皆さんは「カタバミ」という植物をご存じですか? 見た目がクローバーによく似ていて、間違われることも多い球根植物。生育場所によっては雑草扱いされることもある身近な存在のカタバミですが、じつは世界におよそ850もの種類があるともいわれています。この記事では、カタバミの花言葉や特徴、よく似たクローバーとの見分け方などもご紹介します。
目次
カタバミの概要
カタバミはカタバミ科カタバミ属の多年草で、日本では道端や空き地、農地などでもよく見かけます。
カタバミ属の植物は温帯から熱帯の地域に分布し、世界に約850種も存在しますが、日本では6種類が自生しており、さらに7種類ほどの外来種が帰化植物として定着しています。
花が大きく美しいカタバミは「オキザリス」と呼ばれ、ガーデニングプランツとしても利用されています。また、横に株が増えていくので、グラウンドカバーとしても活躍します。
カタバミの花言葉
カタバミの花言葉は「輝く心」「喜び」「母の優しさ」です。
その昔、カタバミは真鍮の鏡や仏具を磨くために使われていたため、「輝く心」という花言葉がつけられました。
またスペインやフランスでは「ハレルヤ」と呼ぶことから、「喜び」という花言葉の由来となっています。これは復活祭でハレルヤが唱えられる時期にカタバミの花が咲き始めることに因んでいるといわれています。
カタバミの名前の由来
和名のカタバミは漢字で「片喰」と書きます。ハート形の葉が、昔の人には一部が食べられて欠けているように見えたことに由来しています。
また、カタバミは「酢漿」と書くこともあり、「酸葉(すいば)」「スイモグサ」と呼ばれることもあります。これは葉や茎にシュウ酸を含んでいるため酸っぱい味がするのが由来です。
このほかに「黄金草(おうごんそう)」や「鏡草(かがみぐさ)」、「銭みがき(ぜにみがき)」とも呼ばれます。いずれも、カタバミに含まれるシュウ酸を利用して、カタバミの葉で古い銅製品を磨くと錆が取れピカピカになることが由来です。
カタバミの花の特徴
カタバミは5~10月に黄色い小花を咲かせます。葉のわきから同じくらいの長さの花柄を多数伸ばし、散形状に小花を咲かせます。花の大きさは0.8〜1cmで、花びらは5枚あります。晴れた日の午前中に咲き、夕方には花びらを折りたたむので、まるで眠っているよう。曇天や雨天のときにも花びらを閉じます。
カタバミの葉の特徴
カタバミの葉は、長さ1cm、幅0.5〜2cmほどのハート形が3枚集まった形です。葉の表面はほとんど無毛で、裏側と縁にはまばらに毛が生えています。葉と茎をつなぐ葉柄は2〜7cmほどで、基部には小さな耳状の托葉があります。
葉は花と同様に夜になると閉じ、日差しが強すぎるときや乾燥しすぎているときにも半分ほど葉を閉じます。このような葉の開閉によって、温度や水分の調節を行っていると考えられています。
カタバミの実の特徴
カタバミは、とても小さなオクラのような形の実をつけます。先が尖った円柱形で、尖ったほうが上を向いてついています。
実が熟すと、たくさんの種子をはじき飛ばします。種子は紅褐色でゴマのような形をしており、1.5mmほどの大きさです。両面に7〜9本の横向きのしわがあり、全体に白い毛が生えています。
家紋にも使われている
カタバミは、古くから家紋のモチーフにも使われている植物です。日本の5大家紋の一つで、鎌倉時代から使われてきました。さらに古い平安時代にも、牛車の紋に使われたという記録があります。
繁殖力が非常に強く根絶が難しいことから、子孫繁栄に通じ、武家の間で家が絶えず続くように願って家紋として好まれました。戦国大名では、長曾我部元親や酒井重忠などがカタバミの家紋を使っていました。
クローバーとの違い
カタバミとクローバーの葉はよく似た外見をしているため、花が咲いていない時に見分けるのには、ちょっとしたコツが必要です。
クローバーの葉には白い線の模様が入っており、カタバミは葉に模様がありません。また、クローバーの葉は楕円形で葉先に小さなくぼみがありますが、カタバミの葉はハート形が多いです。
