月見草はどんな花? 待宵草とはどう違う? 特徴や育て方のポイント
月見草は透け感のある繊細な花姿が魅力の草花ですが、見た目に反して強健で育てやすいので、ビギナーにもおすすめです。この記事では、月見草の特徴や育て方の基本などについて、詳しくご紹介していきます。
目次
月見草の主な特徴
月見草とはどんな草花なのでしょうか。ここでは、その特徴についてご紹介していきます。
基本情報
月見草は、アカバナ科マツヨイグサ属の植物で、種類によって一年草、二年草、多年草があります。原産地は南北アメリカです。
日本では、月見草といえばマツヨイグサ(Oenothera Stricta)、コマツヨイグサ(O.laciniata)、アレチマツヨイグサ(O.parviflora)、オオマツヨイグサ(O.qlazioviana)などを含めた黄色い花の総称として捉えられています。しかし、植物学上では、白〜淡いピンクの花を咲かせるツキミソウ(O.tetraptera)のことを指します。ツキミソウの開花期は5〜9月で、夕暮れ時に咲き始めるのが特徴。咲き始めは白い花ですが、徐々にピンクへと変化し、翌朝にしぼんでしまいます。現在日本ではほとんど栽培されていませんが、それに代わってヒルザキツキミソウ(O.speciosa)がガーデニングでは最もポピュラーに普及しています。名前の通り昼に咲き、花色は白〜ピンクがあります。草丈は30〜40cmほどです。
月見草の花言葉
月見草の花言葉には、「無言の愛情」「移り気」「ほのかな恋」「うつろな愛」「湯上がり美人」などがあります。これらのほとんどが、白い花がピンクへと変化していく様子からイメージして名付けられたようです。「うつろな愛」は、さしずめ一日でしぼむ姿から短い恋を連想して、というところでしょうか。
栽培環境
月見草は、どんな環境を好むのでしょうか。健やかに生育し、たくさんの花を咲かせるために適した環境についてご紹介します(待宵草、昼咲き月見草ともに性質は同じです)。
適した場所
日当たり、風通しのよい場所を好みます。日当たりがよくないと花つきが悪くなるうえ、ヒョロヒョロと間のびした弱々しい草姿になってしまうので注意してください。
月見草は水はけのよい環境を好むので、水はけの悪い土壌であれば、腐葉土や堆肥を多めにすき込み、10〜20cmくらい土を盛って周囲よりも高くしておくとよいでしょう。
用土
【地植え】
植え付けの約2週間前に、腐葉土や堆肥、緩効性肥料を混ぜ込んで、よく耕してください。土づくりをした後にしばらく時間をおくことで、分解が進んで土が熟成し、植え付け後の根張りがよくなります。
【鉢植え】
市販の草花用培養土を利用すると手軽です。自身で配合土を作りたい場合は、赤玉土小粒6、腐葉土4の割合でブレンドするとよいでしょう。
育て方の基本
ここまで、月見草の基本情報や花言葉、適した栽培環境などについてご紹介してきました。では、ここからはガーデニングの実践編として、月見草の育て方について詳しく解説していきます(待宵草、昼咲き月見草ともに性質は同じです)。
植え付け・植え替え
月見草の植え付け・植え替えの適期は、3月か9月頃です。ただし、ほかの時期にも苗は出回っているので、花苗店などで入手したら早めに植え付けるとよいでしょう。
【地植え】
土づくりをしておいた場所に、苗の根鉢よりも一回り大きな穴を掘り、根を傷めないように植え付けます。最後にたっぷりと水を与えましょう。複数の苗を植える場合は、30cmくらいの間隔を取っておきましょう。
多年草タイプを地植えにしている場合は、数年は植えたままにしてもかまいません。しかし、大株に育って込み合ってきたら、3月か9月頃に掘り上げて株分けし、株の若返りをはかるとよいでしょう。
【鉢植え】
鉢で栽培する場合は、6〜7号の鉢を準備します。用意した鉢の底穴に鉢底ネットを敷き、軽石を1〜2段分入れてから草花用の培養土を半分くらいまで入れましょう。月見草の苗をポットから取り出し、根を傷めないように鉢に仮置きして高さを決めたら、少しずつ土を入れて植え付けます。水やりの際にすぐあふれ出さないように、土の量は鉢縁から2〜3cmほど下の高さまでを目安にし、ウォータースペースを取っておいてください。土が鉢内までしっかり行き渡るように、割りばしなどでつつきながら培養土を足していきます。最後に、鉢底から流れ出すまで、十分に水を与えましょう。
