甘い香りも魅力のハニーサックル! ガーデニングで上手に育てよう
旺盛につるを伸ばして生育し、広い面積を彩ってくれるハニーサックル。アーチやパーゴラなどのガーデニング資材を用いれば、ダイナミックに縦の空間を演出することが可能です。この記事では、ハニーサックルの基本情報や特徴、品種、詳しい育て方などについてご紹介します。
目次
ハニーサックルってこんな花! まずは基本情報を確認
ハニーサックルは英名で、スイカズラ科スイカズラ属のつる性花木のことを指します。スイカズラ属は北半球を原産地として180種以上が分布。日本でハニーサックルとして流通しているのは、明治初期に伝わったとされる北アメリカ東部・南部原産のツキヌキニンドウ(Lonicera sempervirens)、ジャパニーズ・ハニーサックルとも呼ばれる日本原産のスイカズラ(L.japonica)、ヨーロッパ原産のニオイニンドウ(L.periclymenum)、これらを交雑させた園芸品種などです。
ハニーサックルは冬でも青々とした葉を保つ常緑性の植物ですが、寒い地域では葉を落とすことがあるようです。春から生育期に入り、初夏から秋にかけて、長い期間にわたって開花。冬は生育が止まりますが、越年して再び春になると生育し始める……というライフサイクルで、一度植え付ければ長く楽しめるコストパフォーマンスの高い植物といえます。
ハニーサックルは、つるを4〜6m伸ばし旺盛に繁茂するので、植え付ける前にスペースを確保できるかを確認しておきましょう。ただし毎年の剪定によって3mくらいに抑えるなど、手入れによって樹勢をコントロールできます。
ハニーサックルの開花期は5〜10月で、花色はオレンジ、黄、クリーム、白、赤紫など。種類によっては咲き進むと花色が変化していくものもあります。多花性で、次から次につぼみを上げて多数の花を咲かせるので、満開時には見応えがありますよ!
ハニーサックルの特徴
ハニーサックルはつるを伸ばしながら、卵形の葉が茎を中心に左右対称につきます。一つひとつの花は小さいものの、花茎の頂部に集まって咲くので、大輪の花のような華やかさがあります。花には甘い香りがあるのも魅力です。
さまざまな別名を持つハニーサックル! 名前の由来や花言葉をご紹介
ハニーサックルは英名で、花の蜜を吸うと甘いことからこの名前が与えられました。和名は「突抜忍冬(ツキヌキニンドウ)」「忍冬(スイカズラ)」です。「突抜」は、花のすぐ下にある茎をはさんで左右対称につく2枚の葉の基部が接合し、あたかも葉を突き抜けて花が咲くように見える姿からこの名前がつきました。「忍冬」は、冬の寒さを耐え忍んで緑色の葉を保って冬を越すことに由来しています。
ハニーサックルの花言葉は「献身的な愛」「愛の絆」「友愛」などです。
多くの園芸品種があるハニーサックル
ハニーサックルには、さまざまな園芸品種が出回っています。‘セロティナ’は、ペリクリメヌム種(ニオイニンドウ)の改良種で、花房が10cm以上になる大輪花。花弁の内側が白、外側が赤で、色のコントラストが目を引く華やかな品種です。園芸品種として作出された‘ゴールドフレーム’は、大変花つきがよいのが特徴。花弁の外側が赤で、内側はクリーム色からオレンジ色へと変化し、豪華な花姿を楽しめます。ペリクリメヌム種を改良した‘ウインドワード’は香りが強く、つぼみは濃いピンクで開花すると花弁の外側が淡いピンク、内側は白へと変化。‘セロティナ’に似ていますが、花はやや小ぶりで愛らしい姿をしています。
ハニーサックルを上手に育てるポイント
ここまで、ハニーサックルの基本情報や特徴、花言葉、種類などについてご紹介してきました。では、ここからはガーデニングの実践編として、ハニーサックルに適した栽培環境や植え付け、水やりや施肥、日頃の管理、増やし方など、育て方について詳しく解説していきます。
ハニーサックルの栽培に適した環境
ハニーサックルは、日当たり、風通しのよい場所を好みます。半日陰の環境でも育ちますが、暗すぎる場所では花つきが悪くなるので注意。また、適度に水はけ・水もちのよい、腐植質に富んだ土壌を好みます。暑さ寒さに強いほうですが、常に冷たい風が吹きつける場所は避けたほうが無難です。
ハニーサックルの栽培に適した用土
【地植え】
植え付けの2〜3週間前に、直径、深さともに50cm程度の穴を掘ります。掘り上げた土に腐葉土や堆肥、緩効性肥料などをよく混ぜ込んで、再び植え穴に戻しておきましょう。土づくりをした後にしばらく時間をおくことで、分解が進んで土が熟成し、植え付け後の根張りがよくなります。
