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春を告げる可憐なヒマラヤユキノシタ! 特徴や育て方のポイントを解説

春を告げる可憐なヒマラヤユキノシタ! 特徴や育て方のポイントを解説

shepherdsatellite/Shutterstock.com

春に花茎を立ち上げて、ピンクや白の花をたっぷりと咲かせるヒマラヤユキノシタ。常緑性の多年草なので、冬でもみずみずしいグリーンを保つのも長所の一つです。この記事では、ヒマラヤユキノシタの基本情報や特徴、用途、詳しい育て方、種類などについてご紹介します。

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ヒマラヤユキノシタの主な特徴

楚々とした風情が魅力のヒマラヤユキノシタ。まずは、基本情報や花・茎葉の特徴、用途などについてご紹介します。

基本情報

ヒマラヤユキノシタ
scott mirror/Shutterstock.com

ヒマラヤユキノシタは、ユキノシタ科ヒマラヤユキノシタ属(ベルゲニア属)の多年草です。草丈は20〜40cmで、常緑性のため冬でもみずみずしい葉姿を楽しめます。原産地は、東アジア〜中央アジア。寒さに強い一方で、高温多湿の環境を苦手とする性質を持っています。ヒマラヤユキノシタという名前は、学名のベルゲニア・ストラケイ(Bergenia stracheyi)に和名としてつけた名前が一般化したもの。また、エレファンツ・イヤーの別名もあります。

花や葉の特徴

ヒマラヤユキノシタ
shepherdsatellite/Shutterstock.com

ヒマラヤユキノシタの開花期は3〜4月。花色は濃いピンク、淡いピンク、白などがあります。やや太い花茎を長く伸ばした頂部に、花径1〜3cmほどの5弁花を多数咲かせるのが特徴です。一つひとつの花は小さいものの、花序を作り出すため色の塊となり、大変華やかです。葉は厚みのある楕円形。茎は赤紫色で、地面に這うように広がります。

用途

ヒマラヤユキノシタ
ZUN310/Shutterstock.com

草丈が低く、這うようにして増え広がる性質なので、地表を隠してくれるグラウンドカバープランツとして活躍します。地表が覆われることで、土壌の流出防止や雑草除けにも役立ちます。また、乾燥に耐える性質のため、緩やかな斜面を生かして作るロックガーデンにも好適です。

ヒマラヤユキノシタの育て方のポイント

ここまで、ヒマラヤユキノシタの基本情報や特徴、名前の由来、用途などについてご紹介してきました。では、ここからはガーデニングの実践編として、適した栽培環境や植え付け、水やりや施肥、気をつけたい病害虫、増やし方など、育て方について詳しく解説します。

栽培に適した場所

ヒマラヤユキノシタ
ikwc_exps/Shutterstock.com

ヒマラヤユキノシタは、日向から半日陰まで、場所を選ばずよく育ちます。ただし、あまりに暗い場所では、ヒョロヒョロと間のびした草姿になり、花つきも悪くなるので注意。乾燥に強く、斜面やロックガーデン、雨が当たりにくい軒下でも栽培可能です。高温多湿を嫌うので、真夏は朝のみ日が差す東側や、落葉樹の足元などチラチラと木漏れ日が差すような半日陰の涼しい場所での管理が向いています。寒さには強いため特に対策の必要はなく、戸外で越冬できます。

土づくり

土
funnyangel/Shutterstock.com

【地植え】

植え付けの約2週間前に、腐葉土や堆肥、緩効性肥料を混ぜ込んで、よく耕しておきます。土づくりをした後にしばらく時間をおくことで、分解が進んで土が熟成し、植え付け後の根張りがよくなります。

【鉢植え】

市販の花木用培養土を利用すると手軽です。自身で用土を配合する場合は、赤玉土小粒7、腐葉土3の割合で混ぜ合わせて用いるとよいでしょう。

植え付け・植え替え

ガーデニング
Vlyaks/Shutterstock.com

ヒマラヤユキノシタの植え付け・植え替えの適期は、3〜5月か、9〜11月です。ただし、ほかの時期にも苗は出回っているので、花苗店などで入手したら早めに植え付けるとよいでしょう。

【地植え】

土づくりをしておいた場所に、苗の根鉢よりも一回り大きな穴を掘ります。苗をポットから出して軽く根鉢をほぐしたら、寝かせて茎を横にし、浅く植え付けます。最後にたっぷりと水を与えましょう。

地植えの場合、環境に合えば植え替える必要はありません。ただし、植え付けから数年が経って株が込み合ってきたら、掘り上げて株分けしてください。改めて植え直し、株の若返りをはかりましょう。

【鉢植え】

鉢で栽培する場合は、入手した苗よりも1〜2回り大きな鉢を準備します。用意した鉢の底穴に鉢底ネットを敷き、軽石を1〜2段分入れてから草花用の培養土を半分くらいまで入れましょう。

