トレニアは、初夏から晩秋まで長い期間にわたって開花し続ける草花です。比較的丈夫で育てやすく、ビギナーにもおすすめ。草丈が低く、ほかの草花と合わせやすいので寄せ植えにも利用しやすく、花壇でも縁取りなどに活躍します。この記事では、トレニアの基本情報や育て方など、深く掘り下げてご紹介します。
目次
トレニアってどんな花? 花言葉は?
トレニアは、アゼトウガラシ科(アゼナ科)ツルウルクサ属(トレニア属)の草花です。原産地は東南アジア、南アフリカで、約40種の分布が確認されています。暑い地域の原産なので、寒さには弱い性質。開花期は4〜10月で、長く楽しめます。花色は青、紫、ピンク、白、黄、複色など。草丈は20〜30cmで、種類によっては這うようにして広がる匍匐(ほふく)性タイプもあります。
トレニアには、「夏すみれ」という和名があり、これは花姿がスミレにやや似ていることから。また、花言葉は「ひらめき」「可憐」「愛嬌」などがあります。
トレニアには一年草と多年草がある
日本で一般的にトレニアとして流通しているのはトレニア・フルニエリで、一年草に分類されています。十分気温が上がった頃に種まきすると、春から秋まで開花しますが、寒さに弱いので晩秋には枯死してしまう短命な植物です。ただし、近年はトレニア・コンカラーという種類も人気が高まっており、こちらは寒さ対策をすれば越年できる多年草。また、一年草と多年草を掛け合わせて作出された園芸品種も出回るようになっています。
トレニアの育て方
ここまで、トレニアの基本情報や特徴、花言葉、種類など、多岐にわたってご紹介してきました。では、ここからはガーデニングの実践編として、トレニアに適した環境、土づくり、植え付け、水やりなどの日頃の管理、増やし方など、育て方について詳しく解説します。
トレニアに適した環境は?
日当たり、風通しのよい場所を好みます。午前のみ日が差す東側や、一日中チラチラと木漏れ日が差す程度の半日陰の場所でも育ちますが、あまりに日当たりの悪い場所ではヒョロヒョロと間のびして軟弱になり、花つきも悪くなるので注意しましょう。
水はけのよい環境を好むので、水はけの悪い土壌であれば、腐葉土や堆肥を多めにすき込み、10〜20cmくらい土を盛って周囲よりも高くしておくとよいでしょう。
トレニアは暑さに強いので、夏は戸外で管理してかまいません。しかし、近年の日本の酷暑下では、直射日光が当たり続ける場所では弱ってしまうこともあるようです。庭植えの場合は西日が差す場所を避けたほうが無難。鉢栽培の場合は、風通しがよく涼しい場所に移動して管理するとよいでしょう。
また、冬の寒さに弱いので、多年草タイプのトレニアを庭植えにしている場合は、必ず鉢に植え替えて、暖かい場所で管理します。
トレニアに適した土を使おう
【地植え】
植え付けの約2週間前に、腐葉土や堆肥、緩効性肥料を混ぜ込んで、よく耕してください。土づくりの後にしばらく時間をおくことで、分解が進んで土が熟成し、植え付け後の根張りがよくなります。
【鉢植え】
市販の草花用培養土を利用すると手軽です。
トレニアの植え付け方法
トレニアの植え付け適期は、4〜8月です。ただし、ほかの時期にも苗は出回っているので、花苗店などで入手したら早めに植え付けるとよいでしょう。
【地植え】
土づくりをしておいた場所に、苗の根鉢よりも一回り大きな穴を掘り、軽く根鉢をほぐして植え付けます。最後にたっぷりと水を与えます。複数の苗を植える場合は、20〜30cmくらいの間隔を取っておきましょう。
