 収穫したての青々としたレモングラスは、毎年育ててよかった! と思うナンバーワンハーブです。
レモングラス栽培のコツ
苗から栽培します。株元に日差しと風がしっかり当たる場所で育てましょう。レモングラスは高温多湿が大好きで、夏の生育度合いは、びっくりするほど。草丈は1.5mほどになり、株幅も大きくなるので、植栽スペースは広めに確保してください。
冬の寒さには弱く、埼玉県北部に位置する熊谷市の場合、地植えでは年によって翌年出てきたり、出てこなかったりします。ですので、収穫し終わる11月末に掘りあげて、プランターに移植し、冬場はプランターで管理をするのが無難です。
おすすめハーブ2:スペアミント

ミントはとても種類が多く、現在、300種類以上あるともいわれています。なかでも使いやすいのが「スペアミント」。ガム・キャンディーなどのお菓子や、化粧品のスーッとした芳香の元にも使われていて、私たちの生活の身近にある香りの1つですね。
また、料理やお菓子の飾りにもよく登場しますし、ミントを使った飲み物も、世界中各国々で広く愛されています。
スペア(spear)とは「槍(やり)」の意味で、先のとがった花や葉の形を槍に見立てて名づけられたといわれ、葉のふちはギザギザしています。スペアミントの香りは、「l-カルボン」という成分が主体で、優しい清涼感が特徴です。
ミント栽培のコツ
ヨーロッパが原産のハーブは、日本のじめじめとした湿気が苦手な種類も多いのですが、ミントはそんな日本の風土に合っているハーブ。ガーデニング初心者さんも、ハーブを育てたことがない方も、育てやすいハーブの一つです。
栽培は苗を購入し、育てる際には、日当たりのよい場所を選び、水を切らさないように注意しましょう。
また、ミントは繁殖力が旺盛です。どんどん地下で茎を伸ばし、周囲の植物もお構いなしに広がっていく種類もあります。地植えにしなければよかった…と後悔することがないよう、植える前に、栽培範囲を決めて地中に仕切りを施したり(仕切り板が市販されています)、鉢植えで育てるとよいでしょう。
おすすめハーブ3:ジャーマンカモミール

カモミールはギリシャ語の「大地のリンゴ」が語源で、その言葉の通り、ほんのりとリンゴに似た甘い香りがするハーブです。優れた薬効を持ち、紀元前から活用され、ヨーロッパでは最も歴史のある民間薬の1つ。和名はカミツレといい、19世紀初めにオランダから蘭学と共に入ってきたといわれています。
カモミールにも品種が多数ありますが、育てやすく丈夫なカモミールの代表品種が、一年草のジャーマンカモミールです。花が咲いたら切り花として飾ったり、お菓子作り、ハーブクラフト作り、染色、精油など、さまざまな活用方法がありますが、なかでもカモミールはお茶がおすすめ。

芳香成分のある花の部分だけを摘み取って、乾燥させたもの(または生)を使って、お湯を注げば、ハーブティーの出来上がり。カモミールには、気持ちがたかぶっていて眠りたいのに眠れない時、イライラする時、ストレスや不安を感じる時に、気持ちを落ち着け、静めてくれる作用があります。
成分が穏やかなハーブでもありますので、お子様にもおすすめですよ。
カモミール栽培のコツ
初心者の方は苗から、慣れている方は種からも栽培できます。耐寒性があるので、秋に種を播いておくと、春には大株に成長してくれますよ。
日当たりと風通しのいい場所を好むので、株間を広めに取っておきしょう。乾燥に弱いので、水切れには注意してください。春先はアブラムシがつきやすいので、発見した場合はすぐ捕殺しましょう。また、花は香りが一番高いピーク時に摘み取ります。花びらが反り返ってくる頃が目安。
おすすめハーブ4:ローズマリー・オフィシナリス

ローズマリーは、シソ科の常緑低木。地中海沿岸が原生地です。海岸近くに育ち、小さな青色の花をつけることから、ラテン語で「海のしずく」という意味の学名を持っています。
針のような形をした葉から強い香りを放つローズマリーは、春から晩秋まで、小さな花を不定期に咲かせます。花色は品種によりブルーや白・ピンクなどがあります。
また、『記憶のハーブ』という異名を持ち、集中力を高め、頭をスッキリさせてくれる頭脳明晰作用があり、仕事や勉強、認知症予防にもおすすめ。
ローズマリーにもたくさんの品種があり、葉の形状・花の色・成長の性質などさまざまで、品種によって香りも多少異なりますが、1鉢育てるなら、原種のローズマリー・オフィシナリス(学名/Rosmarinus officinalis)がおすすめ。木立性で茎がまっすぐに伸び、暑さ寒さに強く、とにかく丈夫。料理やお菓子、お茶などの食用にも向く品種です。
ローズマリー栽培のコツ
苗を購入しましょう。育てる際のポイントは、日当たりのよい場所に置き、風通しを確保すること。そして、水やりを控えめにすること。土の表面が乾いたら、たっぷりあげるのが基本。毎日水やりをしては根腐れを起こします。
大きめなプランターで栽培も可能です。小さな苗で買ってきても、枝がすぐに木質化して、大きくなります。地植えする際には、場所をよく選びましょう。
枝葉が伸びてきたら、剪定を兼ねて、随時収穫して利用してくださいね。
おすすめハーブ5:ラベンダーグロッソ