苗をポットから取り出して軽く根鉢をくずし、鉢の中に仮置きし、高さを決めます。茎は一方向のみに伸びていく性質があるため、新芽が伸びる方向を少しあけて配置するようにしてください。

苗を倒して茎が横向きになるように配し、少しずつ土を入れて、植え付けます。水やりの際にすぐあふれ出すことのないように、土の量は鉢縁から2〜3cmほど下の高さまでを目安にし、ウォータースペースを取っておいてください。土が鉢内までしっかり行き渡るように、割りばしなどでつつきながら培養土を足していきます。最後に、鉢底から流れ出すまで、十分に水を与えましょう。寄せ植えの素材として、大鉢にほかの植物と一緒に植え付けてもOKです。

鉢植えで楽しんでいる場合、成長とともに根詰まりして株の勢いが衰えてくるので、1〜2年に1度は植え替えることが大切です。植え替え前に水やりを控えて土が乾いた状態で行うと、作業がしやすくなります。鉢から株を取り出してみて、根が詰まっていたら、根鉢をくずして古い根などを切り取りましょう。根鉢を1/2〜1/3くらいまで小さくして、元の鉢に新しい培養土を使って植え直します。

水やり

水やり
wavebreakmedia/Shutterstock.com

水やりの際は、株が蒸れるのを防ぐために茎葉全体にかけるのではなく、株元の地面を狙って与えてください。

真夏に水やりする場合は、気温の高い昼間に行うと、すぐに水の温度が上がり株が弱ってしまうので、朝か夕方の涼しい時間帯に行うことが大切です。

また、真冬に水やりする場合は、気温が低くなる夕方に与えると凍結の原因になってしまうので、十分に気温が上がった真昼に与えるようにしましょう。

【地植え】

根付いた後は、地植えの場合は下から水が上がってくるのでほとんど不要です。ただし、雨が降らない日が続くようなら水やりをして補います。

【鉢植え】

日頃の水やりを忘れずに管理します。ただし、ヒマラヤユキノシタは乾燥に強い植物なので、いつもジメジメした状態にしておくと、根腐れの原因になってしまいます。土の表面がしっかり乾いたら、鉢底から水が流れ出すまで、たっぷりと与えてください。

茎葉がしおれそうにだらんと下がっていたら、水を欲しがっているサイン。植物が発するメッセージを逃さずに、きちんとキャッチしてあげることが、枯らさないポイントです。また、冬は土が乾燥しづらくなるので、与える頻度を控えめにしつつ、適宜水やりを続けてください。

肥料

肥料
New Africa/Shutterstock.com

【地植え】

植え付け時に元肥として緩効性肥料を施しておきましょう。追肥として、10〜11月に、株の周囲に緩効性肥料をばらまき、軽くスコップなどで耕して土に馴染ませます。追肥の適期以外でも、生育期に株の勢いがない時などがあれば、液肥を与えて様子を見てください。

【鉢植え】

植え付け時に元肥として緩効性肥料を施しておきましょう。追肥は、3〜4月と9〜11月に緩効性肥料を株の周囲にまき、スコップなどで軽く耕して土に馴染ませておきます。

日常のお手入れ

剪定
Andrii Zastrozhnov/Shutterstock.com

【花がら摘み】

終わった花は、適宜摘み取りましょう。花首の下ではなく、長く伸びた花茎の根元から切り取ってください。まめに花がらを摘んで株まわりを清潔に保つことで、病害虫発生の抑制につながりますよ! また、いつまでも花がらを残しておくと、種子をつけようとして株が消耗し、老化が早まって花数が少なくなってしまうので注意。花がらをまめに摘み取ると、次世代を残そうとして次から次に花がつき、長く咲き続けてくれます。種子を採取したい場合は、開花が終わりそうな頃に花がら摘みをやめて、種子をつけさせましょう。

【枯れ葉の整理】

生育期間中は新陳代謝を繰り返し、新葉を展開するとともに、枯れ葉も出ます。枯れて傷んだ葉を見つけたら、こまめに取り除いて株まわりを清潔にし、病害虫の抑制に努めましょう。また、生育期に入る前の2月中旬〜3月にも、冬に枯れた葉が多くあれば取り除いておきます。

夏越し・冬越し

【夏越し】

地植えにしている場合、真夏に強い日差しが照りつける環境では、遮光ネットを張って半日陰の環境を作るとよいでしょう。鉢植えの場合は、風通しがよく涼しい半日陰の場所へ移動して管理します。

