トップへ戻る

古くから親しまれてきたシオンってどんな花? 特徴や育て方をご紹介

古くから親しまれてきたシオンってどんな花? 特徴や育て方をご紹介

Dina Rogatnykh/Shutterstock.com

シオンは、古典の『今昔物語』に登場するほど、昔から日本人の心に訴えかけてきた植物の一つ。花は、9〜10月に見頃を迎え、十五夜の頃に満開になることから「十五夜草(じゅうごやそう)」とも呼ばれています。日本に自生する植物で、ほとんど手をかけずとも機嫌よく育ってくれるので、ビギナーさんにもおすすめです。この記事では、シオンの特徴や名前の由来、育て方などについてご紹介します。

Print Friendly, PDF & Email

シオンの概要

シオン
Bacilio Ponce/Shutterstock.com

シオンはキク科シオン属の草花です。原産地は日本、中国、朝鮮半島、シベリアなど。日本に古くから自生してきたことから、環境にも馴染み、育てやすい植物です。しかし、日本での自生種は九州、中国地方の山間部にわずかに確認されているくらい数を減らしており、絶滅危惧種に指定されるほどになりました。ここでご紹介するシオンは、国内で園芸用として流通している種類です。

シオンは多年草に分類されており、春に新芽を出して旺盛に生育し、秋に開花。寒くなるとともに地上部を枯らして休眠し、越年してまた翌春になると新芽を出して生育を始める……というライフサイクルを繰り返します。一度植え付ければ、何年も決まった時期に開花を楽しめ、コストパフォーマンスに優れています。

シオンの花の特徴

シオン
tamu1500/Shutterstock.com

シオンの草丈は50〜200cm。幅があるのは種類によって異なるからで、苗を購入する際は、庭のスペースに合うサイズかどうか、ラベルなどで確認するとよいでしょう。開花は9〜10月。花色は淡い薄紫で、花心は黄色。茎の頂部に咲かせる花は、一輪の直径が2.5〜3cmと小さいのですが、大変花つきがよく、満開時には色の塊となって目に飛び込み、華やかなシーンを作り出してくれます。

シオンの別名・名前の由来・花言葉

シオン
Baiborodin Mikhail/Shutterstock.com

シオンは漢字で「紫苑」と書きます。「苑」は広い土地や庭といった意味があり、紫の花が群れて咲き誇る様子に由来するようです。「醜草(おにのしこくさ)」「思い草(おもいぐさ)」の別名があり、これは『今昔物語』がルーツとか。また十五夜の頃に満開になることから、「十五夜草(じゅうごやそう)」とも呼ばれています。

学名のAsterは、ギリシャ語で「星」という意味で、放射状に花弁をつける花姿を星にたとえたことから。花言葉は、「追悼」「君を忘れない」などがあります。

シオンの育て方

ここまで、シオンの基本情報や特徴、花言葉などについてご紹介してきました。では、ここからはガーデニングの実践編として、シオンに適した栽培環境や植え付け、水やりや施肥、日頃の管理、増やし方など、育て方について詳しく解説します。

適した栽培環境と置き場所

シオン
Kirsanov Valeriy Vladimirovich/Shutterstock.com

【地植え】

日当たり、風通しのよい場所を好みます。明るい半日陰の環境でも育ちますが、あまりに日陰では花つきが悪くなり、株もひょろひょろと徒長ぎみに伸びて軟弱な株になるので注意しましょう。また、西日が強く当たる場所は、真夏に乾燥しすぎて株が弱ったり、葉焼けしたりすることがあるので、東南側が向いています。寒さには強いので、周年植えっ放しにしてかまいません。

【鉢植え】

基本的に、日当たり、風通しのよい場所に置いて管理します。真夏は西日が当たらない場所に移動しましょう。一年を通して戸外で管理してもかまいません。

土づくり

土
funnyangel/Shutterstock.com

【地植え】

植え付けの約2週間前に、腐葉土や堆肥、緩効性肥料を混ぜ込んで、よく耕しておきます。土づくりをした後にしばらく時間をおくことで、分解が進んで土が熟成し、植え付け後の根張りがよくなります。

【鉢植え】

市販の草花用培養土を利用すると手軽です。

植え付け・植え替え

ガーデニング
AlenKadr/Shutterstock.com

シオンの植え付け・植え替えの適期は、3〜4月上旬か10月下旬〜11月です。ただし、ほかの時期にも苗は出回っているので、花苗店などで入手したら早めに植え付けるとよいでしょう。

