園芸初心者でも挑戦しやすい! 百日草(ジニア)の特徴や育て方のコツをご紹介

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初夏から晩秋まで長く咲き続ける百日草(ジニア)は、初心者でも種まきから簡単に育てられる一年草です。花色や咲き姿が多様で園芸品種が多数揃うため、選ぶ楽しみがあるのもこの花の魅力。この記事では、百日草の特徴や育て方のポイントなど、幅広くご紹介していきます。
目次
百日草の概要

百日草は、キク科ヒャクニチソウ属(ジニア属)の一年草です。原産地はメキシコを中心とした南北アメリカ。15種類ほどが分布しているとされ、暑さに強い一方で、寒さには弱い性質を持っています。春に種子を播くと、初夏から秋まで長い期間にわたって開花し続け、秋が深まると寒さに耐えられずに枯死してしまう、ライフサイクルの短い植物です。
百日草は種類によって草丈に幅があり、20cmほどでコンパクトにまとまる種類もあれば、1m以上に達する種類もあります。開花期は5〜11月で、花色は赤、ピンク、オレンジ、黄、白、緑、複色など。花姿は多様で、小輪(5cm以下)から大輪(12cm以上)までサイズに幅があるほか、咲き姿も一重咲き、八重咲き、ダリア咲き、カクタス咲き、ポンポン咲きなど多様です。
百日草の名前の由来や別名

百日草の名前は、その名の通り初夏から秋まで長く咲き続けることにちなんでいます。和名では、ほかに「長久草」とも呼ばれていました。園芸店などでは「ジニア」の名前で販売されていることが多くなっていますが、これは学名のZinniaをそのまま読んだもの。その由来は、ドイツの植物学者ヨハン・ゴットフリート・ツィン(J.G.Zin)から来ています。
百日草の花言葉

百日草の花言葉は、「不在の友を思う」「遠い友を思う」「別れた友への想い」「絆」「いつまでも変わらぬ心」「古き佳き時代」「幸福」「注意を怠るな」など。
いずれの言葉も、百日草が長く咲き続けることによる、月日の経過を連想させるものが多くなっています。特に「注意を怠るな」は、百日草が変わらずに長く咲き続けることから、時の流れの変化を見逃してはならない、という戒めが込められています。
百日草の種類

昔から百日草として馴染み深いのはジニア・エレガンスで、園芸品種は大輪・八重咲きの「F1ドリームランド系」や、大輪・ダリア咲きの「F1サン系」がポピュラー。ジニア・エレガンスは長く愛されてきた花のため品種数も多く、アンティークカラーや複色咲き、絞り咲きなど多様で、選ぶ楽しみがあります。
また、草丈が20cmほどでコンパクトにまとまり、分枝性に優れるジニア・リネアリスは、「プチランド系」が育てやすくおすすめ。種間雑種で華やかさや育てやすさを追求した「ザハラ系」や「プロフュージョンシリーズ」も人気です。
百日草の育て方
ここまで、百日草の基本情報や名前の由来、花言葉、種類など、多方面からご紹介してきました。では、ここからはガーデニングの実践編として、適した栽培環境や種まき、植え付け、水やりや施肥、手入れといった日頃の管理など、育て方について詳しく解説していきます。
栽培環境と置き場所

百日草は、日当たりがよく、風通しのよい場所を好みます。日当たりが悪い場所では、花つきが悪くなったり、ヒョロヒョロとか弱い茎葉が茂って草姿が間のびしたりするので注意。水はけ、水もちのよい土壌を好むので、地植えする場合は植え付け前に有機質資材を投入してよく耕し、ふかふかの土づくりをしておくとよいでしょう。
長雨を嫌うエレガンスなどの種類は、鉢栽培にして日当たりのよい軒下で栽培するのが無難です。庭植えにする場合、強い雨や水やり時の泥の跳ね返りによって病気が発生することがあるので、バークチップなどを株元に施す「マルチング」をしておくと安心です。
土づくり

【地植え】
種まき、または苗を植え付ける1〜2週間前に、腐葉土や堆肥などの有機質資材と緩効性化成肥料を投入し、よく耕してふかふかの土をつくっておきます。このように事前に土づくりをしておくことで、分解が進んで土が熟成します。
【鉢植え】
草花の栽培用に配合された園芸用培養土を利用すると便利です。
種まき

