春を彩る花々の中でも、他の植物にはない魅力を備えた人気花「ラナンキュラス」。近年、個性あふれる品種が続々と生み出され、どの花色、どの花形のラナンキュラスを咲かせようか迷ってしまうほど。切り花としても、ガーデンを彩る花としても優秀なラナンキュラスの中でも、今、特に注目したいのが「栄養系」と呼ばれる品種です。コレクションしたくなるほど可愛い花、栄養系ラナンキュラスを7種セレクトしてご紹介します。また、その魅力と特徴、育て方のコツも詳しくご紹介します。
目次
2023年の春は栄養系ラナンキュラスで心躍る庭風景を演出!
春の花の代表といえば、チューリップですが、近年、主役に躍り出てきたのは「ラナンキュラス」! 幾重にも重なる優雅な花びらをふんわり広げる姿と花色のバリエーションが豊富なことで長年人気がありました。さらにこの10年ほどの間に、日本の育種家により魅力的な新品種が次々とデビュー。なかでも宮崎県の「綾園芸」が作出した花びらの光沢が美しいラックスシリーズは、切り花業界でもガーデンプランツとしても、高く評価されています。
今回注目する「栄養系ラナンキュラス」とは、球根を株分けして増殖したラナンキュラスで、種子での繁殖が難しいものが多く、大量生産ができません。そのため、手に入りにくく高価な分、親株の優れた性質を受け継いでいるのも特徴。それらは、花形、花色の美しさに加え、子孫を残すために球根を増やそうと、さまざまな厳しい環境に耐え抜く優れた性質を備えているのも魅力です。
個性あふれる魅惑の品種! 栄養系ラナンキュラス7選
ご紹介するのは、早春の花壇で一躍人気の「ラナンキュラス・ラックス」を手掛けたことでも知られる宮崎の「綾園芸」が育種・選抜して誕生したユニークな花が咲く品種です。
病害虫の心配もほとんどないので、初心者でも簡単に育てられるのも利点。庭植えはもちろん、鉢栽培でもラクに育てることができます。花がいっぱい咲いたら、切花にしてインテリア飾りとしてもおすすめです。花もちがよく、室内を明るくしてくれるので、いち早く春到来の喜びを感じられます。身近に咲かせて欲しい個性派揃いの品種を7種ご紹介します。
サロニカの虹
ピコティ咲きの大きな花が特徴。ピンクとホワイトの優しいコントラストの色彩は、春のやわらかな陽光に溶け込みます。花茎がすらりと高く伸びるので、切花としてもおすすめです。花もちのよさに、きっと驚くことでしょう。
クレタの輝き
前出‘サロニカの虹’と同じピコティ咲きで、花色がとっても鮮やか! 見ているだけで元気がもらえる赤とオレンジのビタミンカラーが特徴。もちろん切り花としても重宝する品種です。
イオ
切れ長のダリアのような花弁を持つ品種です。開花する年の気温や気候、土壌の栄養分などで表情がコロコロ変わる面白い特徴があります。小ぶりに咲いたかと思えば、次はその5倍ほどの大輪が咲いたり……、年によってどんな花が咲くか興味の尽きない品種です。
キプロアプリコット
大輪のダブル咲き美しいアプリコット色の花弁を持つ優美な品種です。じつは一度、廃番になりかけたものの、その花の美しさから奇跡の復活を遂げた品種です。
パープルイカロス
個体変異が大きく、同じ品種間でも、まるで表情の異なる花姿は、まさに千差万別。栽培環境によっても花形が変わる為、同じ品種をまとめて植えてても、さまざまな花が咲いているように見えます。‘パープルイカロス’だけの変異をコレクションするという楽しみもあります。
アラクネJr
グリーンの花の代表種 ‘アラクネ’ の実生系品種です。花形の個体差はあまりありませんが、花色の幅が広く、花弁の先がホワイト~グリーン~ピンクまでの変異があり、花の立体感が際立ちます。
トリトン
他に類のない黒花系品種です。ダークパープルの花色は、光線の具合で真っ黒に見えることもあります。黒系の花は珍しく、切り花でも人気の種類です。花はあまり開かず、少しずつ花弁が広がっていくため、花もちも他のラナンキュラスに比べて長いのも魅力です。
今が旬! 植えっぱなしOKのラナンキュラス・ラックス
ラナンキュラス・ラックスは花弁にワックスを塗ったような光沢のある独特な花びらから、ラナンキュラス×ワックス=ラックスと名づけられました。2012年に開催されたオランダのフロリアードにて3席を受賞のほか、日本フラワー・オブ・ザ・イヤー2017鉢物部門 「優秀賞」など、数々の賞を受賞したラナンキュラスの最新品種です。
ラナンキュラス・ラックスは植えっぱなしで夏を越し、寒さで多少葉が凍っても冬を越してくれるほど丈夫。そのうえ、病害虫の心配もほとんどないので、誰でも簡単に育てられます。
ラナンキュラスの植え替え方法
さらに素晴らしいパフォーマンスを楽しむために、購入したラナンキュラスは大きな鉢に植え替えましょう。
ラナンキュラスの一番の成長期は、10〜3月。お届けした鉢でもたくさんの花を咲かせますが、1~2カ月後には根詰まり(ポットバンド)を起こし、成長が止まってしまいます。
そこで、お届けした栄養系ラナンキュラスは、7~8号(直径21~24cm)の鉢に、ラナンキュラス・ラックスは10号(直径30cm)の鉢に植え替えることで、根詰まりせず、根がさらに成長します。限られた成長期間中にたくさんの花を咲かせて子孫を残そうとするので、次々に花茎を立ち上げてきます。
<準備するもの>
・オリジナル培養土「ナーセリーの土 18L」
・元肥として万能肥料の「オール・パーパス」
・土の活性化に欠かせない「SOIL FOOD」
・アブラムシ対策の殺虫殺菌剤「ベニカXガード粒剤」
・土の状態をリセットする「土のお守り」
・植物活力剤「メネデール」
【植え替え前の準備】あらかじめ、「ナーセリーの土 18L」に、元肥として「オール・パーパス」と「SOIL FOOD」を混ぜておきます。この時、アブラムシ対策として殺虫殺菌剤「ベニカXガード粒剤」と、根の生育を助けたり、土中に発生する球根の腐敗菌を吸着してくれる「土のお守り」を一緒に混ぜ込むと効果的です。
ラナンキュラス・ラックスの植え替え・株分けの手順を動画でチェック!
