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【オリーブ】育て方を徹底解説!ポイントは剪定!|観葉植物基礎講座Vol.3(前編)
オリーブオイルでお馴染みのオリーブの木。一鉢あるだけで地中海の風を感じさせ、おしゃれ指数を上げてくれる憧れの植物です。でも、初心者にとっては、サイズや価格、実がなる方法や日頃の管理の仕方など、結構ハードルが高いのでは? と思っちゃいますよね。今回も“買える植物園”の異名を持つ『オザキフラワーパーク』に、この秋大量に入荷したというオリーブのあれやこれやを、まるごと聞いちゃいます!
目次
オリーブの木って、どんな植物?
モクセイ科オリーブ属の常緑高木、オリーブ。スタイリッシュな葉とおしゃれな樹形、そして実も収穫できることから、世界中で愛されている樹木です。また、旧約聖書の中で描かれている記述により、古くから「平和の象徴」として崇められていて、国連の旗にもオリーブの枝が描かれています。しかし一般的には、敬うべき木というよりも、実を食べたり、搾油して料理や美容などに活用するイメージのほうが強いかもしれませんね。
オリーブの木(以下オリーブ)の原産地は、イタリア、スペイン、ギリシャ、トルコなどの地中海沿岸地域。年間を通して温暖でドライな場所に自生しています。歴史も長く、最古の記録としては、イタリアで5万年前のオリーブの葉の化石が見つかっており、オリーブがクロマニョン人以前より人類と共にあったことがうかがえます。現在においても樹齢1,000年以上のオリーブが幾つか存在し、中でもギリシャのクレタ島にある樹齢約3,000年のオリーブは有名です。
オリーブは種類も多く、現在のところその数なんと約1,600品種以上。葉の形や実の大きさ、樹形など、それぞれに特徴を有しています。品種改良も積極的に行われているため、今もなお種類は増え続けています。熱心なファンの中には、まるで農家のように何種類ものオリーブを栽培し、品種ごとに造詣を深めていくことを趣味にしているマニアックな人もいます。でも、この記事を最後まで読んでいただくとその気持ちが分かるかも…。
オリーブは日本でも盛んに栽培が行われています。産地としては、地中海沿岸地域と気候が似ている香川県の小豆島が有名ですね。しかし、日本にオリーブの木が初めて持ち込まれたのは、意外にも小豆島ではなく横須賀だったんです。江戸時代末期にフランスから持ち込まれた最初の1本が横須賀に植樹され、以後十数年に渡り栽培の研究が行われました。そして、初めてその結実に成功したのが小豆島です。オリーブが私たちにとって身近な存在になれたのは、そんな先達の努力があってのことだったのですね。心より感謝です。
オリーブは価格の幅も広く、小さいものは1,000円前後で買うことができますが、大きいものになると100万円以上するものもあります。個体差はあるものの、比較的成長が早い植物なので、最初は予算に見合った小さいものを買って、大きくする過程を楽しむのもおすすめです。
観葉植物として室内栽培を前提に購入する人もいますが、「オザキフラワーパーク」で最も多いのは、屋外で育てる目的で購入するオリーブ初心者のお客様。ほかにも、庭のあるご家庭では最初から比較的大きめのオリーブを買って自宅のシンボルツリーにしたり、商家の方が店舗前の植栽として購入されることもあります。
多くの人に愛されるオリーブですが、実の収穫に至るまでは、幾つかのポイントをマスターしなければなりません。でも、基本的には初心者にとってハードルの低い植物なので、ぜひこれを機会にトライしてみてはいかがでしょうか。
オリーブの選び方
縦に伸びるか、横に広がるか
オリーブはとても種類が多く、選ぶのに迷うかもしれません。そんなときは、縦に伸びる「直立型」か、横に広がる「開帳型」かという、成長のしかたで選んでみてはいかがでしょうか。
栽培するスペースが限られている人は縦に伸びる直立型、横に広げてぽってりとした姿を楽しみたい人は開帳型を選ぶとよいでしょう。直立型の品種は、その樹形を活かし、庭や部屋の目隠しとして植栽する人もいます。
色
