【人気の宿根草】ペンステモンは寒さに強い! おしゃれな庭に選ばれる理由

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憧れのイングリッシュガーデンやナチュラルガーデンには欠かせない草花として、人気の高いペンステモン。花茎を立ち上げて釣鐘形の花をたわわに咲かせる姿は、主役として目を引く存在感があり、和洋どんな庭にも調和する宿根草(多年草)です。この記事では、ペンステモンの基本情報や特徴、種類、育て方などをご紹介します。
ペンステモンとは
人気の高いペンステモンとは、どんな特徴や性質を持っているのでしょうか。ここでは、ペンステモンの基本情報について、紐解いていきます。
基本情報

ペンステモンは、オオバコ科イワブクロ属(ペンステモン属)の宿根草(多年草)です。原産地は北米西部が主で、約250種の分布が確認されています。寒さに強く乾燥した土壌を好み、高温多湿を苦手とするので、夏越しが栽培のポイントです。種類によっては日本の酷暑を乗り切れず、一年草として扱われることもあります。
ペンステモンの草丈は種類が多いため、草丈は10〜100cmと幅があるため、購入時に庭のスペースに見合うかどうかラベルを確認しておくとよいでしょう。日本でポピュラーに出回っているものは、主に60〜100cmです。ペンステモンの開花期は主に6〜7月。常緑性なので冬も茎葉を残して越冬します。
代表的な品種

ペンステモンは種類や園芸品種が多数出回っていますが、特に人気が高く育てやすい品種についてご紹介しましょう。ペンステモン・ジギタリス‘ハスカーレッド’は、濃いブロンズ色の茎葉に淡いピンクの花を咲かせます。花のない時期もカラーリーフとして活躍。ペンステモン・ヘテロフィルス‘エレクトリックブルー’は草丈30〜50cmで、スカイブルーの花色に白い目が入ります。同じ種類の‘ヘブンリーブルー’は、草丈30〜50cm。透明感のあるブルーで、咲き進むと紫色へと変化します。
ペンステモンの特徴

ペンステモンは細い花茎を伸ばし、ベル形や筒形の花を連ねて咲かせるので縦のラインが強調され、華奢でスマートな印象をもたらします。花色は赤、ピンク、紫、白など。草姿は真っ直ぐに伸びる木立性のほか、這うように広がるものもあります。細長い葉は繊細なイメージで、緑色のほか美しいブロンズ色の茎葉を持つ種類もあります。
基本的な育て方
ここまで、ペンステモンの基本情報や品種、特徴などについてご紹介してきました。では、ここからはガーデニングの実践編として、ペンステモンの育て方について詳しく解説します。
望ましい栽培環境

【地植え】
日当たり、風通しのよい場所を好みます。ペンステモンは、水はけがよく乾燥気味の環境を好むので、水はけの悪い土壌であれば、腐葉土や堆肥を多めにすき込み、10〜20cmほど土を盛って周囲よりも高くしておくとよいでしょう。
ペンステモンは暑さが苦手なので、午前だけ日が差すような東側か、木漏れ日がチラチラと差す落葉樹の足元など、半日陰の涼しい場所で夏越しさせるのがおすすめです。また、真夏は日照りによる乾燥で株が弱ることがあるので、バークチップなどで株元にマルチングをしておくとよいでしょう。一方で、寒さには強いので植えっぱなしにしてかまいません。冬に低温を経験することで翌年の開花につながるので、温室などには移動しないでください。
【鉢植え】
基本的に日当たり、風通しのよい場所に置いて管理します。真夏は暑さに弱ってしまうことがあるので、風通しのよい半日陰など涼しい場所に移動してください。寒さには強いので、戸外に置いて越冬できます。
適している用土

【地植え】
植え付けの約2週間前に、腐葉土や堆肥、緩効性肥料を混ぜ込んで、よく耕しておきます。水はけのよい環境を好むので、腐葉土や堆肥を多めにすき込み、10〜20cmくらい土を盛って周囲よりも高くしておくとよいでしょう。土づくりをした後にしばらく時間をおくことで、分解が進んで土が熟成し、植え付け後の根張りがよくなります。
【鉢植え】
市販の草花用培養土を利用すると手軽です。
植え付け

