葉も花も実も楽しめる! 育てやすいヤブランはガーデニング初心者にもおすすめの植物
みずみずしいエバーグリーンの葉を持つヤブランは、花も実も美しい人気の植物です。昔から日本で自生してきた植物なので環境に馴染みやすく、放任しても順調に育ちます。この記事では、ヤブランの基本情報や種類、育て方など、詳しくご紹介します。
目次
まずはヤブランの基本情報を把握しておこう!
ヤブランは、キジカクシ科ヤブラン属の植物です。原産地は日本を含む東アジアで、日本の気候によく馴染んで暑さ・寒さに強く、育てやすいのが特徴。多年草で、一度植え付ければ何年も生育します。春から新芽を出し、寒くなると生育が止まりますが、落葉することなく常緑のまま冬を越し、寂しくなりがちな冬の庭の貴重なグリーンとなってくれます。ヤブランの草丈は20〜40cm。細長い葉を放射状に伸ばしてシャープなラインを描きます。開花期は7〜10月で、花つきがよく次々と開花して庭を彩ってくれます。
ヤブランの別名と名前の由来
ヤブランは漢字で「藪蘭」と書き、名前に「ラン」が入っていますが、ラン科の植物ではありません。「藪のような暗がりでも咲く花」というのが花名の由来といわれます。また、ランのように細長い葉を持ち、細長い花姿が中国語で「細長く連なっている」という意味の「欄」にちなむ、など名前の由来は諸説あるようです。和名で古くは「山菅(やますげ)」や「菅(すげ)」と呼ばれ、万葉集にも登場します。また、同じキジカクシ科に属する、春咲き球根植物ムスカリに姿が似ていることから「サマームスカリ」と呼ばれることも。英名は、学名Liliope muscariからそのまま「リリオペ」で、これはギリシャ神話に記されている、泉の妖精の名前にちなんでいます。
ヤブランの花と実をご紹介! 花言葉も知っておこう
ヤブランは、花茎を立ち上げた先端に、花径4mmほどの小さな花を連ねるように咲かせます。花色は紫、白。花後に実をつけますが、すぐに果皮が取れて、黒い種子が剥き出しになります。花言葉は「謙虚」「忍耐」「隠された心」など。
ヤブランの品種と特徴
ヤブラン属には5種が属しており、品種改良によって作出された園芸品種も出回っています。ここでは、主に日本で流通している種類や園芸品種についてご紹介します。
日本に自生するヤブランの仲間
日本に分布しているのは、ヤブラン、ヒメヤブラン、コヤブランの3種類です。ヒメヤブランとコヤブランはヤブランよりもやや小ぶりで、草丈は10〜20cm。ヤブランとは異なり、ランナー(匍匐茎)を伸ばして増える性質を持っています。ヒメヤブランは花穂につく花数が少なめですが、コヤブランは、ヤブランと同じくらい花穂にたくさんの花を連ねるので、花数に注目すれば見分けることができます。
葉のきれいなものが多い! ヤブランの園芸品種
ヤブランの園芸品種で最もポピュラーなのは斑入りヤブランで、葉にストライプ状に斑が入り、カラーリーフプランツとして重宝します。‘ライラック・ビューティ’は紫色の花穂が通常よりも大きく、より華やかな雰囲気が魅力です。‘ビー ディー・インゴット’は、葉が黄緑色で、明るい雰囲気をもたらしてくれます。‘モンロー・ホワイト’は、白花で花つきがよく、爽やかな咲き姿が素敵な品種です。
ヤブランを元気に育てるためのポイント
ここまで、ヤブランの基本情報や名前の由来、花言葉、種類などについてご紹介してきました。では、ここからはガーデニングの実践編として、適した栽培環境や植え付け、水やりや施肥、増やし方など、育て方について詳しく解説します。
ヤブランの栽培環境と置き場所
ヤブランは、日向から半日陰の場所まで、どこでもよく育ちます。ただし、あまりに暗い場所では、ヒョロヒョロと間のびした草姿になり、花つきも悪くなるので注意。また、葉に斑が入る品種は、真夏に強光線を浴びると葉焼けして見栄えが悪くなるので、朝のみ日が差す東側や落葉樹の足元など、チラチラと木漏れ日が差すような半日陰の場所が向いています。土壌を選ばずよく育ち、暑さ寒さにも強いのが特徴です。関東以西の暖地では特に寒さ対策の必要はなく、戸外で越冬できます。
ヤブランに適した土づくり
【地植え】
植え付けの約2週間前に、腐葉土や堆肥、緩効性肥料少量を混ぜ込んでよく耕してください。土づくりをした後にしばらく時間をおくことで、分解が進んで土が熟成し、植え付け後の根張りがよくなります。
【鉢植え】
草花用にブレンドされた、市販の培養土を利用すると手軽です。
ヤブランの植え付け・植え替え
