淡くやさしいマカロンカラーにホイップクリームのようなエアリー感が人気のペチュニア「ホイップマカロン」。ふわもこ&ゆるふわの愛らしい姿と、切り戻さなくても姿よくまとまる性質で、花好きのハートを射止め、近年は夏の庭のプリンセスとして憧れの的! 育種者の花日和(はなびより)川上竜一さんに、その魅力と上手な育て方を伺いました。
目次
ペチュニア「ホイップマカロン」の愛される理由
ペチュニア「ホイップマカロン」は花弁の枚数が多く、しっかりした八重咲きのペチュニアです。ボリュームたっぷりで存在感がありながら、ふわっと優しいイメージ。花径は4〜5cmなので、他の花と合わせるのにもちょうどいいサイズ感です。そして、従来のペチュニアの特徴の一つに花弁が反り返る花形がありますが、ホイップマカロンは花弁が反りにくく、丸く整った花形なのも、寄せ植えなどでよく使っていただける理由かもしれません。ペチュニアというと夏の花のイメージだと思いますが、「ホイップマカロン」はペチュニアのなかでは耐寒性があり、春先早くから咲き出し、秋まで咲き続けてくれるので、上手に育てれば約半年間楽しんでいただけます。
ペチュニア「ホイップマカロン」の育て方のコツは夏の管理と水やり
「ホイップマカロン」は耐寒性がある反面、耐暑性はやや劣ります。ですので、真夏は半日陰の風通しのよい屋外で育て、雨に気をつけてください。最近は梅雨時からゲリラ豪雨のような強い雨が降りますが、八重咲きのペチュニアは、強い雨に打たれたり長雨で濡れ続けると、花は傷み、つぼみも開かなくなってしまいます。基本的には地植えより鉢植え向きで、屋根のある玄関ポーチや軒先などが置き場所に適しています。
ペチュニア「ホイップマカロン」には性質の異なる2シリーズがあります
「ホイップマカロン」には2つのシリーズがあります。一つはポップな色合いのノーマルカラー。そしてもう一つが繊細な色合いのプレミアムカラーです。色合いの違いだけでなく、両者は少し性質が異なり、ノーマルカラーは丈夫でビギナーの方にも育てやすい花だと思います。
一方、プレミアムカラーは、その花色と同様、性質も少し繊細で、根が細く、水分を吸い上げるスピードがゆっくりです。水やりをする際は、基本的に鉢底から水が流れ出るようにたっぷり与えますが、重要なのは次に与えるタイミングです。いったん、土がしっかり乾くまで待ってから水をあげてください。土中が乾いたかどうかは、割り箸や木製のマドラーなどを土にさして判断します。湿った土がついてくるようだったら、まだ水やりのタイミングではありません。土が乾くスピードは季節や鉢の大きさ、置き場所、お住まいの地域によって変わるので、よく見てあげることが必要です。水をやりすぎると、カビが生えたりするだけでなく、根が腐ってつぼみも開かなくなってしまいます。
プレミアムカラーは切り戻しなしでもふわふわもこもこ
株姿もプレミアム!
そんなわけで、プレミアムカラーは育てるのがやや難しいと感じられるかもしれませんが、その反面、花と花の間が詰まっていて株姿がきれいに育つのも魅力です。ペチュニアを育てたことのある方の中には、生育するにつれ、伸びた茎の先にしか花が咲かなくなり、株の真ん中が寂しくなってしまうという経験をされた方も多いのではないでしょうか。それを回避するための切り戻しをしますが、切り戻しのタイミングも難しいという声もよく聞かれます。その点、プレミアムカラーは生育が進んでも株の真ん中から次々に花が上がってきて、切り戻さなくても自然にこんもり花が株全体を覆うように咲いてくれます。ですから、置き場所と水のやりすぎにさえ気をつければ、むしろ育てやすいかもしれません。
かわいく咲き続ける「ホイップマカロン」を液肥や活力剤で応援
ペチュニア「ホイップマカロン」は、長ければ4〜10月まで半年近く花を咲かせます。多くの場合は鉢栽培で限られた土の中で生育させることになるので、土には定期的に栄養分を補給してあげる必要があります。私は以下の3つの商品を使っています。
1.サカタGB液(有機液肥)/1,000倍に薄めて植え付け時に与えると根の活着が早くなります。曇天や高温など、ストレス環境に強くなります。
2.メネデール(活力剤)/微量要素の鉄をイオンの形で含む水溶液で、養分や水分の吸収を高めたり、光合成を活発にする働きがあります。
3.リキダス(活力液)/いろいろな成分が入っていますが、私が注目する成分は、コリン、フルボ酸、アミノ酸、カルシウム。カルシウムが足りないと葉っぱの先が枯れたりしますが、カルシウム不足が解消されるとすぐなおります。
ペチュニアの花がら摘みとベタベタの理由
ペチュニアの手入れの一つに、花がら摘みがあります。枯れた花をそのままにせず摘み取ることを花がら摘みといいますが、それには美観上の理由もありますし、病気を防ぐためでもあります。花がらを摘み取るとき、茎や葉に触れると指先がベタベタしてくるのですが、このベタベタはペチュニア特有の性質です。ペチュニアの原産地、南米にはハキリアリというアリがいるのですが、そのアリに葉を切り取られないようにペチュニアが出している粘液がベタベタの理由。つまり、ベタベタはペチュニア自身が害虫から身を守るために獲得した性質です。洗えばすぐに落ちますが、もし気になるようなら使い捨ての薄手のビニール手袋をするといいですよ。
「ホイップマカロン」進化系にも注目!
本当にありがたいことに、2016年に「ホイップマカロン」がデビューしてから、もう6年が経ちましたが、年々需要が伸びています。プレミアムカラーは節間が伸びにくいので、寄せ植えに入れても形が崩れにくく、多くの方が「ホイップマカロン」を使った寄せ植えをSNSにあげてくださいます。「ホイップマカロン」を通じてユーザーさん同士の繋がりができているのを見たりすると、とてもうれしいですね。また、「ペチュニアは苦手意識がありましたが、ホイップマカロンでペチュニアに対する考えが変わりました」と言ってくださる方もいて、育種者としてこんなにうれしいことはありません。
ただ、大事にするあまり過保護になったり、絶対枯らしたくないと言われる方もいて、私としてはもっと気軽に楽しんでいただければと思っています。例えば、来客の予定があるときに玄関に鉢を置いて、切り花のように1週間か2週間楽しめればOK! ぐらいの気軽さで楽しむのはどうでしょうか。
じつは今、そんなブーケみたいに咲く新しい八重咲きのシリーズを育種中なんです。1株でブーケのように大きくなって、初心者でも簡単に育てられる! そんな花を目指して奮闘中ですので、ぜひ楽しみに待っていてください。ペチュニアに限らず、一年を通して花日和の品種を流通させられるよう、これからさまざまな花の種類の育種にも取り組んでいくつもりです。魅力的な花には、人と人をつなぐような不思議な力があると、花農家になって実感しています。そんな花を、これから一つでも多く生み出せればいいなと思っています。
Information
取材協力/花日和・川上竜一さん
https://hanabiyori-saitama.shopinfo.jp
ホイップマカロンシリーズ 取り扱い
Junk Sweet Garden tef*tef* https://shop.teftef.biz
その他インスタで取扱店を紹介しています
Junk Sweet Garden tef*tef*インスタグラム
Credit
取材・まとめ/3and garden
ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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