ガーデニングを愛する人々に、大人気の植物ってありますよね。代表的なのはバラやクリスマスローズなどで、毎年の新品種発表のシーズンになると、コレクターたちが「今年はどんな新しい花と出会えるんだろう?」とソワソワし始めるもの。そんなガーデニングのコレクターズアイテムには、他にもチューリップやパンジー・ビオラ、ユリ、クレマチスなどもありますが、熱帯性植物のベゴニアも所有欲をくすぐる、一つのジャンルとして確立しているのをご存じでしょうか? この記事では、ベゴニアの多様な種類に注目し、その魅力について掘り下げていきます。
目次
ベゴニアとはどんな花?
ベゴニアは、シュウカイドウ科シュウカイドウ属の多年草です。原産地はオーストラリアを除く、世界の熱帯・亜熱帯地域。発芽適温が20〜25℃、生育適温が18〜20℃ということからも分かるように、暑さには強いのですが、寒さには弱い性質です。そのため、日本で育てる際には、冬の寒さ対策が必須です。
ベゴニアが世界の熱帯・亜熱帯地域に分布しているということは、自生する地域や気候に馴染むように、それぞれに進化してきたことが想像できますね。その種類は、なんと原種で2,000種以上が確認されています。人気の植物ですから、人の手により長年にわたって品種改良が行われてきたこともあり、現在、交配種は1万種を超えているとされています。
ベゴニアは常緑性の植物で、周年青々とした葉を保ち、葉の形は左右非対称になります。肉厚で大きめの葉を持ち、種類によってその色や形はさまざまで、株姿も茎が上に伸びるタイプや這うように伸びるタイプなど多様です。
また、雌雄異花なのもベゴニアの特徴で、1つの株に雄花と雌花が咲きます。総じて雄花が八重咲き、雌花が一重咲きになります。ベゴニアの開花期は主に4〜10月。花色はピンク、赤、オレンジ、黄、白、青、紫などがあります。
ベゴニアの花言葉
ベゴニアの花言葉は、「片想い」「愛の告白」「親切」「幸福な日々」など。「片想い」は、葉の形が少しいびつなハート形をしているところからとされています。
また、花色によっても異なる花言葉が与えられており、赤いベゴニアは「公平」、白いベゴニアは「親切」です。
木立性ベゴニアの特徴
茎が上方へ真っ直ぐに立って伸びるのが、木立性ベゴニアの特徴です。木立性ベゴニアの草姿は、4つに分類することができます。
●矢竹型
太い主枝が真っ直ぐに伸び、竹のように節がやや太くなるタイプ。十分に主枝が伸びきると、次の新しいシュートが地際から出てきます。木立性ベゴニアの中でも主流の草姿で、品種数も多く出回っています。
●叢生(そうせい)型
やわらかい質感の茎が地際から多数伸び、株立ち状に茂るタイプ。細い茎は枝分かれしやすい性質を持っています。
●つる性型
茎が細くて這うように伸びたり、枝垂れたりするタイプ。ハンギングバスケットのように高い位置に掛けたり吊り下げて、しなやかな茎葉の動きを楽しむタイプです。
●多肉茎型
枝分かれしにくい、多肉質の太い茎が伸びるタイプです。
ひと口に木立性ベゴニアといっても、バラエティーに富んでいます。木立性ベゴニアは、花茎を伸ばした先に枝分かれして小さな花をびっしりと咲かせる華やかさが魅力。花色は白、赤、ピンク、オレンジ、複色咲きなどがあります。四季咲き性の品種が多く、冬も10℃以上を保てば開花を楽しめます。冬越しできる最低温度は7℃程度です。草丈1mを超える大型の品種もあれば、鉢栽培できるコンパクトな品種もあります。
木立性ベゴニアの主な品種
‘カサブランカ’は、黒みがかったベルベットのような質感の葉に映える白い花が特徴的。「世界最高峰」といわれる品種です。
‘ミセスハシモト’は、コレクター垂涎の名花で、長く伸ばした花茎の先に枝分かれしてピュアホワイトの花が鈴なりに咲きます。花の重みで花茎がしなる姿が魅力的です。
ベゴニア・マクラータは、グリーンの葉に白いドットが入るユニークな株姿に人気があり、「ポルカドットベゴニア」とも呼ばれています。夏に清楚な白い花が咲きます。