ヤブランの植え付け・植え替えの適期は、真夏や真冬を除いた3〜6月か、9〜11月頃です。ただし、ほかの時期にも苗は出回っているので、花苗店などで入手したら早めに植え付けるとよいでしょう。
【地植え】
土づくりをしておいた場所に、苗の根鉢よりも一回り大きな穴を掘り、軽く根鉢をほぐして植え付けます。最後にたっぷりと水を与えましょう。複数の苗を植える場合は、15〜30cmの間隔を取ってください。
庭で育てている場合、環境に合えば植え替える必要はありません。ただし、植え付けから5〜6年が経って株が込み合っているようなら、掘り上げて株分けしてください。改めて植え直し、株の若返りをはかりましょう。
【鉢植え】
鉢で栽培する場合は、6〜7号の鉢を準備します。用意した鉢の底穴に鉢底ネットを敷き、軽石を1〜2段分入れてから草花用の培養土を半分くらいまで入れましょう。ヤブランの苗をポットから取り出して軽く根鉢をくずし、鉢の中に仮置きして高さを決めます。少しずつ土を入れて、植え付けましょう。水やりの際にすぐあふれ出すことのないように、土の量は鉢縁から2〜3cmほど下の高さまでを目安にし、ウォータースペースを取っておいてください。土が鉢内までしっかり行き渡るように、割りばしなどでつつきながら培養土を足していきます。最後に、鉢底から流れ出すまで、十分に水を与えましょう。寄せ植えの素材として、大鉢にほかの植物と一緒に植え付けてもOKです。
鉢植えで楽しんでいる場合、成長とともに根詰まりして株の勢いが衰えてくるので、2〜3年に1度は植え替えることが大切です。植え替え前に水やりを控えて土が乾いた状態で行うと、作業がしやすくなります。鉢から株を取り出してみて、根が詰まっていたら、根鉢をくずして古い根などを切り取りましょう。根鉢を1/2〜1/3くらいまで小さくして、元の鉢に新しい培養土を使って植え直します。
ヤブランの水やり
水やりの際は、株が蒸れるのを防ぐために茎葉全体にかけるのではなく、株元の地面を狙って与えてください。
真夏に水やりする場合は、朝か夕方の涼しい時間帯に行うことが大切です。気温の高い昼間に行うと、すぐに水がぬるま湯のようになり、株が弱ってしまいます。
また、真冬に水やりする場合は、気温が低くなる夕方に与えると凍結の原因になってしまうので、十分に気温が上がった真昼に与えるようにしましょう。
【地植え】
根付いた後は、地植えの場合は下から水が上がってくるのでほとんど不要です。ただし、雨が降らない日が続くようなら水やりをして補います。
【鉢植え】
日頃の水やりを忘れずに管理します。ただし、いつもジメジメした状態にしておくと、根腐れの原因になってしまいます。土の表面がしっかり乾いたら、鉢底から水が流れ出すまで、たっぷりと与えてください。茎葉がしおれそうにだらんと下がっていたら、水を欲しがっているサイン。植物が発するメッセージを逃さずに、きちんとキャッチしてあげることが、枯らさないポイントです。また、冬でもカラカラに乾燥させることのないように、適宜水やりを続けてください。
ヤブランの肥料
【地植え】
強健な性質なので、1年目は植え付け時に元肥として緩効性肥料を施してあれば、追肥の必要はありません。2年目以降は、古葉を刈り込んだ後や、株の生育に勢いがない時などに液肥を与えておくとよいでしょう。
【鉢植え】
3〜4月と10〜11月に緩効性化成肥料を置き肥します。古葉を刈り込んだ後や、株の生育に勢いがない時などには、液肥を与えておくとよいでしょう。
ヤブランの手入れ
【古葉切り】
ヤブランは多年草に分類され、越年して長く生育を続ける植物です。寒くなると生育が止まって冬を乗り越え、春を迎えると新芽が動き出します。この新芽が出る前のタイミングで、葉を地際から刈り取っておきましょう。前年に出た葉は古くなって傷んでいたり、茂りすぎて草姿が乱れるためです。古い葉を残しておいても生育に問題はないのですが、古い葉と新しい葉が混じり合い、草姿も見苦しくなってしまいます。見栄えよく保つには、この刈り込みのひと手間をかけておくのがポイントです。
【花がら摘み】
ヤブランの終わった花は、そのまま放置せずに摘み取りましょう。まめに花がらを摘んで株まわりを清潔に保つことで、病害虫発生の抑制につながりますよ! また、いつまでも終わった花を残しておくと、種子をつけようとして株が消耗し、老化が早まって花数が少なくなるので注意。花がらをまめに摘み取ると、次世代を残そうとして次から次に花がつき、長く咲き続けてくれます。種子を採取したい場合は、開花が終わりそうな頃に花がら摘みをやめて、種子をつけさせましょう。