【鉢植え】
市販の花木用の培養土を利用すると手軽です。
ハニーサックルの植え付けと植え替え
ハニーサックルの植え付け適期は、3〜4月です。この時期以外にも花苗店やホームセンターなどでは苗を販売していることがあります。入手したらすぐに植え付けてください。
【地植え】
土づくりをしておいた場所に、苗の根鉢よりも一回り大きな穴を掘り、根鉢を軽く崩して植え付けましょう。最後にたっぷりと水を与えます。
地植えで育てる場合は、環境に合えば植え替える必要はありません。
【鉢植え】
鉢で栽培する場合は、入手した苗よりも1〜2回り大きな鉢を準備します。用意した鉢の底穴に鉢底ネットを敷き、軽石を1〜2段分入れてから花木用の培養土を半分くらいまで入れましょう。ハニーサックルの苗をポットから取り出し、鉢の中に仮置きして高さを決めたら、少しずつ土を入れて植え付けます。水やりの際にすぐあふれ出すことのないように、土の量は鉢縁から2〜3cmほど下の高さまでを目安にし、ウォータースペースを取っておいてください。土が鉢内までしっかり行き渡るように、割りばしなどでつつきながら培養土を足していきます。最後に、鉢底から流れ出すまで、十分に水を与えましょう。
鉢植えで楽しんでいる場合、成長とともに根詰まりして株の勢いが衰えてくるので、2年に1度は植え替えることが大切です。植え替え前に水やりを控えて土が乾いた状態で行うと、作業がしやすくなります。鉢から株を取り出してみて、根が詰まっていたら、根鉢をくずして古い根などを切り取りましょう。根鉢をほぐして小さくし、元の鉢に新しい培養土を使って植え直します。もっと大きく育てたい場合は、元の鉢よりも大きな鉢を準備し、軽く根鉢を崩す程度にして植え替えてください。
ハニーサックルの水やり
水やりの際は、株が蒸れるのを防ぐために茎葉全体にかけるのではなく、株元の地面を狙って与えてください。
真夏に水やりする場合は、気温の高い昼間に行うと、すぐに水がぬるま湯のようになり株が弱ってしまうので、朝か夕方の涼しい時間帯に行うことが大切です。
また、真冬に水やりする場合は、気温が低くなる夕方に与えると凍結の原因になってしまうので、十分に気温が上がった真昼に与えるようにしましょう。
【地植え】
根付いた後は、地植えの場合は下から水が上がってくるのでほとんど不要です。ただし、雨が降らない日が続くようなら水やりをして補います。
【鉢植え】
日頃の水やりを忘れずに管理します。ただし、いつもジメジメした状態にすると根腐れしてしまうので注意。土の表面がしっかり乾いたら、鉢底から水が流れ出すまで、たっぷりと与えましょう。茎葉がしおれそうにだらんと下がってきたら、水を欲しがっているサイン。植物が発するメッセージを逃さずに、きちんとキャッチしてあげることが、枯らさないポイントです。
ハニーサックルは真夏が開花期にあたり、旺盛に生育するため、この時期は特に水を欲しがります。乾燥しやすい真夏は水切れしないように水の管理をすることが大切です。また、冬でもカラカラに乾燥させることのないように、適宜水やりを続けてください。
ハニーサックルの肥料
【地植え・鉢植えともに】
植え付け時に元肥として緩効性肥料を施しておきましょう。
その後は生育が旺盛になる5〜7月に、緩効性肥料を株の周囲にばらまき、軽く耕して周囲の土に馴染ませます。
ハニーサックルの仕立て方
ハニーサックルは、つるを伸ばして他者に絡みながら生育する植物なので、「他者」となるものを用意する必要があります。例えばフェンスやアーチ、オベリスク、パーゴラ、ポールなどです。鉢栽培ではあんどん仕立て用の支柱セットを準備しておくとよいでしょう。
仕立て方は特に決まりはなく、枝同士が重なったり絡み合ったりしないように、バランスよく整理しながら構造物に誘引していきます。枝が込み合っている場合は、生育期でも適宜カットしてかまいません。各枝に日がよく当たり、風通しがよい環境をつくることが大切です。
ハニーサックルは誘引と剪定が必要
【誘引】
ハニーサックルはつる性木本に分類される植物で、他者につるを絡ませて生育し、範囲を広げていきます。しかし絡まる力が弱いので、伸ばしたい方向につるを誘引し、麻ひもやビニタイなどでとめて、バランスよく枝葉が広がるように仕立てるとよいでしょう。
【剪定】
ハニーサックルの剪定適期は、3月頃です。戸外で越冬できますが、常緑で暖地性の性質を持つので、剪定は厳寒期を除き、生育が始まる少し前の休眠期に行うのが無難です。