オリーブの葉の表面は、一般にオリーブグリーンといわれる、やや青みのある緑色。裏面は光の加減で銀色に輝いて見えるため、風に揺れたときなどはとても美しいんです! おしゃれに伸びる枝も光の加減でさまざまな表情を見せてくれるため、色彩で楽しめるのもオリーブの魅力。葉色は品種により極端に変わるわけではありませんが、まるで茶葉のようなフレッシュグリーンであったり、青みが強いものであったりと、好みに応じてさまざまなオリーブを選ぶことができます。
実の付きかた
オリーブの魅力といえば、実。オリーブを植える動機として、その実を収穫したいと思う人も大勢います。オリーブは、単体の木で結実(実がなること)する自家受粉タイプと、2種類以上の品種が受粉することにより結実する他家受粉タイプの2種類があるので、結実させたい場合は、購入するオリーブがどちらのタイプかを見極めておく必要があります。
種類により差はありますが、大体5〜6月に白くて小さい可愛い花をたくさん咲かせます。しかし、その全てに実が付くわけではなく、通常は1〜2割、多くても3割くらいしか結実しません。つまり大量に収穫したい場合は、それなりに大きい木でなければなりません。
付き始めの実は、1〜2mmのとても可愛い薄緑色の粒で、それが日を追うごとにだんだん大きくなっていきます。品種によって異なりますが、肥大化が止まる10〜11月に収穫します。せっかく育てるオリーブですからね、ぜひ結実にチャレンジし、収穫体験を味わってみてください!
【ポイント:受粉木をそばに置く】 花付きがよく花粉量も多い品種を「受粉木」としてそばに置いておくと、より結実する確率が高まり、また、実の量も多くなることが期待できます。1本で実が付く自家受粉可能なタイプも、受粉木がそばにあると、同様の効果が期待できます。ネバディロブランコという品種が受粉木として人気です。
オリーブの育て方
置き場所
オリーブは太陽が大好き! 基本的に全種類、真夏の強光線に長時間あたっていても葉が日焼けすることはないので、日当たりのよい屋外で管理してください。半日以上は直射日光が当たる環境が理想的です。逆に、光量が少ないと枝が徒長し、葉もポロポロと落ちて、徐々に樹勢が弱まっていきます。
集合住宅など、ベランダで育てる場合は、エアコンの室外機の風が当たらないように注意してください。
【室内管理について】
オリーブは耐陰性が強いわけではないので、室内で管理する場合は、日の出から日の入りまで十分に日の当たる場所に置いてください。日照が足りない場合は、植物育成ライトを補助的に使用することをおすすめします。ただし、安価な低出力タイプだと効果がないので、高出力タイプのものを使用してください。
季節ごとの管理方法
【夏の管理】
オリーブは暑さに強いため、40℃近くまで気温が上昇する昨今の真夏の暑さでも問題なく乗り越えられます。ただし、室内で管理する場合は、エアコンの風を直にあてるのは厳禁です。これはオリーブに限らずどの植物でもそうですが、エアコンの風は、葉が水分を蒸発させる「蒸散作用」を阻害してしまうため、植物が弱る原因となってしまいます。また室内は、植物の生育に欠かせない「自然な風」がないため、蒸れによる根腐れが起きやすいので、サーキュレーター(送風機)で部屋の空気を循環させることをおすすめします。
【冬の管理】
オリーブの故郷地中海沿岸は、冬は寒くはなりますが、氷点下になることはありません。オリーブは耐寒性も強いので、たまの降雪には耐えられますが、0℃を下回る極低温状態が続くと枯れてしまう場合があります。このため、関東以北の寒冷地での地植えはおすすめしません。寒冷地では鉢植えで栽培し、夜間など気温が下がる時にはこまめに屋内に取り込むことをおすすめします。関東以南で、かつ降雪量が少ない地域であれば地植えでの越冬も可能です。室内で管理する場合は夏と同様に、エアコンの風が直にあたらないよう注意し、サーキュレーターで室内の空気を循環させましょう。
【梅雨の管理】
オリーブの花が開花する5〜6月は日本では梅雨にあたるため、開花期間中に長雨が続くと、うまく花粉が飛ばなかったり、受粉しないまま花が落ちてしまい、うまく結実しない場合があります。結実を目指す場合は、開花時期は天気予報をこまめにチェックし、雨が降りそうなら、鉢植えの場合は雨があたらない場所にいったん移動させ、地植えの場合はビニールシートをかぶせるなど、雨対策を行いましょう。
水やり