ヤブランを育てるうえで気をつけておきたい病気と害虫
【病気】
ヤブランは比較的病気にかかりにくい植物ですが、まれに炭疽(たんそ)病を発症することがあります。
炭疽病は、春や秋の長雨の頃に発生しやすくなります。カビが原因で発生する伝染性の病気で、葉に褐色で円形の斑点が現れるのが特徴です。その後、葉に穴があき始め、やがて枯れ込んでいくので早期に対処することが大切です。斑点の部分に胞子ができ、雨の跳ね返りなどで周囲に蔓延していくので、被害を見つけたらすぐに除去して土ごと処分しておきましょう。密植すると発病しやすくなるので、茂りすぎたら葉を間引いて風通しよく管理してください。水やり時に株全体に水をかけると、泥の跳ね返りをきっかけに発症しやすくなるので、株元の表土を狙って与えるようにしましょう。
【害虫】
ヤブランは比較的害虫が発生しにくい植物ですが、まれにナメクジとヒョウタンゾウムシの被害にあうことがあります。
ナメクジは花やつぼみ、新芽、新葉、果実などを食害します。体長は40〜50mmで、頭にツノが2つあり、茶色でぬらぬらとした粘液に覆われているのが特徴。昼間は鉢底や落ち葉の下などに潜んで姿を現しませんが、夜に活動します。植物に不快な粘液がついていたら、ナメクジの疑いがあるので夜にパトロールして捕殺してください。または、ナメクジ用の駆除剤を利用して防除してもよいでしょう。多湿を好むので風通しをよくし、落ち葉などは整理して清潔に保っておきます。
ヒョウタンゾウムシは、主に4〜8月に発生しやすい昆虫です。成虫の体長は6〜9mmで、色は灰褐色。頭が小さく鼻のような突起を持ち、胸部と腹部がヒョウタンのような形をしています。主に葉を食害し、見栄えが悪くなるので注意。飛ぶことができず、株を揺すると落ちやすいので、捕殺しましょう。大量に発生しているようなら、適用する薬剤を散布して駆除するのも一案です。成虫は秋に雑草や枯れ葉の中で越冬するので、冬に雑草や枯れ葉を残さずに株まわりをきれいに掃除しておきましょう。
ヤブランは株分けで増やすのが一般的
ヤブランは株分けして増やすことができます。適期は3〜4月か10〜11月頃です。株を植え付けて数年が経ち、大きく育つと老化が進むので、「株分け」をして若返りをはかります。株を掘り上げて4〜5芽ずつ付けて根を切り分け、再び植え直しましょう。それらの株が再び大きく成長し、株が増えていくというわけです。
シェードガーデンにピッタリ! ヤブランの楽しみ方
丈夫でメンテナンスの手間がかからないヤブランは、耐陰性があるため、あまり日当たりに恵まれない環境でも育ちます。常緑性で冬でもエバーグリーンが楽しめるのもいいですね。斑入り種や明るい黄緑葉種を選んで、暗くなりがちなシェードガーデンをみずみずしく彩ってはいかがでしょうか。足元が日陰になりがちな樹木の下草としてもおすすめです。和風・洋風を問わずに取り入れやすく、放射状に細葉を伸ばすシャープな草姿は、モダンな雰囲気の庭にもよく似合います。
日陰でも育つ丈夫なヤブランを育ててみよう!
日当たりに恵まれない場所にも適応してよく育つヤブラン。ほかの植物には適さない場所でも育ち、植物の隙間を埋める植物としても重宝します。ぜひ庭やベランダに迎え入れてはいかがでしょうか。
Credit
文/3and garden
ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
新着記事
-
公共ガーデン
都立公園を新たな花の魅力で彩る「第2回 東京パークガーデンアワード 神代植物公園」は秋の彩り
新しい発想を生かした花壇デザインを競うコンテスト「東京パークガーデンアワード」。第2回のコンテストは、都立神代植物公園(調布市深大寺)を舞台に一般公開がスタートしています。ここでは、5つのコンテストガ…
-
イベント・ニュース
【スペシャル・イベント】ハロウィン・ディスプレイが秋の庭を彩る「横浜イングリッシュガ…PR
今年のハロウィン(Halloween)は10月31日(木)。秋の深まりとともにカラフルなハロウィン・ディスプレイが楽しい季節です。「横浜イングリッシュガーデン」では、9月14日(土)から「ハロウィン・ディスプレイ」…
-
園芸用品
ガーデニングの強い味方! バーミキュライトの特徴や使い方をご紹介
みなさんは「バーミキュライト」というものをご存じですか? バーミキュライトは、ガーデニングを助けてくれる非常に便利なもので、市販の培養土にもよく配合されている資材です。この記事では、そんなバーミキュ…