【植え付け後の施肥】ラナンキュラスは、思いのほか大食漢ですので、定期的に肥料を施しましょう。10号鉢に植え替えたラックスは、2~3年は植えっぱなしです。土が硬くなり排水が悪くならないよう、有機液肥の混合液を7~10日に1回のペースで与えるとよいでしょう。
ご紹介のような有機質の液肥を使うことで、土が硬くなり排水が悪くなりにくくなりますので、一石二鳥です。
<ラナンキュラスの休眠期の管理方法>
2~4月は元気いっぱいに咲いていたラナンキュラスも、5月になるとだんだんと花が咲かなくなり、黄変した葉も多くなってきます。
蒸し蒸しジメジメした梅雨~夏に向けて、ラナンキュラスは休眠の準備に入っていきます。緑色の葉は残しつつ、黄変した葉や花茎は順次取り除きましょう。
地上部が完全になくなったらいよいよ夏越しです。
ラナンキュラスの休眠方法は、地上部がなくなったころに球根を掘り上げて乾燥させる方法が一般的ですが、鉢植えのラナンキュラスは、なるべく手をかけずにラクして夏越しさせるのが平田ナーセリー流。
休眠したラナンキュラスの鉢ごと風通しがよく、直射日光が当たらない木陰などに移動しておくと、土中が高温にならずに済みます。休眠期は、基本的に何も行わなくて大丈夫です。水やりも必要ありません。
9月頃になったら夏越しした鉢から球根を取り出し、新しい用土で植え替えましょう。
植えっぱなしOKの「ラナンキュラス・ラックス」も鉢植え、庭植えともに、3年に1回は植え替えてあげましょう。ラナンキュラスをはじめとするキンポウゲ科の植物は、連作障害(れんさくしょうがい/同じ場所で長く育て続けていると生育障害が起こること)に敏感です。5年も同じ場所にいると、徐々に株が衰退しはじめます。
3年以上育てると、植替え時に取り出した球根は肥大しています。大きく育った球根を優しく手で株分けすると、写真のように1株が2〜4株に増える楽しみもあります。長く育てて増やすとお得! という特典があるのも、ラナンキュラスの魅力です。
ラナンキュラスの株分けの方法を動画でチェック!
ラナンキュラスにおすすめ!!ヘリテージガーデンポット
平田ナーセリーの全店舗で累計販売数1,000鉢を突破した人気のファイバーポットは、軽量素材のファイバーグラスで作られたコンテナ。エレガントなデザインと使い勝手を兼ね備え、イギリスのガーデンセンターでも大人気の鉢です。
テラコッタよりも軽く、強度も十分なヘリテージガーデンポットは、植え替えを繰り返して長く付き合っていくラナンキュラスの栽培にぴったり。スクエア形のデザインは、安定感があり、玄関やベランダ、ガーデンなど、どんなシチュエーションにもフィットするので、飽きずに長く使い続けられます。
植え替え作業が楽になる! こだわりの庭道具「燕三条のハンドスコップ&ハンドフォーク」
とことん使いやすさを追求した庭道具、ハンドスコップとハンドフォーク。作られているのは金物で世界的にも有名な新潟県燕三条です。柄の角度や刃のつくりなど各所に職人のこだわりが詰まったこのガーデンツール苗の植え替え時に、土をほぐす・穴を掘る・株分けなど、さまざまなシーンで活躍します。また、深く根を張った雑草を抜くのにも便利です。
ガーデニング初心者からプロの方にも選ばれるツールで、ガーデニング好きの方へのプレゼントにもぴったり。刃はお手入れしやすいステンレス製。刃全体の硬度を上げるために徹底して温度管理された真空状態の炉内で焼入れ処理を行っているので、歪みにくい・折れにくい頑丈なツールです。
取材・写真協力/平田ナーセリー
Credit
写真&文 / 3and garden
スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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