生育期から芽吹いた新芽に花芽ができるため、「剪定の失敗によってその年の花数が少なくなってしまった!」といった心配は無用。どこで切ってもよいので、切り戻したい位置まで切って、伸びる範囲をコントロールしてください。生育旺盛なので、つるが繁茂しすぎてほかの植物との調和を崩してしまわないよう、年に1度は切り戻して増え広がりすぎないように調整しましょう。絡んだり、重なったりして込んでいる部分があれば、どちらかを切り取って風通しをよくします。長く伸びて四方に繁茂しすぎているつるは、やや深めに切り戻しましょう。
ハニーサックルがかかりやすい病気と注意すべき害虫
【病気】
ハニーサックルは、病気にかかる心配はほとんどありません。
【害虫】
ハニーサックルに発生しやすい害虫は、アブラムシ、ハダニなどです。
アブラムシは、3月頃から発生しやすくなります。2〜4mm程度の小さな虫で繁殖力が大変強く、発生すると茎葉にびっしりとついて吸汁し、株を弱らせるとともにウイルス病を媒介することにもなってしまいます。見た目もよくないので、発生初期に見つけ次第こすり落としたり、水ではじいたりして防除しましょう。虫が苦手な方は、スプレータイプの薬剤を散布して退治するか、植え付け時に土に混ぜ込んで防除するアブラムシ用の粒状薬剤を利用するのがおすすめです。
ハダニは、葉裏に寄生して吸汁する害虫です。体長は0.5mmほどと大変小さく、黄緑色や茶色い姿をしています。名前に「ダニ」がつきますが、クモの仲間。高温で乾燥した環境を好み、梅雨明け以降に大発生しやすいので注意が必要です。繁殖力が強く、被害が大きくなると、葉にクモの巣のような網が発生することもあります。ハダニは湿気を嫌うため、予防として高温乾燥期には葉裏にスプレーやシャワーなどで水をかけて予防するとよいでしょう。
ハニーサックルの増やし方
ハニーサックルは、挿し木をして増やすことができます。
挿し木とは、枝を切り取って地面に挿しておくと発根して生育を始める性質を生かして増やす方法です。植物のなかには挿し木ができないものもありますが、ハニーサックルは挿し木で増やすことができます。
ハニーサックルの挿し木の適期は、6〜7月頃です。その年に伸びた新しい枝を10cmほどの長さで切り取ります。採取した枝(挿し穂)は、水を張った容器に1時間ほどつけて水あげしておきましょう。その後、吸い上げと蒸散のバランスを取るために下葉を2〜3枚切り取ります。3号くらいの鉢を用意してゴロ土を入れ、新しい培養土を入れて水で十分に湿らせておきます。培養土に3カ所の穴をあけ、穴に挿し穂を挿して土で押さえてください。発根するまでは明るい日陰に置いて管理します。その後は日当たりのよい場所で育苗し、大きく育ったら植えたい場所に定植しましょう。挿し木のメリットは、親株とまったく同じ性質を持ったクローンになることです。
ハニーサックルの香りは香水アロマの原料として使われている
ハニーサックルはシェイクスピアが残した文学にも登場することからも分かるように、古くから人々の身近で愛されてきた植物です。華やかなフローラルの香りと蜜を持つ植物として親しまれ、香水やエッセンシャルオイルに利用されてきました。ただし、ハニーサックルから精油として抽出できる量は少ないために貴重で、高価なのが特徴です。そのため、ハニーサックルに似せた人工香料が多くて出回っていることも知っておいてください。天然精油にこだわるなら、成分表を確認しておきましょう。
ハニーサックルが名前の由来になったカクテルもある
「ハニーサックル」という名前のカクテルがあることをご存じでしょうか? ラムをベースに、レモンジュースと蜂蜜をシェイクし、グラスに注いだお酒です。なぜこの名前がつけられたのかは伝わっていませんが、ナイトライフを彩るカクテルの名前になるほどですから、いかにハニーサックルが人々に愛され、よいイメージを持たれているかがうかがえますね。
初夏に甘い香りが楽しめるハニーサックルを育ててみよう
初夏から秋にかけて、甘い香りを放つ花を次々と咲かせるハニーサックル。満開時は見応えのあるシーンを楽しめます。ぜひハニーサックルを庭に取り入れ、アーチやパーゴラ、フェンスなどに仕立てたダイナミックな景観づくりにチャレンジしてはいかがでしょうか。
Credit
文/3and garden
ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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