グラウンドカバーに最適! じつは花が咲いて実もつくリュウノヒゲ(ジャノヒゲ)をご紹介

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一年を通して、青々とした緑葉を保ち続け、冬でも庭をみずみずしく彩ってくれるリュウノヒゲ。草丈が低くまとまるので、地表を覆うグラウンドカバーとしても人気があります。この記事では、リュウノヒゲの基本情報や種類、育て方などをご紹介します。
目次
リュウノヒゲってどんな植物? 基本情報と特徴を解説

リュウノヒゲはキジカクシ科ジャノヒゲ属の常緑性多年草。原産地は日本を含む東アジアで、日本の気候によく馴染み、暑さにも寒さにも強く、育てやすいのが特徴です。細長い葉を地際から放射状に伸ばし、草丈は10〜40cm。開花期は7〜8月で、小さな白い花を咲かせたのち、秋から冬にかけて瑠璃色の実をつけます。
ジャノヒゲとも呼ばれるリュウノヒゲ! 名前の由来と花言葉

リュウノヒゲの学名はOphiopogon japonicusで、英名はDwarf mond grass。
漢字では龍の髭と書き、草姿が架空の生き物である龍の口まわりに生えている髭のようだとして、この名前が付けられたようです。ジャノヒゲ(蛇の髭)と呼ばれることもあります。花言葉は「変わらぬ思い」「不変の心」「深い思いやり」など。
リュウノヒゲの仲間には小型のタマリュウや斑入りの品種もある!

リュウノヒゲは、品種改良によってさまざまな園芸品種が出回っています。葉が短くコンパクトにまとまる‘玉竜’や、細い葉に縦縞の斑が入る‘白竜’、シックな黒い葉を持つオオバジャノヒゲ‘黒竜’などが人気です。
リュウノヒゲを上手に育てるポイント
ここまで、リュウノヒゲの基本情報や名前の由来、種類などについてご紹介してきました。では、ここからはガーデニングの実践編として、適した栽培環境や植え付け、水やりや施肥、手入れ、増やし方など、育て方について詳しく解説します。
リュウノヒゲを育てるのに適した環境

日向から半日陰まで、場所を選ばずよく育ちます。ただし、花や実姿を楽しみたい場合は、日当たりのよい場所を選ぶとよいでしょう。葉に斑が入る品種は、真夏に強光線を浴びると葉焼けして見栄えが悪くなるので、朝のみ日が差す東側や、落葉樹の足元などチラチラと木漏れ日が差すような半日陰が向いています。リュウノヒゲは土壌を選ばずよく育ち、暑さ寒さにも強いのが特徴です。関東以西の暖地では特に寒さ対策の必要はなく、戸外で越冬できます。
リュウノヒゲを育てるための土づくり

【地植え】
植え付けの約2週間前に、腐葉土や堆肥、緩効性肥料少量を混ぜ込んでよく耕してください。土づくりをした後にしばらく時間をおくことで、分解が進んで土が熟成し、植え付け後の根張りがよくなります。
【鉢植え】
草花用にブレンドされた、市販の培養土を利用すると手軽です。
リュウノヒゲの植え付けと植え替え

リュウノヒゲの植え付け・植え替えの適期は、真夏や真冬を除いた3〜6月か、9〜11月です。ただし、ほかの時期にも苗は出回っているので、花苗店などで入手したら早めに植え付けるとよいでしょう。
【地植え】
土づくりをしておいた場所に、苗の根鉢よりも一回り大きな穴を掘り、軽く根鉢をほぐして植え付けます。最後にたっぷりと水を与えましょう。複数の苗を植える場合は、5〜10cmの間隔を取ってください。
庭で育てている場合、環境に合えば植え替える必要はありません。ただし、植え付けから5〜6年が経って株が込み合っているようなら、掘り上げて株分けしてください。改めて植え直し、株の若返りをはかりましょう。
【鉢植え】
鉢で栽培する場合は、5〜6号の鉢を準備します。用意した鉢の底穴に鉢底ネットを敷き、軽石を1〜2段分入れてから草花用の培養土を半分くらいまで入れましょう。苗をポットから取り出して軽く根鉢をくずし、鉢の中に仮置きして高さを決めたら、少しずつ土を入れて植え付けます。水やりの際にすぐあふれ出すことのないように、土の量は鉢縁から2〜3cmほど下の高さまでを目安にし、ウォータースペースを取っておいてください。土が鉢内までしっかり行き渡るように、割りばしなどでつつきながら培養土を足していきます。最後に、鉢底から流れ出すまで、十分に水を与えましょう。大鉢に寄せ植えの素材の一つとして植え付けてもOKです。
鉢植えで楽しんでいる場合、成長とともに根詰まりして株の勢いが衰えてくるので、2〜3年に1度は植え替えることが大切です。植え替え前に水やりを控えて土が乾いた状態で行うと、作業がしやすくなります。鉢から株を取り出してみて、根が詰まっていたら、根鉢をくずして古い根などを切り取りましょう。根鉢を1/2〜1/3くらいまで小さくして、元の鉢に新しい培養土を使って植え直します。
リュウノヒゲの水やり