オリーブは乾燥気味の土壌を好むため、基本は乾かし気味に栽培します。地植えの場合は四季を通して雨のみに頼ることも可能ですが、長期間雨が降らない時は土の状態をチェックしながら適宜水やりを行ってください。
鉢植えの場合は、表士が乾いたら鉢底から水が流れ出るまでたっぷり与え、鉢底皿に溜まった水はすぐに捨てましょう。夏場は気温が下がる夕方に、冬場は気温が上がっていく午前中に与えるようにしてください。乾いたらたっぷり与えるという、メリハリのある水やりがよいオリーブを育てます。
ちなみに、「オザキフラワーパーク」では『サスティー』という水分チェッカーが人気です。チェックが完了するまでに30~60分と時間はかかるものの、大鉢用のLサイズでも598円というコスパのよさが魅力です。
用土
鉢植えの場合は、赤玉ベースの植木培養土か、オリーブ専用の培養土を使います。地植えの場合、オリーブはアルカリ性の土壌を好むため、地面に苦土石灰を適量まいて定植すると生育がよくなります。逆に酸性の土を嫌うので、酸度の高い土や培養土には植えないほうがよいでしょう
日本は降雨量が多く、雨は基本的に酸性のため、長く植えているとどうしても酸度が高くなってしまいます。このため、年に1回は市販の酸度測定キットなどで土壌酸度(pH)をチェックするとよいでしょう。6.5〜7.0のpH値がオリーブにとって理想的な土壌とされています。
肥料・活力剤など
微量要素が多く入っているオリーブ専用の肥料がおすすめですが、ご家庭にある『マグアンプK』などの化成肥料でも問題ありません。
施肥の時期は3月(新芽が伸びる頃)、6月(実が付く頃)、10月(実の収穫が終わった後)が適期。結実を目指す場合は、この時期の施肥は必須です。
肥料切れになると葉の先端が黄色くなるので、あげどきの目安にもなります。また、5〜6月の花期には、水やりの際に植物用活力剤『メネデール』を規定量希釈して与えると、実付きをよくすることが期待できます。
剪定
樹形がとても魅力的なオリーブですが、この美しいフォルムを維持するためには剪定が欠かせません。また、剪定により思い通りの樹形に仕立てることができるのもオリーブの魅力ともいえます。
逆に、枝を伸ばしっぱなしにしておくと、重力により枝が垂れてしまい、形が悪くなるばかりか、実付きも悪く、幹も太くならないので、1〜3月に思い切ってバッサリと強剪定することをおすすめします。そして6月に軽く形を整える弱剪定を行えば、剪定に関してはOK。
強剪定といっても、慣れない人はバッサリ切ることに躊躇してしまいますよね。でも、オリーブは30cmくらいの丸太状の幹を地面に杭のように打ち込んでおくと、根っこがなくても上からどんどん枝と葉が出てくるほどタフな植物なので、心配せずにどんどん切っちゃって大丈夫です。
【剪定方法】
オリーブの多くは「互生葉序」※で葉を出すため、カットした場所の直下の葉の出ている方向に枝が分枝していきます。このため、枝をどっちの方向に向かわせたいか、剪定により樹形をコントロールすることができるんです。つまり、樹形を上に高くしたいのであれば、葉が上に向いているところの少し上のところで切り、横に広げたいのであれば、横方向に出ている葉の少し上のところで切れば樹形は横に広がっていく、という感じです。ただし、横に切って伸びた枝を放置しておくと下に垂れていくため、大きくなりにくいので注意が必要です。
[動画による説明はこちら]
※【葉序】
葉序(はじょ)とは、茎から出る葉の配列の規則性のこと。葉序には互生葉序と対生葉序、輪生葉序の3種類がある。茎にある節目から葉が1つ出るのが互生葉序、2つ出るのが対生葉序、2つ以上出るのが輪生葉序と呼ばれる。
植え替え
鉢植えのオリーブは、土の表面から根が出てきたり、鉢底穴から根が出てきたら植え替えを行ってください。2回り大きいサイズの鉢に植え替えるのがおすすめです。素焼き鉢や、鉢の底部にスリット(切り込み)の入ったスリット鉢を使用すると、根が張りやすく、成長もしやすいので、早く大きくなります。
植え替えの際は、土の落としすぎに注意してください。せっかく根が抱え込んだ土を無理に落とすと株が弱る可能性があります。オリーブ自体は強い植物ですが、根は繊細なので、植え替えの際は、鉢から抜いた根の表面の土だけをやさしく落としてください。
収穫したオリーブを食べるには?