夜に観察する場合は、クローバーは内側に葉が閉じますが、カタバミは外側に折れるように閉じます。クローバーはマメ科の植物で、カタバミはカタバミ科の植物と、分類上はかなりかけ離れています。
繁殖力が強いのも特徴
カタバミは非常に繫殖力が強い植物です。
地上では茎が這うようにして伸びて地表を覆うように広がり、地中では球根が増殖して大根のような根を下ろします。実は熟すとはじけて多数の種子を飛ばし、1m以上も飛ばす種類もあります。種子には接着剤のような液がついていて、人や動物などにつくと、さらに広い範囲に分散します。
根を深く張るので、手で抜いても途中でちぎれて土中に根が残り、そこからまた生えてきてしまうので、一度繁殖すると駆除が困難です。駆除する場合は、除草剤などを使うと効果的です。
カタバミの種類
ここまで、カタバミの生態や人との関わりについてご紹介してきました。ここからは、たくさんの種類があるカタバミの中でも、代表的なものについてご紹介します。
ムラサキカタバミ
ムラサキカタバミは南アメリカ原産の種類で、日本には江戸時代末期に持ち込まれました。国内の広範囲で帰化しています。草丈は10〜30cmで、花期は5~7月です。ピンクや紫色の花を咲かせ、花の色から「キキョウカタバミ」とも呼ばれています。
アカカタバミ
アカカタバミはカタバミの変種で、葉や茎が紫色の品種です。花びらは5枚で黄色く小さな花を咲かせます。花びらの基部は赤みを帯びています。砂利や石垣など、日当たりがよく高温で乾燥する場所を好んで生えます。反対に、日陰や湿ったところは苦手です。夜になると葉を小さくたたむ様子から、「雀の袴」という別名もあります。
ミヤマカタバミ
ミヤマカタバミは日本に自生している種類で、本州から四国および九州の山地に生息しています。「ヤマカタバミ」や「エイザンカタバミ」とも呼ばれています。和名のミヤマカタバミの由来は深山に生息することから名づけられましたが、標高の低い山地の杉林やブナ林の林床や里山にも生えています。花の色は白色に細い紫色の線が入り、うつむき加減に咲きます。また葉はハート形ですが、葉先がややとがっています。
イモカタバミ
イモカタバミは南アフリカ原産の種類で、観賞用としても多く栽培されています。「フシネカタバミ」とも呼ばれています。
葉は3枚でハート形をしており、花びらは5枚です。おしべは黄色く、花よりも葉が大きくなっています。ムラサキカタバミよりも濃いピンク色の花を咲かせ、花の中心部はさらに濃い色をしています。花は4〜10月に咲き、葉にはツヤがあり肉厚です。
オオキバナカタバミ
オオキバナカタバミは南アフリカのケープタウン周辺が原産の種類です。別名「キイロハナカタバミ」とも呼ばれています。その名の通り大きな黄色い花が特徴で、長い花茎を伸ばし、カタバミよりも3倍ほど大きく黄色い花を数個咲かせます。花期は1月頃と、寒い時期に咲きます。葉はハート形の3枚葉で、紫色の斑点があります。総合対策外来種に指定されています。
オキザリス・トリアングラリス
ハート形の可愛い葉と花を持ち、繁殖力の強いカタバミ
カタバミはハート形の葉が特徴的で、クローバーのような可愛らしい姿が魅力。花も品種により黄色やピンク、紫、白など、さまざまな色を楽しめます。繁殖力が強いため、家紋にも使われていますが、その反面一度根付いてしまうと駆除が難しいため、植える場合は敷地からはみ出さないよう注意が必要です。
身近な野草で、畑や道端などでもいろいろな種類のカタバミを見ることができるので、ぜひ探してみてはいかがでしょうか?
Credit
文 / 3and garden
スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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