鉢植えで多年草タイプを育てている場合、成長とともに根詰まりして株の勢いが衰えてくるので、1〜2年に1度は植え替えることが大切です。植え替え前に水やりを控えて土が乾いた状態で行うと、作業がしやすくなります。鉢から株を取り出し、古い根を整理して軽く根鉢をくずし、新しい培養土を使って植え直します。もっと大きく育てたい場合は、元の鉢よりも大きな鉢を準備して植え替えてください。
水やり
水やりの際は、株が蒸れるのを防ぐために茎葉全体にかけるのではなく、株元の地面を狙って与えてください。
真夏に水やりする場合は、朝か夕方の涼しい時間帯に行うことが大切です。気温の高い昼間に行うと、すぐに水の温度が上がり、株が弱ってしまいます。
また、越年する多年草タイプを育てている場合、真冬に水やりする際は、気温が低くなる夕方に与えると凍結の原因になってしまうので、十分に気温が上がった真昼に与えるようにしましょう。
【地植え】
根付いた後は、地植えの場合は下から水が上がってくるのでほとんど不要です。ただし、雨が降らない日が続くようなら水やりをして補います。
【鉢植え】
日頃の水やりを忘れずに管理します。土の表面がしっかり乾いたら、鉢底から水が流れ出すまで、たっぷりと与えましょう。茎葉がしおれそうにだらんと下がっていたら、水を欲しがっているサイン。植物が発するメッセージを逃さずに、きちんとキャッチしてあげることが、枯らさないポイントです。また、多年草タイプを栽培している場合は、冬でもカラカラに乾燥させることのないように、適宜水やりを続けてください。
肥料
【地植え】
植え付け時に元肥として緩効性肥料を施しておけば、追肥は特に必要ありません。肥料を与えすぎると、かえって茎葉ばかりが茂って花つきが悪くなることがあるので注意。株に勢いがないようであれば、速効性の液肥を与えて様子を見るとよいでしょう。
【鉢植え】
植え付け時に元肥として緩効性肥料を施しておきましょう。
その後は、生育が著しくなる3〜8月に緩効性肥料を株の周囲に少量ばらまき、軽く耕して周囲の土に馴染ませます。肥料を与えすぎると、かえって茎葉ばかりが茂って花つきが悪くなることがあるので注意しましょう。
増やし方
月見草は、種まきと株分けで増やすことができます。
【種まき】
月見草は、ビギナーでも種まきから簡単に育てられます。こぼれ種で増えるほど強健な性質で失敗が少ないので、ぜひ種まきから始めてみませんか? 種まきからスタートするメリットは、輸送などによる苗への負担がかからず、環境に馴染みやすいことです。敷地が広くて多数の苗を植えたい場合は、コストカットにもなります。
今年咲いた花から種子を採取して播きたい場合は、開花期が終わりそうな頃に花がら摘みをやめて、莢をつけさせます。莢が熟した頃に採取して中から種を取り出し、密閉容器に入れて保存しておきましょう。
種まきの適期は、4〜5月です。
- 直まき
庭に直接種子を播くことを「直まき」といいます。
種まきの約2週間前に、腐葉土や堆肥、緩効性肥料を混ぜ込んでよく耕し、土づくりをしておきましょう。種はばらまきにして薄く土をかぶせます。発芽後は間引きながら育成し、最終的に株同士の間隔を20〜30cm取ります。
- ポットまき
種まきから栽培する場合、花壇などに直まきすると、幼苗のうちに病気や虫の害にあいやすく、天候不順に左右されやすいので、黒ポットに播いて適した場所で管理すると、より確実です。ただし、月見草は根を傷めると後の生育が悪くなるので、移植する際は根鉢を崩さないよう丁寧に扱ってください。
まず黒ポットに、草花用にブレンドされた市販の培養土を入れます。種を数粒ずつまいて軽く土をかぶせます。最後にジョウロなどで高い位置から優しい水流で水やりしておきましょう。発芽までは明るい半日陰で管理し、乾燥しないように適度に水やりします。
発芽後は日当たりのよい場所で管理します。勢いがあって元気のよい苗を1本のみ残し、ほかは間引きましょう。ヒョロヒョロと伸びて弱々しい苗や、葉が虫に食われている苗、葉が黄色くなっている苗などを選んで間引きます。苗が十分に育ったら、花壇や鉢などの植えたい場所に、根鉢を崩さずに植え付けます。
【株分け】
越年する多年草のタイプであれば、株分けして増やすことができます。