ペンステモンの植え付け・植え替えの適期は、3月下旬〜5月か10月頃です。ただし、ほかの時期にも苗は出回っているので、花苗店などで入手したら早めに植え付けるとよいでしょう。
【地植え】
土づくりをしておいた場所に、苗の根鉢よりも一回り大きな穴を掘り、根鉢を崩して浅めに植え付けます。最後にたっぷりと水を与えましょう。複数の苗を植える場合は、40〜60cm程度の間隔を取っておきましょう。
【鉢植え】
鉢で栽培する場合は、8〜10号の鉢を準備します。用意した鉢の底穴に鉢底ネットを敷き、軽石を1〜2段分入れてから草花用の培養土を半分くらいまで入れましょう。苗をポットから取り出して根鉢をやや崩し、仮置きして高さを決めたら、少しずつ土を入れて、植え付けます。根を広げて浅めに植え付けることがポイントです。水やりの際にすぐあふれ出すことのないように、土の量は鉢縁から2〜3cmほど下の高さまでを目安にし、ウォータースペースを取っておいてください。土が鉢内までしっかり行き渡るように、割りばしなどでつつきながら培養土を足していきます。最後に、鉢底から流れ出すまで、十分に水を与えましょう。
水やりの仕方

水やりの際は、株が蒸れるのを防ぐために茎葉全体にかけるのではなく、株元の地面を狙って与えてください。
真夏に水やりする場合は、気温の高い昼間に行うと、すぐに水の温度が上がり、株が弱ってしまうので、朝か夕方の涼しい時間帯に行うことが大切です。
また、真冬に水やりする場合は、気温が低くなる夕方に与えると凍結の原因になってしまうので、十分に気温が上がった真昼に与えるようにしましょう。
【地植え】
根付いた後は、地植えの場合は下から水が上がってくるのでほとんど不要です。ただし、雨が降らない日が続くようなら水やりをして補います。
【鉢植え】
日頃の水やりを忘れずに管理します。ペンステモンは乾燥に強く、多湿に弱い性質をもっているので与えすぎに注意。土の表面がしっかり乾いたら、鉢底から水が流れ出すまで、たっぷりと与えましょう。茎葉がしおれそうにだらんと下がっていたら、水を欲しがっているサイン。植物が発するメッセージを逃さずに、きちんとキャッチしてあげることが、枯らさないポイントです。また、冬でもカラカラに乾燥させることのないように、適宜水やりを続けてください。
肥料の与え方

【地植え・鉢植えともに】
植え付け時に元肥として緩効性肥料を施しておきましょう。
その後は生育が著しくなる4〜5月と、暑さが落ち着いた10月頃に、緩効性肥料を株の周囲にばらまき、軽く耕して周囲の土に馴染ませます。
必要な作業

【花がら摘み】
ペンステモンの終わった花は早めに摘み取りましょう。まめに花がらを摘んで株まわりを清潔に保つことで、病害虫発生の抑制につながりますよ! また、いつまでも花がらを残しておくと、種をつけようとして株が消耗し、老化が早まって花数が少なくなってしまうので注意。花がらをまめに摘み取ると、次世代を残そうとして次から次に花がつき、長く咲き続けてくれます。
【切り戻し】
ひと通り開花が終わったら、切り戻します。地際から草丈の半分くらいの高さを目安に、深めにカット。込み合っている部分があれば、数本を元から切り取って蒸れ対策をしておきましょう。風通しをよくすることで、夏越ししやすくなります。
注意すべき病気や害虫

【病気】
ペンステモンはあまり病気の心配はありませんが、灰色かび病が発生することがあります。
灰色かび病は花や葉に発生しやすく、褐色の斑点ができて灰色のカビが広がっていきます。気温が20℃ほどの多湿の環境下で発生しやすい病気です。ボトリチス病、ボト病などとも呼ばれています。風通しが悪く込み合いすぎていたり、終わった花や枯れ葉を放置していたりすると発生しやすくなるので注意。花がらをこまめに摘み取り、茎葉が込み合いすぎている場合は、間引いて風通しよく管理しましょう。
【害虫】
ペンステモンに発生しやすい害虫はアブラムシなどです。
アブラムシは、3月頃から発生しやすくなります。2〜4mm程度の小さな虫で繁殖力が大変強く、発生すると茎葉にびっしりとついて吸汁し、株を弱らせるとともにウイルス病を媒介することにもなってしまいます。見た目もよくないので、発生初期に見つけ次第こすり落としたり、水ではじいたりして防除しましょう。虫が苦手な方は、スプレータイプの薬剤を散布して退治するか、植え付け時に土に混ぜ込んで防除するアブラムシ用の粒状薬剤を利用するのがおすすめです。
植え替え・鉢替え