【鉢植え】
鉢で栽培する場合は、5号鉢に1株を目安にします。大きな鉢を用意して複数の苗を植えてもかまいません。用意した鉢の底穴に鉢底ネットを敷き、軽石を1〜2段分入れてから草花用の培養土を半分くらいまで入れましょう。トレニアの苗をポットから取り出し、根を傷めないように鉢の中に仮置きし、高さを決めたら、少しずつ土を入れて植え付けます。水やりの際にすぐ水があふれ出すことのないように、土の量は鉢縁から2〜3cmほど下の高さまでを目安にし、ウォータースペースを取っておいてください。土が鉢内までしっかり行き渡るように、割りばしなどでつつきながら培養土を足していきます。最後に、鉢底から流れ出すまで十分に水を与えましょう。
鉢植えで多年草タイプのトレニアを楽しんでいる場合、成長とともに根詰まりして株の勢いが衰えてくるので、1〜2年に1度は植え替えることが大切です。植え替え前に水やりを控えて土が乾いた状態で行うと、作業がしやすくなります。鉢から株を取り出し、古い根を整理して元の鉢に新しい培養土を使って植え直します。もっと大きく育てたい場合は、元の鉢よりも大きな鉢を準備して植え替えてください。
水やりのポイントをご紹介
水やりの際は、株が蒸れるのを防ぐために茎葉全体にかけるのではなく、株元の地面を狙って与えてください。
真夏に水やりする場合は、朝か夕方の涼しい時間帯に行うことが大切です。気温の高い昼間に行うと、すぐに水の温度が上がり、株が弱ってしまいます。
また、多年草で越年するタイプのトレニアは、真冬に水やりする場合は、十分に気温が上がった真昼に行いましょう。気温が低くなる夕方に与えると凍結の原因になってしまいます。
【地植え】
根付いた後は、地植えの場合は下から水が上がってくるのでほとんど不要です。ただし、雨が降らない日が続くようなら水やりをして補います。
【鉢植え】
鉢栽培の場合は、日頃の水やりを忘れずに管理します。ただし、いつでもジメジメとした状態にしておくと、根腐れの原因になってしまいます。土の表面がしっかり乾いたら、鉢底から水が流れ出すまで、たっぷりと与えてください。茎葉がしおれそうにだらんと下がってきたら、水を欲しがっているサイン。植物が発するメッセージを逃さずに、きちんとキャッチしてあげることが、枯らさないポイントです。また、多年草タイプのトレニアは冬も適宜水やりを続けてください。
日頃の手入れポイントは?
【摘心】
トレニアは、苗が小さいうちに茎の先端を切り取る「摘心」を繰り返すと、よく分枝してこんもりと茂ります。分枝すると花数も増えるので、ひと手間かけておくことをおすすめします。
【花がら摘み】
トレニアは次々に花が咲くので、終わった花は早めに摘み取りましょう。まめに花がらを摘んで株まわりを清潔に保つことで、病害虫発生の抑制につながりますよ! また、いつまでも花がらを残しておくと、種子をつけようとして株が消耗し、老化が早まって花数が少なくなってしまうので注意。花がらをまめに摘み取ると、次世代を残そうとして次から次に花がつき、長く咲き続けてくれます。
【切り戻し】
6〜8月頃、草姿が乱れてきたら一度切り戻して株の若返りを図ります。地際から草丈の半分くらいの高さを目安に、深めにカットしましょう。すると再び新芽を出して株が盛り返し、再び開花し始めます。
肥料はどうやって与える?