水やりの際は、株が蒸れるのを防ぐために茎葉全体にかけるのではなく、株元の地面を狙って与えてください。
真夏に水やりする場合は、気温の高い昼間に行うと、すぐに水の温度が上がり、株が弱ってしまうので、朝か夕方の涼しい時間帯に行うことが大切です。
また、真冬に水やりする場合は、気温が低くなる夕方に与えると凍結の原因になってしまうので、十分に気温が上がった真昼に与えるようにしましょう。
【地植え】
根付いた後は、地植えの場合は下から水が上がってくるのでほとんど不要です。ただし、雨が降らない日が続くようなら水やりをして補います。
【鉢植え】
日頃の水やりを忘れずに管理します。ただし、いつでもジメジメした状態にしておくと、根腐れの原因になってしまいます。土の表面がしっかり乾いたら、鉢底から水が流れ出すまで、たっぷりと与えてください。茎葉がしおれそうにだらんと下がってきたら、水を欲しがっているサイン。植物が発するメッセージを逃さずに、きちんとキャッチしてあげることが、枯らさないポイントです。また、冬もカラカラに乾燥させることのないように、適宜水やりを続けてください。
リュウノヒゲの肥料の与え方

【地植え】
強健な性質なので、1年目は植え付け時に元肥として緩効性肥料を施してあれば、追肥の必要はありません。2年目以降は、株の生育に勢いがない時などに液肥を与えておくとよいでしょう。
【鉢植え】
3〜4月と10〜11月に緩効性化成肥料を置き肥します。株の生育に勢いがない時などには、液肥を与えておくとよいでしょう。
日常管理はほぼ必要なし! 必要に応じて葉を刈り込もう

リュウノヒゲは寒さ暑さに強く、病害虫の心配もほとんどないので、メンテナンスの手間がかからない植物です。一年中葉を青々と保つ常緑植物ですが、新陳代謝を繰り返すので、枯れ葉が発生します。見栄えのよさにこだわるなら、枯れ葉があれば取り除いておきましょう。
病気や害虫の被害もほぼなし!

【病気】
リュウノヒゲは比較的病気にかかりにくい植物ですが、まれに炭そ病や白絹病を発症することがあります。
炭疽病は、春や秋の長雨の頃に発生しやすくなります。カビが原因で発生する伝染性の病気で、葉に褐色で円形の斑点が現れるのが特徴です。その後、葉に穴があき始め、やがて葉が黄変して枯れ込んでいくので、早期に対処することが大切です。斑点の部分に胞子ができ、雨の跳ね返りなどで周囲に蔓延していくので、被害を見つけたらすぐに除去して土ごと処分しましょう。密植すると発病しやすくなるので、茂りすぎたら葉を間引いて風通しよく管理してください。水やり時に株全体に水をかけると、泥の跳ね返りをきっかけに発症しやすくなるので、株元の表土を狙って与えるようにしましょう。
白絹病はカビが原因で周囲に伝染しやすい病気です。根や茎に発生しやすく、初期は地際あたりに褐色の斑点が見つかります。病状が進むと株元に白いカビがはびこり、やがて枯れてしまうので注意が必要。病株を発見したら、周囲に蔓延させないためにただちに抜き取り、土ごと処分してください。土づくりの際に、水はけのよい環境に整えることが予防につながります。
【害虫】
リュウノヒゲは比較的害虫が発生しにくい植物ですが、まれにナメクジとヒョウタンゾウムシの害にあうことがあります。
ナメクジは花やつぼみ、新芽、新葉、果実などを食害します。体長は40〜50mmで、頭にツノが2つあり、茶色でぬらぬらとした粘液に覆われているのが特徴。昼間は鉢底や落ち葉の下などに潜んで姿を現しませんが、夜に活動します。植物に不快な粘液がついていたら、ナメクジの疑いがあるので夜にパトロールして捕殺してください。または、ナメクジ用の駆除剤を利用してもよいでしょう。多湿を好むので風通しをよくし、落ち葉などは整理して清潔に保っておきます。
ヒョウタンゾウムシは主に4〜8月に発生しやすい昆虫です。成虫の体長は6〜9mmで、色は灰褐色。頭が小さく鼻のような突起を持っており、胸部と腹部がヒョウタンのような形をしています。主に葉を食害し、見栄えが悪くなるので注意。ヒョウタンゾウムシは飛ぶことができず、株を揺すると落ちやすいので、捕殺しましょう。大量に発生しているようなら、適用する薬剤を散布して駆除するのも一案です。成虫は雑草や枯れ葉の中で越冬するので、雑草や枯れ葉を残さず、株まわりをきれいに掃除しておきましょう。
リュウノヒゲが枯れる原因と対策

