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【冬のガーデニング】真冬の庭で映えかっこいい! 宿根草Best8

【冬のガーデニング】真冬の庭で映えかっこいい! 宿根草Best8

冬の庭は葉が落ち、花が少なくて、見所がないなぁと思う人に、今おすすめしたいのが、枯れた姿までも美しいオーナメンタルな植物です。そんな冬の庭で活躍する宿根草を、分類の垣根を取り去った植物セレクトで話題のボタニカルショップのオーナーで園芸家の太田敦雄さんが8種セレクト。もちろん、花の季節も見所があり、冬まで楽しみが続くオーナメンタルな宿根草ばかり。晩冬までローメンテナンスなのも嬉しいポイントです。今が植えどき、入手どき!

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冬枯れの姿もオーナメンタルに楽しめる宿根草

冬期に葉が落ちる落葉性の宿根草や樹木を多く庭に植えているガーデナーにとっては、「冬枯れの庭をどう演出するか問題」は、とても悩ましい課題ですよね。

冬の庭
JSvideos/Shutterstock.com

寒い冬ですから、わざわざ見所を作って庭を眺めることもないなと割り切って、屋内で暖かく過ごすと考えるのも潔いですし、ビオラやストックなどの冬咲く一年草で華やかに乗り切るのも一案です。

今回、私が提案するのは、あえて冬枯れしてドライになった草姿や造形をオーナメンタルに楽しめる宿根草です。

オランダ人の植栽家、ピィト・アウドルフさんの作風に代表されるような、いわゆる「ナチュラリスティックプランティング」でも、オーナメンタルグラスや宿根草が晩秋の夕日に浮かぶ枯れ姿のシルエットは印象的ですよね。初冬の朝霜が降りた幻想的な景色などが洋書などで目に触れて、魅了された方も多いことでしょう。

ナチュラリスティックガーデン
Sergey V Kalyakin/Shutterstock.com

日本でもナチュラリスティックプランティングの認知度の高まりを受けて、秋の穂姿が主な観賞ポイントになるオーナメンタルグラスについての情報が、昨今格段に増えました。しかし、春〜秋に咲く花も美しい宿根草については、図鑑などでも花が中心で、秋冬の枯れ姿の観賞価値について言及されたり、写真が掲載されることはあまりありません。

ナチュラリスティックガーデン
Nancy J. Ondra/Shutterstock.com

秋~冬の枯れ姿を眺めるのを想定した植栽は、晩冬(関東地方平野部では2月下旬〜3月上旬)の刈り戻し時期まで、比較的ローメンテナンスで長く楽しめます。晩秋〜初冬にかけての枯れ姿も念頭に置いてオーナメンタルグラスと宿根草の植栽ができると、一年草で華やかに彩るような作業の手間やコストを抑えつつ、ナチュラルで見栄えのよい庭がつくれますよね。

では、晩秋〜初冬の枯れ姿もオーナメンタルに楽しめる宿根草を、乙庭セレクトで8つご紹介します。

セレクト1
アリウム ‘メデューサズヘア’

夏咲きの非球根タイプのアリウムです。暑さ寒さにも強く、草姿も乱れずによく咲くので、日本での宿根草植栽の素材としてとても有望です。

アリウム ‘メデューサズヘア’
PosiNote/Shutterstock.com

本種 ‘メデューサズヘア’ のような非球根タイプのアリウムは、近年では数品種日本でも流通するようになってきています。

アリウム

‘メデューサズヘア’ は、非球根タイプの夏咲きアリウムの品種の中でも開花後のドライのシードヘッドがオーナメンタルに長く残り、初冬まで小さいネギ坊主のような造形を楽しむことができます。

【DATA】
■ 学 名:Allium ‘Medusa’s Hair’
■ ネギ科
■ 主な花期:夏
■ 草 丈:30〜40cm
■ 耐寒性:強い
■ 耐暑性:強い
■ 日 照:日向

セレクト2
ヒロテレフィウム (セダム、ムラサキベンケイソウ)の仲間

かつてはセダム属(Sedum) に分類されていたベンケイソウの中でも、比較的大型に育つ仲間です。耐寒性がある多肉植物で、ぼってりとした多肉質の葉茎のテクスチャーが特徴的で、柔らかい雰囲気の宿根草による植栽の中でもいいコントラストを演出してくれます。

ヒロテレフィウム ‘ボンボン’
ヒロテレフィウム ‘ボンボン’。Yulia_B/Shuttertstock.com

カラーリーフ品種も多く作出されていて、春〜秋の庭でも植栽前面などに使うとリーフプランツとしても効果的です。夏〜秋にかけてクラウド(雲)状のシルエットが楽しめるピンクの花序を咲かせます。

