皆さんはモミジとカエデにどんな違いがあるか、ご存じですか? 混同されやすい2つですが、この記事ではその見分け方や、紅葉の意味や仕組みについても詳しく解説。知っているとより楽しめる知識に加え、紅葉の名所についてもご紹介します。
目次
モミジとカエデの違いとは
まずはモミジとカエデの違いについて解説します。
植物学的な違いはない
モミジは、あくまでカエデ属に含まれるいくつかの品種につけられた名前です。モミジもカエデもムクロジ科(旧カエデ科)カエデ属に分類されています。モミジ属というグループは存在しません。
英語ではカエデをmaple、モミジを特にjapanese mapleと呼びます。英語には、モミジを意味する単語はもともとありません。
日本語のモミジという言葉は、秋に草木が色づく様子を意味する動詞の「もみづ」が由来になっています。名詞化して「もみぢ」、そこから「もみじ」となりました。現在では、カエデの中でも特に、裂片が5つから9つくらいで美しい形を持つ品種を指すようになりました。一方で、カエデは「カエルの手」を意味する「かへるで」が転じて「カエデ」になったといわれています。
園芸や盆栽の世界では区別している
園芸の世界では、葉に切れ込みが多く、深く入ったものをモミジと呼び、それ以外の切れ込みが浅いものをカエデと呼んでいます。カエデの中には切れ込みの数が3つだけなど、モミジのように手に似た形をしていないものもあります。
盆栽の世界では、モミジは葉の形が小さく、切れ込みが深く、秋に真っ赤に色づくものを指します。カエデは葉の切れ込みが浅くて大きいものを指します。
モミジやカエデにはどんな種類がある?
ここでは、モミジとカエデの代表的な品種をご紹介します。
主なモミジは3種類
モミジの代表的な品種には、イロハモミジ、ヤマモミジ、オオモミジの3種があります。
イロハモミジは、イロハカエデとも呼ばれます。福島県以南の本州太平洋側や四国、九州の沢沿いや谷間などに自生し、黄色や赤に色づきます。葉の裂片は5〜9片です。
ヤマモミジは、北海道から本州の石川県までの日本海側に自生し、黄色や赤に色づきます。葉の裂片は9片です。
オオモミジは、ヒロハモミジとも呼ばれます。北海道や本州の太平洋側、福井県以西の日本海側、四国、九州に自生し、赤く色づきます。イロハモミジよりも大きく、葉の裂片数は5〜9片で多くは7片です。
カエデの種類はさまざま
カエデの代表的な品種には、イタヤカエデやハウチワカエデ、手のひらのような形の葉になっていないウリカエデ、メグスリノキ、外来種のトウカエデなどがあります。
イタヤカエデは、黄葉するカエデの代表種です。北海道から九州にかけて自生し、秋になると葉が赤みを帯びた黄色になります。葉の裂片は7〜9片で切れ込みは浅いです。
ハウチワカエデは、北海道から本州にかけて自生し、朱色から濃いオレンジに色づきます。葉の切れ込みはありますが浅いです。
ウリカエデは、山によく自生しており、葉が小さく浅い切れ込みが3つあります。
トウカエデは、中国原産のカエデです。浅い3裂の切れ込みがあり、オレンジ色から紅色に変わります。街路樹として植えられているカエデは、ほとんどがこの種類です。
紅葉(モミジ)と紅葉(こうよう)
紅葉という漢字は、「こうよう」とも「もみじ」とも読みます。ここでは、なぜ緑色の葉が赤く色づくのか、紅葉(こうよう)の意味や仕組みについてご紹介します。
紅葉(こうよう)の意味
「こうよう」とは秋になって葉の色が赤や黄色に色づく現象のこと。カエデやモミジ以外でも、イチョウやブナなど色の変わる植物に対して用いられます。モミジの葉や木を指す場合も同じ紅葉という漢字を使うので、紅葉と書かれていたら、前後の文脈から「こうよう」か「もみじ」かを読み分ける必要があります。
紅葉(こうよう)する仕組み