【地植え・鉢植えともに】
植え付け時に元肥として緩効性肥料を施しておきます。その後は、5〜10月に緩効性肥料を月に1度を目安に、株の周囲にばらまいて土によく馴染ませてください。
鉢栽培の場合は、水やりと共に肥料成分が流亡しやすいので、株の状態を見て勢いがないようであれば、液肥を施して様子を見るとよいでしょう。
トレニアに発生しやすい病害虫
【病気】
トレニアが発症しやすい病気は、灰色かび病です。
灰色かび病は花や葉に発生しやすく、褐色の斑点ができて灰色のカビが広がっていきます。気温が20℃ほどの多湿の環境下で発生しやすく、ボトリチス病、ボト病などとも呼ばれています。風通しが悪く込み合っていたり、終わった花や枯れ葉を放置していたりすると発生しやすくなるので注意。花がらをこまめに摘み取り、茎葉が込み合っている場合は、間引いて風通しよく管理しましょう。
【害虫】
トレニアに発生しやすい害虫は、アブラムシ、コナジラミ、アザミウマなどです。
アブラムシは、3月頃から発生しやすくなります。2〜4mm程度の小さな虫で繁殖力が大変強く、茎葉にびっしりとついて吸汁し、株を弱らせるとともにウイルス病を媒介することにもなってしまいます。見た目もよくないので、発生初期に見つけ次第こすり落としたり、水ではじいたりして防除しましょう。虫が苦手な方は、スプレータイプの薬剤を散布して退治するか、植え付け時に土に混ぜ込んで防除するアブラムシ用の粒状薬剤を利用するのがおすすめです。
コナジラミは、植物の葉裏について吸汁する害虫です。体長は1mmほどで大変小さいのですが、白いので目にとまりやすいでしょう。繁殖力が旺盛で、短期間で卵から幼虫、成虫になり、被害が拡大しやすいのが特徴。吸汁によってウイルスを媒介するほか、排泄物にすす病が発生しやすく、二次被害を呼びやすいので要注意。冬は卵やサナギの状態で雑草の中に潜み、春になると周囲に移動して活動を始めるので、雑草や枯れ葉を残さずに処分しておきましょう。大発生した時は、スプレータイプの適用薬剤を散布して対処してください。
アザミウマは花や葉につき、吸汁する害虫です。スリップスの別名を持っています。体長は1〜2mmと大変小さく、緑や茶、黒色の昆虫で、群生して植物を弱らせるので注意しましょう。針のような器官を葉などに刺して吸汁する際にウイルスを媒介するので、二次被害が発生することもあります。被害が進んだ花や葉は傷がついてかすり状になるので、よく観察してみてください。花がらや枯れ葉、雑草などに潜みやすいので、株まわりを清潔に保っておきます。土に混ぜるタイプの粒剤を利用して防除してもよいでしょう。
トレニアは種まきと挿し芽で増やせる
【種まき】
トレニアは、ビギナーでも種まきから簡単に育てられますよ! 種まきからスタートするメリットは、輸送などによる苗への負担がかからず、環境に馴染みやすいことです。敷地が広くて多数の苗を植えたい場合は、コストカットにもなります。
トレニアの種まきの適期は5〜6月で、発芽適温は20〜25℃です。
種まき用のセルトレイに草花用にブレンドされた市販の培養土を入れて十分に水で湿らせた後、1穴当たり1〜2粒ずつ播きます。トレニアの種は「好光性種子」といって、発芽に光を必要とするため、土をかぶせないことがポイントです。種が非常に細かいので、水を浅く張った容器にセルトレイを置いて、底から給水させるとよいでしょう。
発芽までは10日ほどかかりますが、乾燥・過湿にならないように適度な水管理をしてください。発芽後は日当たりがよく、風通しのよい場所で管理します。本葉が2〜3枚ついたら根鉢を傷めないようにトレイから取り出し、3号の黒ポットに鉢上げします。さらに育苗して根鉢が充実し、十分に育ったら植えたい場所に定植します。
【挿し芽】
挿し芽とは、茎葉を切り取って地面に挿しておくと発根して生育を始める性質を生かして増やす方法です。植物のなかには挿し芽ができないものもありますが、トレニアは挿し芽で増やせます。
トレニアの挿し芽の適期は、6〜9月です。新しく伸びた茎を2節以上つけて切り口が斜めになるように切り取ります。採取した茎(挿し穂)は、水を張った容器に1時間ほどつけて水あげしておきましょう。その後、水の吸い上げと蒸散のバランスを取るために下葉を2〜3枚切り取ります。セルトレイを用意して新しい培養土を入れ、水で十分に湿らせておきます。培養土に穴をあけ、穴に挿し穂を挿して土を押さえてください。発根するまでは明るい日陰に置いて乾燥させないように管理します。根が回ってきたら3号の黒ポットに鉢上げし、十分に育ったら植えたい場所へ定植しましょう。挿し芽のメリットは、親株とまったく同じ性質を持ったクローンになることです。
丈夫で初心者向けのトレニア! 次々と咲く花を楽しもう
花つきがよく、こんもりとよく茂るトレニアは、初夏から晩秋までよく咲き続けるため、開花期の短い一年草に比べて植え替えの手間が省ける一面も持っています。強健な性質で、放任してもよく育つので、ガーデニングの初心者向け。ぜひ庭やベランダで育てて、長い期間愛らしい花姿を楽しんではいかがでしょうか。
Credit
文/3and garden
ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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