【冬越し】

寒さには強いので、特に対策の必要はなく、戸外で越冬できます。

注意すべき病害虫

カイガラムシ
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【病気】

ヒマラヤユキノシタは、ほとんど病気を発症する心配はありませんが、たまに炭そ病を発症することがあります。

炭そ病は、春や秋の長雨の頃に発生やすくなります。カビが原因で発生する伝染性の病気で、葉に褐色で円形の斑点が現れるのが特徴です。その後、葉に穴があき始め、やがて枯れ込んでいくので、早期に対処することが大切です。斑点の部分に胞子ができ、雨の跳ね返りなどで周囲に蔓延していくので、被害を見つけたらすぐに株を除去して土ごと処分しておきましょう。密植すると発病しやすくなるので、茂りすぎたら葉を間引いて風通しよく管理してください。水やり時に株全体に水をかけると、泥の跳ね返りをきっかけに発病しやすくなるので、株元の表土を狙って与えるようにしましょう。

【害虫】

ヒマラヤユキノシタに発生しやすい害虫は、カイガラムシやハダニなどです。

カイガラムシの体長は2〜10mmほど。茎などについて吸汁し、だんだんと弱らせていきます。また、カイガラムシの排泄物にすす病が発生して二次被害が起きることもあるので注意。硬い殻に覆われており、薬剤の効果があまり期待できないので、ハブラシなどでこすり落として駆除するとよいでしょう。

ハダニは、葉裏に寄生して吸汁する害虫です。体長は0.5mmほどと大変小さく、黄緑色や茶色い姿をしています。名前に「ダニ」がつきますが、クモの仲間。高温で乾燥した環境を好み、梅雨明け以降に大発生しやすいので注意が必要です。繁殖力が強く、被害が大きくなると、葉にクモの巣のような網が発生することもあります。ハダニは湿気を嫌うため、高温乾燥期には葉裏にスプレーやシャワーなどで水をかけて予防するとよいでしょう。

ヒマラヤユキノシタの増やし方

種まきポット
Kunlanan Yarist/Shutterstock.com

ヒマラヤユキノシタは、種まき、株分け、根伏せで増やすことができます。それぞれの増やし方について、詳しく解説します。

種まき

種まきするメリットは、輸送などによる苗への負担がかからず、環境に馴染みやすいことです。敷地が広くてたくさんの苗が欲しい場合には、コストカットにもなります。

ヒマラヤユキノシタの種子は市販されていませんが、植え付けた株が開花した後につける小さな種子を採取し、それを播いて増やすことができます。種まきの適期は3〜5月か9〜11月です。

黒ポットに市販の草花用培養土を入れ、種子を数粒ずつ播き、最後にたっぷりと水やりをしましょう。発芽までは風通しのよい半日陰に置き、乾燥しないように適度な水管理をしてください。発芽後、弱々しい苗があれば適宜間引いて1本立ちにし、日当たり、風通しのよい場所で管理します。しっかりした苗に育ったら、植えたい場所に定植しましょう。種まきから開花までは3年ほどかかるので、時間をかけて見守ってください。

※園芸品種の場合、親と同じ草姿になるとは限りません。

株分け

ヒマラヤユキノシタの株分けの適期は、4〜6月か9〜11月です。株を植え付けて数年が経ち、大きく育ったら株の老化が進むので、「株分け」をして若返りをはかります。株を掘り上げて4〜5芽ずつ付けて根を切り分け、再び植え直しましょう。それらの株が再び大きく成長し、株が増えていくというわけです。

根伏せ

ヒマラヤユキノシタの根伏せの適期は、3〜4月頃です。

まず、黒ポットに市販の草花用培養土を入れて、十分に湿らせておきましょう。株を掘り上げた際に、比較的太い根を採取します。4〜5cmくらいにカットして黒ポットに根を平らに置き、2cmほど土をかぶせておきます。水切れしないように管理すると、根から芽を出し、新しい個体として生育し始めます。しばらく育苗し、ポットに十分に根が回った頃に、植えたい場所に植え付けます。根伏せのメリットは、親株とまったく同じクローンになることです。

ヒマラヤユキノシタに似ている品種

シベリアユキノシタ
シベリアユキノシタ。YURY TARANIK/Shutterstock.com

ヒマラヤユキノシタは、基本的には学名のベルゲニア・ストラケイの和名です。しかし、ヒマラヤユキノシタ属は約10種が確認されており、これらもヒマラヤユキノシタとして流通することがあります。

ベルゲニア・コルディフォリアは、和名はシベリアユキノシタ。原産地はシベリアやモンゴルの森林、岩場などで、寒さに強いのが特徴。花は淡いピンクで、草丈は60cmほどになります。ベルゲニア・クラシフォリアは、和名はナガバユキノシタ。原産地は中央アジアや東アジアで、やや大ぶりに育ちます。

花の少ない季節の庭にヒマラヤユキノシタを

ヒマラヤユキノシタ
islavicek/Shutterstock.com

ヒマラヤユキノシタは寒さに強く、一年を通してみずみずしいエバーグリーンを保ちます。開花期は山野草のように可憐な風情で魅力的。一度根付けば毎年花を咲かせ、寿命が長いのも美点の一つです。ぜひ庭でヒマラヤユキノシタの栽培にチャレンジしてはいかがでしょうか。

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