ヒロテレフィウム ‘ネオン’
ヒロテレフィウム ‘ネオン’。Flower_Garden/Shutterstock.com

その花序は秋の深まりにつれ褐色の花がらになって乾いていき、横の広がりを感じさせるモコモコとしたボリューム感があるオーナメンタルな枯れ姿になっていきます。

ヒロテレフィウム
Lois GoBe/Shutterstock.com

縦の線が強調される穂や、霧状でエアリーなボリューム感の穂が出るグラス類などと組み合わせると、互いに引き立て合います。

【DATA】
■ 学 名:Hylotelephium
■ ベンケイソウ科
■ 主な花期:夏〜秋
■ 草 丈:30〜40cm
■ 耐寒性:強い
■ 耐暑性:強い
■ 日 照:日向

セレクト3
リアトリス‘コボルト’

夏にしっかりと立ち上がる花茎に咲く紫の穂花が、やや硬い棒状のテクスチャーで、垂直方向のデザイン性を与えてくれるリアトリスの矮性品種です。

リアトリス
Beekeepx/Shutterstock.com

リアトリスは、日本でも昭和期から一般家庭の花壇などに普及していたので、ガーデニング歴の長い方にはおなじみの素材かもしれません。日本の気候環境にも合い、性質が強く育てやすい植物です。畑の端などに何の気なしに植えられていることも多く「ややダサめ」な植物というイメージをお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。

リアトリス
Beekeepx/Shutterstock.com

本種‘コボルト’は、草丈40cm程度に収まるリアトリスの中でも矮性の品種です。前出のヒロテレフィウムとは、草丈が揃いつつも花序の形状が全く異なるので、よい対比となります。

グラスガーデン
Sergey V Kalyakin/Shutterstock.com

夏に咲いた花穂は、秋には暗褐色の茎の先にベージュブラウンの種子の穂が付いたまま、垂直性の高い棒状で乾いていきます。グラスの穂よりは硬いテクスチャーの縦線となって、オーナメンタルな冬枯れ姿を楽しめる素材としても活躍します。

【DATA】
■ 学 名:Liatris spicata ‘Kobold’
■ キク科
■ 主な花期:初夏〜夏
■ 草 丈:40cm程度
■ 耐寒性:強い
■ 耐暑性:強い
■ 日 照:日向

セレクト4
イリス・ドメスティカ (=ヒオウギ)

秋に熟して露出する照りのある真っ黒な種子は射干玉(ぬばたま)と呼ばれ、和歌の世界では古く万葉集の頃から「夜」「暗き」などの枕詞として詠われてきました。このように、日本でも非常に古くから親しまれてきたアヤメ科の植物です。

ヒオウギ
Fiko84/Shutterstock.com

イリス・ドメスティカは、日本をはじめとする東アジアに広く自生が見られます。日本の気候環境にも合い、栽培も容易で、花・種子・葉姿と観賞ポイントも多く、とても魅力的。しかし、それほど園芸業界には普及しておらず、ガーデン素材としてぜひ再評価したい植物です。

ヒオウギ
Dina Rogatnykh/Shutterstock.com

株元は細く立ち上がり、ヒオウギという和名のごとく、地際で平たく扇状に広がる草姿もオーナメンタルです。夏には季節感に似合うビビッドなオレンジの花を咲かせます。そして、秋には熟した実が裂けて、真っ黒で照りのある大粒の種子が露出し、初冬までの比較的長い期間、花の時期とは全く異なる美観を呈します。

ヌバタマ
Kariphoto/Shutterstock.com

季節ごとに全く異なる観賞価値があり、洋種の宿根草とも相性よく似合うので、日本におけるナチュラリスティックプランティングの素材として、たいへん有望といえるでしょう。

【DATA】
■ 学 名:Iris domestica
■ アヤメ科
■ 主な花期:夏
■ 草 丈:60cm程度
■ 耐寒性:強い
■ 耐暑性:強い
■ 日 照:日向

セレクト5
ディプロスム・フロヌム (=チーゼル)

ユーラシア大陸と北アフリカが原産の耐寒性二年草ですが、海外の宿根草植栽でも秋冬のオーナメンタルな見所として取り入れられることの多い植物です。

チーゼル
Martin Hibberd/Shutterstock.com

本種は、地際にロゼット葉を展開して冬を越し、初夏くらいからぐんぐんと花茎を伸ばします。草丈2mほどでトゲトゲした楕円球状の花序を咲かせる、ダイナミックでオーナメンタルな魅力のある植物です。ライトグリーンの楕円球状の花序の上部からリング状にピンクの花が咲き下がってくる開花の様子も面白いです。

チーゼル
Svetlanko/Shutterstock.com

開花後、秋には株が枯れますが、花茎と花穂は小麦色に乾いて長く残ります。収穫してドライフラワーとしても楽しめますし、そのまま乾いた姿を残して、冬までオーナメンタルに楽しむこともできます。

チーゼル
Pictures_for_You/Shutterstock.com

丈高く開花するので、宿根草植栽の後方に植えてもいいですし、植栽の中ほどにまばらに植え、尖塔のように咲く花を植栽のアクセントとして扱っても面白いでしょう。

【DATA】
■ 学 名:Dipsacus fullonum
■ マツムシソウ科
■ 主な花期:夏
■ 草 丈:1.5〜2m
■ 耐寒性:強い
■ 耐暑性:強い
■ 日 照;日向