【地植え】

土づくりをしておいた場所に、苗の根鉢よりも一回り大きな穴を掘り、根鉢をくずして植え付けます。最後にたっぷりと水を与えましょう。複数の苗を植える場合は、20〜30cmの間隔を取っておきましょう。

地植えにしている場合は、数年は植えたままにしてもかまいません。しかし、大株に育って込み合ってきたら、掘り上げて株分けして植え直し、株の若返りをはかるとよいでしょう。

【鉢植え】

鉢で栽培する場合は、7〜10号の鉢を準備します。用意した鉢の底穴に鉢底ネットを敷き、軽石を1〜2段分入れてから草花用の培養土を半分くらいまで入れましょう。ポットから取り出した苗を鉢に仮置きし、高さを決めたら、根鉢を軽くほぐし、少しずつ土を入れて、植え付けます。水やりの際にすぐあふれ出すことのないように、土の量は鉢縁から2〜3cmほど下の高さまでを目安にし、ウォータースペースを取っておいてください。土が鉢内までしっかり行き渡るように、割りばしなどでつつきながら培養土を足していきます。最後に、鉢底から流れ出すまで、十分に水を与えましょう。

鉢植えで楽しんでいる場合、成長とともに根詰まりして株の勢いが衰えてくるので、毎年植え替えることが大切です。植え替え前に水やりを控えて土が乾いた状態で行うと、作業がしやすくなります。鉢から株を取り出して根鉢をくずし、新しい培養土を使って植え直します。もっと大きく育てたい場合は、元の鉢よりも大きな鉢を準備し、軽く根鉢をくずす程度にして植え替えてください。

水やり

水やり
Osetrik/Shutterstock.com

水やりの際は、株が蒸れるのを防ぐために茎葉全体にかけるのではなく、株元の地面を狙って与えてください。

真夏に水やりする場合は、気温の高い昼間に行うと、すぐに水の温度が上がり、株が弱ってしまうので、朝か夕方の涼しい時間帯に行うことが大切です。

また、真冬に水やりする場合は、気温が低くなる夕方に与えると凍結の原因になってしまうので、十分に気温が上がった真昼に与えるようにしましょう。

【地植え】

根付いた後は、地植えの場合は下から水が上がってくるのでほとんど不要です。ただし、雨が降らない日が続くようなら水やりをして補います。

【鉢植え】

日頃の水やりを忘れずに管理します。ただし、いつも湿った状態にしていると根腐れの原因になるので、与えすぎに注意。土の表面がしっかり乾いたら、鉢底から水が流れ出すまで、たっぷりと与えましょう。茎葉がしおれそうにだらんと下がってきたら、水を欲しがっているサイン。植物が発するメッセージを逃さずに、きちんとキャッチしてあげることが、枯らさないポイントです。また、冬でもカラカラに乾燥させることのないように、適宜水やりを続けてください。

肥料

肥料
New Africa/Shutterstock.com

【地植え・鉢植えともに】

植え付け時に、元肥として緩効性肥料を施しておきましょう。

その後は旺盛に生育する4月中旬〜5月中旬と、次々と開花する9月中旬〜10月中旬に、緩効性肥料を株の周囲にばらまき、軽く耕して周囲の土に馴染ませます。

摘心と花がら摘み

剪定
Andrii Zastrozhnov/Shutterstock.com

【摘心】

シオンは、苗が幼いうちに茎の先端を切り取る「摘心」を繰り返すと、よく分枝してこんもりと茂ります。茎葉が増えることで花数も多くなるので、ひと手間かけておくことをおすすめします。

【花がら摘み】

シオンの終わった花は早めに摘み取りましょう。まめに花がらを摘んで株まわりを清潔に保つことで、病害虫発生の抑制につながりますよ! また、いつまでも花がらを残しておくと、種をつけようとして株が消耗し、老化が早まって花数が少なくなってしまうので注意。花がらをまめに摘み取ると、次世代を残そうとして次から次に花がつき、長く咲き続けてくれます。

病害虫対策

アブラムシ
muroPhotographer/Shutterstock.com

【病気】

シオンに発生しやすい病気は、うどんこ病、灰色かび病などです。

うどんこ病は、カビによる伝染性の病気です。葉、新梢、つぼみに発生しやすく、表面が白く粉を吹いたような状態になり、放置するとどんどん広がるので注意。対処せずにそのままにしておくと光合成ができなくなり、やがて枯死してしまいます。窒素肥料を施しすぎたり、枝葉が繁茂しすぎて風通しが悪くなったりしていると、発病しやすくなります。うどんこ病が出たら病気の葉を摘み取って処分し、適用する殺菌剤を葉の表と裏に散布して、蔓延するのを防ぎましょう。