【地植え】
地植えにしている場合は、数年は植えたままにしてもかまいません。しかし、大株に育って込み合ってきたら、掘り上げて株分けして植え直し、株の若返りをはかるとよいでしょう。
【鉢植え】
鉢植えで楽しんでいる場合、成長とともに根詰まりして株の勢いが衰えてくるので、1〜2年に1度は植え替えることが大切です。植え替え前に水やりを控えて土が乾いた状態で行うと、作業がしやすくなります。鉢から株を取り出して根鉢をくずし、新しい培養土を使って植え直します。もっと大きく育てたい場合は、元の鉢よりも大きな鉢を準備し、軽く根鉢を崩す程度にして植え替えてください。
増やし方

ペンステモンは、株分け、挿し芽、種まきで増やすことができます。
【株分け】
ペンステモンの株分けの適期は10月頃です。株を植え付けて数年が経ち、大きく育ったら株の老化が進むので、「株分け」をして若返りを図ります。株を掘り上げて数芽ずつ付けて根を切り分け、再び植え直しましょう。それらの株が再び大きく成長し、同じ姿の株が増えていくというわけです。
【挿し芽】
挿し芽とは、茎葉を切り取って地面に挿しておくと発根して生育を始める性質を生かして増やす方法です。植物のなかには挿し芽できないものもありますが、ペンステモンは挿し芽で増やせます。
ペンステモンの挿し芽の適期は、5〜6月か10月頃です。新しく伸びた茎を2節以上つけて切り口が斜めになるように切り取ります。採取した茎(挿し穂)は、水を張った容器に1時間ほどつけて水あげしておきましょう。その後、水の吸い上げと蒸散のバランスを取るために下葉を2〜3枚取ります。セルトレイを用意して新しい培養土を入れ、水を入れて十分に湿らせておきます。培養土に穴をあけ、穴に挿し穂を挿して土を押さえてください。発根するまでは明るい日陰に置いて乾燥させないように管理します。根が回ってきたら3号の黒ポットに鉢上げし、十分に育ったら植えたい場所へ定植しましょう。挿し芽のメリットは、親株とまったく同じ性質を持ったクローンになることです。
【種まき】
ペンステモンは、ビギナーでも種まきから簡単に育てられますよ! 種まきからスタートするメリットは、輸送などによる苗への負担がかからず、環境に馴染みやすいことです。敷地が広くて多数の苗を植えたい場合は、コストカットにもなります。
ペンステモンの種まきの適期は4〜5月頃か、10月頃で、発芽適温は20℃前後です。
種まき用のセルトレイに草花用にブレンドされた市販の培養土を入れて十分に水で湿らせた後、1穴当たり1〜2粒ずつまきます。ペンステモンの種は「好光性種子」といって、発芽に光を必要とするために土をかぶせないことがポイントです。種が細かいので、水やりは浅く張った容器にセルトレイを置いて、底から給水させるとよいでしょう。
発芽までは2週間以上かかりますが、乾燥・過湿にならないように適度な水管理をしてください。発芽後は日当たりがよく、風通しのよい場所で管理します。本葉が2〜3枚ついたら根鉢を傷めないようにトレイから取り出し、3号の黒ポットに鉢上げします。さらに育苗して根鉢が充実し、十分に育ったら植えたい場所に定植します。
ペンステモンはいろんなタイプの庭に調和する万能草花

花茎を長く立ち上げてベル形の花を鈴なりにつけるペンステモンは、華やかな雰囲気を醸し出し、イングリッシュガーデンやナチュラルガーデンで活躍する草花です。長く伸ばした花茎は風にゆらゆらと揺れる繊細な雰囲気があり、白や紫、淡いピンクなど花色を選べば和風の庭にもよく馴染みます。
ペンステモンは草丈が高くなる品種が多く、迫力があるので花壇では後ろのほうへ配して背景にするとよいでしょう。足元が寂しくなりがちなので、こんもりと茂るタイプの草花を手前に組み合わせるのもおすすめです。
チャーミングは花姿のペンステモンでおしゃれに庭を彩ろう

一度は育ててみたいと思わせる、華やかな花姿が魅力のペンステモンは、おしゃれな庭をつくる人に選ばれる人気の草花だけに品種が多数揃います。数ある中からお気に入りの品種を見つけて、庭やベランダに迎え入れてはいかがでしょうか。
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