紫色の花が咲き誇る様子が印象的なラベンダーは、ハーブの女王的な存在です。
ラベンダーの魅力は、優れた芳香成分。ポプリ・サシェなど芳香アイテムとしても使われますが、ラベンダーのすがすがしい香りの正体は、「酢酸リナリル」「リナロール」という成分で、この成分は不安や緊張・イライラを鎮める「鎮静作用」を持っています。精神的な疲労を感じたり、ストレスからくる胃のトラブルや偏頭痛があるときに、おすすめのハーブです。

こちらは、コモンラベンダーという一番ポピュラーな品種です。ですが、コモンラベンダーは高温多湿が苦手。私の住む埼玉県熊谷市では、残念ながら栽培が難しい品種です。夏に高温多湿になる地域でラベンダーを育てたい、ラベンダーはいつも枯らしてしまうという方は、‘グロッソ’なら、栽培の難易度はぐっと下がりますよ。
ラベンダー栽培のコツ
栽培は苗を購入しましょう。苗は3~4月頃購入し、すぐに植え付けます。梅雨が来る前に、ある程度根が張ることが大事です。
苗は、日当たりと風通しがよい場所に植えましょう。一株でも成長すると横幅がかなり必要になりますので、80cmくらいスペースを確保してください。花は梅雨時期と被るので、雨で傷んでしまうこともありますが、晴れ間を狙って、香りが一番いいところで収穫できればベスト!
おすすめハーブ6:モスカールドパセリ

パセリは、地中海沿岸原産のセリ科の二年草。料理の添え物のように使われますが、じつはパセリはビタミンやミネラルを豊富に含んでいる、栄養価の高いハーブです。独特な香りの元になっているアピオールやピネンという成分には、消化促進・口臭予防・抗菌作用などの働きがあります。また、濃い緑色の元である色素成分・クロロフィルにはデトックス作用があり、美と健康にも一役買ってくれますよ。
パセリって『買ったら多いのよ、ちょっと飾りに欲しいだけなのに』って思いませんか? そんな方は、ぜひ栽培してみてください。わざわざ買わなくても、一鉢育てておけば、使いたい時に使いたい分だけ採れて便利です。
パセリ栽培のコツ
苗から栽培しましょう。苗は園芸店やホームセンターで、比較的簡単に入手できます。よく出回る時期は、春と秋です。
陽の光がよく当たる場所~半日陰で育ててください。地植えでもプランター(鉢植え)でも栽培できます。上の写真は、畑で栽培しているパセリですが、地植えの場合、1株で直径30cmほどにもなりますから、株間は広めにあけてください。
葉が茂ってきたら、使う分だけ収穫しましょう。外側の葉から少しずつ摘んでいくと、長期にわたって収穫できます。一気に採ってしまうと枯れてしまう原因にもなりますので、注意してくださいね。たくさん採れたら、冷凍保存もできます。冷凍すると軽くもむだけでみじん切りのように細かくなるので、便利ですよ。
おすすめハーブ7:スイートバジル

バジルはインド、インドシナ半島、モルッカ諸島原産のシソ科の一年草のハーブ。バジルという名は、ギリシャ語の「王様」という言葉(バシレウス)に由来するといわれます。ヨーロッパにも広まり、イタリアでは「バジリコ」とも呼ばれます。
バジルはアフリカから東南アジアに150種類以上分布していて、食用ハーブとして人気です。バジルには、ブッシュバジルやシナモンバジル、ライムバジル、ホーリーバジルなど数多くの品種があり、全種類が食用可能です。その中でも、汎用性が高いのは、やっぱりスイートバジル。バジリコソースを作るまでの量は1株では難しいですが、収穫期が長く、ちょこちょこサラダやピザを作って食べる程度なら、1株で充分楽しめます。
バジルには、心身及び中枢神経の強壮作用があり、体のさまざまな機能を高めてくれる働きがあります。また鎮静作用もあり、腹痛や吐き気・胃痙攣といった症状を鎮めてくれたり、イライラをしずめて神経を落ち着かせる作用、不眠症や偏頭痛を改善する作用があるとも言われています。
意外かもしれませんが、バジルはお茶にして飲むのもおすすめ。食後に一杯飲むと、消化を促進してくれますよ。
バジル栽培のコツ
初心者の方は苗から、慣れている方は種からも栽培できます。特に高温多湿が得意なので、暑い日本の夏にもぐんぐん生長してくれる心強い植物です。水が好きなので、水切れには十分注意が必要です。
収穫は随時、大きくなってきた葉から収穫してください。花が付くと葉が固くなります。柔らかい葉のほうが美味しいので、花芽が出てきたらこまめにカットしましょう。
ハーブは私たちの暮らしを豊かにする
この7つさえあれば、充実したハーバルライフが送れます。栽培の容易なものも多いので、どれか一つからでもぜひ、栽培してみてください。
Credit
写真&文 / 堀久恵 - 花音-kanon- 代表 -

ほり・ひさえ/ガーデンセラピーナビゲーター。一般社団法人日本ガーデンセラピー協会専門講師。
生花店勤務を経て、ガーデンデザイン・ハーブ・アロマセラピー等を学び、起業。植物のある暮らしを通じて、病気になりにくい身体を作り健康寿命を延ばすことを目指した「ガーデンセラピー」に特化した講座の企画運営と庭作りを得意とする。埼玉県熊谷市の『花音の森』にて、日々植物に囲まれ、ガーデンセラピーを実践中。
全国の花ファン・ガーデニング
ファンが集う会員制度です。
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