リュウノヒゲは管理の手間がかからない植物ですが、まれに枯れることがあります。考えられる理由は次の通りです。
【植え付け後に水不足になった】
庭植えの場合は、基本的に水やりは不要ですが、しっかりと根付くまでは水やりが必要です。茎葉が旺盛に茂り始めるまでは、水切れしないように管理してください。また、浅植えにすると、強い雨によって土が流れ出して根がむき出しになることがあります。すると根が地中の水分を吸い上げる力が弱まり、枯れ込むことがあるので注意。浅すぎず、深すぎず、適した深さに植え付けましょう。
【夏場の水切れ】
舗装された動線の隙間などに植栽した場合、土の部分が少ないために土中から水分を十分に得られずに枯れ込むことがあります。目地を生かした植栽をしている場合、夏場は水やりをして水分を補ってください。
【踏まれるのは苦手】
土留めや雑草防除、目地埋めなどの目的で、グラウンドカバーに利用されることが多いリュウノヒゲですが、日常的に踏みつけられるのは苦手です。人が頻繁に通る場所には植えないほうが無難です。
リュウノヒゲは株分けと種まきで増やせる
リュウノヒゲは生命力が旺盛なので、増やすのは簡単です。株分けと種まきで増やすことができます。
リュウノヒゲは株分けで増やすのが一般的!

リュウノヒゲは株分けして増やすことができ、適期は3〜4月か10〜11月です。株を植え付けて数年が経ち、大きく育ったら株の老化が進むので、「株分け」をして若返りをはかります。株を掘り上げて4〜5芽ずつ付けて根を切り分け、再び植え直しましょう。それらの株が再び大きく成長し、株が増えていくというわけです。
種は市販されていないが自分で採取して種まきで増やすことも可能

種まきするメリットは、輸送などによる苗への負担がかからず、環境に馴染みやすいことです。敷地が広くてたくさんの苗が欲しい場合には、コストカットにもなります。リュウノヒゲはこぼれ種で増えるほどに強健な性質なので、種まきは容易です。
種は市販されていませんが、植え付けたリュウノヒゲの実から採取することができます。晩秋から冬にかけて果実が美しい瑠璃色になったら採取して保存袋に入れて冷蔵庫で保管しておきましょう。リュウノヒゲの種まき適期は4月頃です。
黒ポットに市販の草花用培養土を入れ、1穴当たり採取した種を4〜5粒ずつ播き、軽く土をかぶせます。最後にたっぷりと水やりをしましょう。発芽までは乾燥しないように適度な水管理をしてください。発芽後日当たりがよく、風通しのよい場所で管理します。十分に育ったら、植えたい場所に定植します。
※園芸品種の場合、親と同じ草姿になるとは限りません。
リュウノヒゲを楽しもう! 植え方をご紹介
シャープなラインの葉を持つリュウノヒゲは、さまざまな植栽の仕方ができます。ここでは、リュウノヒゲの活用術についてガイドします。
場所を選ばずに育つリュウノヒゲはグラウンドカバーに向く

リュウノヒゲは這うように広がっていく性質のため、地表を覆う目的とするグラウンドカバーとして利用できます。雑草防止や土留めの役割も果たしてくれます。日陰でも育つため、日照に恵まれない場所でもグラウンドカバーとしての利用が可能です。
リュウノヒゲで庭や駐車場の隙間を埋めてみる

リュウノヒゲは場所を選ばずに丈夫に育つため、飛び石の周りや駐車場の目地などに植え付けるのもおすすめ。飛び石やレンガ敷きの小道など、石材やレンガなどの際を植物で隠すことで、一体感が生まれる効果があります。コンクリート敷きのカーポートなどにあえて植栽スペースを残し、リュウノヒゲを植えることで、無機質な印象を軽減することもできますよ! 狭いスペースなら葉が短い園芸品種の‘玉竜’を選ぶとよいでしょう。
鉢植えや盆栽はもちろんアクアリウムで寄せ植えに活用できる

庭以外にも、盆栽や苔玉に利用するのも素敵。昔から日本で親しまれてきた植物なので、和に合うほか、シャープな草姿の斑入り種はモダンな雰囲気にまとめても素敵です。水中でも育つので、アクアリウムの素材として利用されるケースもあります。
ガーデニング初心者でも育てやすいリュウノヒゲを植えてみよう!

丈夫な性質で、一度植え付けたら管理の手間がかからず健やかに育つリュウノヒゲ。グラウンドカバーとして広い面を埋め尽くすように植栽できるほか、寄せ植えや盆栽、苔玉、アクアリウムの素材としても活躍します。多様な利用の仕方ができるリュウノヒゲを、ぜひ育ててみませんか?
Credit

文/3and garden
ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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