百日草は、ビギナーでも種まきから簡単に育てられますよ! 種まきからスタートするメリットは、輸送などによる苗への負担がかからず、環境に馴染みやすいことです。敷地が広くて多数の苗を植えたい場合は、コストカットにもなります。
ただし、百日草の苗は晩春から花苗店に出回り始めます。手軽にスタートしたいなら、苗の植え付けからがおすすめです。「1〜2株あれば十分だから、苗の植え付けから始めたい」という方は、次項の「苗の植え付け」に進んでください。
百日草の種まきの適期は4〜5月頃で、発芽適温は20〜25℃くらいです。
【トレイまき&育苗】
花壇などに種を直まきすると、幼苗のうちに病気や虫の害にあいやすく、天候不順に左右されやすいので、種まき用のトレイに清潔な市販の種まき用の培養土を使って種を播き、適した場所で管理すると、より確実です。
種まき用のトレイを準備し、市販の草花用の培養土を入れ、5〜6cm間隔でまき溝をつけ、溝に5〜6cm間隔で種を播きます。種を播いたら、5mm厚くらいに土をかぶせ、軽く手で押さえて鎮圧しておきましょう。最後に、はす口をつけたジョウロで高い位置からやわらかい水流で水やりし、種が流れ出さないようにしてください。発芽までは乾燥させないように水の管理をしましょう。1週間ほど経つと発芽し、双葉が揃います。
発芽したら日の当たる場所で管理し、数本込み合っている部分などがあれば抜き取って間引きましょう。もったいないからといって密になっている部分をそのままにしておくと、ヒョロヒョロと間のびした徒長苗になってしまうので、注意。
本葉が2〜4枚ついたら、トレイから抜いて鉢上げします。黒ポットに草花用の培養土を入れて、苗を周りの土ごと抜き取って植え付けましょう。日当たりのよい場所に置き、表土が乾いたら水やりして育成します。多湿になると根の張りが悪くなり、ヒョロヒョロと頼りなく伸びる徒長苗になったり、病気が発生したりするので注意。適切な水分管理をすることがポイントです。鉢上げから10日ほど経ったら、1週間〜10日に1度を目安に、薄めの液肥を与えて生育を促しましょう。ポットに根が少し回るくらいまでを目安に育苗します。
【直まき】
土づくりをしておいた場所に、百日草の種をランダムにばらまきにします。ばらまきにすると、自然に芽を出したようなナチュラルな雰囲気を演出できるのがメリットです。または、5〜6cm間隔でまき溝をつけ、溝に5〜6cm間隔で条まきにしてもかまいません。条まきは整形花壇に向いており、群植させた時の管理がしやすくなります。種を播いたら、5mm厚くらいに土をかぶせ、軽く手で押さえて鎮圧しておきましょう。はす口をつけたジョウロで高い位置からやわらかい水流で水やりし、種が流れ出さないようにしてください。発芽後は、込み合っている部分があれば間引きながら育成します。間引く際は、ヒョロヒョロと長く伸びて徒長しているもの、葉色が薄く傷んでいるもの、虫に食われているものなどを選んで抜き取りましょう。最終的に株同士の間隔を20〜25cmほど取ります。密植すると蒸れたり、病気にかかりやすくなったりするので、風通しよく管理してください。
苗の植え付け

百日草の植え付け適期は5〜6月頃です。花苗店で苗を購入する際は、節間が短く茎ががっしりと締まって丈夫なものを選びましょう。
【地植え】
土づくりをしておいた場所に苗よりも一回り大きな穴を掘り、根鉢をややくずして植え付けます。複数の苗を植え付ける場合は、20〜25cmほどの間隔を取りましょう。草丈が高くなる高性種の場合は、支柱を立てて麻ひもかビニールタイで誘引してください。最後に、たっぷりと水やりします。
【鉢植え】
鉢の大きさは、6〜7号鉢を準備しましょう。
用意した鉢の底穴に鉢底ネットを敷き、軽石を1〜2段分入れてから培養土を半分くらいまで入れましょう。百日草の苗を鉢に仮置きし、高さを決めます。苗をポットから出し、根鉢をややくずして植え付けましょう。水やりの際にすぐあふれ出すことのないように、土の量は鉢縁から2〜3cmほど下の高さまでを目安にし、ウォータースペースを取るとよいでしょう。土が鉢内までしっかり行き渡るように、割りばしなどでつつきながら培養土を足していきます。最後に、鉢底から流れ出すまで、十分に水を与えましょう。草丈が高くなる高性種の場合は、支柱を立てて麻ひもかビニールタイで誘引しておきます。寄せ植えの素材として、大鉢にほかの植物と一緒に植え付けてもOKです。
水やり