月見草の株分けの適期は3月か9月頃です。株を植え付けて数年が経ち、大きく育ったら株の老化が進むので、「株分け」をして若返りを図ります。株を掘り上げて新芽を数芽ずつ付けて地下茎を切り分け、植え直しましょう。それらの株が再び大きく成長し、同じ姿の株が増えていくというわけです。
夏越し・冬越し
【夏越し】
暑さには強いため、地植え、鉢植えともに対策を講じる必要はありません。
【冬越し】
越年する多年草タイプを育てている場合、冬はロゼット状(放射状に伸ばした葉をぺったりと地面に広げた状態)になって休眠します。関東以南では屋外で植えっ放しにしても越冬できますが、凍結しやすい場所では、敷き藁やバークチップなどでマルチングをしておくとよいでしょう。寒冷地で地植えにしている場合は、鉢に植え替えて、凍結しない場所で管理します。
病害虫
【病気】
月見草の栽培では、病気が発生する心配はほとんどありません。
【害虫】
月見草に発生しやすい害虫は、アブラムシ、アカバナトビハムシなどです。
アブラムシは、3月頃から発生しやすくなります。2〜4mm程度の小さな虫で繁殖力が大変強く、発生すると茎葉にびっしりとついて吸汁し、株を弱らせるとともにウイルス病を媒介することにもなってしまいます。見た目も悪いので、発生初期に見つけ次第こすり落としたり、水ではじいたりして防除しましょう。虫が苦手な方は、スプレータイプの薬剤を散布して退治するか、植え付け時に土に混ぜ込んで防除するアブラムシ用の粒状薬剤を利用するのがおすすめです。
アカバナトビハムシは、ハムシ科の昆虫で、成虫、幼虫ともに月見草を好み、葉を旺盛に食害します。成虫は甲虫で、光に当たると黒に緑色を帯びた光沢を見せます。体長は3〜4mmくらい。跳ねるように飛ぶ敏捷性があります。幼虫は茶色いイモムシのような姿をしており、体長は5mmくらい。葉に穴があいているのを見つけたら、葉裏などを探して、見つけ次第捕殺してください。たくさん発生しているようであれば、適用する薬剤を散布して駆除するとよいでしょう。
待宵草との関係
日本では、一般に待宵草も含めて月見草と捉えられており、むしろ月見草といえば黄色い花姿をイメージすることが多くなっています。どうしてそうなったのか、流布した背景や待宵草の特徴、種類についてガイドします。
待宵草が月見草として流通する背景
月見草が最初に日本に伝えられたのは江戸時代で、白から淡いピンクへと変色する美しい花でしたが、日本の気候に馴染まず、昭和初期にはほとんど見かけることがなくなりました。少し遅れて日本に入った待宵草は、逆に繁殖力が強くて野生化し、ほどなくして全国に広まっていきました。いずれも夕方から花を咲かせる特性が共通していますが、待宵草の黄色い花色が月をイメージさせたのか、待宵草が月見草として誤認されるようになり、流行小説にも黄色い花として月見草が描写されたことから、誤認が一般認識となって広まったとされています。
待宵草の特徴
待宵草は、月見草と同じアカバナ科マツヨイグサ属の多年草です。原産地は南アメリカで、繁殖力が強く放任してもよく育ちます。開花期は6〜8月で、花色はレモンイエロー。花径3cmほどの小花で、夕方から咲き始めて朝にはしぼみます。草丈は10〜30cmです。
待宵草の種類
待宵草には、いくつかの種類があります。オオマツヨイグサは、草丈が1〜1.5mにも達して葉を大きく広げ、花径は8cmくらいで比較的大きな花が咲きます。メマツヨイグサは繁殖力が強く、野生化している姿をよく見かけるほどです。花径は2〜5cmくらい。コマツヨイグサも強健ではびこりやすい性質で、花径は2〜3cmほどです。
夏にたおやかな月見草を楽しんでみては
今回ご紹介した「黄色い花のイメージの月見草は、じつは待宵草だった」「日本で育てられているツキミソウは、昼に咲くヒルザキツキミソウがほとんど」というのは豆知識として役立ちそうですね。月見草、待宵草ともに同様の性質で育てやすいので、ぜひ庭やベランダに迎え、育ててみてはいかがでしょうか。
Credit
文/3and garden
ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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