‘ピンク・ミュージアム’は、葉表が濃いグリーン、葉裏が銅色のリバーシブルタイプ。ベビーピンクの愛らしい花も目を引きます。
根茎性ベゴニアの特徴
多肉質の太い茎が地下で横に這うように伸びるタイプが、根茎性ベゴニアです。主に葉の形や色に特徴のある品種が揃い、特にコレクション性が高く、人気を誇っています。葉のサイズも2cmほどの小さなものから、30cm以上になるものまで。茎が地表か地中にあるため、葉が地際から直接伸びているように見えるのが特徴です。
直射日光に当てないほうがよく、明るい日陰や室内などで管理する観葉植物として人気があります。開花期は3〜6月頃。花色は白、赤、ピンク、オレンジ、黄、複色があります。寒さに弱く、耐寒温度は3〜5℃。
根茎性ベゴニアの主な品種
‘バウレンシス’は、花弁の裏にトゲが生えているのが特徴で、取り扱いには注意。先端がとがっているシャープな葉姿で、グリーンの葉は紫色で縁取られています。
ベゴニア・マソニアナは、中国南部からヒマラヤにかけて自生するベゴニアで、「アイアンクロス・ベゴニア」とも呼ばれています。葉の美しさを楽しむ観葉ベゴニアで、グリーンの葉に鉄十字のような黒い模様が入り、インパクトがあります。草丈は30〜50cmで、耐寒温度は5℃くらいまで。
‘タイガーキトゥン’は、育ててみたい品種として大人気。深いワインレッドの葉に明るいグリーンの斑がランダムに入ります。葉数が多く出揃い、まるでシックな花が咲いているように見えます。
レックスベゴニアの特徴と主な品種
レックスベゴニアは、根茎性ベゴニアの一種です。インド〜タイ原産のベゴニア・レックスをメインに、他の品種を掛け合わせて作出された品種群のことをレックスベゴニアと呼び、今や一つのジャンルとなっています。葉の美しさを追求して作出された品種グループで、特にコレクション色が強いのが特徴。品種数が大変多く、珍しい色や模様、葉姿はエキゾチックで、選ぶ楽しみがありますよ!
レックスベゴニアの草丈は30〜50cmで、管理しやすいコンパクトさもいいですね。強い日差しに当てると葉焼けして美観を損なうので、明るい日陰で管理します。耐寒温度は5℃くらいなので、秋以降は室内の明るい窓辺などに移動するとよいでしょう。
人気の品種は、カエデのような形のシルバー色の葉で、縁や葉脈に赤茶色がのる‘ベデルギウス’、葉が渦巻き状に立体的に巻き込むシルバーリーフを持ち、縁と中央には黒い斑が入る‘エスカルゴ’などです。
球根性ベゴニアの特徴と主な品種
球根性ベゴニアは、園芸品種の球根ベゴニアの元となっている、アンデス山系に分布する数種の野生種の球根性ベゴニアのことを指します。園芸品種の基本となった原種は7種類あり、ボリビエンシス、キンナバリーナ、クラーケイ、ピアーセイ、ロシフローラ、ダビシー、ベイシーです。
球根ベゴニアの特徴
球根ベゴニアは、前述のようにアンデス山系に分布する、球根性の野生種から作出された園芸品種群です。気温が下がると地上部を枯らして休眠し、球根の状態で越冬します。ベゴニアの中でも花の発色が美しく、華やかな存在感を放ちます。
球根ベゴニアは、茎が立ち上がって自立する「立ち性」と、枝垂れるように伸びる「下垂性」の2種類に分けられます。開花期は4月中旬〜7月中旬。花色は赤、ピンク、オレンジ、黄、白、複色などがあります。花のサイズは5〜30cmと品種によって幅があり、一重咲き、八重咲き、ピコティ咲き、バラ咲きなど、花姿も多様です。
球根ベゴニアの主な品種
‘ノンストップ’シリーズは、10cmほどの大きな花が、次々と「ノンストップ」に咲く品種です。バラのような豪華な八重咲きで、花色は赤、オレンジ、黄、白、ピンクなどがあります。草丈は約20㎝で、コンパクトにまとまる扱いやすさも長所の一つです。
‘ファイヤークラッカー’は、原種のベゴニア・ボリビエンシスに交雑種を掛け合わせて作出された品種で、花火が見事に上がったような咲き姿が個性的。花色はピンク、オレンジ、黄、白など。枝垂れる性質があるので、ハンギングバスケットや吊り鉢などに植え込み、高い場所に飾るのがおすすめです。