水やりの際は株が蒸れるのを防ぐために茎葉全体にかけるのではなく、株元の地面を狙って与えてください。
真夏に水やりする場合は、気温の高い昼間に行うと、すぐに水がぬるま湯のようになり、株が弱ってしまうので、朝か夕方の涼しい時間帯に行うことが大切です。
【地植え】
根付いた後は、地植えの場合は下から水が上がってくるのでほとんど不要です。ただし、雨が降らない日が続くようなら水やりをして補います。
【鉢植え】
日頃の水やりを忘れずに管理します。ただし、いつもジメジメした状態にしておくと、根腐れの原因になってしまいます。土の表面が白く乾いたのを確認してから、鉢底から水が流れ出すまで、たっぷりと与えてください。茎葉がしおれそうにだらんと下がってきたら、水を欲しがっているサイン。植物が発するメッセージを逃さずに、きちんとキャッチしてあげることが、枯らさないポイントです。
肥料の与え方

【地植え・鉢植えともに】
植え付け時に元肥として緩効性肥料を施しておきます。開花期は、10日に1度ほどを目安に液体肥料を与えて、株の勢いを保ちましょう。
百日草がかかりやすい病気と対処法

百日草に発症しやすい病気は、灰色かび病、うどんこ病などです。
灰色かび病は花や葉に発生しやすく、褐色の斑点ができて灰色のカビが広がっていきます。気温が20℃ほどの多湿の環境下で発生しやすい病気です。ボトリチス病、ボト病などとも呼ばれています。風通しが悪く込み合っていたり、終わった花や枯れ葉を放置していたりすると発生しやすくなるので注意。花がらをこまめに摘み取り、茎葉が込み合っている場合は、間引いて風通しよく管理しましょう。灰色かび病が出たら病気の葉を摘み取って処分し、適用する殺菌剤を葉の表と裏に散布して、蔓延するのを防ぎましょう。
うどんこ病は、カビによる伝染性の病気です。葉、新梢、つぼみに発生しやすく、表面が白く粉を吹いたような状態になり、放任するとどんどん広がるので注意。対処せずにそのままにしておくと光合成ができなくなり、やがて枯死してしまいます。窒素肥料を施しすぎたり、枝葉が繁茂しすぎて風通しが悪くなったりしていると、発病しやすくなります。うどんこ病が出たら病気の葉を摘み取って処分し、適用する殺菌剤を葉の表と裏に散布して、蔓延するのを防ぎましょう。
百日草が被害にあいやすい害虫と対処法

百日草に発生しやすい害虫は、アブラムシ、ハダニなどです。
アブラムシは、3月頃から発生しやすくなります。2〜4mmの小さな虫で繁殖力が大変強く、発生すると茎葉にびっしりとついて吸汁し、株を弱らせるとともにウイルス病を媒介することにもなってしまいます。見た目もよくないので、発生初期に見つけ次第こすり落としたり、水ではじいたりして防除しましょう。虫が苦手な方は、スプレータイプの薬剤を散布して退治するか、植え付け時に土に混ぜ込んで防除するアブラムシ用の粒状薬剤を利用するのがおすすめです。
ハダニは、葉裏に寄生して吸汁する害虫です。体長は0.5mmほどと大変小さく、黄緑色や茶色い姿をしています。名前に「ダニ」がつきますが、クモの仲間。高温で乾燥した環境を好み、梅雨明け以降に大発生しやすいので注意が必要です。繁殖力が強く、被害が大きくなると、葉にクモの巣のような網が発生することもあります。ハダニは湿気を嫌うため、予防として、高温乾燥期に葉裏にスプレーやシャワーなどで水をかけるとよいでしょう。
咲き終わった花がらをこまめに取る

百日草は次々に花が咲くので、終わった花は早めに摘み取りましょう。まめに花がらを摘んで株まわりを清潔に保つことで、病害虫発生の抑制につながりますよ! また、いつまでも花がらを残しておくと、種子をつけようとして株が消耗し、老化が早まって花数が少なくなってしまうので注意。花がらをまめに摘み取ると、次世代を残そうとして次から次に花がつき、長く咲き続けてくれます。
摘心・切り戻し剪定をして花の数を増やす

【摘心】
植え付け後、幼苗のうちに茎の先端を切り取る「摘心」を繰り返すと、下からわき芽が出て枝の数が増え、花数も多くなります。
【切り戻し】
旺盛に生育し、一通り咲いて草姿が乱れてきたら、草丈の半分くらいまでを目安に全体を刈り込む「切り戻し」をするとよいでしょう。すると株が盛り返して勢いよく生育し、再びたっぷりと咲く花姿を楽しめます。
ただし、遅めに苗を入手して草姿が乱れていない場合には、切り戻さずにそのままにしておいてもかまいません。
開花時期が長く、色とりどりの花が花壇を彩る百日草

百日草は、初夏から晩秋まで、実際に100日以上咲き続けることが名前の由来になっており、長期間にわたって開花を楽しめる花です。強健な性質で初心者でも簡単に育てられるので、ビギナーにもおすすめ。ぜひ百日草を庭やベランダに取り入れてはいかがでしょうか。
Credit

文/3and garden
ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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