灰色かび病は花や葉に発生しやすく、褐色の斑点ができて灰色のカビが広がっていきます。気温が20℃ほど、かつ多湿の環境下で発生しやすい病気です。ボトリチス病、ボト病などとも呼ばれています。風通しが悪く込み合っていたり、終わった花や枯れ葉を放置していたりすると発生しやすくなるので注意。花がらをこまめに摘み取り、茎葉が込み合っている場合は、間引いて風通しよく管理しましょう。

【害虫】

シオンに発生しやすい害虫は、アザミウマやアブラムシなどです。

アザミウマは花や葉につき、吸汁する害虫です。スリップスの別名を持っています。体長は1〜2mmと大変小さく、緑や茶色、黒い姿の昆虫で、群生して植物を弱らせるので注意しましょう。針のような器官を葉などに刺して吸汁する際にウイルスを媒介するので、二次被害が発生することもあります。被害が進んだ花や葉は傷がついてかすり状になるので、よく観察してみてください。花がらや枯れ葉、雑草などに潜みやすいので、株まわりを清潔に保っておきます。土に混ぜるタイプの粒剤を利用して防除してもよいでしょう。

アブラムシは、3月頃から発生しやすくなります。2〜4mm程度の小さな虫で繁殖力が大変強く、発生すると茎葉にびっしりとついて吸汁し、株を弱らせるとともにウイルス病を媒介することにもなってしまいます。見た目もよくないので、発生初期に見つけ次第こすり落としたり、水ではじいたりして防除しましょう。虫が苦手な方は、スプレータイプの薬剤を散布して退治するか、植え付け時に土に混ぜ込んで防除するアブラムシ用の粒状薬剤を利用するのがおすすめです。

冬越し

マルチング
Anton Starikov/Shutterstock.com

【地植え・鉢植えともに】

シオンは寒さに強いので、そのまま戸外で越冬できます。秋が深まると地上部を枯らして休眠するので、地際で刈り込んでおきましょう。枯れた茎葉をそのまま残しておくと病害虫の越冬地となってしまうので、株まわりをきれいにしておきます。温暖な地域では、そのままで越冬しますが、寒冷地では凍結対策として、腐葉土かバークチップをたっぷりと被せておくとよいでしょう。休眠中、地植えの場合は特に水やりは不要ですが、鉢栽培の場合はカラカラに乾燥させることのないように、控えめに水やりを続けてください。

増やし方

ガーデニング
Emmily/Shutterstock.com

【株分け】

シオンは、株分けして増やすことができます。株分けの適期は3〜4月上旬か10月中旬〜11月上旬です。株を植え付けて数年が経ち、大きく育ったら株の老化が進むので、「株分け」をして若返りをはかります。株を掘り上げて数芽ずつ付けて根を切り分け、再び植え直しましょう。それらの株が再び大きく成長し、同じ姿の株が増えていくというわけです。

【挿し芽】

シオンは、挿し芽で増やすことができます。挿し芽とは、茎葉を切り取って地面に挿しておくと発根して生育を始める性質を生かして増やす方法です。植物の中には挿し芽ができないものもありますが、シオンは挿し芽で増やせます。

挿し芽の適期は5月頃です。新しく伸びた枝を2節以上つけて、切り口が斜めになるように切り取ります。採取した茎(挿し穂)は、水を張った容器に1時間ほどつけて水あげしておきましょう。その後、水の吸い上げと蒸散のバランスを取るために下葉を2〜3枚切り取ります。黒ポットを用意して新しい培養土を入れ、水で十分に湿らせておきます。培養土に穴をあけ、穴に挿し穂を挿して土を押さえてください。発根するまでは明るい日陰に置いて乾燥させないように管理します。発根後は日当たり、風通しのよい場所に移動し、十分に育ったら植えたい場所へ定植しましょう。挿し芽のメリットは、親株とまったく同じ性質を持ったクローンになることです。

『今昔物語』にも登場する日本で古くから愛されてきたシオン

シオン
dokosola/Shutterstock.com

秋の庭を彩る美しい花として、古くから親しまれてきたシオン。花もちがよいので、たくさん咲いたらインテリアに飾って楽しむのもいいですね。生命力旺盛で、手をかけずともよく育ち、一度植え付ければ毎年開花を楽しませてくれるシオンを、ぜひ庭に取り入れてはいかがでしょうか。

Credit

文/3and garden
ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。

Print Friendly, PDF & Email

人気の記事

連載・特集

GardenStoryを
フォローする

ビギナーさん向け!基本のHOW TO