大切に育てたオリーブに実が付き、収穫までこぎつければ、それを食べたいと思うのは当然ですよね。しかし、オリーブの実はそのままではとても食べられたものではなく、食品用の重曹を用いた、とても手の込んだ渋抜き処理が必要です。
自家製ピクルスにチャレンジしたい方は、下記クックパッドなどを参照してください。健闘を祈ります。
- cookpad [重曹で渋抜き。自家製オリーブの塩漬け]
オリーブをおしゃれに魅せる技
ただでさえおしゃれなオリーブ。鉢植えで楽しむ方は、可愛い鉢や、気品ある鉢、ちょっと個性的な鉢に植え替えるなど、いろいろこだわりを持って楽しんでいます。
また、これから迎えるホリデーシーズン、いっそのことオリーブをクリスマスツリーにしてみてはいかがですか? これがまた可愛いんです!
お庭の地植えのオリーブや鉢植えのオリーブに、クリスマスオーナメントを飾り付ける「クリスマス“オリーブ”ツリー」、ぜひ試してみてください!
まとめ
いかがでしたか? オリーブ大特集前編。編集部にも自宅で育てているスタッフがいますが、改めてその魅力を再認識したそうです。今回の取材では、「オザキフラワーパーク」の佐藤さんにオリーブのあれやこれやを伺いましたが、その知識の豊富さたるや! これには感嘆しました。ちょうど取材2日前、お店には300鉢もの各種オリーブが入荷したということもあり、植木コーナーは左右どちらを見てもオリーブ、オリーブ。まるでオリーブ畑で取材をしているようでした。
さて、後編ではそんな佐藤さんに、お店でおすすめのオリーブを紹介していただきます。この前編を読んで、オリーブを育ててみたいと思った人は要チェックですよ!
オザキフラワーパークでは観葉植物に関するどんな些細な質問でも常時受け付けてくれます。スタッフの皆さんがお客様一人ひとりの、今日の「分からない」を明日の「楽しみ」に変えるお手伝いをしてくれるので、この機会にぜひ観葉植物の世界に足を踏み入れてみませんか?
お話を伺ったのは…オザキフラワーパーク植木担当 佐藤さん
「ほかの木に比べ、手をかけた分、一番かっこよくなるのがオリーブ」とその魅力を語る佐藤さん。オリーブのエキスパート佐藤さんには、後編でおすすめのオリーブを紹介していただくので要チェックです!
取材協力
『オザキフラワーパーク』
1961年に東京は練馬区石神井で創業以来61年、人気の観葉植物からニッチな珍奇植物まで、全国屈指を誇るその品揃えは「買える植物園」としての異名を持つ。植物や園芸グッズの豊富さもさることながら、アクアリウムや爬虫類の生体販売も行っているため、近隣はもちろん、全国各地からお客様が途絶えることなく来店する話題の超大型園芸店。編集部スタッフもプライベートで足繁く通う。
東京都練馬区石神井台4-6-32
TEL : 03-3929-0544
URL: https://ozaki-flowerpark.co.jp
営業時間:9:00~19:00
写真:
クレタ島3,000年オリーブ古代樹:Pix by David Hodgson/Flickr Commons
小豆島オリーブ畑:Sanga Park/shutterstock.com
雪のオリーブ:Heike Richter/shutterstock.com
Credit
写真&文 / ガーデンストーリー編集部
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