セレクト6
ルドベキアの仲間

真夏でも元気にキク科らしい花を咲かせる定番プランツ、ルドベキア。ビビッドな夏花の印象が強いですが、花後に残るシードヘッドもオーナメンタルで、秋~冬の庭に映える素材になるということは、あまり意識されていないかもしれませんね。

ルドベキア
photoPOU/Shutterstock.com

ルドベキアの仲間は、冬枯れが進むにつれ花茎全体がこげ茶〜黒褐色に乾き、ベージュ色に枯れるものが多い冬の宿根草植栽の中でもよく目立ちます。

ルドベキアのシードヘッド
Beekeepx/Shutterstock.com

やや硬めの質感の花茎と黒い球状のシードヘッドが、いわゆる「ボタンプランツ」の役目を果たし、柔らかく細かい要素が多いグラス類の穂との形状的な対比も美しいです。

【DATA】
■ 学 名:Rudbeckia
■ キク科
■ 主な花期:夏
■ 草 丈:60〜80cm
■ 耐寒性:強い
■ 耐暑性:強い
■ 日 照:日向

セレクト7
モナルダ・ディディマ

和名の「タイマツバナ」の如く、夏に鮮烈な真っ赤な花を咲かせ、夏庭にビビッドな色合いを加えてくれる宿根草です。昭和期から花壇用の花として栽培されてきた植物なので、ガーデニング好きの方にはおなじみの植物といえるでしょう。

モナルダ
Tatyana Mut/Shutterstock.com

モナルダはハーブの分野では「ベルガモット」とも呼ばれ、アールグレイティーの香り付けに用いられる柑橘類のベルガモットオレンジに似た香りの葉でも知られています。モナルダの葉も消化器系の調子を整えたり、心身の鎮静をサポートするハーブティーとして用いられたりもします。

モナルダのシードヘッド
Tatyana Mut/Shutterstock.com

モナルダは夏にたくさん開花した後、秋にはグレージュ色に退色し、扁平球状のシードヘッドが長く残って、秋〜冬までオーナメンタルな枯れ姿を楽しむことができます。

【DATA】
■ 学 名:Monarda didyma х hybridus
■ シソ科
■ 主な花期:夏
■ 草 丈:80cm程度
■ 耐寒性:強い
■ 耐暑性:強い
■ 日 照:日向

セレクト8
フォエニクルム・ブルガレ (=フェンネル)

食用ハーブとしても知られるフェンネルも、秋冬の枯れ姿がオーナメンタルだということがあまり知られていない植物ではないでしょうか。じつは海外のナチュラリスティックプランティングでも、しばしばフェンネルのダイナミックでオーナメンタルなドライシードヘッドが秋〜冬の庭にシンボリックに植えられている事例が散見されます。

フェンネル
PaniYani/Shutterstock.com

フェンネルは日本の気候環境でも栽培しやすい宿根草ハーブで、フサフサとした羽毛状の香りのよい葉が茂り、春〜秋の庭でリーフプランツとしても楽しめます。さらには、夏に草丈1.5m程度に成長し、頂部にセリ科特有の散形花序の黄花を咲かせるさまもダイナミックで、宿根草植栽の中でとても見栄えがよいです。

フェンネル
ブロンズフェンネル。Peter Turner Photography/Shutterstock.com

フェンネルの花にはミツバチやチョウも多く訪れますし、葉や種子はハーブとして食用できますので、自然な暮らしやサステナビリティを意識した庭などにも似合う素材といえるでしょう。銅葉品種のブロンズフェンネル(Foeniculum vulgare ‘Purpureum’)も、カラーリーフの食用ハーブとして観賞価値が高いです。

フェンネル
Steve Silver Smith/Shutterstock.com

フェンネルは夏の開花後、秋にかけてしっかりした花茎と散形花序の骨格を残したまま、いわゆる「フェンネルシード」を実らせます。種子は次第に落ちますが、花茎と花序は枯れても長く残り、初冬までオーナメンタルに楽しめます。

フェンネル
Carmina_Photography/Shutterstock.com

草丈が高く、ドライの散形花序となる植物はほかにはあまりないので、前出のチーゼルと同様、冬の庭をオーナメンタルに楽しむ素材の中でも植栽アクセントとして活躍します。

【DATA】
■ 学 名:Foeniculum vulgare
■ セリ科
■ 主な花期:夏
■ 草 丈:1.5m程度
■ 耐寒性:強い
■ 耐暑性:強い
■ 日 照:日向

冬の庭
Nancy J. Ondra/Shutterstock.com

「冬になると何も無くなったように思うけど、季節の変化に心を合わせると
目の前とは違った景色が見えてくる。美しい形だ」 

(ピィト・アウドルフ 植栽家 1944 – )
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