センパフローレンスの特徴
ベゴニア・センパフローレンスは、昔から庭づくりに用いられてきた種類で、一般家庭ではもちろん、公共の花壇でもよく見られます。ベゴニアの中でも一番身近な存在といっていいのではないでしょうか。
ベゴニア・センパフローレンスはブラジルが原産のククラタの変種、フーケリーを元に作出された園芸品種です。4月中旬〜11月まで開花期間が長いのが特徴で、四季咲きベゴニアとも呼ばれています。花色は赤、ピンク、白、複色など。草丈は20〜60cmで、肉厚でつややかな葉を持ち、葉色はグリーン系とシックな褐色系があります。寒さに弱いので、日本では一年草として扱われていますが、暖地では冬越しできることもあるようです。
センパフローレンスの主な品種
‘アンバサダー・ローズフラッシュ’は、センパフローレンスの中でも大輪系の品種です。生育旺盛で分枝性もよく、草姿が乱れにくくきれいにまとまります。草丈は25〜30cm。茎葉は明るいグリーンで、花色はピンクです。
‘ダブレット’は、銅葉系の葉がシックな印象。花色は赤、ピンク、白で、半八重咲きの花を密に咲かせる姿は大変華やかです。草丈は20〜45cm。
‘ダブルアップ’は、分枝がよい品種で、こんもりと密に茂る特徴があります。花弁を幾重にも重ねる八重咲きで、優美な印象。花色は赤、ピンク、白があり、茎葉は明るいグリーンと褐色が揃います。草丈は20〜45cm。
エラチオールベゴニアの特徴
エラチオールベゴニアは、ベゴニア・ソコトラナと球根ベゴニアを交配して作出された園芸品種群です。花鉢として販売されることが多く、窓辺を彩る植物として人気があります。開花期は9月中旬〜6月下旬で、花色は赤、ピンク、オレンジ、黄、白、複色など。一重咲きもありますが、花弁を幾重にも重ねる華やかな八重咲きに人気が集まっています。草丈は15〜40cmでコンパクトにまとまり扱いやすいのも長所。生育適温は20℃前後で、耐寒温度は10℃くらいと、暑さも寒さも苦手という性質を持っています。
エラチオールベゴニアの主な品種
‘バレンチノ’は大輪のシングル咲き。濃いピンクと黄色の花心やしべのコントラストが美しく、目を引く品種です。花つきがよく、株いっぱいに花芽がつき、次々と咲き上がります。花もちがよいのも特徴です。
‘アール・ヌーヴォー’は、クラシカルな雰囲気をまとう品種で、花弁を数枚重ねる八重咲き。花色は深みのあるピンクで、花弁の縁にはグリーンが混じります。
‘ダネードー’は鮮やかな赤色の花。大きな花弁の中央に、小さな花弁が連なるユニークな咲き姿を楽しめます。
冬咲きベゴニアの特徴と主な品種
冬咲きベゴニアは、クリスマス・ベゴニアとも呼ばれ、クリスマスからお正月のシーズンを盛り上げる花鉢として利用されています。冬に出回る花ですが、寒さには弱く、耐寒性は10℃くらいまでで、花を咲かせるには15〜18℃が必要です。冬は必ず室内で管理しましょう。花色は赤、ピンク、白などで、茎葉を覆い尽くすほどたっぷりと開花します。
主な品種の‘ピーターソン’は、ピンク、淡いピンク、濃いピンクのバリエーションがあり、花茎を立ち上げて多数の花を咲かせます。‘ラブ・ミー’は、可愛らしいネーミングもあって、爆発的にヒットした品種。パステルピンクの花が株いっぱいに咲いて、室内を華やかに彩ります。
さまざまな種類があり葉や花が楽しめるベゴニアを育ててみよう
原種が2,000以上、交配種は1万を超えるといわれるほど、種類が豊富なベゴニア。可愛らしい花を楽しむもの、クールな葉姿を楽しむものなど、多様なコレクションができます。さまざまな種類の中から、お気に入りのベゴニアを見つけて、ガーデンやベランダなどで育ててみてはいかがでしょうか。
Credit
文/3and garden
ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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