紅葉(こうよう)は落葉樹が葉を落とす前の準備のために起こるもので、葉の役割を終える過程で色が黄色、赤色へと変化していく現象をいいます。葉が光合成をしなくなることでクロロフィル(葉緑素)が減って、緑の色素がなくなると、残ったカロテノイドの黄色が見えて葉が黄色く紅葉したように見えます。さらに光合成が終わるころには糖からアントシアニンが作られ、それがカロテノイドを上回る量になると葉が赤く色づいて見えるのです。
日本にある紅葉の名所をご紹介
日本各地にある紅葉を楽しめるスポットをいくつかご紹介しましょう。
高尾山(東京都)
都心から電車で1時間ほどとアクセスがよいのが高尾山です。高尾山の標高は、およそ599mです。
約1,200種類もの植物が楽しめ、秋は特にオオモミジやイロハモミジの紅葉が素晴らしい景色を作り出します。見頃は11月中旬から12月初旬で、紅葉の時期に合わせて「もみじまつり」などのイベントも開催されています。
浜離宮恩賜庭園(東京都)
東京都中央区にある浜離宮恩賜庭園は、江戸時代から続く由緒ある大名庭園です。
11月中旬から12月上旬にかけて、園内各所でトウカエデやモミジの紅葉を楽しめます。
嵐山(京都府)
嵐山は京都市の西部、JR京都駅から車で16分ほどの場所にあります。
古いお寺が数多くあり、紅葉の名所も多く、至るところで紅葉を楽しむことができます。紅葉の見頃は11月下旬から12月上旬です。
自宅でモミジを楽しむなら
紅葉狩りに出かけて楽しむモミジもいいですが、自宅で楽しむのはいかがでしょうか。ここではモミジの育て方についてご紹介します。
庭木で育てる
庭木におすすめのモミジは、イロハモミジかヤマモミジです。オオモミジは葉が大きく樹高も高くなりやすいため、庭木には不向きの種類です。
モミジは日当たりのよい場所を好みますが、強い日差しに当たると葉が変色してしまったり、水切れで秋になる前に葉が落ちたりすることがあるので、半日陰や午後から日陰になる明るい場所で育てるのが適しています。
水はけがよく、適度に湿度を保つ土壌を好むので、植えたい場所に腐葉土や堆肥を混ぜ込んでおくとよいでしょう。植え付けの適期は12〜3月です。植え付けてから根付くまでは意識して水やりを行う必要があります。根付いてからはよほど土が乾燥したとき以外は水やりをしなくても育ちます。
木を大きくしたくない場合や、葉が込み合ってきた場合は剪定をします。剪定の適期は11〜12月です。
害虫はアブラムシやテッポウムシに注意し、見つけたらすぐに駆除しましょう。病気はうどんこ病に注意が必要です。
鉢植えで楽しむ
鉢植えで育てる場合は、基本的に屋外で管理します。夏は半日陰に置き、冬は風が当たらない場所に移動しましょう。
土は市販の園芸用培養土や、細粒と中粒を同じ割合で混ぜた赤玉土に3割程度腐葉土を混ぜたものを使います。水やりは春と秋は1日1回、夏は朝夕2回、冬は土が乾いたときに行います。
2、3年に1度、鉢が小さくなったら一回り大きな鉢に植え替えましょう。植え替えの適期は11〜3月です。
盆栽もおすすめ
モミジは盆栽で楽しむのもおすすめです。園芸店や盆栽のイベント、ネットショップなどで購入できます。
鉢植えと同様に、日当たりと風通しのよい所で育てます。夏は半日陰に、冬は霜や風が当たらない場所に置きます。水やりや注意すべき病害虫も前述の鉢植えの場合と同じです。
盆栽では、伸びすぎる前に新芽を摘んで調整したり、剪定して形を整えていきます。
モミジとカエデの違いを知って紅葉をさらに楽しもう
モミジとカエデは生物学的にはどちらもカエデに分類されていますが、園芸では葉の切れ込みが深く手のような形のものがモミジ、切れ込みが浅いものがカエデと呼ばれています。
皆さんも紅葉狩りに行ったり、ご自宅で育てたりして美しい紅葉を楽しんでみてはいかがでしょうか。
Credit
文/3and garden
ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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