TBSテレビ「マツコの知らない世界」“美しく優雅~バラの世界” にも出演、バラに精通する「日本ローズライフコーディネーター協会」代表の元木はるみさんが選ぶ、バラの‘神5’。バラを育てて35年の生粋のロザリアンが悩みに悩んだ末にリストアップしたバラは、魅惑的な花色、豊かな香り、食べることができる花びら、ゴージャスな風景など、元木さんを長年ときめかせてきたバラたちです。「もし万が一枯れても、きっとまた購入したい!」と思わせる5種のバラを、美しい写真とともにご紹介します。
目次
元木はるみさんがバラを選ぶ基準とは
神奈川県の自宅の庭で多数のバラを育てながら、その喜びや栽培のコツなどを執筆、またカルチャースクールなどでも解説する元木はるみさん。最愛のバラを育てて約35年になるロザリアンです。
元木さんがバラの苗を購入するに至るまでに確認することは、系統や樹高、樹形など、固有の性質です。次に、その情報をもとに、植えるのにふさわしい場所を考えます。日当たりや、構造物の支えが必要かなどを含め、庭のどこに植えたらよく育つか、鉢栽培の場合はどこに置くとよいかなど。そして、咲いている姿や香りを知るために、バラの専門店や庭園などで、なるべく実物を見ます。
実際に見て、心がときめくかも大きなポイントです。そんな元木さんが、自身のチェックポイントを満たし、実際に育ててきた経験から選んだ5種のバラをご紹介します。
マストバイ①
20年間、ずっと心をときめかせてくれるバラ「クロッカス・ローズ(Crocus Rose)」
系統:シュラブローズ(S)/四季咲き性/2000年イギリス作出/作出者:David Austin
このバラを初めて見たのは、以前開催された花イベント「国際バラとガーデニングショウ」の会場でした。バラの花々で埋め尽くされた会場のなかでも、特にこのバラがお披露目されたイングリッシュローズの新品種が植栽されたコーナーは、人気の的でした。ミレニアムイヤーに発表されたバラですが、「華やか」と表現するよりは、花が内包する‘秘められた美しさ’を強く感じました。
会場内の室内灯では、花色はほとんど白っぽく見えましたが、グリーンアイを覗かせて、ほんのわずかに黄色~アプリコット色が見え隠れするニュアンスがあるその花色は、とても繊細で心奪われたことを覚えています。それからすぐに苗を入手して庭に植えてから、もう20年以上。今でも、最初の出会いの時に感じた ‘秘めた美しさ’に心ときめきます。
アプリコット色のつぼみから、カップ咲き、大輪ロゼット咲きと次第に花開き、アプリコットクリーム~クリーム色へと変化していきます。そのすべての花色と花姿を身近に眺めていたくて、束ねて室内に飾るのも楽しみの一つです。
優しい花色、優しい佇まいで、脇役にも主役にもなる大変エレガントなバラです。
マストバイ②
花数たっぷりで他のバラとも相性がよい「スノー・グース(Snow Goose)」
系統:シュラブローズ(S)/四季咲き性/1996年イギリス作出/作出者:David Austin
花径3cmほどのセミダブルの小輪花が房状に咲いて、ナチュラル感があるバラです。長年、‘スノー・グース’を育ててきましたが、以前の庭ではこのバラのよさを生かしきれていなかったのではと反省しています。現在の庭では、しっかり日が当たる場所に植えたためか、すくすく元気に育ち、春は壁を覆い尽くすほどたくさんの花を咲かせてくれます。
イングリッシュローズでありながら、つるバラとして利用することができ、花壇の背景や庭の奥側に配置するのにも向くバラです。栽培には、壁面やフェンス、アーチなどの支えが必要です。
上写真では、先にご紹介した大輪のバラ‘クロッカス・ローズ’を囲むように添えているのが、小輪の‘スノー・グース’です。このアレンジメントでも分かるように、どんなバラとも相性がよく、ガーデンでもアレンジメントでも重宝します。
マストバイ③
食べられる芳香豊かなバラ「食香バラ‘豊華’(ほうか)」
系統:不明/一季咲き性/作出年・作出国・作出者不明
ダマスク香にスパイシー香が微かに加わった強い香り。ワックス成分の少ない花びらは柔らかく、苦味やえぐみも少ないことから、中国では1,000年以上も前から、食用・薬用・香料として利用されてきた唯一無二のバラです。現在でも山東省平陰のバラの村では、このバラを多数栽培して出荷しています。このような歴史とロマン溢れるバラを自宅で身近に栽培できるのは、大変ありがたいことです。
このバラが咲く時期は、毎朝花を摘み、花弁をさまざまな方法で暮らしに役立てています。例えば、花びらをビネガーに漬けたものを水や炭酸水で割ると、喉越しよく、バラの香りが口いっぱいに広がる夏にぴったりの飲み物に。また、砂糖やオリーブオイル、ハーブソルト、レモン汁を加えれば、バラ色のドレッシングが出来上がります。
‘豊華’の柔らかく美味しい花弁は、生のまま食すこともできます。サラダやお菓子に生の花弁を散らせば、彩り豊かな一品に。病害虫にも強い性質で、私は完全無農薬でこのバラを育てています。
マストバイ④
ゴージャスに咲く!「フランソワ・ジュランヴィル(François Juranville)」
系統:ランブラー(R)/一季咲き性/1906年フランス作出/作出者:Barbier Frères & Compagnie
バラで風景を作りたい時に、大活躍してくれるつる性のバラです。暑さ・寒さに強く、枝は匍匐(ほふく)性でよく伸長し、パーゴラやアーチなどの構造物に誘引するのに向く性質です。我が家では、サンルームの開口部を縁取るように設置したパーゴラに絡めていますが、外から見ても室内から見てもバラの花々に囲まれるゴージャスな感覚が味わえます。
引っ越し前の住まいでも、窓の周りを縁取るように誘引し、約10mを超す大木にまで成長しました。しかし、現在の住まいに移る際、掘り起こして移植するには大きすぎて断念。この庭では、新しく苗を購入しなおして植栽しました。
マストバイ⑤
魅惑の花色と香りをまとう「ブルー・ムーン・ストーン(Blue Moon Stone)」
系統:シュラブ(S)/四季咲き性/2017年日本作出/作出者:河本純子
グリーンがかったつぼみから、薄紫色の中輪ロゼット咲きの花が開花する、その過程がなんともロマンチック! 花に顔を近づけると、ダマスク香に甘さが加わった心地よい香りを堪能できます。花色は徐々に退色していきますが、花もちがよいため、ひと房の中に紫~白のグラデーションを見ることができます。
剪定することでコンパクトな樹形に仕立てられるシュラブローズなので、鉢植えで育てるのにも向いています。
Credit
写真&文 / 元木はるみ - 「日本ローズライフコーディネーター協会」代表 -
神奈川の庭でバラを育てながら、バラ文化と育成方法の研究を続ける。近著に『薔薇ごよみ365日 育てる、愛でる、語る』(誠文堂新光社)、『アフターガーデニングを楽しむバラ庭づくり』(家の光協会刊)、『ときめく薔薇図鑑』(山と渓谷社)著、『バラの物語 いにしえから続く花の女王の運命』、『ちいさな手のひら事典 バラ』(グラフィック社)監修など。TBSテレビ「マツコの知らない世界」で「美しく優雅~バラの世界」を紹介。
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